「投資信託での資産運用にはどのような失敗リスクがあるの?」「投資信託で大損してしまった。どうやって取り返せば良いの?」投資信託を購入する投資家が増加している中、そのように悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
投資信託は、今や多くの著名投資家や投資の評論家が推奨している資産の一つになっています。書店にも多くの投資信託の指南書が並び、多くの方が投資信託での投資を始めていることでしょう。
しかし、投資に失敗はつきものです。専門家がおすすめしているとはいえ、投資信託もやり方を間違えれば、失敗してしまいます。すでに失敗を経験している方も、いるかもしれませんね。
そこで本記事では、伝聞や筆者自身が経験した投資信託の失敗談をお伝えします。その上で、失敗をしないための対策や投資信託で失敗したくない方におすすめの投資手法やファンドを解説します。
【体験談】投資信託での失敗談
投資信託における失敗とは、投資を続けられなくなることです。大損して、投資資金がなくなったり投資自体が怖くなったりして続けられなくなると、その投資は失敗したと言えます。
なぜなら、続けられないと、利益が得られないからです。ここでは筆者の体験や伝聞から、投資信託でよくある失敗談を4つ紹介します。
- 流行りのテーマ投信で大損
- ETFで短期トレード
- コストがかかって利益が伸びない
- 急な相場変動で全ての投信を手放す
失敗談①:流行りのテーマ投信で大損
筆者が初めて、投資信託の購入を検討していたころ、銀行の窓口ですすめられた投資信託を、そのまま購入しました。その投資信託は、「AI関連株」と「環境ビジネス関連株」に集中投資するものでした。
いわゆる、テーマ投信です。今でも、そういった投資信託はたくさんあるでしょう。
購入して、1週間も経たないうちに基準価格が上がっていき、投資した金額分の利益が出ました。その後、筆者はその利益をさらに増やすために追加購入をしたのです。
しかし、しばらくして基準価格が急落し始めました。結局のところ、購入から3ヶ月で約25パーセントの損を出して全て手放すことになります。
さらに手数料を気にしていなかったため、手数料分の損失もあることを後から知りました。その後、投資信託の勉強を続けていく中で、テーマ投信について次のようなことを学びました。
- テーマ投信は流行で値上がりしやすいがその分リスクも高い
- 運用実績に乏しく信用が少ない
- 手数料が割高
テーマ投信が全て悪いわけではありません。ただ、知っておかなければならない注意点が多いのです。
失敗談②:ETFで短期トレード
ETFは上場投資信託のことで、取引所が開いている時間なら株式のようにいつでも売買をすることができます。筆者はETFで短期トレードをしてまったく利益を出すことができないという経験をしたことがあります。
ETFを購入したのは、もともと長期保有での利益が目的でした。しかし、実際にやっていたのは値段が下がったら売って値段が上がりそうなファンドを購入するという短期トレードだったのです。
日々値動きするETFの相場を見て、常に大きく下落することがないかと、不安になっていたのでしょう。結局、ETFを始めて一度も利益を出すことなく、投資資金がマイナス10パーセントになったところで、ETFでの取引をやめました。
不安な気持ちになっていた一番の理由は、自分にとって多すぎる資金で投資していたからです。つまり、自分のリスク許容度を把握せず、短期間で多くの利益を出すためにただ闇雲にトレードしていたのです。
失敗談③:コストがかかって利益が伸びない
次に、筆者の友人の失敗談を紹介しましょう。筆者の友人は、銀行窓口からアクティブファンドの投資信託を購入していました。
アクティブファンドとは、プロの運用担当者が投資先を決めて株価指数などのベンチマークを上回る運用成績を目指すファンドのことです。
その友人によると、投資先のアクティブファンドの成績はまずまずで、利益が出ていたそうです。しかし、利益を確定するために売ると、利益はほとんどありませんでした。
理由は、手数料によって利益分が差し引かれていたからです。投資信託に投資すると、次の3つの手数料がかかります。
- 購入手数料
- 信託報酬
- 信託財産留保額
友人は、手数料の存在はなんとなく知っていたし、銀行から案内もされていました。しかし、どれくらいの手数料がかかるかを確認しておらず、結局利益を享受できなかったのです。
失敗談④:急な相場変動で全ての投信を手放す
最後に、急な相場の下落に耐えられず、全ての投資信託を売ってしまった友人の失敗談を紹介しましょう。筆者の友人は、1年ほど投資信託で積立投資をしており、順調に資産が増えていました。
しかし、新型コロナウイルスの影響で基準価格が急降下し、資産はマイナス20パーセント以上になりました。その下落に耐えられなくなった友人はすべての投資信託を売ってしまい、その後投資信託は購入していません。
