投資信託に限らず、売却して利益を現金で確定させることを「利益確定」と言います。
利益確定させないといけない理由は、投資商品は評価額が時々刻々と変わって保有している間に値上がりしたり値下がりしたりするので、それを眺めている状態では現金が増えたことにならないからです。
売却して投資商品を現金にしたとき、初めて損得が確定します。プラス評価の状態で売却して得を確定させることを、特に「利益確定」と呼ぶのです。
投資を始めた方が最初につまずくのが商品選びなのですが、次につまずきやすいのが「いつ利益確定したら良いのか」という点です。
投資信託を買ってみたは良いものの、いつまで続けていつ売却すれば良いのか、困ってしまっている方もいるのではないでしょうか?
この記事では利益確定するタイミングや、確定せずに投資を続けても良いケースなどを解説していきます。いつ売却すれば良いのか、利益確定をする目安は何なのかなど、投資を始めたばかりの方の手助けになればと思います。
投資信託で利益確定するまでの流れ
まだ投資を始めていない方もいるかと思いますので、投資信託を買って利益確定するまでの流れをおさらいしていきましょう。まだ投資をしていない方も頭の中でシミュレーションしながら、以下の3ステップをご覧ください。
- 投資信託を購入する
- 保有している間に価格が上がる
- 売却して利益を確定する
ステップ1:投資信託を購入する
まず、投資信託を購入しなければ始まりません。投資信託は銀行や証券会社などの窓口でも申し込めますが、インターネット証券会社を使えばオンラインで手続きができるのでおすすめです。
インターネット証券会社なら、100円から投資信託を購入することができます。投資に対して怖い感覚がある方も、少額から始めれば慣れていけるでしょう。
ステップ2:保有している間に価格が上がる
投資信託は毎日価格が変わります。日が経つにつれて、買ったときの価格より値上がりしたり、値下がりしたりします。
投資は元本保証ではなく、また必ず利益が出ると約束されているものでもありません。そのため、1万円分の投資信託を購入したとしても、1万1,000円に増えることもあれば、9,000円に減ってしまうこともあります。
また、投資信託は長期的な投資を前提として運用されています。価格は毎日変わりますが、前日と比べて値上がりしたか値下がりしたかといった少しの動きは、あまり気にする必要がないでしょう。
「年単位で価格が上がっていれば良し」と思って保有するスタンスがおすすめです。
ステップ3:売却して利益を確定する
価格が上がって十分なプラスが出たとしても、投資信託を保有している状態では、利益を現金でもらうことはできません。
投資信託を買ったときの値段と売ったときの値段の差額が利益になるため、売却しなければ利益を現金で受け取れないのです。
そのため、売却する必要があります。
それまでは日々変動していた投資信託ですが、現金に換金することで価格が決まり、利益の金額も確定します。これが「利益確定」です。
利益確定という用語は、価格が変動する投資商品を手放しプラスの利益を確定させることを言います。値下がりしてマイナスになっているときも売却して損失を確定させることはありますが、あまり「損失確定」とは言われません。「損切り」と呼ばれることが多いでしょう。
投資信託で利益確定するタイミングはいつ?
