株式市場が始まって以来、多くの投資家によって作られてきた「投資手法」。
その数や方法は非常に多岐にわたっていると言えますが、その中でも再現性のある手法として長く語り継がれてきているのが「バリュー投資」です。
本来の企業価値・株価と比べ安く放置されている銘柄を購入し、株価が上がったときに売りぬく、というバリュー投資の考え方は原則不変でありながら、日々企業分析を行い企業価値を考察するトレーダーたちにより更にその確度・精度が磨かれ続けています。
今回はそんなバリュー投資の特徴やメリット・デメリットについて、そしてバリュー投資を行っている投資ファンドをチェックしていくことでバリュー投資に関する理解を深めていきましょう。
- 1 1、バリュー投資とは
- 2 2、バリュー投資のメリット・デメリット
- 3 3、中長期投資のメリット・デメリット
- 4 4、投資リターンの高いバリュー投資ファンド10選
- 4.1 (1)ダイワ 日本株・バリュー発掘F(ダイワSMA) ★★★★
- 4.2 (2)ノムラ・ジャパン・バリュー(野村SMA向け) ★★★
- 4.3 (3)ノムラ・ジャパン・バリュー・オープン ★★★
- 4.4 (4)ダイワ 日本株・バリュー発掘F・H(ダイワSMA) ★★★★★
- 4.5 (5)ダイワ 日本株・バリュー発掘F(ダイワSMA) ★★★★
- 4.6 (6)米国小型バリュー株ファンド Aコース(H有)『愛称 : アメリカン・エンジェル』 ★★★
- 4.7 (7)イーストS・ジャパン中小型厳選バリュー株F ★
- 4.8 (8)シンプレクス・ジャパン・バリューアップF ★★★★
- 4.9 (9)インベスコ マグナム・ジャパン・バリュー ★★★★
- 4.10 (10)日本割安株オープン 『愛称 : ザ・バリューオープン』 ★★★
- 5 5、バリュー投資・中長期投資を行う投資会社
- 6 まとめ
1、バリュー投資とは
さて、最初にも簡単に触れた通り、バリュー投資の本質は「安く買って高く売る」というものです。
本来の適正株価と現時点での株価が離れている銘柄を見つけて取引を行うバリュー投資はPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本利益率)といった財務諸表における資産と利益の関係性などを重視しながら行う手法です。
いわゆる「ファンダメンタルズ分析」と近しいものを持っており、チャート分析に着目して行う「テクニカル分析」とは対立した流派と言えます。
バリュー投資の始祖であるベンジャミン・グレアムがその特徴について、いくつかの名言を残しています。
『株式市場に繰り返し割安状態を作り出す相場の気紛れはあらゆる相場水準において割安銘柄を生み出している。株価を過小評価する原因が2つ考えられる。一つは、一時的な業績の不振二つ目は、長期にわたる無関心および不人気である。』
『現在の収益と目先の見通しは悪くても将来の状態を冷静に評価すると、現在の価格よりもはるかに高い価値を示すことがある。以上のことから、市場が低迷している時期にこそ勇気を持つことがいかに賢明かということが経験だけではなく、信頼できる価値分析法によっても証明できる。』
彼の著作である『賢明なる投資家』にもこういった考え方が多く記されていますので、気になった方はそちらもチェックしてみてください。
やや分かりにくい表現となっていますが、彼の言いたいことの根幹にあるのは「株価は常に適正な価値を示すわけではなく、そのミスマッチを狙って投資を行うことが収益を得られる方法の一つである」ということです。
株価というものは需給要因や市場地合いで決まるという性質も持っているため、その株価が常に正しい価値であるとは限らないのはインターネット投資が盛んになった今でも変わらない事実です。
(むしろ情報量が増えたことによって、株価を形成する要因はより難解になったと言えるでしょう)
基本的には「安く買って高く売る」のがバリュー投資ですから、「高く売る」、すなわち投資先企業が市場に正しく評価され株価が上がるまでには時間がかかるというのが定説です。
よってバリュー投資の時間軸は必然的に中長期、長ければ数年に渡ることもある、というのは頭に置いておきたい事項です。
2、バリュー投資のメリット・デメリット
この項目ではバリュー投資のメリット・デメリットについて考えていきましょう。
先にあげたグレアムの考え方・名言についても触れながら、利点欠点の双方をチェックしていきます。
全ての投資手法はメリットだけを持っているということはなく、ほぼ一様にデメリットも存在します。
市場や経済の状況を定期的に確認しながら、投資法を切り替えていくのが賢いやり方です。
(1)バリュー投資のメリット
①地合いを気にせず投資を行うことができる(暴落はチャンス)
まず一つ目のメリットに挙げられるのが、バリュー投資においては地合い(市場環境の好悪)をそこまで意識する必要がない、ということです。
むしろ相場全体の下落は良い株が雰囲気に釣られ売りたたかれるセールのような場面と見る投資家も多く、上昇相場よりも下落相場を狙っているバリュー投資家の方が多いと言っても過言ではないでしょう。
