パワハラの定義と30種類のハラスメント!関連銘柄12選

  • 2018年10月19日
  • 2021年10月15日

スルガ銀行やスポーツ界における問題が相次いで報じられ、パワハラについて世間の注目が高まっています。

しかし、パワハラをはじめとするハラスメントは今に始まったものではなく、会社や学校、家庭などわたしたちの身の回りにも多く存在している大きな問題です。

この記事では、パワハラを含むハラスメントとはどういったものなのか、さらにハラスメントに関連した銘柄について解説していきます。

1、さまざまなハラスメント

ハラスメント(harassment)とは、「嫌がらせ」や「いじめ」のことであり、行為を行う人に意図とは関係なく、相手を不快にさせたり、身体的・精神的に傷つけたりする行為を言います。

そういった行為がどのような状況で行われるかによって、ハラスメントにもさまざまな種類があり、その数は増え続けています。

現在40種類以上あるとされており、以下のような種類があります。

主なハラスメント
アルコールハラスメント無理にアルコールを勧めたり、一気飲みなどを強要する行為。
エアコンハラスメントエアコンの温度を勝手に変える行為。上司などが行い部下がそれにあわせざるを得ない場合にはハラスメントになることも。
エイジハラスメント出世や結婚が遅いことなど年齢に関して皮肉る行為。
終われハラスメント就職活動において内定を出すことを条件にして、以後の就職活動を終わるようにプレッシャーをかける行為。
家事ハラスメント家事や子育てのやり方に文句をつける行為。
カスタマーハラスメント従業員の失敗・不手際などに対して、過剰なクレームや要求をする行為。
カラオケハラスメントカラオケが苦手な人に、歌うことを強要する行為。
ジェンダーハラスメント同じ業務などに対して、性別によって異なる役割や対応などを強要する行為。
時短ハラスメント残業が禁止され、やむなく家などに持ち帰ってサービス残業を余儀無くされること。働き方改革などにより増加。
シルバーハラスメント介護を受ける高齢者が、介護者(身内や施設スタッフ)などから暴力や暴言を吐かれたりする行為。
スメルハラスメント体臭や口臭、香水などによって周囲の人を不快にする行為。
セカンドハラスメントハラスメントを訴えたことで、逆に会社側からパワハラなどを受けるようになること。
ゼクシャルハラスメント交際相手に結婚を迫ったり、交際を公にしてプレッシャーをかける行為。結婚情報誌が語源となっている。
SOGIハラスメントいわゆるLBGTの人が受けるハラスメントの総称。SOGIはSexual Orientation(性的指向) and Gender Identity(性自認)の略。
テクノロジーハラスメントパソコンやITスキルの低い人に対して、わざと専門用語を使うなどのハラスメント。
ドクターハラスメント医師が患者に対し、不要または過剰な治療を必要と装って強要する行為。
ヌードルハラスメント麺をすする音で相手を不快にさせる行為。欧米などでは音を立てて食べることを不快に感じる人が多く、訪日外国人の増加も要因とみられる。
パタニティーハラスメント男性の育児休暇取得を会社が認めない行為。
パーソナルハラスメント容姿・性格・趣味嗜好など個人的な部分をバカにするなどの行為。
ハラスメントハラスメント相手のちょっとした行為に対しても、ハラスメントではないかと過度に反応・指摘する行為。
パワーハラスメント職場や社会的地位を利用して、嫌がらせや職務上の範囲を超えた要求などを行う行為。
フォトハラスメント友人や同僚などを無断で撮影したり、無理やり撮影する行為。SNSなどに無断でアップする行為などもこれに該当する。
ブラッドタイプハラスメント血液型だけで相手の性格や人間性などを勝手に決めつける行為。
ペットハラスメント動物が苦手な人にも自分のペット愛を押し付ける行為。
マタニティーハラスメント妊娠中や出産後の女性に対するハラスメント。不当な降格に対して裁判に至ったケースもある。
モラルハラスメント加害者側のモラル(道徳観)を基準に被害者を支配・抑圧しようとする、精神的な暴力・嫌がらせ行為。
ラブハラスメント恋人がいない、結婚できないことを揶揄するなどの行為。
リストラハラスメント無理な業務を押し付けたり、業務内容の全く異なる部署へ移動させるなどして、自主退社へ追い込む行為。
レイシャルハラスメント人種の違いなどによるハラスメント行為。
レリジャスハラスメント上司などから特定の宗教への入信を強要されるなど、宗教に関係したハラスメント。

