投資法を調べていると、「ヘッジファンド」ということばを目にする機会があります。高利回りを狙える投資法であるため、多くの投資家にとって憧れの対象です。
しかし、必要な投資額が大きくて手を出せない人が多いのです。
この記事では、世界の富裕層がこぞって投資する「ヘッジファンド」について、特徴やメリット・デメリットについてわかりやすく簡単に解説していきます。
ヘッジファンドとは
投資会社が運用する商品の一つがヘッジファンドです。市場が上がっているときも下がっているときも収益を上げ、投資家に大きな利益を還元することが特徴です。
「ヘッジ」とは「避ける」という意味で、相場の乱高下による利益の増減を避ける投資法を採用しているのがヘッジファンドです。投資信託のように運用のプロに投資を任せられるのですが、投資信託にはかなわない利益を上げることができます。
ヘッジファンドの特徴
ヘッジファンドを理解するためには、次の3つのポイントが重要です。投資を始める前に、理解しておきましょう。
- 投資対象が限定されている
- 運用手法が多様
- 運用1年目は出資金の返金ができない
特徴1:投資対象が限定されている
ヘッジファンドに投資できるのは、数百から数千万円といったまとまった金額を投資できる人だけです。その代わり、10パーセント以上の利回りを得られる可能性がある投資法ですので、ヘッジファンド は富裕層に人気の投資です。
1,000万円を10パーセントの利回りで運用できれば、年間100万円の利益を得ることができます。なぜこのような高利回りを実現できるかというと、投資信託などでは投資できない多様な商品を活用しているからです。
特徴2:運用手法が多様
ヘッジファンドが運用するのは、株式や債券のように一般の人でも聞いたことがある商品だけではありません。先物取引やデリバティブ、オプション取引などの金融商品を使い、収益を追求しています。
ヘッジファンド は市場の状態がどうであっても収益を追求するので、「絶対収益」が目標となっています。用語の意味については、反対の「相対収益」と合わせて後で解説します。
特徴3:運用1年目は出資金の返金ができない
ヘッジファンドは一般人にはなじみのない投資商品も活用しており、計画どおりの運用ができないと損をすることがあります。そのため、投資家からのお金の引き出し要請に応えられなくなってしまうのです。
特に、運用開始1年目は引き出しできないことが多いです。ヘッジファンドに投資する場合は、数年間は使わないお金にした方が良いでしょう。
ヘッジファンドの仕組み
ヘッジファンドには、大きな利益を出すための仕組みが2つあります。その「成功報酬」と「レバレッジ」についてそれぞれ解説していきましょう。
成功報酬
成功報酬とは、目標の収益を達成できた場合にファンドマネジャーに支払われる報酬のことです。一般的には、利益の10パーセントから20パーセントであることが多いです。
投資では成果を出せば出すほど、ファンドマネジャーは報酬が増えます。真剣に運用するインセンティブがあるため、ヘッジファンドは大きな利益を上げられるのです。
レバレッジ
もう一つ、ヘッジファンドに特徴的なのがレバレッジです。レバレッジとは、持っているお金を証拠金としてお金を借り、借りたお金も合わせて投資をすることです。
元々のお金よりも大きな資金で投資ができるので、利益が出れば多大なものとなります。ヘッジファンドが年利10パーセント以上の高利回りを達成できるのは、レバレッジをうまく活用していることも要因のひとつといえるでしょう。
ヘッジファンドと投資信託との違い
ヘッジファンドの特徴である「資産運用のプロに投資をお任せできる点」といえば、投資信託も同様です。この項目では、ヘッジファンドと投資信託の違いを次の2つの観点で解説していきます。
- 私募と公募
- 絶対収益と相対収益
違い1:私募と公募
ヘッジファンドは私募が多く、投資信託は公募が多いです。
ヘッジファンドの場合、紹介などを通じた私募の形式を取っていることが多いです。知る人ぞ知る優良案件といったイメージです。
一方で、投資信託は公募で広く大勢の人の申し込みを受け付けることができます。
違い2:絶対収益と相対収益
ヘッジファンドは絶対収益、投資信託は相対収益を目標に投資をしています。
相対収益は、ベンチマークに対して「相対的に利益が出れば良い」という考え方です。利益を上げられずマイナス3パーセントの成績だとしても、ベンチマークがマイナス5パーセントの場合は相対的には良い成績なので、相対収益の目標は達成されます。投資信託はこのような目標設定のことが多いです。
一方、絶対収益とは市場平均がどうであってもプラスの収益を生むことです。ヘッジファンドが環境に左右されず利益を出せるのは、絶対収益を目標にしているからです。
少額から始めたいなら投資信託
投資信託は、100円といった少額から始めることができます。投資を試してみたい人には投資信託がおすすめです。
公募形式で誰でも申し込むことができるのもメリットです。投資を簡単に始めたい人は、投資信託を試してみてはいかがでしょうか?
