
投資商品を選んでいるとき、「利回り」を無視することはできません。投資で生計を立てたい人は特に、高利回りにこだわっているはずです。
しかし、「よくわからないけど、利回りは高ければ高いほど良い商品なのだろう」と思っていませんか?その発想は、実はちょっと危険かもしれません。
この記事では、利回りについて正しく理解していただくために次の項目を解説していきます。
- 利回りとは何か?
- 投資の種類別の利回り比較
- 高利回りの投資で生計を立てることはできるのか?
ハイリスク・ハイリターンという言葉があるように、利回りとリスクは表裏一体です。利回りについて正しい知識を持って、堅実な運用で利益を出していきましょう。
目次
そもそも利回りとは?
「利回り」とは、「いくらの投資に対して、1年でいくらの利益を得られるか」を計算した指標です。利回りが高いほど、投資額に対して大きな利益を得られるということです。
利回りが5%と4%の投資先があれば、5%の方が大きな利益を得られます。
利回りの意味を押さえた上で、次の4つの項目について詳しくみていきましょう。これらの項目を理解できると、自分に合った金融商品の見極めに役立ちます。
- 利回りの計算方法
- 表面利回りと実質利回りの違い
- 利率と利回りの違い
- 税金を考慮すると利回りが下がる
計算方法
利回りを計算する式は、次のとおりです。
利回り(%)=収益÷投資元本×100%
例えば、元本100万円を投資して1年間で5万円の利益が出たと仮定します。すると、上記の式に当てはめて次のように利回りを計算できます。
利回り=5万円÷100万円×100=5%
利回りがわかっていると、「投資額が○円なら利益は○円」とすぐにわかるので便利です。例えば、5%の投資先に200万円を投資したら、利益は10万円とわかります。
「表面利回り」と「実質利回り」
単に「利回り」として説明してきましたが、先ほど紹介した計算式は「表面利回り」を求めるものです。実は、利回りには「表面利回り」と「実質利回り」の2つがあります。
表面利回りは、投資額に対する収入を表します。投資家が支払うコストを無視した利回りなので、実質的な利回りよりも大きく計算されます。一般的には、次の式で計算できます。
表面利回り(%)=収益÷投資元本×100%
実質利回りは、コストを収入から差し引いて計算した利回りです。実際の利益に近いため、投資家は実質利回りで投資先を選ぶと良いでしょう。
実質利回り(%)=(収益-税金などのコスト)÷投資元本×100%
なぜ表面利回りと実質利回りの違いを紹介したのかというと、表面利回りを前面にPRしている証券会社もあるからです。表面利回りが高いからといって実質利回りも高いとは限らないので、投資先を決めるときは利回りだけでなくコストも調べてください。
特に、不動産投資のように維持・管理費でコストが大きくなる投資は、表面利回りと実質利回りの差が大きくなりやすいです。不動産投資で高利回りの案件があっても、表面利回りが高いだけで実質利回りはむしろ低かったなんてこともあり得ます。投資家が投資先を判断するときには、実質利回りを必ず確認するようにしましょう。
利率との違い
「利回り」と似たような用語に「利率」があります。計算式の違いを見ると、両者の違いはわかりやすいので、先に計算式を紹介しましょう。
利回り(%)=(分配金・値上がり益・値下がり損を合計した収益)÷投資元本×100%
利率(%)=(分配金の収益)÷投資元本×100%
つまり、収益の計算に株価などが「値上がりしたことによるプラス」や「値下がりしたことによるマイナス」を含めるかどうかが異なります。値上がり・値下がりの変動を含めて収益とするのが「利回り」、分配金だけを収益とするのが「利率」です。
投資で利益を出すには分配金だけでなく、株価上昇など値上がりも重要です。利率よりも利回りで投資先を評価する方が良いでしょう。
利回りは税金で下がる
投資信託や株式投資で利益が出た場合、税金を支払わなければならないため利回りが下がってしまいます。証券の場合、表面利回りと実質利回りの差はほとんど税金ということです。
例えば、元本100万円を投資して1年間で5万円の利益が出たと仮定しましょう。すると、表面利回りは次のように計算できます。
表面利回り=5万円÷100万円×100=5%
ところが、利益には20.315%の税金がかかります。小数点以下を丸めて20%の税率と仮定すると、利益5万円の20%で1万円の税金を支払わなければなりません。
これを考慮すると、実質利回りは次の式のとおりとなります。
実質利回り=(5万円-1万円)÷100万円×100%=4%
表面利回りは5%でしたが、実質利回りは4%に下がってしまいました。手取りで5%の利回りが欲しい人がこのような投資をしてしまうと、4%しか手に入らず目標に届かないことになってしまいます。
証券会社のホームページで投資信託や株式を調べると、多くの場合は表面利回りが記載されています。実質利回りを計算し、投資によって手取りの収入がいくらになるのか理解した上で投資を始めましょう。
投資の種類別の利回り
