「退職金がない」場合に対策は必要?老後資金確保の方法とは

人生100年時代と言われる昨今、「退職金を受け取ることができなかったら、老後をどう過ごしていけば良いのだろう?」そう悩まれている方は少なくないものです。

退職金制度のない企業に勤めている方が、定年退職後に得られる収入は公的年金のみです。とはいえ、公的年金のみで満足のいく老後を送れるのでしょうか?やはり、それなりの対策や資金確保は必要です。

 

今回は、退職金制度がない方に向けて、老後資金対策は必要なのか、対策として効率的な資産運用方法は何かについてお伝えします。

退職金がないなら、早めに対策をしておくことで安心して老後を迎えられるでしょう。本記事でお伝えすることをぜひ参考にしてください。

退職金制度を設けていない企業は約14%

退職金の制度

日本国内で退職金制度を設けていない企業は約14%です。厚生労働省の資料(退職手当制度のある企業の割合)によれば、約86%の企業で退職金制度を設けているため、退職金制度があるほうが一般的だと考えられるでしょう。

とはいえ、退職金制度は法律上で定められた制度ではないため、設ける否かは会社側が自由に決定できます。

 

ただ、日本国内の企業では退職後の資金確保の観点から退職金を支給する企業が大半を占めます。退職金がないこと自体は何ら違法性がないとはいえ、将来的なことを考えれば不安を感じてしまう方も少なくないでしょう。

人生100年時代と言われる昨今、退職金がない以上は自分で老後資金を確保していかなければなりません。退職金がないなら、早い段階から準備をしておくなど自助努力が必要になるでしょう。

退職金がないなら対策が必要

退職金がない場合の対策

退職金制度がない企業に勤めていると、退職後の生活資金が不足するおそれがあります。退職後は現役を引退して余生をゆっくり過ごしたいと考えている方は、ある程度の資金が必要です。

中には、退職後の公的年金をあてにされている方もいますが、公的年金のみで平均的な生活を送っていくことは難しいでしょう。ある程度の資産を持っている方であれば問題ありませんが、資産を有していないほとんどの方は、老後の経済的な面で相当な苦労をする可能性が高いです。

次に、退職後は公的年金のみで生活することが難しいと言われる理由と、退職金がないなら、老後資金としてどのくらいの準備が必要なのかについてお伝えします。

退職後に公的年金のみで生活することは厳しい

日本国で定められている公的年金には、次の2つがあります。

  • 国民年金保険
  • 厚生年金保険

日本国民は、20歳に達した時点から国民年金保険への加入が義務付けられています。これを国民皆年金と言いますが、国民年金保険のみでは老後の生活は送れません。満額で受け取れたとしてもわずか「65,075円」だからです。

 

仮に持ち家を持っていて老後は賃料支払い負担がないとしても、修繕費や医療費、通信費や基本生活費を考慮すれば、65,000円の支給額では厳しい生活を強いられるでしょう。

また、70歳まで繰り下げ受給したとしても、受け取れる金額は毎月「92,406円」です。かろうじて生活ができるかもしれませんが、なかなか厳しい生活を強いられてしまいます。

つまり、国民年金保険のみしか加入しておらず、退職金すらもない状況は老後資金が著しく不足することになります。

 

そして、年金保険の2階部分を担う厚生年金保険ですが、現在は商業・法人登記を行っている企業はすべて加入が義務付けられています。そのため、一般的な企業に勤めている方なら、厚生年金保険へも加入されているはずです。

厚生年金の平均支給額は14万円程度ですが、夫婦2人の老齢基礎年金を合わせることで合計「220,496円」程度の年金を受給できます。ここからさらに雑所得として所得税・住民税を引かれることを考えれば、実際に使えるお金は20万円前後になる恐れもあります。

 

ほとんどの方が、現役時代よりも収入は減ってしまっていることでしょう。このような状況下で、「満足した老後を送れるのか?」と問われて「はい」と答えられる方は少ないです。

つまり、公的年金のみで今と同じ生活水準を保つのは厳しいのが現実です。退職金等まとまった資金確保が難しいなら、何らかの対策が必要でしょう。

参照元:日本年金機構|令和3年4月分からの年金額等について

1,000万円〜2,000万円程度の費用準備が必須

公的年金にプラスして、1,000万円〜2,000万円ほどの資金があれば、ある程度老後も安心できるでしょう。退職金の平均支給額が1,000万円〜2,000万円(中小企業か大企業かでも異なる)であるため、最低限退職金と同程度の対策になります。

では、なぜ1,000万円〜2,000万円程度の資金準備が必要なのでしょうか?2019年に話題になった「老後2,000万円不足問題」で公表された収入・支出をもとに詳しくお伝えします。

老後の平均支出

夫婦2人世帯で老後に一般的な生活を送ろうとした場合、平均支出は263,718円と計算されます。もちろん、各世帯の状況等によって支出は異なりますが、一般的な参考値としてこの金額を参考にしてください。