(参考:管理職ならおさえてえきたい最新ハラスメント辞典 @DIME

2、パワーハラスメントとは

ハラスメントと一括りにいっても、その悪質性や危険性はまちまちです。

そんな中でも、職場などにおけるパワーハラスメントは特に問題視されています。

職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)の定義としては、厚生労働省によって以下のように定義されています。

”同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為”

(引用:職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言 厚生労働省

また、パワハラに該当する典型的な行為について以下のよう例示されています。

  1. 暴行・傷害(身体的な攻撃)
  2. 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
  3. 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
  4. 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
  5. 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
  6. 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

(引用:職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言 厚生労働省

ただし、どこまでを業務における適正な範囲に含まれるのかという線引きや、行為を行う側と受ける側の認識の違いやその行為が行われた状況など、パワハラに該当するか判断が難しいケースも多いのも事実です。

(1)スルガ銀行の事例

スルガ銀行による不適切融資に対する第三者員会による調査では、組織的な不正とともに、苛烈なパワハラが常態化していた事実が明るみになりました。

高い収益率からモデル地銀とも称された裏側には、過酷な営業目標(ノルマ)強いられパワハラに苦しむ行員たちがいたのです。

第三者委員会よる全行員対象のアンケートへの回答

①当社のノルマ(融資実行残高目標)を厳しいと感じたことはありますか?

質問内容:当社のノルマ(融資実行残高目標)を厳しいと感じたことはありますか?
はいいいえ未回答合計
全行員1,423
(39.6%)
2,143
(59.6%)
29
(0.8%)
3,595
(100%)
資産形成ローンの営業に携わったことのある行員299
(87.2%)
44
(12.8%)
343
(100%)

質問内容:前問で「はい」と回答された場合、それは、何故しょうか?

●普通では売れる商品ではない。方針が尋常でない(ローリスク・ハイリターン)。純増目標である。 銀行目標のほとんどを、パーソナル・バンクだけがやらねばならないから。

●もともとの目標自体が非現実的な数字になっているにもかかわらず週刻みのラップ目標に達成し ていないと、毎日のように追いかけられ会議では罵倒されるから。

●毎月、月末近くになってノルマが出来ていないと応接室に呼び出されて(バカヤロー)と、机を蹴 ったり、テーブルを叩いたり、1時間、2時間と永遠に続く。給料返せなどと、怒鳴られる。(中略)ノルマが出来ない と夜の10時過ぎても帰れない。残業代など支払われるはずがない。

●過度な営業目標があり、目標は必達であり、達成出来ていない社員には恫喝してもよいという文化があります。営業活動についてはマネージャークラスであっても行動記録票の提出を求められ、訪問件数・架電件数・申請件数をもとにまた叱責があります。毎日これを繰り返しであり、精神的に追い詰められていました。

●人間否定、恫喝、物を投げる、会社をやめろ等上役、支店長からされるため。

●「右向け右」が極端すぎている。ローンができなければ、すべて駄目な風潮が強く、また、3.6%からのフリーローンが7.0%以上でなければ承認をもらえない状況に、逆に今後の収益の伸びしろに危機感があるのか、と経営方針に私たちにも不満と不安がありました。また、ブロック会議内で、各自の数字を公表される状況の中、常に強力なプレッシャーを受けていました。ローン数字も「もっと金額を盛れ!」とODP会議で言われます。

②営業成績が伸びないことを上司から叱責されたことはありますか?

質問内容:営業成績が伸びないことを上司から叱責されたことはありますか?
はいいいえ未回答合計
全行員839
(23.3%)
2,727 (75.9%)29
(0.8%)
3,595
(100%)
資産形成ローンの営業に携わったことのある行員248
(72.3%)
95
(27.7%)
343
(100%)

●「なぜできないんだ、案件を取れるまで帰ってくるな」といわれる。首を掴まれ壁に押し当てられ、 顔の横の壁を殴った。

●(略)会議の場での侮辱、月曜日朝の営業報告(休日出勤強制)など枚挙に暇がございませんが、最も印象に残っているのは営業会議の場で案件がないことを理由に「今から営業してこい」と追い出されたことです。

●数字ができないなら、ビルから飛び降りろといわれた。

●「銀行の収益の足を引っ張る社員」、「去れ」 、「お前に給与を支払うのが勿体無い」、「大した営業成績も上げずに時間外ばかりつけやがって」など厳しく叱責されました。

●上司に呼ばれ個室で2人になり叱責を受けた。他の社員の前でも叱責を受けた。「なぜできないのか?」「それで?それで?だから?」「銀行員なんてやめちまえ」「できないくせに偉そう」等パワハラだと感じていた。