コロナショックの影響は、確かに強かったものの、株価は回復しています。もし、そのときも積立を続けていれば、コロナショック前よりも多くの利益が出ていたと考えられます。
筆者の友人は、損した金額と将来的に増やせなかった利益の両方を失ってしまったのです。このように、ほとんどの人が投資信託をやめてしまう原因は、相場の急落に耐えられないことが多いです。
投資信託で失敗する人に共通する特徴
紹介してきた失敗談から、どのような人が投資信託で失敗しやすいのかが見えてくることでしょう。ここでは、投資信託で失敗する人の特徴を7つに分けて紹介します。
- 短期間で稼ごうとする
- コストを把握していない
- 投資信託の中身を知らない
- 集中投資する
- 自分のリスク許容度を知らない
- 分配金を重視している
- 毎日値動きを気にしている
特徴①:短期間で稼ごうとする
投資信託で短期間のうちに稼ごうとする人は、失敗する可能性が非常に高いです。なぜなら、投資信託が長期間で利益を出すことに向いている金融商品だからです。
逆に、投資信託は短期では儲けにくいと言えるでしょう。投資信託は、複数の銘柄や資産に投資しているため、一つの投資信託を購入するのでも分散投資が実現しています。
例えば、日経平均の値動きに連動する投資信託を購入したなら、日経平均の225社全てに投資しているようなものです。そのため、利益の上昇は、一つの銘柄に投資するのに比べて緩やかになります。
また、株式市場は長期間かけて成長してきた歴史があります。もちろん、長期間保有したからといって必ずしも利益が出るわけではありません。
しかし、短期で売買するよりも、長期間保有していた方が結果として多くの利益を得られる可能性が高いでしょう。
特徴②:コストを把握していない
投資するにあたって、コストを把握しておくことと、低コストの商品に投資することはとても重要です。なぜなら、コストが高いと効率良く利益を得られないからです。
先ほど紹介したように、投資信託には3種類の手数料があります。コストを把握していない人は、知らず知らずのうちに多くのお金を失っているでしょう。
投資信託は商品によって、手数料の多さや種類が異なります。利用している証券会社によっても、手数料に差があります。商品ごとに、必ず手数料を把握しましょう。
特徴③:投資信託の中身を知らない
投資信託を購入している投資家に多いのが、投資信託の中身を把握していない人です。投資信託は、複数の銘柄や資産を組み合わせた金融商品です。
例えば、日経平均に連動する投資信託を購入したとしても、その中には決められた比率で複数の銘柄が組入れられています。例えば、ファーストリテイリング10パーセント、ソフトバンクグループ5パーセントといった具合です。
なぜ、投資信託の中身を知っておく必要があるかというと、リスクへの対応をするためです。投資している対象ごとに、リスクの高低が変わります。
例えば、一般的に日本の大手企業よりも新興国のベンチャー企業の方が損するリスクが高いでしょう。投資信託の中身を知らないということは、そのファンドのリスクがわからないということです。
特徴④:集中投資する
投資信託は、一つの商品ですでに分散投資が実現しています。とはいえ、一つの商品に頼ってしまうと急な価格の下落に耐えられなくリスクが高いでしょう。
以前、筆者の投資信託も短期間で0パーセントから20パーセントの下落したことがありました。仮に1,000万円を投資していたとすると、損失額は200万円です。
最近はITバブルの崩壊や、リーマンショック、東日本大震災、コロナショックなど、大きな下落が起きる間隔が短くなっていると指摘されています。投資信託で資産運用する際は、自分のリスク許容度に応じて複数のファンドに投資することをおすすめします。
特徴⑤:自分のリスク許容度を知らない
投資を始める前に、自分のリスク許容度を把握しておかなければなりません。把握していないと、損をしたときに心が不安定になって、さらに損をしてしまう恐れがあるからです。
リスク許容度とは、自分がどれだけ損をして良いかという目安のことです。
例えば、筆者は投資資金の10パーセントをリスク許容度にしています。損失がマイナス10パーセントにならないように分散し、10パーセント未満の損失は想定内で投資信託を購入するようにしています。
一方で、リスク許容度を把握しないと損失が出たことに焦ってしまい、その損を取り返そうと非合理な売買を続けてしまう恐れがあります。人の心は利益よりも、損失に敏感に反応するようにできているのです。
特徴⑥:分配金を重視している
投資信託の中でも、定期的に分配金をもらえるものが人気です。しかし、分配金を受け取れる投資信託には注意が必要です。
なぜなら、分配金をもらうことで、結果として損をしてしまう恐れがあるからです。
