投資信託を選ぶときに重要なのが、分配金の有無ではないでしょうか?
漠然と「分配金が無い投資信託に魅力を感じられない。分配金を貰える方が良い」と思い込んでいる人もいるかもしれませんね。
しかし、意外かもしれませんが分配金がない投資信託にもメリットはありますし、実は長期の資産形成に向いているといった特徴があります。
また、分配金ありの投資信託でも、何となく分配金を受け取るだけでは良くありません。特に「特別分配金」には注意が必要なことをご存知でしょうか?
何となく「普通分配金」より優れているイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、そんなことはないのです。
この記事では、投資信託の分配金に関する基礎知識を解説していきます。「今までは分配金ありの投資信託を買っていたけど、実は分配金無しの方が良かったのかも?」なんてことになるかもしれません。自分の投資信託を見直すきっかけにしてみてください。
分配金で比較する投資信託
投資信託には、分配金をもらえるコースともらえないコースがあります。具体的には、次の3つに分類することができます。
- 分配金を受け取るコース(分配金あり)
- 分配金を自動で再投資するコース(分配金無し)
- 無分配のコース(分配金無し)
このように説明すると、「分配金無しの投資信託を買う意味はあるのだろうか?」と疑問を感じてしまうかもしれません。しかし、分配金無しのコースにも存在意義はあるのです。
むしろ、分配金無しのコースに投資すべき人もたくさんいます。次の項目から、上記の3つのコースについて詳しく解説していきましょう。
1.分配金を受け取るコース
分配金を受け取るコースの投資信託では、投資家は定期的に分配金を受け取ることができます。分配金を受け取れるタイミングは、商品により毎月、四半期ごと、半年ごとなど異なります。
分配金は運用で得られた利益や元本の返還分として、投資家に還元されるものです。運用成果などに応じて分配金は増えたり減ったりすることがあります。
定期的に不労所得を得られるのが分配金を受け取るコースの特徴です。投資だけで生計を立てたい人や、投資で本業の収入を補いたい人に向いています。
2.分配金を自動で再投資するコース
分配金を自動で再投資するコースの場合、運用で得られた利益は同じ投資信託の資産として再投資されます。投資家が利益を分配金として受け取ることはできませんが、複利効果で資産を成長させることができます。このコースはMRFやMMFといった公社債投資信託に多い仕組みです。
ちなみに、分配金の再投資を行うコースと、受け取った分配金を同じ投資信託に投じるのは同じ意味です。「分配金を受け取っても使い道はないので、投資に使いたい」と考えている人は、自動で分配金を再投資してくれるコースを選ぶと良いでしょう。
3.無分配のコース
無分配のコースでは、分配金をゼロ円とする代わりに、投資信託の資産にします。分配金再投資と似たような運用方法ですが、「税金」が課されるか否かが異なります。
分配金がある場合、受取型でも再投資型でも約20パーセントが税金として徴収されます。しかし、無分配の場合は「分配金が存在しない」ため課税されません。
運用方法としては分配金再投資型と同じような形式なのに、無分配のコースだけは約20パーセントの税金がかからないのです。
税金のことを考えると、自動再投資のコースより無分配のコースの方がお得です。「分配金は不要で、再投資したい」と考えているなら、無分配のコースがおすすめです。
分配金再投資のメリット
ここからは、分配金再投資・分配金受取の投資信託のメリット・デメリットについて解説していきましょう。
まずは、分配金再投資のメリットです。次の2点について解説します。
- 複利効果で雪だるま式に増やせる
- 再投資に手数料がかからない
なお、以降「自動再投資コース」と「無分配コース」をまとめて「分配金再投資の投資信託」としていきます。両者のメリット・デメリットはほぼ同様であるからです。
メリット1:複利効果で雪だるま式に増やせる
投資でお金を増やすときに重要なのが「複利効果」です。分配金を消費に使わず、また投資に使うことで元本が増えていくので、投資の利益も大きくすることができるからです。