老後の平均支出
項目支出金額
食費64,444円
居住費13,656円
光熱費・水道費19,267円
家具・家事用品9,405円
被服及び履物6,497円
保険料・医療費15,512円
交通費・通信費27,576円
教養・娯楽25,093円
その他の消費支出54,028円
非消費支出28,240円
合計263,718円

参照元:厚生労働省(P24)

老後の平均収入

老後準備を特にしてこなかった方が老後に得られる収入は、公的年金のみです。公的年金は世帯構成によっても異なりますが、夫婦2人で夫のみ厚生年金に加入していた場合は220,496円です。

夫が自営業で夫婦2人とも国民年金保険のみの加入だった場合は、さらに収入が減ってしまう恐れがあります。反対に、夫婦共働きで2人が厚生年金に加入していた場合の年金受給額は、もっと多くなるでしょう。

ここでは、あくまでも夫婦2人世帯で夫のみが厚生年金に加入していたケース「220,496円」でお伝えします。

収入・支出の結果

老後の一般的な支出は263,718円であるのに対して、収入は220,496円であるため、毎月43,222円の赤字(=220,496円-263,718円)を発生させてしまうことになります。

そして、日本人の平均寿命は男性が81歳で、女性が87歳です。長寿国である日本では毎年のように平均寿命が延び続けているため、仮に男性も女性も87歳まで生きたとしましょう。

65歳で定年退職し、すぐに公的年金の受給を開始した際には、22年間公的年金のみで生活を送ることになります。しかし、毎月43,000円強の赤字が発生しているわけですから、1年間で516,000円不足します。22年間だと、約1,135万円不足する計算です。

 

ただ、これは再雇用等を利用して年金受給開始年齢まで働いた場合であって、仮に60歳で退職したとすれば、無収入期間(5年間)の生活費を確保しなければいけません。

もしくは、繰り上げ受給をして60歳から年金を受給しようとすれば、30%減額されてしまうため、年金の支給額は約155,438円のみです。毎月11万円弱のマイナスになるため、仮に87歳まで生きた場合には、3,543万円も不足してしまう計算(※)になります。


※計算式の解説

年金は1ヶ月単位(最大で5年間・60ヶ月)で繰り上げ受給が可能ですが、支給額が1ヶ月あたり0.5%(最大30%)引かれます(令和4年4月から0.4%、最大で24%に変更)。

  • 減額=220,496円(平均的な年金支給額)×30%=66,148円
  • 5年間繰り上げ受給した場合の年金支給額=220,496円(平均的な年金支給額)-66,148円=154,348円
  • 1ヶ月あたりの不足額=263,718円(老後の平均支出)-154,348円(受給額)=109,370円
  • 1年間の不足額=109,370円×12ヶ月=1,312,440円
  • 27年間の不足額=1,312,440円×27年=35,435,880円

繰り上げ受給せずに年金受給を開始したとしても、一生のうちに1,000万円程度は不足します。万が一、退職金や対策もなしに60歳で定年退職後、年金を受給開始してしまえば3,500万円超の不足金が発生する恐れもあるでしょう。

 

では、「65歳から年金受給を開始する予定だから1,000万円用意できれば良いのか?」と言えば、そうとも言い切れません。たとえば、自宅の修繕費や車の購入費、旅行代金やご家族の結婚式費用支援等、基本生活費以外の部分でも費用が発生します。

そのため、退職金がない方は最低でも1,000万円、もっと言えば2,000万円程度の対策をしておいたほうが安心できるでしょう。

退職金がない企業に勤めている方が検討すべき対策

老後の資産運用

退職金がない方も、安心・安定した老後を送るためには、しっかりとした対策が必要です。対策はすぐにでも始められるので安心してください。

ただ、単純にお金を貯められれば良いのではなく、資産運用をして資産を確実に増やしていくことで、効率良く対策ができるようになるでしょう。

ここでは、次の4つの資産運用方法・退職金代わりの対策方法についてお伝えします。

  • 貯蓄・債券
  • iDeCo
  • 積立型保険への加入
  • ヘッジファンドによる資産運用

退職金がない方は特に、資産を確保するための対策が必要です。それぞれの特徴やメリット・デメリットについてもお伝えします。これから検討する対策への参考にしてください。

貯蓄・債券で資産保有

できるだけリスクを取らずに資産を運用したい方は、貯蓄や債券による運用がおすすめです。貯蓄であればほぼ100%の確率で資産を守ってくれます。債券に関しても、国債を保有しておけばほぼ100%元金を保ったままで運用が可能です。

ただし、収益は著しく低いです。預貯金等の利率はわずか0.03%程度。国債の利率も0.05%と非常に低く、資産運用としてはあまりおすすめできません。

 

仮に100万円の資産を預け入れていたとしても、1年間で得られる金額は300円〜500円程度です。30年間預け入れたとしても9,000円〜15,000円程度にしかなりません。老後の長い人生を見れば不足分を補充できるほどの金額には到底届かないでしょう。

