自社株買いとは?メリット・注意点と投資判断のポイント6選

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株式市場では、自社株買いを行う企業が注目され、人気となっています。

この記事では、

・なぜ自社株買いが注目されるのか?

・株価にどう影響するのか?

・そして自社株買いをどう評価し投資判断をすれば良いのか?

について解説していきます。

お読みいただくことできっと今後に活かせることでしょう。

ご参考になれば幸いです。

Contents

1、自社株買いとは?その目的は?

自社株買いとは、その名の通り企業が自分の会社の株を買うことです。

なぜわざわざ自分の会社の株を買うのでしょうか。自社株買いは、主に以下のような目的で行われます。

(1)株主への利益還元

利益を株主へ還元する方法としては「配当」がありますが、「自社株買い」も株主への利益還元の一環となります。

なぜ自社株買いが利益還元策となるかというと、発行済株式総数が減少することによって1株あたりの利益・資産が増加し、結果的に株価の引き上げ効果が生じるためです。

(2)ストックオプションのための取得

ストックオプションとは、市場で取引されている株価に関わらず「発行時に決めた価格(権利行使価格)でその会社の株を購入できる権利」のことです。

例えば株価が200円の時に、権利行使価格250円のストックオプションを手に入れた場合、すぐに権利を行使してもメリットはありません。

しかしその後会社が成長し、株価が上昇すれば、そのときの株価がいくらであれ、250円で株を購入することができます。

例えば株価が500円のときにストックオプションを使い、株を250円で手に入れたとすると、市場でその株を売れば差額250円の利益を得ることができます。

このような、会社が成長(株価上昇)に伴い価値が上がるストックオプションの特徴を活かして、役員や従業員にストックオプションを報酬として与え、業務に対するモチベーションアップにつなげるといった使われ方もされています。

自社株買いは、このストックオプションで交付するための株を手に入れるためにも行われます。

(3)敵対的買収に対する防衛

自社の持株比率を高め、ライバル企業などからの敵対的な買収を防ぐという目的のために自社株買いが行われることもあります。

自社株買いを行うと自社の持株比率が上がるとともに、上記の(1)ように株価が上がることが期待され、買収に必要となる資金を増加させ、買収を難しくするといった効果もあります。

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2、自社株買い制限のルールは?

自社株買いは、特に目的を定めなくても、金庫株(自社で保有し、市場に出回らない株)として保有するために行うことができます。

ただ完全に自由に行えるわけではなく、一定のルールに従って行われることになっています。

(1)財源規制

自社株を買うということは、その対価分だけ会社から資産が出ていくことになります。

そのため利益が出ていないにも関わらず無制限に自社株買いが行われると、会社には自社株しか残らないといったことも考えられます。

利益も出ておらず、資産もなくなったとなれば株価は当然下がり、株主や会社債権者の利益を損なうことになってしまいます。

そのため自社株を取得する対価として使うことのできる資金は、自己株買いを行う日における「分配可能額の範囲内」でなければならないというルールとなっています。

つまり自社株買いは、基本的に分配可能な(会社の外に出しても良い)会社の利益の範囲内で行われます(利益以上に自社株買いを行うためには、減資などによって分配可能額を増やさなければならない)。

(2)株主総会決議

自社株買いは株主の利益に影響を及ぼすものであるため、以下の内容について株主の同意(株主総会での普通決議)が必要になります。

  1. 取得する株式数の上限(株式の種類と種類ごとの数)
  2. 株式取得の対価(その内容・総額)
  3. 株式を取得することができる期間(1年未満で定める)

上記事項について株主総会で決議が得られれば、以下のような具体的な取得条件については、取締役会において自己株取得の都度決議し、自己株買いが行われることになっています。

  1. 取得する株式数(株式の種類と種類ごとの数)
  2. 一株あたりの対価(その内容、額)
  3. 対価の総額
  4. 申込期日
  5. 一株あたりの対価(その内容、額)

(3)買付条件

株式市場で自社株買いを行う場合、その買付によって株価を釣り上げてしまい、金融商品取引法で禁止されている、相場操縦行為に該当する可能性が高くなります。

そのため、市場で自社株買いとして株式の買付を行う場合、以下のような制限が設けられています。

    • 1日に2つ以上の証券会社で買付けをしない
    • 1日の買付は直近の4週間における1日あたりの平均取引数量の25%まで
    • 【寄付前の買付】
    • 寄付前に買い注文を出す場合には、前日終値以下での指値注文に限る
    • 【寄付後の買付】
    • 寄付後の買い注文では、その日の高値を超える価格での指値注文はしない
    • 寄付後の買い注文では、直近の売買価格を上回る価格で反復継続した指値注文はしない
    • 大引け前30分は買付けしない(終値に影響することを防ぐため)
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3、自社株買いが行われるタイミングは?