投資には株式や債券、投資信託などさまざまな種類があり、それぞれ利回りが異なります。また、利回りの違いはリスクの違いと言い換えることもできます。基本的にはハイリスク・ハイリターンかローリスク・ローリターンのどちらかです。
この項目では、次の2点に焦点を当てて解説していきます。
- 投資の種類別の利回り
- 現実的に目指すべき利回り
利回りは高い方が良いように感じられますが、利回りを追求しすぎてリスクを多く取ることが一概に良いとは言えません。現実的な利回りについても押さえておきましょう。
比較表
投資初心者から上級者まで、誰にとっても身近な投資商品の平均的な利回りとリスクを一覧表にまとめました。
投資商品 | 利回り | リスク |
---|---|---|
定期預金 | 0.01% | 非常に低い |
債券 | 0.1〜0.5% | 低い |
不動産 | 2%〜5% | やや低い |
投資信託 | 0.1%〜5% | 低い〜高い |
株式 | 3%〜7% | やや高い |
ソーシャルレンディング | 5%〜7% | 高い |
投資信託の利回りの幅が広いのは、商品によって投資先が異なるからです。債券に投資する商品や株式に投資する商品などがあるため、利回りにもバラつきが出ます。
現実的な利回り
表からわかるとおり、現実的な利回りは最大でも4%から5%ほどだと考えられます。株式や株式に投資する投資信託を中心にすれば、5%ほどの利回りを得ることは十分に可能です。
株式中心の場合は値動きが激しくなるため、資産の増減にストレスを感じる人は定期預金や債券をミックスしていくのが良いでしょう。そのぶん利回りは下がりますが、ストレスなく投資できればそれに越したことはありません。
なお、ときどき「投資で一攫千金!」を夢見て投資を始める人がいます。このような夢が基本的に叶わないことは、利回りの一覧表から見ても明らかでしょう。
1年で資産を2倍にするなら100%の利回りが、10倍にするなら900%の利回りが必要です。しかし、ハイリスク・ハイリターンのソーシャルレンディングであっても、利回りは7%ほどかどんなに高くても10%が限度です。
現実的には100%の利回りを叩き出せる商品はほぼ存在しません。現実的な利回りを理解し、堅実に運用していくことをおすすめします。
投資の配当金や分配金だけで生活することはできる?
投資を始めて最も嬉しいのは、配当金や分配金が自分の口座に振り込まれたときではないでしょうか?配当金や分配金をもらえるようになると、「このまま投資を頑張れば、いつか不労所得で生活できるようになるかも」と誰もが考えるはず。
そこで、実際に配当金や分配金だけで生活し、アーリーリタイアすることはできるのか試算してみました。一般的なサラリーマンを想定したので、ご自身に当てはめながら読んでみてください。
元手が大きければ可能
結論としては、配当金や分配金だけで生計を立てるのは難しいと言わざるを得ません。元手が大きければ可能なのですが、1億円単位のお金が必要です。
実質利回りが5%の場合、1億円を投資すると500万円の分配金を受け取ることができます。サラリーマンの平均年収は400万円ほどなので、500万円も不労所得があれば生活できるでしょう。
しかし、この仮定の問題は「1億円」という大きな投資額です。これだけの金額を持っていて、今すぐに投資に回せる方はほぼいないでしょう。
よって、1億円ほどの大きなお金があれば分配金で生活できるけど、多くのサラリーマンには現実的でないと考えられます。
サラリーマンの生涯賃金は意外と高い
サラリーマンの生涯賃金は2億円から3億円ほどだと言われています。一般的には2億円ほど、高収入な方の場合は3億円ほどと言われることが多いです。
投資で2億円から3億円作るよりも、働いて2億円から3億円をもらう方が、圧倒的に難易度が低いため、実はサラリーマンはお得にお金を稼げる仕組みなのです。
生涯賃金の話をすると、「俺は2億円ももらっていない!」とおっしゃる方が多くいます。ここで、実際に生涯賃金を計算してみましょう。
簡単のため、20歳から定年の60歳まで40年間サラリーマンとして勤めると仮定します。年収は次の表のとおり仮定して計算しましょう。
年代 | 年収 |
---|---|
20代 | 300万円 |
30代 | 400万円 |
40代 | 600万円 |
50代 | 800万円 |
この仮定で生涯賃金を計算すると、2億1千万円になります。年収の例は決して突飛な数字ではないと思いますが、それでも生涯賃金では2億円を突破するのです。
つまり、頑張って定年まで勤め上げれば、億単位のお金を稼ぐことができるのです。
もしあなたが会社の給与テーブルを知っているなら、ぜひご自身の生涯賃金を計算してみてください。思っている以上のお金を稼げるかもしれませんよ。
投資・仕事の両輪がおすすめ
上記の2点をまとめると、次のようになります。
- 1億円くらいのお金を投資に使えるのであれば、分配金だけで生活できる
- サラリーマンの生涯賃金は2億円から3億円
既に1億円もの資産があって、すべてを投資に回せるならリタイアしても大丈夫と考えられます。しかし、1億円はサラリーマンが一生をかけて稼ぐお金の半分ほどに匹敵します。多くの人にとっては、果てしなく感じられる金額ではないでしょうか?
