
「3,000万円を資産運用で安定的に増やして老後に備えたい。」
あなたは今そうお考えではないですか?
老後資金として最低3,000万円必要というのは、マネー雑誌などでもよく見かけるフレーズです。では子どもの教育費や住宅ローン返済の目処もついた場合、貯蓄も3,000万円あれば老後は安心でしょうか。
それはあなた次第です。
年金の支給額が減ってきているというのは事実ですが、会社員で現役時代にそれなりの収入があった方で企業年金などもあれば、一般的なサラリーマンの給料よりも年金が多いことはざらにあります。それでも老後にお金か足りなくなる人が後を絶たないのです。
それはなぜでしょうか。答えは、単純に入ってくるお金よりも出ていくお金が多いからです。
「老後にお金が足りない」ということを避けるためには、資産運用をすることが1つの方法です。
今回の記事をお読みいただければ3,000万円を適切に資産運用する方法が分かります。また、リスクを最小化する資産運用のやり方も分かります。
あなたの安定した老後をむかえるためのご参考になれば幸いです。
目次
1、老後資金3000万円を資産運用すべきその理由は?
収入源を確保するため、あるいは貯蓄を増やしていくためにはどうしたらいいのでしょうか。
その方法のひとつが資産運用です。
先ほどもお伝えした通り、3,000万円のキャッシュをなにもせず使っていけば、いずれなくなってしまいます。
では、かなりハイリターンですが、仮に年10%で運用できたらどうでしょう。3,000万円は1年後には3,300万円になります。ここから300万円使ったとしても、3,000万円はそのまま手元に残ります。
なにもせず300万円を使えば、残りは2,700万円です。これを10年続けると、資産運用を続けた方は3,000万円がそのまま残りますが、なにもしなかった方には何も残りません。
では退職まで10年ある方が、上記のように毎年300万円使うことはせず、10年間複利で資産運用を続けた場合はどうでしょうか。
まず1年後には3,300万円に増えます。
それをまた年10%で運用して1年後には3,630万円、これを10年間続けると約7,781万円になります。3,000万円が2.5倍以上に増えました。
このように資産運用をするとしないでは、大きな違いが生まれます。
2、3000万円を資産運用する目的は?
資産運用する目的は、利益を得て資産を増やすことです。そして、どのくらい利益(=リターン)が得られるかは、どのくらいリスクをとるかによって左右されます。
このリスクという言葉は「危険」という意味でも使われますが、投資においてリスクは「予想通りにならない可能性」や「結果のばらつき」を意味します。
そのため「リスクが高い(ハイリスク)」とは予想通りにならない可能性が高いことを言い、これには予想以上に損することだけでなく、予想以上に儲かることも含まれています。つまりリスクが大きいほど、大きな利益が出る可能性があるのです。
そのため運用を行う際には、大きなリスクを覚悟して大きな利益を求めるのか(ハイリスクハイリターン)、リスクを抑えて少しずつでも確実に増やしていきたいのか(ローリスクローリターン)、目的と目標を明確にしなければなりません。
またどちらかに傾くことなく、ほどほどのリスクでほどほどのリターンを得ることを目指す(ミドルリスク・ミドルリターン)というのも選択肢のひとつです。
それぞれのリスクとリターンに対応する投資対象としては、以下のようなものがあります。
投資方法 | リターン | リスク | 投資対象商品 |
ローリスクローリターン | 小 | 元本保証 | 定期預金 個人向け国債 個人型確定拠出年金(iDeCo) |
ミドルリスクミドルリターン | 中 | 元本割れ | 株式 投資信託・ETF REIT(不動産投信) |
ハイリスクハイリターン | 大 | 元本以上の損失 | FX 信用・先物取引 |
老後に備えるということに重点をおけば、資産運用の目的は、収入源を確保し、貯蓄を減らさないということになるでしょう。
資産を増やすことが目標となりますが、資産を減らさないということも大切なポイントです。
特に老後には収入が減少するため、資産運用の損失を収入でカバーするということが難しくなります。また元手が減ってしまうと同じ利回りで運用したとしても、得られる利益の金額は減ってしまいます。
年間100万円の利益を得ることを考えた場合、元手が1,000万円であればリスクをとって年10%で運用する必要がありますが、元手が3,000万円であれば年3%ほどの運用で十分な金銭的リターンがあります。
つまり運用できる資金が多ければ、その分リスクを抑えながら同じ利益を得ることができるのです。
これらのポイントをふまえれば、3,000万円というまとまったお金を老後に備えて運用していくのであれば、ミドルリスク・ミドルリターンの運用を基本に考えることがいいと言えます。
3、3000万円の資産運用を自力でやるか?それともプロに任せるか?