もちろん持ち株が相場全体の下落の影響を受けることはありますが、それについてグレアムは次のような言葉を残しています。
『株式ポートフォリオは数年単位でみた場合、価格変動の波を免れることはほとんど不可能である。投資家はこうした可能性を理解し財政的にも心理的にも備えておかねばならない。』
②長い目でみた投資であるので、逐一株価のチェックを行う必要がない
ここまで「バリュー投資は中長期投資になることが多い」と何度か書いてきましたが、そのメリットは「逐一株価の変動に気を払う必要がない」という点です。
デイトレードやスキャルピング、スイングトレードといった時間軸が短い投資法は日足、分足レベルでのチャートの動向にも注目し株価チェックを行う必要がありますが、中長期のバリュー投資においては日々の株価の値動きというのはそこまで大きなポイントではありません。
それよりも重要なのは週足、月足といったより長い時間軸で上昇チャートを描いていけるかどうか、株価が本来の価値に近づいてくるかというところですので、短期トレーダーが株価の上下に一喜一憂している間にバリュー投資はニュースや四季報、決算短信などをチェックして日々知識のインプットに努められると良いです。
投資に限らないことですが、時間の概念をどう考え、どう使っていくかということは非常に大事なことです。
「短期間で大きく儲けたい」というのは誰もが一度は考えることですが、本来の目的というのは「長い目で見て利益を出していき続けること」なのです。
大きな損失を被ってしまうとリカバリに時間と費用を費やすことになってしまいますので、「時間(時間軸」は何事においても重視しておきたいポイントであると言えます。
(2)バリュー投資のデメリット
①投資銘柄が評価されるまでに時間がかかる場合がある
バリュー投資の考え方は「安く買って高く売る」というものでした。
グレアムは『投資家とは、自分の持ち株を高値のときに愚かで哀れな投機家に売り、株価が下落したところで彼らから買い戻すという、経験豊かで機敏な人々だと定義できる。』 と述べていますが、この「高く売る」場面が来るのにはそれ相応の時間がかかることも多いです。
基本的に割安株が見直されるのは決算発表に関わるタイミングで、従来予想より業績が良かった場合や業績に上方修正がかかった時などに大きな買い注文が出されることがあります。
他のタイミングでも上昇基調に乗ってくることはありますが、あくまでもじっくりと時間をかけ業績の良化に追随するようにして上がっていくパターンが見られるのが割安株の特徴です。
また、市場全体においてどういった銘柄が買われているのか、というのもバリュー投資においては重要な視点となってくるでしょう。
バリュー株と対の関係にあるのが「グロース株(成長株)」ですが、株式市場においてはバリュー株が重点的に買われるタイミング、グロース株が重点的に買われるタイミングがあります。(同じように内需株・外需株に買い先がスイッチするというケースもあります)
よってバリュー株がいつ買われるかというのは複雑な市場動向によって決まっているため、基本的には「待ち」の姿勢を貫く必要があります。
株価が下がっても自分の買った銘柄が本当に優れた企業であるならば必ず後から株価の反発・上昇は始まってくるでしょう。
②銘柄分析を自分で行う手間がある
これは投資全般に言えることですが、「銘柄選定」は投資リターンを考えるにあたって非常に重要な点です。
バリュー投資であれば先に挙げたようなPER、PBR、ROEなどといった指標や財務諸表のバランスシート(貸借対照表)に記載された情報を基に考察を行っていくことになりますが、これらの数字をどう見てどう使っていけば良いのかというのはなかなか難しいと言えます。
グレアムの「7つの投資基準」の中には「負債比率(D/Eレシオ)が1.1倍未満」「流動比率1.5倍以上」「過去5年でEPSが伸び続けている」といった視点がありますが、こういった条件を元に株式のスクリーニングを行っていくことになります。
このスクリーニングが各証券会社やYahooファイナンスのページからも行うことが可能です。
例えば次のリンクは上場企業のROEのランキングとなっています。
こういった条件指定の使用、各社決算短信の閲覧を通して投資先選定、銘柄分析を行っていきましょう。
3、中長期投資のメリット・デメリット
次に見ていくのは中長期投資のメリット・デメリットですが、これについては前述したバリュー投資のメリット・デメリットと似たところがあると言えるでしょう。
(1)中長期投資のメリット
①長い目でみた投資であるので、逐一株価のチェックを行う必要がない
こちらに関してはバリュー投資で書いたことと全く同じです。
株価にあまりにも大きな変動(下方修正や悪材料による暴落、もしくはその逆)が起きない限り、基本は「買って放置しておく」というのが中長期投資のやり方です。
どうしても株価の上下というのは気になってしまいがちなのですが、それがメンタルに悪影響を与えるというパターンも少なくありません。
長期視点で見ることで含み益・含み損がそこまで気にならなくなり(むしろそのチェックさえ必要ないでしょう)目標株価・もしくは損切ラインまで達するかどうかという大きな視野を持つことができます。