●担当しているチームの目標数字に対し進捗が不調であったとき、チーム全体を前に立たせ、できない理由を言わされた。時間は2時間以上にのぼり支店の社員の前で給与額を言われそれに見合っていない旨の指摘を受け、週末に自身の進退(退職)を考え報告を求められた。

●毎日2〜3時間立たされて詰められる、怒鳴り散らされる、椅子を蹴られる、天然パーマを怒られる、1ヶ月間無視され続ける等々。

●(略)「死ね」「給料どろぼう」「出来るまで帰ってくるな」などは平気で言われた。

●休み前金曜日に、「月曜までに案件とってこい」などの指示

●毎日、毎日、怒鳴り続けられ昼食も2週間ぐらい全然、行かせてもらえず夜も11時過ぎまで仕事 をさせられ体調が悪くなり、夜、眠れなくなって、うつ病になり銀行を 1年8ヶ月休職した。

●目標が達成できなかった時に、支店長席の前に1時間以上立たされて叱責を受けた。支店長が激高し、ゴミ箱を蹴り上げたり、空のカフェ飲料のカップを投げつけられたことがある。

●徹底的に目標数字ができない理由を追及された。死んでも頑張りますに対し、それなら死んでみろと叱責された。

●審査部融資管理のとき、部長にお前らは営業で仕えないからこの部署に来た、会社として数字を作るためには債権回収することは営業と同じ、ここでできなければお前たちは会社を辞めるしかない。俺が拾ってやったんだから死ぬ気でやれ。時間がなければ土日も働けと日常的にいわれていた。

●毎週の報告で「そんな数字では受けれない」という叱責。お前のところは(新店舗で)既存顧客が いないんだから(有担保)ローンとセットで無担保を取って来い。センター長会議では成績の悪い 店舗は叱責の嵐でした。数字がないなら今すぐ営業して来いと退席させられた方もいらっしゃいました。

●無担保融資については、実行額が少ないなら金額増やせ(顧客本位ではない)、実行件数が少ない なら行動量を倍にしろ、など今日のTM件数は何件だ、と毎日叱責。役席であっても行動管理票をもとに毎日詰められた。

精神的に毎日詰められていた。保険担当者は支店長から「有担保セットであってお前の努力でじゃないんだから勘違いするな、給料泥棒だ」と言われていた。

支店長は営業社員を軽視しており「営業は誰でも出来る仕事で営業社員はそれしか出来ないんだから、数字だけやってりゃいいんだよ」となどと発言していた。

●融資実績が上がらない人は口なし(意見をしてはいけない)雰囲気。目標に対して達成率が低いと どうするんだと椅子を蹴られ、机を叩かれ、恫喝されながら育った。当時は数字があがらないならば休日はなしという雰囲気。

数字があがらないならば、時間外請求するな。融資実績があがらないならば、会社に給与返せ。いつまで会社から定額自動送金してもらっているんだというモラルの欠片もない会社だった。

●月末に勘定が閉まったあとに、今月あといくら融資実行するのか確認の電話が毎月営業推進部長からかかってきていた。

当月の数字が伸び悩むときは営業推進部署に呼び出しがあり、担当の執行役員に対して「処遇はお任せします」と言わされていた。

●毎日ローンのノンストップ運動をやっており、途切れたり、数字ができなかった場合に、ものを投げつけられ、パソコンにパンチされ、お前の家族皆殺しにしてやるといわれた。上司を目の前で土下座させて謝罪させた。いすの背面をキックされた。

●お客様と十分に合意形成がなされていない段階でも、SSPなる会議への出席、案件上程を要求され、 会議中にはターゲットになる者を特定され、多人数の前で罵声を浴びせる。

結果その被害者が精神的に追い詰められて休職や退職に至ったら、それを反省するどころか、営業推進を一生懸命に行った結果だと肯定し、その数や追い詰め方を自慢し競い、賞賛されるような状況にあった。

まさしく恫喝、強要でパワハラ以外の何でもないことが各地で行われていることを知っていながら、誰も止められなかった、本気で止めようとしなかった。

(出所:調査報告書 スルガ銀行株式会社 第三者委員会

3、ハラスメント関連銘柄

上記のスルガ銀行のケースでは、苛烈なノルマとそれに伴うパワハラが不正融資の引き金となり、本来、歯止めとなるべき審査部をも機能不全に陥らせる結果となりました。

このような極端なケースでなくとも、ハラスメントは行為を受ける本人にとっては大きな苦痛であるとともに、企業にとっても従業員から訴えられたり、退職によって人手が足りなくなるというリスク要因となります。