3,000万円の資産は、運用をだれがするのか、その方法によってリスクもリターンも違ってきます。
おすすめの資産運用を読んでいただく前に、運用を誰がするのがいいのかについて考えてみたいと思います。
(1)自力で3000万円を運用する
株式投資やFX、先物取引など自力で3,000万円の資産運用に挑みます。
全て自分の腕次第です。
毎日世界経済の動向から企業の決算発表まで、土日も世界は動いていますので
気を抜くことができません。
でも成功したときは、誰かに頼んた時の手数料を支払うこともなく、自分の利益になります。そこがメリットです。
しかしリスクとリターンをバランス良く考えたポートフォリオを作成することは、容易なことではありません。かなりの労力が必要になるでしょう。
そこが注意するポイントになります。
(2)金融機関や専門家の指導を受け力を借りる
投資信託やREITなどの投資は、専門家の助言や力を借りて運用することになります。
手数料はもちろん支払うことになりますが、すべて自力で運用するより時間も労力もかからなくなります。
リスクとリターンのバランスについても専門家に相談でき、良いポートフォリオを作成のお手伝いをしてもらえるでしょう。
(3)すべてプロにおまかせ
ヘッジファンドや投資会社、今はラップ口座に人気があるようです。
コストの面では1番コストがかかる投資法になりますが、自力での労力や時間、常に一喜一憂するストレスを考えるとプロにおまかせすることも良いでしょう。
プロは、たくさんの情報をもとに大きな資金を動かします。
しっかりとしたバランス感覚で、さまざまな投資を行います。
1度そんなプロの運用の世界を知るためにも、勉強のつもりでおまかせするのも良いかもしれません。
4、3000万円の資産運用:おすすめ1位~3位
ミドルリスク・ミドルリターンの投資方法としては、株式・FX(レバレッジ1倍)・個人型確定拠出年金がおすすめです。
(1)株式
企業が発行する株式を購入して、株価が上昇した時に売却益を得たり(キャピタルゲイン)、配当金を受け取ったり(インカムゲイン)する運用方法です。
①特徴(メリット)
株価が値上がりすれば利益が得られ、保有しているだけで配当金や株主優待などが受け取れます。
②利回り相場
キャピタルゲインによる利回りは、仮に購入した企業の株価が1年で倍になれば、年100%、半値になれば年−50%です(手数料・税引前)。キャピタルゲインは経済全体の状況や企業の業績などの影響で変動する株価に大きく左右されます。
インカムゲインによる利回り(配当利回り)は、株の購入価格に対する配当金の割合です。1株あたり100円で購入し、年間2円の配当があれば配当利回りは年2%です。2017年9月時点の東証1部上場企業の平均配当利回りは1.58%となっています。
③デメリット
株価が下がれば損失が生じます。もし株を保有している企業が破綻してしまうと株式の価値はゼロになります。
ただし投資した金額(元本)以上の損失が生じることはありません。
④始め方
株式投資を始めるには証券会社に口座を開設する必要があります。実際に株式を売買するには手数料がかかりますが、対面式の証券会社に比べてネット証券会社の方が割安です。手数料が特に割安なSBI証券などがおすすめです。
(2)FX(レバレッジ1倍)
FX(外国為替証拠金取引)とは、米ドルやユーロなどの外貨を売ったり買ったりすることで、為替差益やスワップ金利(通貨間の金利差で生じる利益)を得ることを目的とする運用方法です。
FXというと一般的にハイリスクな運用方法というイメージがありますが、それは元金に高いレバレッジをかけて取引を行うためです。レバレッジをかけた取引とは、まず元金をFX業者預けた上で、元金の2〜25倍の金額の取引を行い、利益や損益だけを清算する方法です。
外貨購入 | 状況 | 外貨売却 | 差額 | 清算後 |
---|---|---|---|---|
レバレッジ25倍 元金100万円で 25万ドルを購入 (1ドル=100円) |
円安に推移 (1ドル105円) |
$25万×¥105=2625万円 | +125万円 | 225万円 |
円高に推移(1ドル95円) | $25万×¥95=2375万円 | -125万円 | -25万円 | |
レバレッジ1倍 元金100万円で 1万ドルを購入 (1ドル=100円) |
円安に推移 (1ドル105円) |
$1万×¥105=105万円 | +5万円 | 105万円 |
円高に推移(1ドル95円) | $1万×¥95=95万円 | -5万円 | -95万円 |
①特徴(メリット)
レバレッジを1倍にした場合には、外貨預金と同じリスクで外貨を購入することができます。外貨を購入(売却)するときには手数料(スプレッド)がかかりますが、FXは外貨預金に比べはるかに安いというメリットがあります。