1,000万円以上を投資できるならヘッジファンド
一方、1,000万円以上の資金を投資できる場合はヘッジファンドがおすすめです。絶対収益の目標の下、高利回りを追求して更にお金を増やすことができるでしょう。
私募形式のヘッジファンドに投資している人はあまり多くありません。情報が少ないので、次の項目からはヘッジファンドのメリット・デメリットなどを解説していきます。
ヘッジファンドのメリット
どんなに少なくとも、1,000万円以上の投資ができる人に限られるなど、制限が多いヘッジファンド。しかし、世界の富裕層がこぞってヘッジファンドに投資するのはメリットが大きいからです。
この項目では、ヘッジファンドのメリットとして代表的な3つを紹介してきます。
- 利回りが非常に高い
- 「絶対収益」で利益を生むことができる
- 自動的に分散投資できる
メリット1:利回りが非常に高い
ヘッジファンドの最も大きな特徴は、利回りが高いことです。どんなヘッジファンドでも利回り10パーセント以上を狙っており、特に人気のファンドだと20パーセント以上の実績を出すこともあります。
株式投資などの一般的な投資の場合、利回りは高くても5パーセントほどです。ヘッジファンドは一般的な投資の2倍以上の利回りを狙えると言うことになります。
利回りが10パーセントと5パーセントの場合とでは、資産運用の成果に大きな違いが出ます。例えば、1,000万円を投資した場合、利回り10パーセントなら10年で2,593万円に成長します。わずか10年で2.5倍に資産を増やすことができます。
一方、利回り5パーセントの場合は10年で1,628万円に成長します。悪くない結果ですが、利回り10パーセントの場合は2,593万円なので、たった10年で1,000万円近くの差が生まれてしまうのです。
つまり、ヘッジファンドへの投資ができる条件を満たす人は、積極的にヘッジファンドに投資した方が良いと言えるでしょう。
ヘッジファンドの利回りが高いのは、絶対収益で利益を追及しているから。その強みについては、次の項目で解説していきます。
メリット2:「絶対収益」で利益を生むことができる
ヘッジファンドがなぜ高利回りの成果をあげられるかと言うと、「絶対収益」の理念の下で運用しているからです。
先ほどもお伝えしたように、絶対収益とは、相場が右肩上がりのときでも右肩下がりの時でも収益を上げる投資法です。株式のようななじみのある商品だけでなく、先物取引やオプションといった難しい商品を組み合わせることで、下落相場においても強い資産運用をすることができるのです。
少額でも始められる投資信託では「相対収益」です。右肩上がりの相場では儲けやすいのですが、右肩下がりの相場では連動して収益が下がることは否めません。
投資信託は投資できる商品に制限があるため、ヘッジファンドのように絶対収益を追求することができないのです。そのため、利回りもヘッジファンドにはかなわない状態になるのです。
メリット3:自動的に分散投資できる
ヘッジファンドの3つ目のメリットは、自動的に分散投資ができることです。資産運用のプロに投資をお任せするので、多様な商品に投資してくれます。
一般の人にもなじみのある商品から、専門家しか知らない商品まで様々な投資先で運用してくれるので、ヘッジファンドへの投資は分散投資となります。分散投資をすると、運用で失敗するリスクを下げられるメリットがあります。
もし、全財産で一つの企業の株式を買ったとすると、その企業が倒産して株価が下落した場合、財産を大きく失ってしまうことになります。このような事態を避けるために、投資先は複数に分けておく必要があります。これが分散投資です。
個人で分散投資をしようとすると、たくさんの商品や銘柄を分析しなければならずとても大変です。ですが、ヘッジファンドなら運用のプロに銘柄選びをお任せできるため、投資家は労力をかけずに分散投資ができるのです。
ヘッジファンドのデメリット
ヘッジファンドには大きなメリットがある一方で、デメリットもあります。この項目ではデメリットについて解説していきましょう。
- 最低投資額が高い
- 引き出しに制限がかかる
- 年収で審査される可能性がある
デメリット1:最低投資額が高い
ヘッジファンドは誰でも投資できるわけではなく、最低でも1,000万円以上の資金を投資できる人に限られる運用方法です。投資信託とは異なり、100円から始められるといった手軽さがないことは理解しておきましょう。
まとまった金額を預けるからこそ、高い利回りを実現できるのです。世界の富裕層たちは数億円単位でヘッジファンドを利用しており、富める人はどんどん富を拡大しています。
デメリット2:引き出しに制限がかかる