一方、サラリーマンとして仕事を頑張れば、生涯で2億円から3億円は稼ぐことができます。収入から生活費などを賄うことになりますが、一部分でも投資に回せれば不労所得を得ることはできます。少しでも不労所得を得られれば、生活は楽になるはずです。
まとめると、「投資で生計を立ててリタイアするのは現実的ではないが、仕事と投資の両輪で生活を楽にすることはできる」となります。実際、毎月1万円でも分配金が口座に振り込まれると、ときどき美味しいものを食べに行くなどのストレス解消にもお金を使えて気が楽になりますよ。
投資で生活するおすすめの方法
「投資だけで生活するのは現実的に難しい」と説明しましたが、それでも不労所得で生計を立てるのを諦められない人も多いと思います。実際、筆者もそのうちの一人です。
「今は働きながら投資をして、いつか分配金だけで生活したい!」と考えている方のために、筆者が投資で気をつけているポイントを3つ紹介します。1億円弱の資産でリタイアした先輩投資家たちも同じ方針で投資しており、要点をまとめると次のようになります。
- 高配当利回りの銘柄を狙う
- 投資先を分散させる
- 信託報酬が低いファンドを買う
方法1:高配当利回りの銘柄を狙う
利回りが高い銘柄を買うことで、少ない投資額でも収入を増やすことができます。
筆者の場合、株式は3%以上、投資信託は2%以上を目標にしています。ソーシャルレンディングで6%ほどの案件に投資することで、分配金の実質利回りは4%ほどになっています。
1年で4%の分配金を受け取れるので、1,000万円を投資したら次の式で分配金の合計額が計算できます。
分配金=1,000万円×4%=40万円
1年間で40万円の分配金をもらえるということは、1ヶ月では3万円ほど不労所得が入ってくる計算です。もちろん、月3万円だけで生活することはできないので仕事で稼ぐ必要はありますが、3万円は働かずにもらえると考えれば気が楽になります。
もっと利回りの高い銘柄もありますし、7%ほどの利回りになるように銘柄を選ぶことはできます。ですが、次に挙げる「投資先を分散させる」という観点から、利回りが高いハイリスクな銘柄だけに集中投資しないようにしています。
方法2:投資先を分散させる
投資先が分散していると、リスクを下げて運用することができます。理由は、1種類の株式暴落などの影響が薄まるからです。
もし全財産で一つの会社の株式を買っていた場合、その会社が倒産してお金が戻って来なかったら全財産を失うことになってしまいます。投資先をいくつかに分散することで、「守りながら増やす」運用ができるのです。
また、リーマンショックのような大暴落が今後も起こるかもしれないので、投資だけでなく現金にも資産を分散させておいた方が良いです。
市場全体が大暴落するようなことがあれば、分散投資にしろ集中投資にしろ、大損は避けられません。そのような状況で、定期預金などで変動しない現金を持っていると心強いですよ。
方法3:信託報酬が低いファンドを買う
特に投資信託への投資で生計を立てたい場合、信託報酬ができるだけ低い商品を選びましょう。信託報酬とは運用会社に支払う手数料で、投資信託を持っている間はずっと支払い続けるコストです。信託報酬が高いと投資家の利益が少なくなりますが、信託報酬が低ければ投資家の利益も多くなります。
投資信託を持っている間、口座からお金が引き落とされることもないので、投資家には信託報酬を支払っている自覚が無いかもしれません。信託報酬は運用会社の方で勝手に差し引かれているので、投資家の目には見えないコストになっています。
意識しにくいコストですが、投資家の収益に確実に影響するので、できるだけ低コストで運用できる投資信託を選びましょう。
まとめ
投資の利回りについて詳しく解説してきました。みなさんに特に理解して欲しいのは、次の4点です。
- 利回りの意味や、表面利回り・実質利回りといった用語の違い
- 現実的な投資の利回り
- 投資と仕事を両立するのがおすすめ
- 投資で生計を立てたいなら、高利回り、分散投資、低コストを意識する
特に、投資の種類別の平均的な利回りは頭に入れておくか、このページをブックマークするなどして参照できるようにしてください。
平均的な利回りを下回る商品に魅力がないことはもちろんですが、大きく上回る商品にはリターンとリスクも付きまといます。良い投資商品を選ぶときの参考にしてくださいね。
とにかく利回りを重視したい、リスクも減らしたいという方は下記の記事もご覧ください。
3年間の金融機関への勤務を通じて投資を学ぶ。1ヶ月で20万円を副業デイトレードで稼いだものの、放っておける長期投資にシフト。20代だが600万円以上を株式、投資信託、ETFで運用し、高配当銘柄で毎月万単位の不労所得を獲得している。iDeCo、NISAも最大限活用中。