iDeCo(イデコ)は元本割れしないわけではない!元本割れした時の対処方法

「iDeCoの運用報告書を見たら元本割れしていた。もうやめたい……」「節税対策で始めたiDeCoがさっそく元本割れ。どうしたら良い?」

iDeCoの運用商品には投資信託も含まれているため、積み立て中に元本割れして焦ってしまうという方は少なくありません。

 

しかし、結論から言えば、iDeCoの運用商品がいくら元本割れしても、焦って売却したり積み立てをやめたりする必要はありません。

iDeCoは長期の視点で老後資金を築く制度です。つまり、一時的な元本割れに一喜一憂しても、仕方ないのです。

当記事では、iDeCoが元本割れしたときの対処法から適切にiDeCoと付き合う方法まで、わかりやすく解説していきます。「どうしても下落に耐えられない」というときの対処法もご案内しますので、iDeCoの元本割れで悩んでいる方は、参考にしてください。

積み立て中のiDeCoが元本割れ!適切な対処法とは?

積み立て中のiDeCoが元本割れ!適切な対処法とは?

iDeCoで積み立て中の運用商品が元本割れしてしまったときは、焦らず平常心を保ち、適切な対処を取ることが大切です。

iDeCoでは「焦って売却」も「毎日の相場チェック」も不要です。くれぐれも慌ててやみくもに行動することのないよう、気をつけてくださいね。

 

ここでは、iDeCoで元本割れしたときに取るべき適切な対処法を詳しくお伝えしていきます。満期前や収入減少時に元本割れが起きたときの対処法もご案内するので、それぞれしっかり確認するようにしてくださいね。

元本割れしたときこそ「焦って売却」は絶対NG

「久しぶりにiDeCoの管理画面や運用報告書を見たら、元本割れしていた」というときでも、焦って売却するのは絶対にNGです。なぜなら長期の積み立て期間中に運用商品が元本割れするのは当たり前のことだからです。

iDeCoで元本割れしている商品の多くは、投資性の強い投資信託だと思います。投資信託は一つのファンドに複数の資産(株や債券など)を保有して分散投資を行うため、低リスクと言われることが多いです。

しかし、どれだけ低リスクで良い投資信託であっても、積み立て期間中の元本割れを避けることはできません。投資信託は元本割れするリスクを取っているからこそ、元本以上に増える可能性を秘めているのです。

 

そして、元本割れのリスクは「時間をかけて投資機会を分散させること=長期の積み立て」を継続していけば簡単に抑えることができます。つまり、一時的に元本割れを起こしても、時間をかけてコツコツ積み立てをしていけば、元本割れのリスクは薄れていくのが投資信託です。

今元本割れの状態で運用商品を売却してしまえば、損失を確定させてしまうことになり、もう二度とその損失を取り戻すことができません。

 

また、運用商品を売却しても、iDeCoはどのみち60歳まで解約できない制度です。長い運用期間中に元本割れが起きるたび売却をしていたら、細かい損失がどんどん積み重なっていくでしょう。

60歳までの積み立て期間中の一時的な元本割れを気にしていても、仕方がないのです。「また回復するだろう」と思って気長に運用を続けたほうが、リスクをずっと抑えてより大きなリターンを期待できるはずですよ。

iDeCoに「毎日の相場チェック」は必要ない

iDeCoの資産額が気になり、毎日のように運用管理画面を見ている方もいるでしょうが、iDeCoでは毎日の相場チェックは必要ありません。

そもそも、iDeCoで運用する商品は預金や保険商品・あるいは投資信託で、いずれも長期間の積み立てによって資産を増やす商品です。もともとの商品設計自体、日々の細かい値動きの差によって利益を得る商品ではありません。

 

また、iDeCoでは、運用商品の購入金額(掛金)に上限があり、60歳まで解約できないといった制限があります。iDeCoの運用商品も制度自体、短期間で利益を得られる設計になっていないので、毎日の相場チェックをしても意味がないのです。