投資家に分配金を定期的に支払うファンドの運用者からすれば、分配金を支払うために少々無茶な運用をしてしまうかもしれません。また、分配金はファンドの純資産から支払われるため、分配金を出すと基準価格が下落してしまうのです。
購入時より基準価格が低いときに売却してしまうと、損失が出ています。また、分配金にも課税されます。そのため、分配金が必ずしも得する仕組みではないことを理解しておきましょう。
特徴⑦:毎日値動きを気にしている
毎日、投資信託の基準価格やETFの値動きを気にしてしまう人は失敗する傾向にあります。値動きに心が乱されて、短期的に非合理な投資判断をしてしまう恐れが高まるからです。
投資信託での資産運用は、長期が前提です。しかし、値動きを常に気にしていると、損を取り返そうとしたり、さらに利益を得しようとしたりして冷静な判断ができなってしまうのです。
例えば、短期的な値下がりに動揺して手放したり、急な値上がりで買い増しして、結局下落して大損したりします。投資信託の成功は、いかに感情を排除して機械的に購入していくかが重要です。
投資信託で失敗しない人がやっている対策
投資信託で失敗してしまう人の特徴は理解してもらえたでしょう。それでは、失敗しない人は、どのような対策をしているのでしょうか?
投資信託で失敗せず、運用成果が出ている人は、次のようなことをしています。
- コストが低いファンドを選ぶ
- 長期・積立・分散投資する
- 自分のリスク許容度に応じて投資する
- 目論見書を必ず確認する
- 営業マンの話に乗らない
対策①:コストが低いファンドを選ぶ
投資信託で失敗しない人は、必ずコストの低いファンドを選んでいます。投資信託には、「購入手数料」や「信託報酬」、「信託財産留保額」があることを伝えました。
「購入手数料」は買うときの手数料、「信託報酬」は保有している間の手数料で、毎日かかります。そして、「信託財産留保額」は、売るときの手数料となります。
この中で、「購入手数料」と「信託財産留保額」が、かからない投資信託があります。「購入手数料」のない投資信託のことを、ノーロードと言います。
投資信託を探しているときに、ノーロードと記載されている商品があるはずです。
また「信託報酬」は毎日かかるものなので、できるだけ安いものを選ばなければなりません。指数に連動した、運用成果を目指すインデックスファンドが、ノーロードで「信託報酬」が低いです。
低いものには、純資産総額に対して0.1パーセント程度のものがあります。
一方、アクティブファンドやテーマ投信などはノーロードのものは少なく、「信託報酬」は割高です。2パーセントから3パーセントになるものもあるでしょう。
また、銀行や店舗をかまえる証券会社よりも、ネット証券の方が手数料が低いです。
対策②:長期・積立・分散投資する
投資信託で、資産運用するなら「長期・積立・分散」を意識しましょう。「長期」とは、ほぼ永遠のことです。
確かに、保有している投資信託よりも条件の良いものがあるなら、売って買い換えても良いでしょう。または、どうしても現金が必要なときも売ってしまって大丈夫です。
しかし、そのような状態でなければ、できるだけ保有し続けることをおすすめします。
また、投資信託は定期的に一定額で決まった投資信託を機械的に「積立」をしていった方が良いでしょう。なぜかというと、感情を排除するためです。
売買に感情が入ると、非合理な投資になってしまう恐れが高まるからです。
「分散」は、損するリスクを抑えるために行います。ただ、分散しすぎると利益が得られなくなるため、自分のリスク許容度に合わせてどれくらい分散するか決めましょう。
対策③:自分のリスク許容度に応じて投資する
リスク許容度とは、どれくらいの損失に耐えられるかということです。投資家の年齢や家族構成、年収、投資資金額などによって異なるため、自分で決めるしかありません。
どうしても自分のリスク許容度がわからない方は、なくなっても困らない額をリスク許容度に設定しましょう。
筆者にとって、リスク許容度は保有資産の20パーセントです。つまり、資産が200万円あれば、40万円を投資資金にして、その全てを失っても良いということです。
仮に40万円を失っても160万円が残るため、慌てることはありません。もちろん、失うことは嫌ですが、投資にリスクはつきものです。
対策④:目論見書を必ず確認する
目論見書とは、投資信託の説明書のようなものです。確認することで、購入した投資信託にどのような銘柄がどれくらい含まれているのか、どのようなリスクがあるのかがわかります。
また、コストに関する記載もあります。投資している商品の情報を見ることで、リスクやコストに対応できるでしょう。他の商品との比較にも役立ちます。
対策⑤:営業マンの話に乗らない
投資信託で失敗しない人は、営業マンの話に乗りません。なぜなら、営業マンの持ってくる話は会社が儲かるようになっているからです。