個人と雇用主の紛争を処理に関する労働審判制度が2006年に導入されて以降、ハラスメント関連の訴訟は増加しており、ハラスメントなどのトラブルが原因で従業員に訴えられた場合に備え、賠償金などを補償する商品の販売件数は、2017年度に前年度比6割増(損保大手3グループ)と急増しています(参考:日本経済新聞)。

また、ハラスメントを訴える側の個人が負担する弁護士費用などを補償する商品の取り扱いも始まっています。

ハラスメント問題への関心が高まることで、ハラスメント保険を取り扱う保険会社のほか、ハラスメント問題に関連して離職を防ぐ取り組みや相談サービス、転職サポートなどを手がける企業への注目が集まることも予想されます。

(1)MS&AD

銘柄
(コード)株価
(2018/9/12終値)銘柄情報
MS&AD
(8725)
3,300円三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保などを傘下に持つ三大損保の一角。企業向けハラスメント保険では、2018年4月に保険契約締結前の不当行為についても補償するよう内容を拡充。

(2)SOMPO HD

銘柄
(コード)株価
(2018/9/12終値)銘柄情報
SOMPO HD
(8630)4,327円損保ジャパン日本興亜損保などを傘下に持つ三大損保の一角。企業向けハラスメント保険を取り扱う。

(3)東京海上 HD

銘柄
(コード)株価
(2018/9/12終値)銘柄情報
東京海上 HD
(8766)5,097円東京海上日動などを傘下に持つ三大損保の一角。企業向けハラスメント保険を取り扱う。

(4)インソース

銘柄
(コード)株価
(2018/9/12終値)銘柄情報
インソース
(6200)2,415円企業の人事部向けの講師派遣型研修や公開講座を運営している。ハラスメントについて正しく理解し、ハラスメント防止のための研修を行っており、需要の取り込みが期待される。

(5)ウィルソンWLW

銘柄
(コード)株価
(2018/9/12終値)銘柄情報
ウィルソンWLW
(9610)
337円社員教育支援事業を世界で展開。ハラスメント防止研修などの需要増加が期待される。

(6)FRONTEO

銘柄
(コード)株価
(2018/9/12終値)銘柄情報
FRONTEO
(2158)997円法的訴訟時の証拠保全等電子データ収集、分析などコンピューター解析事業を主に手がける。離職防止やハラスメントの検知、新卒採用などで人工知能を活用したサービスの開発を推進しており、独自開発のAIエンジン「KIBIT(キビット)」は、ソラスト(6197)で活用され、新入社員の離職防止の取り組みで効果が得られている。

(7)キャリアデザインセンター

銘柄
(コード)株価
(2018/9/12終値)銘柄情報
キャリアデザインセンター
(2410)1,515円Webサービス『@type』や適職フェアなどで転職情報サービス事業を展開。エンジニア分野に強みを持つ。

(8)エン・ジャパン

銘柄
(コード)株価
(2018/9/12終値)銘柄情報
エン・ジャパン
(4849)4,775円求人情報サイト大手。すでに人手不足や人材流動化などで業績は好調が続いているが、ハラスメントにより転職市場が活性化すれば恩恵が期待される。

(9)リクルート HD

銘柄
(コード)株価
(2018/9/12終値)銘柄情報
リクルート HD
(6098)3,517円求人情報検索エンジン『インディーど』などを運営。

(10)パーソルHD

銘柄
(コード)株価
(2018/9/12終値)銘柄情報
パーソルHD
(2181)2,380円派遣・請負、web媒体などによる人材紹介サービスを国内外で展開する人材総合サービス大手。

(11)学情

銘柄
(コード)株価
(2018/9/12終値)銘柄情報
学情
(2301)1,537円就職情報サービスを手がける。新卒がメインではあるが、転職・人材派遣が伸びており、増益が続く。

(12)弁護士ドットコム

銘柄
(コード)株価
(2018/9/12終値)銘柄情報
弁護士ドットコム
(6027)4,070円Web上で弁護士に無料で相談できるサービス『弁護士ドットコム』の運営や弁護士向け営業支援事業などを展開する。ハラスメント関連の相談や訴訟の増加による恩恵が期待される。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
パワハラをはじめとするハラスメントは加害者側が意図せず行うケースも多く、ハラスメントの防止にはハラスメントについて正しく理解する継続的な取り組みが必要となります。

また、起きてしまったハラスメントに対して適切に対処するための相談や転職サービス、訴訟費用や賠償金に備える保険などの需要も高まっており、ハラスメント関連銘柄にとっては今後も追い風が続くと予想されます。