投資初心者やiDeCoを始めてすぐの方ほど、資産額をこまめにチェックしてしまいがちですよね。

しかし、こまめなチェックをしても、結局できる対策はほとんどありません。気になりすぎて運用判断がぶれてしまうのは本末転倒なので、あえて相場から離れることも大切ですよ。

「満期前の元本割れ」にあったら受給時期を見直す

iDeCoの運用が終了するとき、「満期前に元本割れ」になったときは、積み立てた資金の受給時期を見直しましょう。

iDeCoは60歳まで掛金を積み立て、60歳以降に積み立てた資金を一時金や年金で受け取れる制度です。

ただ、元本割れ状態のまま60歳時点で一時金として受け取ってしまうと、損失が確定してしまいます。

 

幸い、2020年度の税制改正によって、iDeCoで積み立てた資金の受給開始年齢は60歳から75歳までの好きな年齢を選べるようになりました。受給開始を延長している間は、引き続き非課税で運用できるのです。

満期前に元本割れになっている方は、評価額がプラスになるまで運用し元本割れを回避しましょう。

 

ただ、iDeCoで満期前に元本割れが起こるのは、満期前も現役時代と同じ商品構成にしていて、リスクの高い運用を続けていたことが原因と言えます。iDeCoは長期の積み立て制度ですが、60歳までという出口がしっかり決まっているのですから、満期前には運用商品の構成を見直すべきです。

今50代で満期までまだ時間があるという方は、少しずつ運用商品の構成比率(資産配分)を見直していきましょう。

 

リタイア前の構成比率の見直しは、

  • 満期5年前くらいから始める
  • 株式投資タイプの投資信託などリスクが高い運用商品の比率を減らす(掛金額を減らす・スイッチング)
  • 預金など元本確保型商品の比率を増やす(掛金額を増やす・スイッチング)

が基本です。

満期前の元本割れに慌てないためにも、リタイア前の運用比率の変更は忘れないようにしてくださいね。

そもそもiDeCoは元本割れするもの

そもそもiDeCoは元本割れするもの

iDeCoは長期の積み立てによってリスクを抑えた運用が可能ですが、それでも元本割れはつきものです。元本割れが起こるのは主に投資性の強い投資信託ですが、実は元本確保型商品で運用をしていても元本割れしてしまうときがあります。

大切なのは、元本割れが起こるか・起こらないかではありません。iDeCoの元本割れがどのように発生するのか運用商品の仕組みや制度を理解したうえで、適切な対処法を取ることです。

 

ここではiDeCoの元本割れとうまく付き合うため、長期投資における下落との付き合い方、損益チェックのタイミングから、元本確保型商品で元本割れを防ぐ方法をご紹介しましょう。

長期投資で一時的な下落は当たり前

iDeCoで投資信託に長期投資をしている場合は、運用期間中に一時的な下落は付き物だということを覚えておきましょう。長期投資とは、時間をかけて投資機会を分散させることで資産価値が下振れするリスクを抑え、リターンを積み上げていく投資法です。

そして、iDeCoはもともと60歳まで資金の引き出しも解約もできず、長期で老後の資産を築くために作られた制度です。30歳でiDeCoを始めたのなら、60歳までの30年間という長い時間軸で資産を育てているということを忘れてはいけません。

 

たとえ35歳で元本割れしても、運用期間は残り25年もあるのです。30年の間の1年や2年、元本割れする時期があるのは当たり前です。長期投資は時間をかけることこそが最大のリスク抑制につながるので、長期の視点で運用を行うようにしましょう。

iDeCoの損益チェックは年に1回~2回でOK

iDeCoで長期投資をする場合、損益チェックは年に1回~2回すればOKです。損益チェックをするときは、ただ運用成果を見るだけではなく、運用商品のリバランスを忘れずに行いましょう。

リバランスとは「資産の再配分」という意味で、設定した運用商品の割合を維持するためのメンテナンスです。

 