投資家にとって割高なコストがかかったり、投資家の収益の一部を金融機関に支払うようになっています。儲かる話というのは、自分のもとへは来ません。
なぜなら儲かる話を持っている人は、独り占めしようとして他の人には話さないからです。
投資信託で失敗したくない人におすすめの投資手法
投資信託で失敗したくない人は、次の投資手法がおすすめです。もちろん、必ず成功するわけではありません。ただ、リスクが低く失敗しにくいと言うことができます。
- インデックス投資
- 債券投資
手法①:インデックス投資
インデックス投資とは、数ある投資信託の中でインデックスファンドに長期積み立てしていく投資手法のことです。インデックスファンドとは、日経平均などの株価指数に連動する運用成績を目指す投資信託のことです。
つまり、市場全体に投資する手法と言えるでしょう。例えば、日経平均に連動するインデックスファンドに投資したら、日経平均の価格が上がれば儲けて、下がれば損します。
インデックス投資のメリットは、次の2点です。
長期的に資産が増える見込みがある
運用コストが低い
インデックス投資は市場全体に投資する手法で、市場は長い時間をかけて成長してきた歴史があります。成長すれば、富の総量が増えるため、投資した全ての人が利益を享受できます、
ただし、必ず儲かるわけではありません。市場が後退すれば、全員が損をするのです。
また、インデックスファンドはコストが低いです。特に、「信託報酬」は0.1パーセント未満のものがあり、各運用会社がコストの値下げ競争をしています。
手法②:債券投資
債券投資は、リスクの低い投資手法として知られています。中でも、国債への投資は元本保証があるため、損するリスクがあらゆる金融商品の中でも極めて低いです。
ただし、リスクが低いぶん大きな利回りも期待できません。
投資信託にも、債券に投資できるものがたくさんあります。米国債や先進国債など、比較的安全で収益が期待できるものもあるでしょう。
投資信託で失敗したくない人におすすめのインデックスファンド
投資信託で失敗したくない人向けに、おすすめのインデックスファンドを紹介しましょう。ここで、紹介するのは次の3種類です。
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド
- eMAXIS Slim米国株式 S&P500
- バンガード・トータル・ストック・マーケットETF
おすすめ①:楽天・全米株式インデックス・ファンド
「楽天・全米株式インデックスファンド」は、アメリカの株式市場全体に投資できるインデックスファンドです。アメリカは先進国として、継続的な成長を続けています。
アメリカの株式市場全体に投資するということは、米国産業の成長につれて資産が増えていくと言えるでしょう。
もちろん、必ず儲かるわけはありませんし、成長はいつまで続くかわかりません。しかし、現在の投資先として、安定して収益が見込めるファンドの一つだと言えます。
おすすめ②:eMAXIS Slim米国株式 S&P500
「eMAXIS Slim米国株式 S&P500」は、アメリカのS&P500指数に連動する運用成果を目指すインデックスファンドです。S&P500は、アメリカの優良企業500社の業績に応じて変動するため、アメリカの市場全体に投資できる商品です。
最大の特徴は、コストが低いことにあります。「信託報酬」は、0.1パーセント未満です。「eMAXIS Slim」は、業界最安のコストを目指していることを宣言しています。
おすすめ③:バンガード・トータル・ストック・マーケットETF
「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF」は、「楽天・全米株式インデックスファンド」のETF版です。ETFなので、取引所が開いている間はいつでも市場価格で売買できます。
ETFは通常の投資信託よりも、コストが低いです。ただし、購入するには数万円からのまとまった資金が必要なので注意してください。
まとめ
投資信託は分散が実現しているため、比較的保全性の高い投資対象です。しかし、やり方を間違えるとまったく資産が増えないばかりか、損をしてしまうこともあるでしょう。
筆者も、そのことを身をもって体験しました。
それでも、コストや自分のリスク許容度を把握して、長期・積立・分散で投資すると失敗はしなくなりました。ぜひ、本記事を参考に投資信託での資産運用を楽しんでみてください。
指標と連動するインデックスファンドではなく、絶対収益を求めたいという方にはヘッジファンドという選択肢もあります。まとまった投資資金が必要となるため、ハードルは高めですが、国内ファンドであれば1000万程度で投資することができます。
よりよいパフォーマンスを求める方はぜひ確認してみてください。