投資で最も難しいのは、売るタイミングだと言われています。一般的には「利益が出ているときに売却せよ」と言われますが、少し利益が出ている状態で利益確定させた方が良いのか、大きな利益が出るまで待った方が良いのかなど迷ってしまうので、決して簡単ではありません。
さらに、売却するべきなのは利益が出ているときだけではありません。損失を確定させるために売却することもあります。
この項目では、投資信託を売却して利益確定するべき5つのタイミングについて解説していきます。いつ売ったら良いのか迷っている方は、これらのタイミングのどれかに当てはまったときに売却を考えてみてはいかがでしょうか。
- 目標金額に到達した場合
- リバランスを行う場合
- 別の商品に乗り換える場合
- 損切りする場合
- お金が必要になった場合
タイミング1:目標金額に到達した場合
マイホームの頭金を作るためなど明確な目的があって投資を始めた方は、目標金額を達成したタイミングで利益を確定させるのが良いでしょう。
運用がうまく行っているときは、「目標額は超えたけど、もう少し待ったらもっと増えるかも」と思ってダラダラと投資を続けてしまいがちです。ですが、うまく行っているときに勝ち逃げすることを強くおすすめします。
というのも、リーマンショックやコロナショックのような大暴落は突然やってきます。
リーマンショック前もコロナショック前も景気が良かったので、専門の投資家だけでなく一般の方も投資をしていました。ですが、突然の暴落に巻き込まれて資産を失うことになってしまいました。
ITバブル崩壊、リーマンショック、コロナショックと世界的な経済後退を振り返ると、10年に一度くらいのペースで大暴落がやってきます。「未来永劫ずっと儲かる市場」はなく、どこかで暴落して調整されるというのが、過去から学べることでしょう。
投資で目標を達成した方も、ダラダラと投資を続けていると突然の暴落に巻き込まれて資産を減らしてしまうことになるかもしれません。その結果、目標額を下回ってしまったら、「儲かっているときに売っておけば良かった」と思うでしょう。
タイミング2:リバランスを行う場合
国内や海外などさまざまな投資信託に投資している場合、それぞれの資産のバランスをある程度一定に保って運用するのが効率良い運用方法とされています。例えば、日本株式と海外株式に5割ずつ投資すると決めた場合、そのバランスを守って投資をしていくと良いということです。
ところが、商品ごとに利益の大小にばらつきがあるので、投資を続けているとバランスが崩れてきます。始めた頃は日本株式と海外株式が半々だったのに、海外株式で大きな利益が出て日本株式2割、海外株式8割の偏ったバランスになってしまうといったケースです。
このような場合、利益が出すぎている商品の利益確定を行って利益が少ない商品を買い増しし、バランスを整えると良いでしょう。この作業を「リバランス」と言います。
例の場合だと、海外株式の一部を利益確定して日本株式を買い増します。リバランスは割高になった商品を売って、割安になった商品を買うルールなので、基本的には望ましい投資行動です。
タイミング3:別の商品に乗り換える場合
既に投資した商品よりも魅力的な商品が登場した場合、利益確定をして乗り換えても良いでしょう。魅力的な商品の定義はさまざまですが、例えば同じような運用方法なのに投資家が負担するコストが低い投資信託が登場した場合が考えられます。
投資信託を保有するには、信託報酬を支払わなければなりません。投資信託は運用をプロに任せられる商品で、プロに支払う手数料などがかかるからです。
信託報酬は安いほど投資家が助かるので、各社の投資信託では信託報酬の引き下げ競争が起きています。よって、今投資している商品よりも信託報酬が少なく、魅力的な商品が将来的には登場するかもしれません。
このように、より魅力的な商品が登場した場合、利益確定して乗り換える選択も良いでしょう。ただし、売買するのに手数料もかかるので、商品の乗り換えが本当に得なのかよく考えてから行動してください。
タイミング4:損切りする場合
3つめのタイミングまでは、投資信託で利益が出ている場合を前提に解説してきました。ここでは、マイナスが出ている場合を想定していきます。
すなわち損切りのために投資信託を売却することもあり得ます。
投資を始めたときよりも価格が下がってマイナスの利益が出ている場合、損切りをして構いません。問題はどれくらいの損失が出ているかで、どこまでマイナスは我慢して、ここを下回ったら損切りするというラインは投資家自身が決めていくしかありません。
一般的には「10パーセント以上の損失が出たら売却する」と決めておく、などルールを数値で決めておくことが推奨されます。
また、損失が一時的なものなのか、運用会社の運用が下手で損失が出ているかなど、原因によっても損切りするべきかどうかは異なります。前者なら回復するのを待って保有し続けることもできますが、後者に気づいたなら一刻も早く売却して資金を引き上げた方が良いでしょう。
投資を続けて良いケースについては後述するので、あわせてご参照ください。
タイミング5:お金が必要になった場合
急にお金が必要になった場合も、利益確定して問題ありません。例えば、マイホーム購入のために投資を始めたけれど、子供を公立ではなく私立の学校に通わせたくなった場合などです。