自社株買いは重要な経営戦略のひとつであり、その目的に応じたタイミングで行われます。

以下のようなタイミングでは自社株買いが行われやすいと言えます。

(1)業績が好調にも関わらず株価が割安な水準にある

なんらかの影響で株価が下がっており、自社の実力に対して割安な水準にある場合には自社株買いが行われやすいと言えます。

株価が割安であれば株価の引き上げ効果が現れやすく、自社株買いがより効果的な株主還元策となるためです。

逆に株価が割高であれば、配当金を増やす(増配)ことにより株主還元を行う企業が多いようです。

また自社株買いを行うことは、会社の株価が割安だと考えていることを市場に示す効果もあり、株価上昇のきっかけとなることもあります。

(2)業績の下方修正・新株発行による増資

業績の下方修正や新株発行による増資などが行われるタイミングでも、自社株買いが発表されることがあります。

業績の下方修正や新株発行による増資が行われると、1株あたり利益が減少し、株価の下落要因となります。

そこで自社株買いにより1株あたり利益を増加させ、減少分と相殺しようとするのです。

4、自社株買いで株価上昇のメリット

当期純利益100億円・発行済株式総数500万株の会社が、100万株の自社株買いを実施した場合

自社株買い前: 1株あたり純利益=100億円/500万株=2,000円
自社株買い後: 1株あたり純利益=100億円/400万株=2,500円

自社株買い前の株価が2,000円(PER10倍)であり、自社株買い後もPERが変わらなかったとすれば、理論上の株価は2,500円となります。

このように自社株買いでは発行済株数が減少し、1株あたり純利益が増加することによって株価の引き上げ効果が期待できます。

また会社が取得した自己株は、会計上自己資本からマイナスされるため、自己資本が減少します。

これにより、経営効率を判断する指標であるROE(自己資本利益率)を引き上げる効果もあります。

ROEは欧米では特に重視される指標であり、投資対象として評価されやすくなることも株価にはプラスと言えます。

5、失敗しない自社株買いの注意点

株価にプラスに働くことも多い自社株買いですが、注意も必要です。

(1)自社株がどのように取得されるのか、買付内容を確認

自社株買いを行う場合には、取得する株数や期間などは株主総会決議で大枠が、取締役会決議で具体的な内容が決定されます。

決定した内容については、買付を行う前に公表されます。

公表された内容のうち以下の項目については、自社株買いによる株価への影響を判断する上で重要なポイントとなります。

①取得する株式総数(金額)

発行済株数に対する取得株数の割合が多いほど、1株あたり純利益の押し上げ効果は高くなり、より株価の値上がり期待が高くなります。

②買付期間

買付期間終了直後は、自社株買いの買い支え効果が失われるため、一時的な株価下落に注意が必要となります。

③取得方法

取得方法が「市場買付」であれば、自社株買いによる株価押し上げ効果が期待できます。

しかし「自己株式立会外買付取引において買付」となっている場合、機関投資家や大株主などから取引時間外に取得されます。

これらの株は特定株など、普段株式市場に流通しない株が多く、株価への影響が現れにくくなります。

(出所:トヨタ自動車(株)自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ

(2)金庫株となった自社株の処分は株価下落要因

自社株買いによって会社が取得した自社株は、金庫株として会社が保有することになります。

1株あたり利益や自己資本などを計算する際、金庫株は「ないもの」として扱われます。

しかし、実際に「消却」されていない段階では、完全になくなったわけではありません。

そのため会社が一旦取得した自己株(金庫株)を、第三者に売却(処分)することもあります。

この場合「ないもの」とされていた金庫株は、再び市場で流通することになります。

これは新株を発行するのと同じようなものであり、発行済株式が増加し、自社株買いで引き上げられた1株あたり純利益を、再び押し下げることになります。

つまり自社株の処分は株価下落要因となるのです。

そのため、自社株を消却しないまま保有している会社は、自社株処分により株価が下落するリスクを内包していると言えます。

特に自社株を大量に保有していたり、資金調達ニーズが高い会社には注意しましょう。

逆に保有していた金庫株が消却された場合には、自社株処分による株価下落リスクが取り除かれたことが好感され、株価が上昇することもあります。

6、自社株買い発表企業の実例

では自社株買いが行われた後には、株価はどのように動くのか、実際のケースで確認してみましょう。

(1)KDDI(9433)

KDDIは2018年5月10日、増配とともに、自己株を除く発行済株式総数の2.62%に相当する6,300万株、取得総額1,500億円を上限とする自社株買い、発行済株式総数の2.13%に相当する5,520万9,080株の自己株消却を発表しました。

(出所:KDDI (株)自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ

業績が堅調に推移していることに加え、増配・自社株買い・自社株消却という株主還元に積極的な姿勢が評価され、翌日には年初来高値をつけ、その後株価は堅調に推移しています。

(2)カドカワ(9468)

