
投資、というのは難しいものです。
誰もが自分の資金を増やすことを目論んで資産運用を行うわけですが、戦略なき行動からは結果も生まれにくいといえるでしょう。
株式投資・資産運用においては、誰もがワンクリックで好きな金融商品・銘柄を買うことができるようになったものの、個人投資家がプラスのリターンを生めるかどうかは「何を買うか」に一つの要因があると考えられます。
個人投資家に人気のある金融商品と言えば「投資信託」および「株式投資」、次点で「FX」といったところですが、もちろん全ての投資家が利益を出せているわけではありません。
先ほど書いたように、「何を買うか」に加え「いつどのタイミングで買うか・売るか」「何を意識して売買を行うか」等といったことも非常に重要になってきます。
こういったファクターを踏まえつつ、勝つための投資戦略を練っていくことが利益を狙うためには大事になってくるわけです。
ですが、プロも参加しているマーケットの世界で安定して勝ち続けるのはなかなかハードなことです。
2018年7月に発表された金融庁の調査では、投資信託を保有している個人投資家のおよそ半数が損失を抱えているという事実が明らかになりました。
その理由としては前述したような十分な投資戦略が描けていない、というのが一つですが、他にも投資信託という商品自体が持つ特徴自体が損失拡大を助長しているとも言えます。
そこで今記事では、「なぜ投資信託で半数の投資家が損をしてしまうのか」という理由をチェックしていくとともに、投資信託という金融商品の実態について詳しく見ていくことにしましょう。
目次
1、投資信託でおよそ半数の投資家が損失を抱えてしまうワケ
金融庁によると、「投信購入時」と「今年3月末時点」での評価額を比較した際に損失を抱える個人投資家が46%との調査結果になりました。
2018年3月は世界的にマーケットが軟調な時期であったため、含み損が出てしまうケースが多いことは考えられるにしても、それでも約半数の評価額がマイナス、というのは驚くべき結果です。
もちろん全体相場が軟調になればなるだけ金融資産の評価額も減っていくわけですが、投資信託の保有者が利益を出しにくいのはこれだけが原因ではありません。
その原因の一つとして問題視されているのが、投資信託の販売元である銀行・証券会社が顧客本位ではない商品の販売や売買を勧めているという背景です。
商品の売り手である銀行および証券会社は、顧客が売買する際にかかる手数料、および投資信託保有時に顧客が支払う信託報酬を得ることで自社の利益を上げています。
極端に言ってしまえば、彼らは顧客が損をするか利益を出すかというのはそこまで関係なく、商品を売りつけて自分の販売ノルマを達成する、という側面が販売側には生じてしまっているわけです。
もちろん全ての投資信託、その販売者がそういった悪質な考えを持っているわけではありませんが、投資をする際には誰かの意見を鵜呑みにせず、自身である程度のマネーリテラシーを身に着けたうえで商品を選んでいく必要があります。
経済評論家で総合商社・外資系証券会社等を渡り歩いてきた山崎元さんも「投資信託の99%は最初から購入を検討するに値しないクズ」という発言をしていますが、こういった複数意見を踏まえつつ、客観的・俯瞰的な視点を持つことが重要になるでしょう。
2、投資信託の仕組みはどうなっているのか
さきほど書いたように、投資信託には株式投資などと比較して顧客が支払うコストである手数料が多くかかってきます。
投資信託で利益を上げる方法は大きく分けて「基準価額(株式でいう株価のようなもの)が上がった際に売却」「分配金(株式の配当金に似たもの)を得る」という二つがありますが、単純に考えてこれらのリターンがコスト(手数料)を上回っていないと利益は得られません。
また投資信託の評価額自体が下がってしまえば、手数料と合わせてダブルパンチをくらうことになってしまいます。
投資信託が組み込んでいる商品は先進国株式、国内株式・債券、新興国株式…などと様々ですが、それらがどれくらいの見込みリターン・値下がりリスクがあるのかということも事前に知っておかなければなりません。
金融庁の調査に際し、「売買手数料を稼ぐために投資信託の売買回数を顧客に意図的に増やさせている」「購入手数料の高いものをわざとオススメしている」といった現状が問題視されたため、販売側に個人投資家が投資信託をより分かりやすく・かついい商品を購入できるような共通指標(KPI)の開示を求める制度改革が進められるとのことです。
ただそれでも投資信託の数は膨大、かつ年々新しいものも生まれているため、我々個人投資家の学習というのも、少なからず必要となってくることは間違いありません。
3、投資信託の手数料の種類は?