これが複利効果で、雪だるまを転がして大きくしていくように資産を増やしていくイメージです。
分配金を消費に使う場合と再投資する場合とで、運用成果を簡単にシミュレーションしてみましょう。わかりやすさのため、極端な例ですが、100万円を利回り10パーセントで2年間運用したと仮定します。
①分配金を消費に使った場合
1年目の分配金=100万円×10%=10万円
分配金を消費に使うので、2年目の元本は増えずに100万円のままです。
2年目の分配金=100万円×10%=10万円
したがって、利益は2年間の分配金の20万円です。100万円を運用して120万円にすることができました。
②分配金を再投資に使った場合
1年目の分配金=100万円×10%=10万円
分配金を再投資するので、2年目の元本は110万円に増えます。
2年目の分配金=110万円×10%=11万円
したがって、利益は2年間の分配金の21万円です。100万円を運用して121万円にすることができました。
この計算からわかるように、分配金を再投資すると最終的な利益が大きくなります。分配金を再投資する度に投資の元本が増えるからです。
この計算では運用期間が2年と短いですが、運用期間が長くなれば分配金を再投資するか否かによる投資成果の違いは大きく開いていきます。
投資に時間をかけられる人は、複利効果を利用した再投資が良いでしょう。
メリット2:再投資に手数料がかからない
投資信託を購入するときには「購入時手数料」がかかりますが、自動再投資コースなら手数料はかかりません。再投資が行われると口数が増えるので、手数料無料で買い増したことになります。
無分配コースの場合も、分配金という形ではなく利益が投資信託の資産になるので運用資産が増えます。そのため、手数料無料で再投資したのと同じような効果になります。
一方、分配金を受け取るコースで投資家が手動で再投資する場合、「新規の買い付け」の扱いになるため、購入時手数料を支払う必要があります。受け取った分配金で同じ投資信託を買うなら、「分配金再投資コース」を選びましょう。
投資信託を無料で買い増しできるのは、自動で再投資される投資信託の大きなメリットです。手数料を節約して投資額を増やしていきましょう。
分配金再投資のデメリット
次に、分配金再投資の投資信託のデメリットを解説していきましょう。デメリットは次の2点です。
- 売却しないと利益を受け取れない
- 投資成果が分かりにくい
デメリット1:売却しないと利益を受け取れない
分配金を再投資すると、「分配金」という形で投資の利益を受け取ることができなくなります。いつ利益を受け取れるのかと言うと、投資信託を解約したとき、すなわち売却時です。
売却時に受け取る利益は、売却時の価額と元本の差です。生活費を補うために投資をしている人など、「できるだけ早く投資の恩恵が欲しい」と考えている人にとって、売却するときまで利益を受け取れないのは大きなデメリットです。
分配金を受け取れるコースにして、より早く投資のうまみを味わった方が良いでしょう。
一方、長い期間をかけて資産形成したい人にとっては小さなデメリットです。長期で運用する人は複利効果を活かせる分配金再投資コースがおすすめです。
デメリット2:投資成果が分かりにくい
分配金という形で成果が見えない分配金再投資コースの場合、投資成果がわかりにくいデメリットがあります。もちろん、証券会社のホームページにログインすればいつでも投資成果がプラスなのかマイナスなのかを確認することができます。
とはいえ、わざわざホームページを見て成果をチェックするほど投資に大きな関心がないという方もいるでしょう。
投資成果をチェックしていないとどのような問題があるのかと言うと、解約するタイミングを逃してしまう可能性があることです。
万が一、投資信託の運用が上手く行かずに損失ばかり出していたら、一刻も早く解約したいと思いますよね。分配金再投資コースは、自分から証券会社のホームページを見るなどのアクションを起こさないと成果を確認できないので、解約するタイミングを見逃しやすいのです。
そのため、自ら投資成果を確認するのを面倒と感じる方には、再投資型は向いていないかもしれません。