②売買コストが比較的かからない
中長期投資は短期投資と異なり売買回数が減るというのも大きなメリットです。
短期トレードで何十回も売買を繰り返して値幅をとった場合と、中長期トレードで一回の売買で同じ値幅をとった場合では手数料(コスト)が異なります。出来ればコストは最小限に抑えたいのが当然のことですから、中長期投資はその点で短期投資に軍配が上がると言えます。
(2)中長期投資のデメリット
①銘柄保有中資金が拘束される
長い期間で同じ銘柄を保有する、というのはいい点でのみではありません。
他に欲しい銘柄があった際にも悪い意味での資金拘束が起きてしまい、その銘柄を購入できない、という場合に陥る場面があります。
こういったことも予想されるため投資資金は多ければ多いほどよいのですが、資金が少ない場合は許容しなければいけないバリュー投資の一つの側面となってしまいます。
(これを解決する方法としては、「単元未満株(ミニ株)」投資を行うと良いです)
②銘柄分析が外れると時間と利益を失う可能性がある
これはバリュー投資に限らず言えることですが、バリュー投資の場合失敗してしまうと本来別の銘柄に使えたであろう投資時間を失ってしまうというのが大きなデメリットです。
ですので、銘柄選定はバリュー投資においては何よりも重視して行う必要があると言えます。
4、投資リターンの高いバリュー投資ファンド10選
次は「バリュー投資を行っているファンド(投資信託)」の中で、ここ3年のリターンが高いものを順に見ていきます。
投資情報を提供するモーニングスターで投資信託の中から「バリュー」を条件検索したものが次のリンクです。
ランキングを見てもわかるように、投資会社の設定したファンドが上位に名を連ねていることが分かります。
以下のファンド検索サイトから、チャートはリンクをクリック、詳しい情報はリンク先の「目論見書」でチェック可能です。
目論見書からどんな銘柄をポートフォリオに組み込んでいるかを見るだけでもバリュー投資の参考になりますので、是非チェックしてみてください。
(1)ダイワ 日本株・バリュー発掘F(ダイワSMA) ★★★★
基準価額:45,287円
3年トータルリターン:16.17%
資産構成比:国内株式99%
(2)ノムラ・ジャパン・バリュー(野村SMA向け) ★★★
基準価額:15,316円
3年トータルリターン:11.80%
資産構成比:国内株式99%
(3)ノムラ・ジャパン・バリュー・オープン ★★★
基準価額:15,629円
3年トータルリターン:11.31%
資産構成比:国内株式98%
(4)ダイワ 日本株・バリュー発掘F・H(ダイワSMA) ★★★★★
基準価額:9,948円
3年トータルリターン:10.65%
資産構成比:―
(5)ダイワ 日本株・バリュー発掘F(ダイワSMA) ★★★★
基準価額:15,433円
3年トータルリターン:9.21%
資産構成比:国内株式47%、その他53%
(6)米国小型バリュー株ファンド Aコース(H有)『愛称 : アメリカン・エンジェル』 ★★★
基準価額:10,394円
3年トータルリターン:8.69%
資産構成比:国際株式91%
(7)イーストS・ジャパン中小型厳選バリュー株F ★
基準価額:15,904円
3年トータルリターン:7.79%
資産構成比:国内株式99%
(8)シンプレクス・ジャパン・バリューアップF ★★★★
基準価額:23,350円
3年トータルリターン:7.25%
資産構成比:国内株式99%
(9)インベスコ マグナム・ジャパン・バリュー ★★★★
基準価額:14,840円
3年トータルリターン:6.98%
資産構成比:国内株式95%
(10)日本割安株オープン 『愛称 : ザ・バリューオープン』 ★★★
基準価額:18,905円
3年トータルリターン:6.77%
資産構成比:国内株式95%
(基準価額は8月31日時点参照)
5、バリュー投資・中長期投資を行う投資会社
上記に紹介した投資信託の他にも、バリュー投資・中長期投資を行っている投資運用委託会社はいくつか存在します。
その中でも有名なのが投資会社Japan Actで、割安株に投資を行いながらアクティビスト(物言う株主)としてし、投資先企業の財務体質改善やガバナンス強化、株主還元策の提案などの提言を行うことで、企業価値・株主価値向上を図っていきます。
日本においては、大株主に入る程の株式を保有し、経営に関与していくアクティビストの存在は、まだまだ少なく既存の投資ファンドとは一線を画しているのがJapan Actだと言えます。
まとめ
ここまでバリュー投資、そしてそのメリット・デメリットについて見てきましたがいかがでしたでしょうか。
バリュー投資は文中で紹介してきたベンジャミン・グレアム、そしてその弟子であるウォーレン・バフェットが愛し、長きに渡って利益を出し続けてきた投資手法です。
自らで分析をするもよし、バリュー投資を行っている投資信託・投資会社を使ってみるもよし、まずは自分で試してみてバリュー投資の優位性を感じ、掴んでみてください。