ヘッジファンドは最低投資額が高いことで有名ですが、実は投資をやめて自由にお金を引き出すことができないケースも多いです。ヘッジファンドが投資している商品の中には、中途解約すると大きな損になってしまう商品もあります。
もし投資家から引き出しを求められて商品を解約してしまうと、計画していた利益を得られなくなってしまうため、運用全体に支障が出ます。このような事態を防ぐためにも、投資家の引き出しには制限をかけていることが多いのです。
ヘッジファンドが自由な運用で収益を追求するために、解約には制限がかかることを覚えておきましょう。つまり、ヘッジファンド への投資には「すぐには必要にならない1,000万円以上のお金」が求められるため、お金にかなり余裕がある人向けの投資ということになります。
デメリット3:年収で審査される可能性がある
ヘッジファンドには多額の投資資金が必要なことに加え、年収による審査が行われることもあります。審査基準はヘッジファンド会社によってさまざまです。
少ない年収で生活している人は、「一生懸命貯めた1,000万円の貯金をヘッジファンドで運用して欲しい」と思っても審査に通らない可能性があります。先ほど解説したように、ヘッジファンドはお金の引き出しに制限がかかります。「数年間、引き出ししなくても生活していける投資家か?」といった観点で年収が審査されると考えましょう。
ヘッジファンドのリスク
ヘッジファンドは10パーセント以上の高利回りを追求できる魅力的な投資先です。ですが、リスクがないとは言い切れません。
資産運用の専門家が運用していることもあり、高利回りの割には低リスクですが、次のようなリスクがあることを理解して投資をしていきましょう。
- 元本割れ
- 破綻
- 流動性
- 運用手法が難しく分かりにくい
リスク1:元本割れ
ヘッジファンドのみならず、投資には元本割れのリスクがあります。100パーセント確実に成功する運用は存在しないため、運用に失敗してお金が減ってしまう可能性をなくすことはできません。
とはいえ、ヘッジファンドは資産運用のプロたちによる投資です。ファンドマネジャーには多額の成功報酬が与えられるため、運用を成功させるインセンティブが働く仕組みになっています。
適当な運用をしている会社はないので、個人投資家が自力で運用するよりもはるかに安全です。
リスク2:破綻
ヘッジファンドが運用に失敗すると、破綻に陥ってしまう可能性は否めません。この場合、預けた資金は大きく減って戻って来るか、最悪の場合は1円も戻って来ないことになります。
このようにお伝えすると、ヘッジファンドはとてもリスクが高いと感じられるかもしれません。ただ、実はどのような投資方法にも破綻リスクは存在します。
株式投資を例に取ると、投資先の企業が破綻すれば株価は大幅に下落し、株式がほとんど無価値になってしまうこともあります。ヘッジファンドには破綻リスクもありますが、投資全般において一般的なリスクだと認識しましょう。
リスク3:流動性
「流動性」とは、投資家がお金を引き出したいと思ったときに、引き出しやすいかどうかを示す用語です。すぐに引き出せる預金などは、流動性が高い商品です。
一方、ヘッジファンドの流動性は高くありません。デメリットの項目で解説したように、お金の引き出しには制限がかかります。
解約をする時にも、決算発表の1ヶ月前までに手続きをする必要があるなど、決まりがあります。
このように、引き出しや解約に制限があるため、ヘッジファンドの流動性は低いです。ヘッジファンドに預ける資金は、すぐには使わない予定のもので、しばらくはなくても生活できるお金にしましょう。
リスク4:運用手法が難しく分かりにくい
ヘッジファンドが投資している商品は、専門的で難しいものが多いです。先物取引やオプション、デリバティブといったように、金融の専門知識がない人にとっては理解するのが難しい商品を用いています。
つまり、運用結果は決算のレポートを見ても、一般の投資家にとってはちんぷんかんぷんとなるケースが多いです。専門家が選んだとはいえ、よくわからない商品に投資することに不安を感じる人にはおすすめできない投資法です。
まとめ
ヘッジファンドとはどういったものなのかについて解説してきました。要点をまとめると次の通りです。
- 多様な運用方法を組み合わせて「絶対収益」を上げるファンド
- ヘッジファンドと投資信託は似た仕組みだが、1,000万円以上投資できるならヘッジファンド がおすすめ
- メリットは、利回り10パーセント以上を狙いやすい絶対収益の運用であること
- デメリットは、最低投資額が1,000万円以上といった資産の面でのハードルが高いこと
- 比較的低リスクだが、元本割れなどの一般的なリスクもある
高利回りを狙える反面、多額の投資額を必要とするなど、限られた人にしかできない投資がヘッジファンドです。余剰資金が多い人は、ぜひヘッジファンドで増やす投資を行ってみてください。