たとえば、現在iDeCoの運用商品を以下の割合で設定し、運用しているとします。

  • 外国株式投資型の投資信託:25%
  • 日本株式投資型の投資信託:25%
  • 日本債券投資型の投資信託:20%
  • 元本確保型の定期預金:30%

自分なりに色々しらべて、「この配分で完璧!」と思って掛金を設定しているでしょう。しかし、運用している商品の資産価値は日々変動します。

たとえば、外国株式型の投資信託の運用成績が好調であれば、その投資信託の資産価値が上がり、上記資産の配分も25パーセントから28パーセントへ増えることがあります。こうした資産配分のズレをチェックし、もともと設定していた資産配分の25パーセントに戻すメンテナンスがリバランスなのです。

 

リバランスはまめにやる必要はないので、年に1、2回損益チェックをするときにすれば問題ありません。

ただ、先述したように、50代などで運用の満期が迫っている方は、リタイア後のことを考えた資産配分の変更が必要です。満期の5年くらい前から資産配分を見直し、元本確保型商品の比率を高めていくようにして、満期に備えておきましょう。

元本確保型商品でも元本割れはあり得る

iDeCoでの元本割れが起きやすいのは投資信託ですが、実は元本確保型の預金・保険商品でも元本割れはあり得ます。元本確保型商品なのに元本割れが起こる理由は、iDeCoの運用にかかる手数料が元本確保型商品の金利より高いからです。

iDeCoはどの金融機関で運用しても、運用手数料として毎月最低167円、1年で2,004円かかります。

 

しかし、多くの金融機関で提供されているiDeCoの元本確保型預金、りそな銀行の定期預金「フリーポケット401k」の適用金利は年0.01パーセントです(※)。

※参考:りそな据置定期預金<フリーポケット401k> 適用金利推移表

年0.01パーセントの金利では、毎月2万円を1年運用しても利息は24円しか得られません。つまり、iDeCoの運用商品を100パーセント定期預金にしている方は、

  1. 定期預金の利息24円―iDeCoの手数料2,004円=年間で▲1,980円分の手数料損失

が発生してしまうことになるのです。

定期預金だけの運用成果で言えば、元本割れすることはありません。しかし、iDeCoの手数料を差し引いて考えれば、定期預金だけの運用では「手数料損失」が発生するため、元本確保型だけで運用するのは危険です。

 

iDeCoには掛金が全額所得控除になるという節税メリットがあるため、「多少元本割れしても税金が安くなるのなら良い」という方もいらっしゃるでしょう。しかし、たとえ数千円の損失でも、10年・20年もたてば数万円の損失になります。

「iDeCoで元本割れリスクを回避するために定期預金100パーセントにしたら、今度は手数料で元本割れした」なんてことがないよう、リスク商品(投資信託)と無リスク商品(定期預金・保険)はそれぞれバランスよく運用するようにしましょう。

相場変動や含み損に慣れることが大切

iDeCoの運用は長期にわたるため、相場変動や含み損に慣れてしまうことが大切です。

先述したとおり、長期投資では一時的な相場変動や含み損は付き物です。たとえ元本割れなどの損失が発生しても、実際できることはほとんどありませんよね。

ジタバタしても始まらないのならある程度損失に慣れてしまい、ある程度達観した視点を持つことが必要ですよ。

「それでも下落幅がきつい」と感じたら

「それでも下落幅がきつい」と感じたら

ここまで、「iDeCoで一時的な元本割れがあっても動じるな」とお伝えしてきました。しかし、それでも「下落幅がきつい」と感じている方もいらっしゃるでしょう。

下落幅が大きすぎて耐えられないという方は、リスク許容度や運用商品の資産配分を見直す必要があります。下落幅が大きいときの対処法について、詳しくお伝えしていきましょう。

自身のリスク許容度を見直す

iDeCoの資産額が大きく下がり、「ここまで下がるのは耐えられない」と感じている方は、ご自身のリスク許容度を見直す必要があります。リスク許容度とは、運用している資産がどれくらいまでマイナスになっても耐えられるかという度合いのことです。

