じっくりと企業の価値を見極め、その価値に対して株価が割安に放置されている銘柄に投資する。
このバリュー投資を実践する投資家は、長期にわたって安定した利益を上げています。
世界一の投資家ともいわれる、ウォーレン・バフェット氏もそのひとりとして知られています。
企業の価値をしっかりと分析し、本来の価値よりも安い割安に放置されている銘柄に投資するバリュー投資は、細かい値幅を狙うデイトレードとは異なり、1日中チャート画面に張り付いている必要もありません。
その企業の価値が正しく評価され、株価が上がるまで腰を据えて待つバリュー投資では、株価を常にチェックし続ける必要もないため、忙しいサラリーマンの方などには、特におすすめの投資手法だと言えます。
バリュー投資とはどのような手法なのか、どいうった銘柄に投資すればいいのでしょうか。
バリュー投資を実践するため、押さえておきたいポイントについて解説していきます。
1、バリュー投資とは
リサイクルショップやフリーマーケットなどで、ものすごい価値のある商品がガラクタに混じって売られていることがあります。
値段をつけたのが新人のアルバイトだった、早く処分したかったなど、なんらかの事情で、今付いている値段が必ずしもその価値を正しく表しているとは言えないのが市場(マーケット)です。
しかし市場の原理としては、いずれ本来あるべき価格へ修正されていきます。
これは本当に価値があるものであれば、その価値を見抜く人が現れるからです。
安く手に入れた商品でも、専門店やネットオークションに持ち込めば、高値で買い取ってもらえ、その後は本来あるべき価格で流通するようになるのです。
バリュー投資とは、なんらかの事情によって、本来の価値に対し株価が割安な状態にある銘柄(バリュー株)を買い、市場が本来の価値に気付き、あるべき水準の株価まで上がるのを待って利益を得る投資手法です。
バリュー株はこれまで見向きもされなかった銘柄であり(だから割安に放置されている)、市場が本来の価値に気付くまでには時間がかかることも覚悟しなければなりません。
しかし、その株(企業)本来の価値を見極め、それよりも安く株を買っているため、値下がりするリスクも低くなります。
じっくりと腰を据えた長期投資、これがバリュー投資の基本です。
2、バリュー株の発掘方法
多くの銘柄の中に埋れているバリュー株を見つけ出すには、条件を満たす銘柄を抽出できるスクリーニングが役立ちます。
株価の割安性を判断する代表的な指標が、PERとPBRです。
(1)PER(株価収益率)
PER(倍)= 株価 ÷ 1株あたりの当期純利益
株価が1株あたりの純利益(利益からすべての経費を差し引いたあとの利益)の何倍の水準にあるかを表す指標です。
その企業の収益性(利益・業績)に対する株価水準を図るために用いられます。
同業他社のPERを下回る場合には、株価が収益性に対し割安だと判断するひとつの目安となります。
(2)PBR(株価純資産倍率)
PBR(倍)= 株価 ÷ 1株あたりの純資産
株価が1株あたりの純資産(すべての資産からすべての負債を差し引いて残る資産・解散価値)の何倍の水準にあるかを表す指標です。
その企業の資産価値に対する株価水準を図るために用いられ、PBRが低いほど株価が資産価値に対し割安ということが言えます。
PBRが1倍を下回るということは、その企業が解散した場合に株価より多くの払い戻し金がある状態です。
極端な話、株を買い占めてその企業を手に入れ、資産を全部売却することで利益が出せるのです。
そのような状態は普通ではなく、理論上はPBR1倍を下回らないはずなのですが、中にはPBRが1倍未満の銘柄も存在します。
東証1部全銘柄の平均PBRは1.31倍(2018年7月13日時点)であり、この水準を下回れば現在の株価水準が割安だと判断する目安となります。
(3)その他の判断指標
PERやPBRのほか、以下のような指標なども、バリュー株を見つけるためのスクリーニング条件として用います。
ROE (自己資本利益率) | ROE(%)=(純利益÷自己資本)×100 資本を使い効率的に利益をあげているかを示す指標です。 |
時価総額 | 時価総額=株価×発行済株式総数 企業の規模を評価する指標。流動性を判断する要素でもあります。一定規模以上の企業を投資対象とすることで流動性リスクの軽減を図ります。 |
自己資本比率 | 自己資本比率(%)=(自己資本÷総資本)×100 企業の総資本(資産)に占める自己資本の割合で、財政状態の健全性や長期的な安全性を示す指標。企業の財務状況の安定性を判断する要素となります。市場に評価されるまでに、企業が倒産しては困ります。 |
(4)スクリーニング条件
バリュー株候補としては、各指標が以下のような条件を満たすものを抽出します。
バリュー株候補スクリーニング条件 | |
(予想)PER | 市場平均×0.8以下 |
PBR | 市場平均×0.8以下 |
ROE | 8%以上 |
時価総額 | 100億円以上 |
自己資本比率 | 40%以上 |
スクリーニングは、各証券会社のスクリーニング機能や、FISCO(フィスコ)などのスクリーニング機能を利用すれば簡単に行うことができます。
スクリーニング の結果抽出された銘柄は、あくまでバリュー株の”候補”です。
この候補銘柄の中から、業績や将来性、財務状態などを総合的にみて、その企業価値が株価に”正しく”反映されていないと判断できる銘柄だけがバリュー株と言えます。
3、業績・将来性・財務状態を財務諸表で確認