下記の例で1万米ドルを購入する場合、外貨預金の手数料が1万円かかるのに対しFXでは20円〜30円で済みます。この手数料は外貨を円に戻す時にも発生するので、差はさらに大きくなります。
通貨 | 手数料(スプレッド) | |
---|---|---|
外貨普通預金 | 米ドル | 1円 |
豪ドル | 2円50銭 | |
FX | 米ドル | 0.2〜0.3銭 |
豪ドル | 0.5〜0.6銭 |
*外貨普通預金:三井住友銀行外貨普通預金(2017年10月時点)
*FX:マネックス証券(2017年10月時点)
2017年10月時点、ユーロ、スイスフランを除けば日本円よりも金利が高い状況が続いており、円で外貨を購入し保有することでより高い金利を受け取れるメリットがあります。
また為替が円安に推移すれば、為替差益も期待できます。
②利回り相場
FXの利回りは、選択する通貨の為替変動と金利に左右されます。
1ドル100円でドルを購入して1年後、1ドル105円の時に売却すれば年利回りは5%(手数料・税引前)となります。
スワップ金利は外貨を保有している間、毎日発生します。米ドルの場合、1万ドルあたり45円/日です(外為オンライン・2017年10月12日時点)。
1年間スワップ金利が変動しなかったと仮定すると、年間では45円×365日=16,425円となり、100万円を円普通預金に預けた場合の年間利息10〜200円程度と比べその差は歴然です。
③デメリット
外貨を購入したときよりも為替が円高に推移した場合、為替差損が発生します。ただしレバレッジが1倍の場合には、購入した通貨の国が財政破綻し通貨の価値がゼロになってしまったとしても、元金以上の損失は発生しません。
また円と外貨の金利が逆転すると、スワップ金利の支払いが生じます。
④始め方
]FXを始めるにはFX業者に取引口座を開設する必要があります。短期での売買ではなく外貨預金として長期保有し、金利スワップを目的とするのであれば、スワップ金利の高い外為オンライン、マネックス証券などがおすすめです。
(3)個人型確定拠出年金(iDeCo)
銀行や証券会社など確定拠出年金を扱う金融機関に掛金を払い込み(拠出)、積み立てたお金を預金や投資信託などで運用し、60歳以降に年金として受け取る商品です。
*運用商品の選択によってローリスク・ローリターンの運用からミドルリスク・ミドルリターンの運用まで可能ですので、便宜上ここでご紹介します。
①特徴(メリット)
掛金全額が所得控除の対象、運用益は全額非課税となるため、節税効果がかなり高い商品です。
一般的な所得の方であれば、掛金の約30%に相当する額の所得税・住民税が軽減されます(毎月2万円、年間24万円掛金を払うと、約7万円の節税になります)。
また預金利息や投資信託の配当金・売却益には通常20.315%の所得税がかかるのですが、確定拠出年金として運用した場合には、この所得税も非課税となります。
掛金の運用方法は加入者が決めることができ、運用商品の選択次第で安定的な運用も積極的な運用もできます。
②利回り相場
確定拠出年金は、運用商品の選択によって利回りは大きく変わります。
預金商品(元本確保型商品)を中心に運用すれば銀行預金に近い利回りが、株式(投資信託)を中心に運用すれば株式に近い利回りが期待できます。
ただ掛金の所得税・住民税の節税効果により、掛金を払った時点でこれらの利回りに加えて約30%のリターンが得られたのと実質的に同じ効果が得られます。
③デメリット
掛金(積立金)は原則60歳まで途中引き出しができません。投資したお金が自分に戻ってくるのは60歳以降です。そのため60歳までに使う予定のあるお金は確定拠出年金に拠出してはいけません。途中で掛金が払えなくなった場合には毎月の掛金を減らしたり、一時的拠出を中断することができるので、無理のない範囲で継続することが大切です。
また掛金を拠出できるのは60歳までのため、年齢の高い方は運用できる期間が限られます。それでも税金面でのメリットは大きいので、早めに始めればメリットは十分にあります。
④始め方
個人型確定拠出年金を取り扱う金融機関に口座開設を申し込みます。
会社員の方などは勤務先の年金制度によっては加入できない場合もあるので、確認が必要です。開設や管理にかかる費用が無料で、選択できる運用商品の多いSBI証券などがおすすめです。
5、3000万円資産運用:確実に増やすなら!元本保証の資産運用4位~6位
ローリスク・ローリターンの投資方法としては、銀行預金・個人向け国債・個人型確定拠出年金がおすすめです。
(1)銀行預金
①特徴(メリット)
銀行預金のメリットは、なんといってもそのリスクの低さと流動性の高さです。
預け入れた元本は100%保証されます(預入先銀行が破綻してしまった場合は、元本1,000万円とその利息までが保証の対象)。