先ほどの図であったように、投資信託ではいくつかの手数料がかかってきます。
これ自体は「資産運用をプロに任せる」という点では必要経費と考えて問題はないのですが、かかるコストはなるべく下げたいというのは、誰もが思うところでしょう。
まず先ほど挙げたかかる費用について簡単に解説していきます。
(1)【購入時】
①基準価額に応じた購入額
これは株式でもなんでも同じですが、買うときに必要になるお金のことです。
例えば1単元1万円の商品を買おうと思ったら、単純に考えて1万円がいりますよということです。
②購入手数料
購入時にかかってくる手数料です。
投資信託の場合はノーロード(購入手数料無料)のものもあります。
(2)【投資信託保有時】「信託報酬(運用管理費用)」
投資信託で資産運用をするにあたり、一番ネックな手数料がこの信託報酬です。
投資信託を保有している間、年0.2%~2%程度かかってくるものです。
投資信託で資産運用したいという場合に、一番チェックしておきたい項目だとも言えるでしょう。
(3)【売却時(解約時)】信託財産保留額
①投資信託を解約(売却)
投資信託を解約(売却)するときにかかってくる費用です。
ファンドに組み込まれている商品を売却し、そこから投資家に現金を渡す、というのが大まかな構図ですので、その際の費用を解約者も分担してくださいね、という観点でかかってくるものです。
②解約手数料
こちらに関しては設定されている投資信託が少ないため、そこまで気にしなくても良いでしょう。
これらすべての手数料は投資信託の「目論見書」を見ればすぐに確認することができます。
投資信託に限らず、商品買付にあたりどれだけの金額がかかるのか、は必ず確認しておきましょう。
4、投資信託の実際のパフォーマンスをチェック
それでは、投資信託は実際にはどれほどのパフォーマンスを出しているのでしょうか?
各投資信託の目論見書や購入ページのチェックほか、日経新聞のようなポータルサイトでそういった情報は簡単に確認することができます。
①日本経済新聞-投資信託
②SBI証券-投資信託パワーサーチ
例えばSBI証券の投資信託パワーサーチから「販売金額ランキング」の上位にあるものをチェックしてみましょう。
それぞれの設定日(運用開始日)からの騰落率は、1位のひふみ投信が+323.36%、2位のニッセイ外国株式インデックスファンドが+57.32%、3位のOne-MHAM新興成長株オープンが+124.29%となっています。(2018年7月末時点)
これだけを見ると「投資信託のパフォーマンスって意外と悪くないのでは?」と思えますが、最初にも書いたとおり「どんな商品をいつ・どれくらい買うか」というのが資産運用に関しては大事になってきます。
パフォーマンスのみを見るのではなく、「どんなものを組み込んでいる投資信託なのか」「これからも好調であり続ける見込みはあるのか」などを考えていくことが必要になってくるでしょう。
銀行の人に勧められたから…買えば絶対上がると言われたから…というような理由で買うのは論外ということになります。
5、過去の実績や傾向を考慮したうえでの投資先選定が重要
さて、こういった情報を踏まえたうえで実際に投資先を選ぶ場合、「自分にとって何が重要なのか」を考える必要があります。
投資を考える人の多くは「なるべくハイパフォーマンス(大きな利益)を得られるような商品を選びたい」と思うはずですが、投資信託であれば目論見書などを入念にチェックし(そこまで気構える必要はありませんが)資産運用を行うべきでしょう。
そういった点を踏まえいくつか実例を見ていくと、まず先ほど挙げたひふみ投信は個人投資家に絶大な人気がありながら、それに見合ったパフォーマンスを出し続けているアクティブファンドと言えるでしょう。
SBI証券の投資信託パワーサーチでもわかる通り、1年前に投資したとしても約+23%という画期的な結果を出しています。
「アクティブファンド」というのは字のごとく積極的な投資を行っていくファンドです。
ひふみの場合は日本含めた先進国株式を組み込んだポートフォリオで、調査を徹底的に行いながら銘柄バスケットを入れ替えていく、という投資方法をとっています。
こういったアクティブファンドは「3、投資信託の手数料の種類は?」で挙げたような手数料が高くつきがちなのですが、ひふみは年1.0584%と非常に良心的です。
また、アクティブファンドのもう一つの例として挙げられるのが投資会社Japan Actです。
日本株式に投資を行いながら、議決権の行使や経営への関与を狙いながら企業業績の最大化を目指していく、いわゆる「アクティビスト」と言われるような存在です。
公式サイト:Japan Act
企業の手掛ける事業の優位性や将来性、保有資産を徹底的に分析し、企業本来の価値と現在の企業価値(市場における時価総額)との間に乖離のある銘柄を投資対象とし、企業への要求や株主提案を行うなど、アクティビストとして積極的に活動しています。
こういった投資会社の優れているところは、自分たちが利益を追求することはもちろん、「経営に関与することで日本経済全体を発展させる」という目的を持っているところだと言えるでしょう。
投資理念にもある通り、企業との長期的な共存と成長に重きを置いていることが分かります。
資金が多めの方であればこういった投資会社を介して資産運用をするのも一つの手で、まずは資料請求して詳細を知ってみることをオススメしたいところです。
まとめ
ここまで見てきたように、安易な投資先の選定は損失を抱えることに繋がりかねません。
せっかく資産を増やす目的で投資を始めたのに、逆にそれが大きく目減りしてしまったとなると本末転倒です。
投資初心者の方であればまずは少額でスタートしてみるということも非常に大事なのですが、実際に利益を安定して出していくためには自分なりの調査や市場予測が必要となってきます。
そこでプロの運用に頼るために投資信託というのもありがちなパターンではありますが、この記事を読んだ方であれば「どういった情報の取捨選択が重要か」ということが分かって頂けるかと思います。
色々な投資先を俯瞰的に見ながら、「自分に合った、かつ直感ではなく予測に基づいた」投資先を選んでいくことが資産増加に繋がることは間違いないでしょう。