その反面、分配金を受け取るコースは振り込まれる分配金の金額で投資成果を推し量ることができます。もし分配金が減額されていたら、疑問に思って理由を調べるきっかけになるでしょう。手放さなければならないほど運用に失敗していることが発覚したら、その投資信託を早い段階で解約することができます。
分配金を受け取るメリット
ここからは分配金を受け取る投資信託のメリット・デメリットについて解説していきます。まずは分配金を受け取るメリットについて、具体的には次の2点です。
- 不労所得を得られる
- NISAなら分配金に課税されない
メリット1:不労所得を得られる
分配金を受け取る最大のメリットは、定期的に振り込まれる分配金という「不労所得」を得られることです。生活費の足しにしたり、本業での収入を補ったりする目的で投資をする人には、分配金受取コースがおすすめです。
メリット2:NISAなら分配金に課税されない
一般的に、投資で得られた利益には約20パーセントの税金がかかります。投資信託の分配金も同様に約20パーセントの税金がかかり、その分が差し引かれて投資家の口座に振り込まれています。
ですが、NISA口座やつみたてNISA口座を使って投資信託を買えば、分配金に税金はかかりません。NISAと一般口座の分配金には約20パーセントもの差があるので、NISAを活用して投資することをおすすめします。
なお、NISAとつみたてNISAを使える範囲は、下の表のように決まっています。
無制限に使える制度ではありませんが、これから投資を始める方にとっては十分な枠でしょう。投資初心者の方は、NISAの口座も忘れずに開設しておきましょう。
NISA | つみたてNISA | |
---|---|---|
1年間の投資額の上限 | 120万円 | 40万円 |
最長の非課税期間 | 5年 | 20年 |
分配金を受け取るデメリット
続いて、分配金を受け取る資信託のデメリットを解説していきます。具体的には次の2点です。
- 分配金に課税される
- 再投資するなら手数料がかかる
デメリット1:分配金が課税される
NISAやつみたてNISAを使えば分配金に課税されないとお伝えしましたが、特定口座や一般口座を使う場合は課税されます。分配金に対して約20パーセントもの税金が徴収されるので、投資のリターンが大きく減ってしまいます。
さきほど紹介したように、NISAやつみたてNISAは無限に使えるわけではなく、投資額の上限や最長の期間が決まっています。この範囲を超えるなら特定口座や一般口座で金融商品を保有しなければなりません。なお、特定口座や一般口座では税金の優遇はありません。
気を付けなければならないのが、「分配金を自動で再投資するコース」も課税されていることです。このコースは投資家に支払ったことになっている分配金を自動で再投資するものなので、「投資家が利益を受け取った」と見なされて課税されるのです。
実態として投資家は分配金を受け取っている感覚はないので、理不尽に感じられるかもしれません。
一方、「無分配コース」の場合は課税されません。そもそも分配金がなく、課税する対象が存在しないからです。
分配金を受け取る投資信託を特定口座や一般口座で保有すると課税されることは覚えておきましょう。
デメリット2:再投資するなら手数料がかかる
受け取った分配金で投資信託を買う場合、購入時手数料がかかってしまうことが分配金受取コースのデメリットです。分配金を使って同じ投資信託を買うなら、分配金再投資コースか無分配コースにしておくことをおすすめします。
分配金で別の投資信託を買う場合、投資家が手動で買い付けなければならないため、購入時手数料を支払わなくてはなりません。ですが、最近では手数料無料で買える投資信託も増えてきています。
コストが気になるなら、購入時手数料がかからない商品から探してみるのも良いでしょう。
分配金は再投資すべき?
分配金を受け取ることと再投資することについて、メリットとデメリットを紹介してきました。結局、どちらがお得なのか気になっているかもしれませんね。
そこで、再投資が向いている人と分配金を受け取るのが向いている人の特徴を紹介していきます。あなたは、次のどちらに当てはまりますか?