この場合、当初の目標は諦めるか、新たに資産形成をしていくかの選択になります。大きなお金を動かすのであれば、人生設計の見直しも必要になるでしょう。
投資を続けて良いケース
ここまでの項目では、利益確定させるタイミング、すなわち投資信託を売却するタイミングについて解説してきました。ということは、反対に投資を続けて良いケースも存在します。
ここからは、投資を続けて良い3つのケースについて見ていきましょう。
- 利益が出ているが目標に届いていない場合
- 分配金がもらえる場合
- 一時的な損失が出ている場合
継続するケース1:利益が出ているが目標に届いていない場合
投資信託は、10年や20年といった長い年月をかけて運用していくものなので、目標額に届くまでは気長に待っておくのがおすすめです。その間に値上がりしたり値下がりしたりを繰り返しながら、資産は増えていきます。
投資を始めたばかりの人にありがちなのが、1円でも利益が出たらすぐに利益確定したくなってしまうことです。初めて利益が出た嬉しさと、値下がりしたらどうしようという不安から、せっかちになってしまっているのです。
そこまで焦る必要はないので、気長に資産の成長を待ちましょう。
継続するケース2:分配金がもらえる場合
投資信託には、分配金あり・なしの2種類の商品があります。
分配金なしの投資信託の場合、売却しなければ利益確定はできませんが、分配金ありの投資信託なら定期的に分配金という形で利益をもらえます。投資信託の価格が下がっているときでも、焦って売却する必要はないケースもあるのです。
分配金には普通分配金と特別分配金(元本払戻金)の2種類があり、利益を分配するのは普通分配金です。普通分配金をもらうことが小まめな利益確定であるとも考えられるので、分配金が安定してもらえている間は売却しなくても良いと判断できます。
継続するケース3:一時的な損失が出ている場合
投資信託は短期的には値上がりと値下がりを繰り返すので、利益が出ているようにあまり感じられないかもしれません。そもそも、3歩進んで2歩下がるようなイメージで、長い目で見ればプラスになっていることを目指す商品です。
そのため、一時的なマイナスはどんな商品でも起こります。マイナスになる度に取り乱して売却していたのでは売買手数料が無駄ですし、ストレスがたまって精神的にも良くないでしょう。
一時的な損失のときは売却せず、耐えることをおすすめします。何を一時的と判断するのが難しいのですが、一般的には「〇パーセント以上のマイナスが出たら損切りする」と決めておきます。
その水準までは耐え、回復するまで放置しておくくらいの楽観的なスタンスの方が、メンタルには優しいでしょう。
投資信託を利益確定する時に知っておくべきこと
投資信託で目標金額を達成するなどのタイミングで、利益確定して良いことをお伝えしてきました。ですが、利益確定の前に理解しておきたい注意事項があります。
この項目では、以下の3つの注意点について見ていきましょう。
- 解約時にコストを支払う商品がある
- 利益には税金がかかる
- 換金できるまで数日かかる
注意点1:解約時にコストを支払う商品がある
投資信託を売却するときは、手数料などのコストを支払う場合があります。できれば投資をする前にこのようなコストを確認し、高すぎない水準かどうか確かめておきましょう。
売却するときに支払うのは、信託財産留保額と解約手数料(売却手数料)です。
信託財産留保額は、運用会社が投資商品を売却して現金にするときなどに必要なコストです。売却を申し込んだ投資家が負担する仕組みになっています。
解約手数料は、売却するときにかかる手数料です。最近では解約手数料が無料で、信託財産留保額のみかかる商品が多いのですが、まれに解約手数料が設定されている商品もあります。
注意点2:利益には税金がかかる
投資で得られた利益には、約20パーセントの税金がかかります。投資信託を利益確定させた場合、利益の約20パーセントが源泉徴収されると覚えておきましょう。
したがって、目標の金額を達成したからといってすぐに売却してしまうと、税金が差し引かれて目標の金額を下回ってしまうことがあります。税金を支払っても目標の金額が残るくらいにお金が増えてから売却しましょう。
注意点3:換金できるまで数日かかる
投資信託を売却してから現金として入金されるまで、数日かかります。即日換金できないので、期限のある支払いに充てる場合、余裕をもって売却しましょう。
換金するまでに、一般的には3営業日ほどかかります。商品によっては1週間程度かかることもあります。
知っておきたい投資の利益に税金がかからない制度
投資で得られた利益には約20パーセントの税金がかかりますが、ある制度を利用すれば利益が非課税となります。
その節税できる制度がiDeCoやNISA、つみたてNISAです。これらの制度は投資できる金額の上限や仕組みなどが異なるのですが、多くの投資信託を取り扱っています。
iDeCo、NISA、つみたてNISAについてはこちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
まとめ
投資を始めた後に迷いやすい利益確定のタイミングについて解説してきました。目標の金額を達成したときだけでなく、臨機応変に利益確定していく参考にしていただければと思います。
また、売却すると利益に税金がかかるといったデメリットもあります。注意点を理解してから利益確定に踏み切りましょう。