また普通預金はもちろん、定期預金でも急にお金が必要となった場合にもすぐに現金化できます。定期預金の場合には、期間途中で解約した場合には当初約束したよりも低い金利にはなりますが、元本割れすることはありません。
②利回り相場
適用金利 | |
普通預金 | 年0.001%程度(メガバンク)〜年0.02%程度(ネット銀行) |
定期預金(5年・300万円) | 年0.01%程度(メガバンク)〜年0.25%程度(ネット銀行) |
*2017年10月時点
キャンペーン金利として、一定の条件を満たした場合には通常よりも高い金利が適用される場合もあります。
③デメリット
現在はゼロ金利政策などの影響によって、ほとんど金利がつかないため、運用益はあまり期待できません。
また、基本的に元本保証ですが、預入先銀行が破綻してしまうと、元本1,000万円とその利息以外は保証されず、戻ってこない可能性もあります。
3,000万円を銀行に預ける場合には、複数の銀行に1,000万円以下の金額に分けて預けるなどの対策を考えましょう。
④始め方
定期預金を始めるには、まず銀行に口座を開設しなければなりません。金利はネット銀行がメガバンクに比べて高くなりますが、ネット銀行の中でも金利には差があるので、どの銀行に口座を開設するかはいくつかの銀行を比較して決めましょう。
比較的金利が高いオリックス銀行やイオン銀行などがおすすめです。
(2)個人向け国債
個人向け国債は、個人投資家向けに発行される日本の国債です。国にお金を貸して利息を受け取り、満期日に元本が戻ってきます。
①特徴(メリット)
国が発行している債券なので国が元本全額を保証し、金融商品の中で最もリスクが低いと言えます。銀行預金よりリスクが低い上、金利は高めに設定されています。
②利回り相場
個人向け国債には、金利の変動する変動10年、固定金利の固定5年・固定3年があります。それぞれ0.05%の金利が最低保証されます。
適用金利 | 2017年11月発行金利 | |
変動10年 | 基準金利×0.66%(最低保証)0.05% | 0.05% |
固定5年 | 基準金利-0.05%(最低保証)0.05% | 0.05% |
固定3年 | 基準金利-0.05%(最低保証)0.05% | 0.05% |
*基準利率は10年固定利付国債の実勢金利に連動して変動
③デメリット
購入から1年間は中途換金できません。1年経てば中途換金できますが、直前2回分(1年分)の利子は差し引かれます。
④始め方
個人向け国債は、ほとんどの証券会社・銀行などで購入でき、インターネット経由で購入できる金融機関もあります。>>個人向け国債取扱金融機関一覧
6、3000万円で資産運用:レバレッジを使う!7位~9位
ハイリスク・ハイリターンの投資方法としては、信用取引・先物取引・FX(高レバレッジ)があります。
(1)信用取引
信用取引は、証券会社から資金を借りて株などを売買する運用方法です。
①特徴(メリット)
保有している株や預け入れた資金などを担保にして、その約3倍の金額の取引ができます。
また資金だけでなく株を借りることもできます。これにより株価が下がりそうな株を借りて売却し、株価が下がったところで買い戻して差額を利益とし、株は証券会社に返却するという運用ができます(売建・空売り)。
②利回り相場
同じ元金で約3倍の株を購入できるので、期待できる利回りも通常の株取引(現物取引)の約3倍になります。
③デメリット
現物取引では、企業が倒産した場合でも投資額(元金)以上の損失は発生しませんが、信用取引の場合、投資額以上の損失が生じる可能性があります。
例えば100万円(保証金)を証券会社に預け200万円を借りて、A社株を1株300円で300万円分購入していた場合、A社が破綻し株が紙切れになってしまうと、100万円の元金を失うだけでなく、借りていた200万円も返済しなければいけません。
また、元金から含み損を引いた実質的な担保額が購入時の評価額の20%を下回った場合には、20%以上となるよう新たに保証金を預け入れる必要があり(追加保証金・追証)、追証を行わなかった場合には強制的に株が売却されてしまいます。
例えばA社の株価が250円となるとA社株の評価額は250万円になり、含み損が50万円発生します。このときの保証金は100−50=50万円となり、300万円の20%である60万円を下回ります。そのため10万円を追加で預け入れしなければ、株が売却され50万円の損失が確定します。
④始め方
信用取引を行うには、まず証券会社に信用取引口座を開設する必要があります。信用取引の手数料が安く、売建時に借りられる銘柄数も多いSBI証券やGMOクリック証券などがおすすめです。
(2)先物取引