財務諸表は、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つから構成され、決算ごとに公表されます。
企業の財務状態やお金の流れ、稼ぐ力など、企業の価値を見極める上で、最も重要な資料です。
(1)貸借対照表(バランスシート)
ある時点における企業の資産や負債、資本の状態が示されている。
財務状態の健全性や、経営の安定性を把握することができる。
(2)損益計算書
一定期間に企業があげた収益と、かかった費用が示されている。
企業の収益性や、効率よく利益を上げられているのかをみることができる。
(3)キャッシュフロー計算書
企業の会計期間におけるキャッシュ(現金や現金同等物)の増減、つまりはお金の流れ(キャッシュフロー)が示されている。
キャッシュフロー(CF)は「営業CF」「投資CF」「財務CF」の3つに区分され、企業の資金繰りの状況や、資金をどのように使っているのかを読み取ることができる。
銘柄で検索し決算短信や有価証券報告者などの開示資料を確認できるサイト・バフェット・コード
バリュー投資で購入する株とは、基本的に長い付き合いとなります。
企業の価値が正しく評価され株価が上がるためには、その価値が将来に渡って維持・成長していなければなりません。
財務状態や業績について、その継続性や将来性に問題がないか。
投資をする前に、それを財務諸表から確認するのです。
スクリーニングでバリュー株”候補”として抽出した銘柄に対し、それぞれの財務諸表を読み込みます。
その結果、業績・将来性・財務状態に問題がなく、本来の価値よりも低く評価されている銘柄が、バリュー株として投資対象となります。
4、なぜ地銀株は低PBRなのか
低PBRランキングは、地銀株がほぼ上位を独占状態 出所:FISCO
PBRの低い銘柄をスクリーニングすると、地銀株が並びます。
高知銀行(8416)のPBRは0.20倍(2018年7月13日時点)。これは保有する資産に対して、8割引(20%の価格)で売られている状態です。
なぜこのような状態になっているのでしょうか。
これには、金利低下や規制強化など、銀行業界全体を取り巻く厳しい状況に加え、高齢化や人口減少という問題も抱える地銀に対し、収益性や企業価値の低下を見込む投資家が多いことなどが影響していると考えられます。
現在の価値を基準とすれば低い評価にみえる株価も、将来の価値を基準とすれば実は”正しく”評価されているのかもしれません。
バリュー投資は、株価が企業本来の価値を反映した水準まで戻ることによる値上がりを狙うものです。
それは企業の価値が、少なくとも下がらないことが前提と言えます。
将来性に疑問があれば、今は割安にみえても今後株価が上がる可能性は低いということになります。
5、バリュー投資は長期が基本!でもアクティビストが投資している銘柄ならより早く成果が得られるかもしれない
バリュー投資の投資対象は、多くの投資家が注目していない銘柄が多く、銘柄選択が間違っていなかったとしても、株価の値上がりとして現れるまでには時間がかかるものです。
それはわかっていても、できることなら早く成果を実感したい。
そんな場合には、アクティビストといわれる「物言う投資家」が投資しているバリュー株を狙うのもひとつの方法です。
バリュー投資を行うアクティビストは、ただ株価が上がるのを待つだけでなく、一定の影響力を持てる数の株式を保有し、企業価値を向上させるよう、自ら積極的に企業に働きかけを行うのが特徴です。
彼らの働きかけによって、企業価値が向上したり、市場の注目が集まりやすくなったり、比較的早く株価の値上がりが期待できます。
もちろんアクティビストが投資しているからといって、必ず株価が上がるというものではありませんので、投資するかは慎重に判断しましょう。
アクティビストが投資する銘柄を下記でご説明します。
(1)TBSHD(9401)
保有するアクティビスト | Asset Value Management | ||||
予想PER | 実績PBR | ROE | 時価総額 | 自己資本 比率 | 過去3年間 騰落率 |
23.68倍 | 0.71倍 | 3.2% | 4096億円 | 71.0% | 47.13% |
(2)内田洋行(8057)
保有するアクティビスト | ストラテジックキャピタル | ||||
予想PER | 実績PBR | ROE | 時価総額 | 自己資本 比率 | 過去3年間騰落率 |
18.2倍 | 1.02倍 | 6.0% | 319億円 | 34.8% | 75.00% |
(2018年7月13日時点・過去3年騰落率は2015年6月末〜2018年6月末の騰落率・チャート参照:SBI証券)
上記の株価の上昇率からも分かるように、アクティビストが投資している銘柄は日経平均や他の銘柄と比較しても上昇率が高いことがわかります。
ご自身で運用される時間がない方や、銘柄選定が難しいという方は、このような投資会社等に運用をお願いしても良いかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
低PBRのバリュー株は、比較的値下がり余地が少なく値上がりも狙えるため、投資対象としての有力な候補と言えます。
投資するかを判断する際には、PBRがなぜ低いのか、その企業の将来性に問題はないかなど、しっかりと分析することが大切です。
バリュー株の株価が上がるまでには、ある程度時間がかかるものです。
少しでも早く成果を得たいという場合には、アクティビストが投資している銘柄を狙ってみるというのも良いかもしれません。