年末年始相場の傾向をバリュー投資に活かす12月相場のポイント3つ

12月の相場は、個人投資家による節税対策の売りに押されやすく、それが落ち着く年末に向け上昇しやすい傾向があります。

株式相場には年末に株高となる傾向をいう「掉尾の一振(とうびのいっしん)」や「サンタクロースラリー(またはクリスマスラリー)」といったアノマリーもあります。

実際にそのような傾向があるのか。この記事では過去のデータから年末相場を検証し、その傾向をバリュー投資に活かしていくポイントを解説していきます。

1、過去のデータからみる12月の相場傾向

過去28年間(1990年〜2017年)の12月の日経平均株価は、17勝11敗(勝率60.7%)になります。

上昇して終わった年がやや多くなっています。

では「掉尾の一振」というアノマリーのある年末はどうなのか。

12月25日以降年末最後の約1週間の日経平均株価、過去69年間(1949年〜2017年)の勝敗と勝率は以下のようになっています。

年末の日経平均株価 勝敗・勝率(1949年〜2017年)

営業日勝敗勝率(上昇確率)
12/2536勝18敗66.6%
12/2640勝16敗71.4%
12/2732勝23敗58.2%
12/2839勝16敗70.9%
12/2913勝8敗61.9%
12/3010勝10敗50.0%

勝率が最も低くなった12月30日(大納会)でも50%、そのほかの営業日はすべて勝率が50%を上回っており、過去のデータからも、年末に株価が上昇しやすい傾向は確かにあるようです。

2、12月上旬・中旬・下旬の相場傾向

全体として上昇しやすい傾向のある12月の相場ですが、年末の上昇確率が特に高いなど、それぞれ時期によっても異なる傾向がみられます。

ここでは、12月を上旬・中旬・下旬に分けて、それぞれの時期における相場の特徴をご紹介します。

(1)12月上旬

かつては11月決算のヘッジファンドが多く、12月初旬は決算明けのヘッジファンドからの資金流入によって株価が上昇しやすいと言われていました。

しかし現在は1月決算や12月決算のヘッジファンドが多くなり、その影響は小さくなっています。

一方で節税対策として、個人投資家が含み損のある銘柄を売り始めるため、株価は下落しやすい傾向があります。

年初来高値から下落していている銘柄は含み損の状態となっている可能性が高く、さらに信用買い残も多いようだとさらに注意が必要です。

一見株価が下がり割安なように見えても、損失の確定売りで上値が重く、もう一段の下げも想定されます。

この時期は、売りが一巡するまで、一旦様子見が無難と言えます。

(2)12月中旬

引き続き個人投資家の節税対策や企業の決算対策の売りによって、株価は下落しやすい傾向が続きます。

12月のメジャーSQ(先物・オプションの最終決済日・12月第2金曜日)を通過すると、国内外の機関投資家の商いは一巡し、年末ムードが強まります。

外国人投資家は20日頃からクリスマス休暇入りし、休暇明け26日頃までは商いが減少します。

機関投資家による商いが減少する中で、個人投資家主体の相場へ移行しテーマ株や中小型株などの物色が強まる傾向があります。

相場全体としては、メジャーSQ通過後には企業や個人投資家の節税対策売りも落ち着き、年末に向けて株価は堅調に推移するのが通例です。

1〜3月は小型株・低位株・割安株などが上昇しやすい傾向があり、この時期はそれに向けた仕込み時となります。

(3)12月下旬

節税対策の売りが一段落し、20日以降相場は、上昇しやすい傾向があります。

日本では「掉尾の一振(とうびのいっしん)」、米国では「サンタクロースラリー(またはクリスマスラリー)」というアノマリーもあり、世界的にも年末から年始にかけては相場が上昇しやすい時期とされています。

この時期は個人投資家主体の相場となりやすく、新興株・中小型株などが買われる傾向があります。

年末年始に市場が連休となる日本市場では、年内最終売買日(大納会)には一旦手仕舞いの売りが出やすい傾向もあります。

また年始最初の営業日(大発会)は高値で始まるのが通例です。

これは新年のご祝儀相場や、大納会で手仕舞ったポジションの買い戻しなどが要因と考えられています。

ただ大発会から下げる年も当然あり、そのような年は、相場が荒れると言われています。

3、【年末相場で株価上昇期待の大きい銘柄】年末相場の傾向をバリュー投資に活かす

バリュー投資では目先の値動きではなく、財務状態やキャシュフロー、将来性などから企業本来の価値を見極め、その価値に対して株価が割安な銘柄を投資対象とします。

12月初旬〜中旬の節税対策、決算対策の売りによって、優良株の株価が下落して割安となればチャンスです。

また12月20日前後からは機関投資家や外国人投資家などの商いが細り、個人投資家主体の相場となる傾向があり、新興株・中小型株にも買いが入りやすくなります。

割安に放置されていた銘柄の株価が上昇するきっかけとなる一方、相場につられて株価が上昇して割高になった銘柄を掴まないよう注意も必要です。

【年末相場で株価上昇期待の大きい銘柄】

・新興株・中小型株・低位株

要因:商いの減少による個人投資家主体相場。

・建設業関連株

要因:秋〜冬は売上が下がりやすく株が売られ安値を付けやすく、その後は公共工事の増加する年度末に向け株価が上昇しやすい。

 

上記はあくまで一般的な傾向であり、実際に投資する際には、目先の株価ではなく企業本来の価値を基準に投資判断を行うことが大切です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

アノマリーの通り、過去のデータからも実際に年末に株価が上昇しやすい傾向があることがわかりました。

年末相場を活かして投資を行うのであれば、損失確定売りの一段落する12月中旬、20日頃が狙い目と言えそうです。

ただし12月は売り買いが交錯しやすく、商いが減少する時期は特に値動きが荒くなりやすいため注意も必要です。

値動きの荒い年末相場に惑わされず利益をあげるためには、投資対象の本質的な価値を基準に投資判断を行うバリュー投資の考え方が活きてきます。

株価が割安となるタイミングを逃ないよう、日頃から銘柄分析を行うなど準備をしておき、年末相場による株価上昇をうまく利益につなげていただければ幸いです。