カドカワも2018年5月10日に、自己株を除く発行済株式総数の3.95%にあたる260万株、取得総額30億円を上限とする自社株買いを発表しています。

(出所:カドカワ(株)自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ

ニコニコ動画の事業の赤字転落など大幅な減益となった同社は、2019年3月期の営業利益を前期比約1.5倍の80億円とする業績予想を同時に発表しています。

自社株買いや業績回復予想などを受けて、翌11日には株価はギャップアップして始まり、一時前日比143円(12.4%)高まで急騰しました。

しかし、業績予想に対する懐疑的な見方も強く、翌週には株価は発表前の水準まで戻し、その後低調に推移しています。

堅調な業績の裏付けがあるKDDIとは、明暗が分かれる形となったと言えます。

6、自社株買いをしそうな会社を事前に見つける3つのポイント

上記のケースのように、自社株買いの発表があると直後に株価が上がりますが、その後は利益確定などの売りに押され、株価が下落することが多いと言えます。

つまり発表直後にその銘柄を買うと、高値掴みになる可能性が高いということになります。

そのため自社株買いで利益を得る可能性を高めるには、自社株買いが発表される前に、自社株買いをしそうな会社に投資しておくこともポイントです。

自社株買いが行われる可能性が高いのは、以下のような特徴がある会社です。

(1)キャッシュリッチな会社

自社株買いには資金が必要であり、財源規制もあります。自由に使える現金(キャッシュ)を多く保有している会社は、自社株買いを行いやすく、その規模も大きくなりやすいと言えます。

(2)過去に自社株買いの実績がある会社

自社株買いは経営戦略のひとつでもあり、株主還元に対する姿勢や経営方針などは、それまでの流れを踏襲することが多いと言えます。

そのため過去に自社株買いを行なったことがある会社は、今後も自社株買いの可能性が高くなります。

(3)ROE改善に取り組んでいる会社

ROE改善に取り組んでいる会社は、その一環として自社株買いが行われる可能性があります。

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7、自社株買いを評価する3つのポイント

発表された自社株買いの内容によっても、その後の株価の動きは変わってきます。

ここでは発表された自社株買いの内容から、その銘柄を買うべきなのか判断するためポイントについて押さえておきましょう。

(1)自社株買いの規模・期間

一般的に、自社株買いの規模が大きく、買付期間が短いほど、株価への影響は大きくなります。

自社株買いの規模は「自己株式を除く発行済株式総数に対する割合」によって確認できます。この割合が大きいほど、またその銘柄の通常の出来高や、市場で流通している浮動株に対して、取得する株数が多いほど、株価への影響も大きくなると言えます。

さらに買付期間が短ければその期間に買いが集中し、株価が上がりやすくなると言えます。

(2)自社株買いの実績

自社株買いを行うと発表しても、通常は取得する株数(・金額)の上限が発表されるだけです。そのため実際に買付が行われるか、買付が行われても、そのくらい買付が行われるのかは発表時点ではわかりません。

自社株買いの発表だけして、実際には買付が行われないというケースもあります。

その企業が過去にも自社株買いを行っている場合には、その結果がIR情報(自己株式の取得状況)に公開されています。

買付を行った実績が確認できれば、今回も買付が行われる可能性は高いと言えるため、株を買う前に確認しておきましょう。

(3)自社株買いがすでに株価に織り込まれていないか

定期的に自社株買いが行われている会社や、自社株買いが予想されていた会社であれば、自社株買いが発表された時点で、すでに株価に織り込まれている可能性が高いと言えます。

買付内容が予想を上回った場合にはサプライズとなり、さらに株価が上昇する可能性はありますが、予想通りであれば材料出尽くしで売られることも想定されるため、発表直後は様子見が無難です。

8、企業分析手法をさらに身につけたい人のための本

(1)日本株で成功するバフェット流投資術

バフェットを長年研究してきた著者が、優良な企業をバーゲン価格で買うコツについて、具体的な数字や分析手法で解説した一冊です。

URL:日本株で成功するバフェット流投資術

(2)やっぱり会計士は見た!本当に優良な会社を見抜く方法

会計士である著者が、「本当に強い企業」と「危ない企業」を決算書の数字から読み解く一冊です。本当に強い企業は自社株買いを選んでいます。

URL:やっぱり会計士は見た!本当に優良な会社を見抜く方法

まとめ

いかがでしたでしょうか。

自社株買いには株価を引き上げる効果があり、株主にとってメリットの大きな施策だと言えます。

しかしどのような目的・タイミングで自社株買いが行われているのか、さらにその買付内容をよく確認しておかなければなりません。

またその企業の業績や財務状態などを伴っているかが重要なポイントとなります。

むやみに飛びついて思わぬ失敗をしないよう、しっかりとポイントをおさえ、自社株買いをうまく活用していきましょう。

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証券会社、生損保代理店での勤務を経てファイナンシャルプランナーとして独立。

(保有資格)1級FP技能士・証券外務員一種
(試験合格)宅建士・行政書士

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