- 分配金再投資コースが向いているのは資産の積立をしたい
- 分配金受取コースが向いているのは不労所得が欲しい
では、それぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。
資産の積立なら分配金再投資コース
分配金再投資コースを選ぶと、複利効果を活かせるので長期的な資産形成に有利です。元本と利益の合計額は、分配金を受け取る場合を上回ります。
分配金再投資コースが向いているのは、次のような人です。
- 現役世代で引退まで時間があり老後の資産形成をしたい
- 子供や孫に相続する資産を作りたい
- 今はお金に困っていないけれどとりあえず投資をやってみたい
このような方々の共通点は、資産形成に長い時間をかけられることです。
一つでも当てはまっていたら、分配金再投資の投資信託がおすすめです。複利効果を活かした投資をしていきましょう。
不労所得が欲しいなら分配金受取コース
分配金受取コースを選ぶと、定期的な不労所得を得ることができます。分配金再投資コースよりも早く利益を受け取ることができるため、今すぐ投資の恩恵を受けたい人に向いています。
次のような人には分配金受取コースがおすすめです。
- 現役世代でアーリーリタイアが目標なので不労所得が欲しい
- 年金の足しになる不労所得を得たい
- 将来のことはわからないので今すぐ結果がついてくる投資をしたい
このような方々の共通点は、投資を始めてすぐに収益を得たいことです。分配金受取コースの投資信託を買って、定期的に振り込まれる分配金を張り合いにしてみてはいかがでしょうか?
分配金を受け取ったときの確認事項
分配金受取コースを選んだら、分配金が振り込まれるのを楽しみにする以外に、一つだけ意識しておいて欲しいことがあります。それは、分配金の内訳です。
実は、投資信託の分配金とは「普通分配金」と「特別分配金」の2種類を合わせた呼び名なのです。特に、特別分配金に注意して欲しいので、用語や意味について詳しく紹介していきます。
普通分配金と特別分配金
まずは、普通分配金と特別分配金の意味について確認しておきましょう。特徴を簡単にまとめると、次の表のようになります。
普通分配金 | 特別分配金 | |
---|---|---|
課税 | される(約20%) | されない |
財源 | 運用の利益から分配 | 投資の元本から分配 |
普通分配金は約20パーセントの課税対象なのに対し、特別分配金は非課税です。このように説明すると、特別分配金が多く普通分配金が少ない方が良さそうに感じるかもしれません。
しかし、必ずしもそうとは言えないのです。
特別分配金が多い投資信託には要注意
特別分配金は、別名「元金払戻金」です。つまり、投資家の元金を分配金として返しているだけです。
利益が出ていない投資信託なのに、投資家を集めるために多額の特別分配金を出して儲かっているように見せかけているということがあるので気をつけてください。
非課税である理由は、「元金払戻金」だからです。投資による利益から分配しているわけではないので、税金もかかりません。
また、分配金を受け取ったらすぐに買い物に使いたいという方も、ちょっと待ってください。特別分配金は元金の払い戻しなので、投資の利益ではなく元金を使っていることを理解して消費に使ってくださいね。
課税される普通分配金の方が本当は嬉しい
普通分配金は運用益から分配されるものなので、運用成果が反映されます。普通分配金が多いのは運用が上手くいっている証拠なので、本来は喜ぶべきものなのです。
ところが「普通分配金は課税されるから、特別分配金が多い方が良い」と考えている方もいます。前項で解説したように、特別分配金は元金払戻金です。用語の意味を正しく理解していれば普通分配金が多い方が嬉しいということがわかるはずです。。
まとめ
投資信託の分配金再投資コースと分配金受取コースについて解説してきました。どちらにもメリット・デメリットがありますが、向き不向きで言えば次のような特徴があります。
- 「分配金再投資コース」は資産の積立をしたい人向き
- 「分配金受取コース」は不労所得が欲しい人向き
また、一口に分配金と言っても、普通分配金と特別分配金があります。特別分配金は元金払戻金であることを踏まえ、受け取った分配金の使い道を考えていきましょう。