とはいえ、安全性は抜群です。預け入れた資産がなくなったり減少したりする可能性は極めて低いです。ローリターン・ローリスク商品ではありますが、ポートフォリオの一つとして検討してみる価値はなきにしもあらずです。

ただ、現金で資産を持つならば流動性を確保したほうが良いです。定期預金等のほうが利率は高いですが、いざお金が必要になったときに引き出せないなどのデメリットがあります。バランス良く資産を保有するように意識してください。

参照:財務省|個人向け国債
参照:日本銀行|平均利率等について

iDeCo(個人型確定拠出年金)等私的年金への加入

退職金がなく、老後が不安な方はiDeCoがおすすめです。iDeCoとは、個人が加入できる年金制度(個人型拠出年金)のことです。任意で加入可能ですが、運営元は国民年金保険等も運営している国民年金基金連合会です。

iDeCoに加入しておくことで、原則60歳から年金を受け取ることができます。受給金額は掛け金や加入年数によっても異なりますが、公的年金で不足する分くらいの補填は可能でしょう。また、年金方式で受け取りが可能であるため、加入者が生きている間はずっと年金の受給が可能です。

iDeCoの特徴は以下の通りです。

  • 勤務形態によって拠出可能金額が異なる
  • 原則60歳まで加入が可能(2022年5月からは65歳に変更)
  • 原則途中解約ができない(途中の引き出しも不可)
  • 税制面での優遇措置を受けられる(賭け金の所得控除・運用益も非課税・受け取り時は控除あり)
  • 年金ではなく一時金としての受け取りも可能(退職金代わりになる)

老後の生活費を心配している方は、iDeCoに拠出して60歳から年金を受給できるように対策しておくと良いでしょう。夫婦の場合は、夫・妻それぞれで掛け金を拠出できますし、一時金としての受け取りも可能です。

運用実績や掛け金次第では、退職金と遜色ない程度の資金を確保できる可能性もあるでしょう。リスクをあまり取りたくないけど、確実に資産運用を行いたい方にはおすすめです。

積立型保険への加入

退職金制度がない方も、生命保険や医療保険、がん保険等への加入はしていることでしょう。これらは、体の不調があったときなどに給付金が下りる保険ですが、貯蓄を目的とした商品が販売されていることをご存知でしょうか?

いわゆる「貯蓄型生命保険」と呼ばれるものですが、変額保険や外貨建て保険等あらゆる種類の商品が販売されています。また、最近では医療保険やがん保険等でも貯蓄型の商品が増えてきているため、リスクをカバーしながらも貯蓄をできることが特徴です。

 

保障を目的にするのか、貯蓄を目的にするのかによっておすすめの保険商品は異なりますが、保険で資産運用というのも一つの手段になり得るでしょう。万が一のことがあれば保障は受けられますし、万が一のことがなくてもお金を受け取れる商品だからです。

ただし、貯蓄型の保険はすべて掛け金に対して保障が薄い点がデメリットです。あくまでも資産運用をメインとしつつも、少しの保障が欲しい程度でお考えの方は検討してみてください。

ヘッジファンドによる資産運用

ある程度の資金があるなら、ヘッジファンドを利用して効率的に資産運用することをおすすめです。ヘッジファンドの最小投資額は1,000万円ほどと高額に設定しているところも多いですが、個人向けの場合は100万円程度からの投資も可能です。

ヘッジファンドの「ヘッジ」は「避ける」を意味しており、ヘッジファンドとは市場が上がっても下がっても収益を上げられるようにするファンドのことを言います。比較的自由な運用が可能であるため、積極的な運用をしつつもリスクを避けて確実な収益へつなげています。

 

ヘッジファンドは投資信託としばしば混同されますが、投資対象や収益目標に大きな違いがあります。確実な収益を目指すならヘッジファンドへの投資がおすすめです。

ヘッジファンドによって投資手法等は異なりますが、目指すところは「絶対収益」です。多少の資金は必要ですが、個人でもヘッジファンドへの投資は可能です。すべての資産を預け入れるというよりは、ポートフォリオの一部として保有すると良いでしょう。

利回りが高い分、現金として出し入れもしにくいです。そのため、無駄な出費を防ぎやすく老後資金を作るうえでは有利に働くでしょう。

まとめ

退職金がない方に向けた対策を詳しくお伝えしました。

人生100年時代と言われる昨今、退職金制度がないことに不安を抱えている方も多いでしょう。定年退職後、数十年と公的年金のみで生活を送るのは困難です。最低限の資産確保は必要ですが、退職金がないなら自分自身での対策が必要でしょう。

 

今回は、退職金代わりにもなり得る資産運用方法等についてお伝えしました。ローリスク・ローリターン商品からややリスクはあるものの、確実な収益を目指す金融商品まで紹介しました。

ご自身のライフスタイルや老後環境イメージに従いながら、対策として何が有効なのかについて検討してみてはいかがでしょうか?