たとえば、資産が半分になっても耐えられる方もいれば、耐えられない方もいますよね。

 

iDeCoで投資信託を運用するときは、こうしたご自身のリスク許容度をきちんと考慮したうえで商品構成、資産配分の設定を行わなければなりません。

しかし、今の下落幅が耐えられないのはリスク許容度に見合わない資産配分で運用していたということなのです。改めて「いったい、いくらまでならリスクに耐えられるのか?」を考え、ご自身のリスク許容度を見直してください。

運用商品の資産配分を変更する

リスク許容度の見直しができたら、その許容度にあわせて運用商品の資産配分を見直ししましょう。

今の下落幅が耐えられないという方は、運用商品のリスクが高いということなので、リスクが高い商品を減らし、リスクが低い商品を増やします。

なお、iDeCoの運用商品のリスクは、次の順番で高くなっています。

  1. アクティブ運用の投資信託
  2. インデックス運用の投資信託(株式投資型・REITファンド)
  3. インデックス運用の投資信託(債券投資型のファンド)
  4. 元本確保型商品

※上にいくほどリスクが高い

リスクが高い商品は、運用成績が好調であれば大きな利益を得られるのですが、損失が出たときの下落幅も大きいです。ご自身のリスク許容度に合わせ、再度運用商品の組み合わせを考え適切な資産配分になるようにしましょう。

相場が落ち着くまでスイッチングは保留

たとえ下落幅がきつくても、相場が荒れているときほど運用商品のスイッチング(買い替え)を行うことはやめましょう。

iDeCoの運用商品の下落幅が大きいということは、相場が乱れていて暴落している状況です。暴落時ではさまざまな金融商品がひんぱんに売買されるため、プロの投資家であっても値動きを予測するのは困難と言えます。

 

そんなときに、「これ以上損失が広がる前にA商品を売却し、運用成績が好調なB商品に買い替えよう」と思ってスイッチングをするとどうなるでしょうか?自身の予想とは裏腹に、次の日には「A商品が上昇」「B商品が下落」という事態もあり得ます。

暴落時はリスク許容度や運用商品の資産配分を見直すことに終始し、スイッチングは保留にして損失確定は見送ること。これこそ、iDeCoの長期投資で大きな下落を回避するために重要なのです。

【結論】iDeCoは元本割れしても「現状維持」が正解

【結論】iDeCoは元本割れしても「現状維持」が正解

長々とお話してきましたが、結論としてはiDeCoで元本割れが発生しても現状維持が正解ということです。iDeCoの積み立ては今まで通り継続し、下手に売却したりスイッチングしたりせず、資産額がまたプラスになるまで待ちましょう。

iDeCoは時間をかけて利益を積み上げていく制度です。元本割れしたからといって、すぐにマイナスを取り戻せる仕組みにはなっていません。つまりiDeCoで慌てて行動しても元本割れを回避することはできないので、時間が解決するのを待つしかないのです。

長期の運用、長期の積立投資では時間をかけることがもっとも大切なリスク軽減策になるということを、覚えておきましょう。

まとめ

まとめ

iDeCoは長期の積み立てによって老後の資産を築く制度であり、「時間をかけること」が最大のポイントです。長い積立期間中に元本割れをすることもあるでしょうが、一時的な元本割れで焦る必要はありません。

「元本割れをおこして焦っている」という方は、まず長期的な時間軸の中で自身の運用が適正なものになっているかを確認することが大切です。

 

もし、どうしても下落幅が耐えられないという方は、リスク許容度の見直しと運用商品の資産配分変更をして頭を冷やしましょう。なお、資産配分の決定では

  • リスク商品(投資信託)と無リスク商品(預金、保険)をバランスよく運用すること
  • リタイア前、満期前の方は無リスク商品の比率を増やしていく
  • 資産配分のメンテナンス(リバランス)は、1年に1回から2回程度

が重要です。

元本割れすると、ついつい売却やスイッチングを考えてしまいがちですが、今それらの行動を起こしても損失はさらにひどくなる可能性があるので危険です。状況が悪いときこそ慌てず、時間をかけてこの先の運用をどうするか見つめ直すようにしてください。