先物取引は、代金の支払いを後で払うことを約束して商品の売買を行う取引(運用)方法です。
①特徴(メリット)
先物取引では、例えば3ヶ月先に10,000円払って商品を購入することを約束して、3ヶ月後に商品を受け取り、10,000円を支払うといった取引を行います。受け取った商品が3ヶ月後に12,000円の価値になっていれば、その商品を売却することで差額分2,000円の利益を得ることができます。
実際には現実の商品のやりとりではなく、「日経平均株価」や「原油価格」などの数値だけを取引し、差額をやりとりするもの(差金決済)がほとんどです。また約束の日(満期日)の前日までは、この「売買する権利」を自由に売買ができます。
差金決済を行う先物取引では、預け入れたお金(証拠金)の数十倍の金額で取引ができるため、実際の値動きよりも大きな利益が期待できます。
また値下がりが予想される場合には売建も可能で、価格の上昇・下落両方のタイミングで利益を狙うことができます。
②利回り相場
日経225先物を1単位購入する場合には60万円(2017年10月時点)の証拠金を預け入れる必要があり、日経平均先物の価格が21,000円の場合、実際に取引される金額はその1,000倍の2,100万円となります(この場合のレバレッジは35倍)。
1年後に先物価格が23,000円に上昇した段階で売却した場合、値上がり分2,000円の1,000倍、200万円の利益がでます。元金の60万円が260万円に増えるため、年利回りは約430%(手数料・税引前)となります。
③デメリット
実際の投資額よりも大きな金額を取引しているため、先物価格が購入時に比べ下落すると元本(証拠金)以上の損失が生じる可能性があります。
また満期日までは自分にとって有利なタイミングで売買できますが、決済せず満期日を迎えると強制的に決済され、そのときの先物価格で損益が確定します。
④始め方
先物取引を行うには、証券会社に先物・オプション口座を開設する必要があります。もっとも一般的な日経平均先物の取引を行うのであれば手数料が割安なSBI証券やGMOクリック証券などがおすすめです。
(3)FX(高レバレッジ)
FXでレバレッジを2倍以上にした場合、ハイリスクハイリターンの運用となります。
①特徴(メリット)
実際に預け入れたお金(証拠金)の2倍〜25倍の金額で取引ができるため、為替の値動きや金利に対してより多くの利益が期待できます。
②利回り相場
レバレッジ1倍の場合に比べ、レバレッジの倍率分だけ高い利回りが期待できます。
③デメリット
実際の投資額よりも大きな金額を取引しているため、為替が予想したのとは逆に動くと元本(証拠金)以上の損失が生じる可能性があります。
④始め方
FXを始めるにはFX業者に取引口座を解説する必要があります。売買コストとなるスプレッドの小さいSBI FXトレード、マネックス証券などがおすすめです。
7、3000万円資産運用は、時間の分散が大事!
このように資産運用は、リスクとリターンの大きさによって分類されます。ただし、このリスク・リターンの分類はその投資方法の一般的な傾向であり、予想外の事態も起こり得ます。そのリスクに備えるため、分散投資という考え方が重要となります。
(1)複数の資産への分散
ローリスクとされる銀行預金にも銀行破綻のリスクがあります。1,000万円までは国が保証しますが、日本が財政破綻してしまったらどうでしょう。円の価値は暴落し預金や国債などの価値は激減してしまうことでしょう。そこまでの事態は起こらなくても、物価上昇がして預金などの資産価値が相対的に目減りしてしまうことは十分あり得ます。
このような事態に備えるには、海外の資産や物価連動性の高い株式などへ資産を分散することが大切になります。それぞれの資産種類だけでみるとリスクのある資産であっても、様々な資産と組み合わせることで、ひとつの資産が保有資産全体に与える影響が軽減され、トータルとしてリスクが下がる効果が期待できます。
(2)時間の分散
2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 6年間累計 | 単位 | |
株価 | 1,994 | 182 | 213 | 513 | 499 | 689 | (円) | |
購入株数 | 6,000 | 6000 | (株) | |||||
購入額 | 11,964,000 | 11964000 | (円) | |||||
購入株数 | 1,000 | 1,000 | 1,000 | 1,000 | 1,000 | 1,000 | 6,000 | (株) |
購入額 | 1,994,000 | 182,000 | 213,000 | 513,000 | 499,000 | 689,000 | 4,090,000 | (円) |
*株価は各年の大発会(その年最初の株取引日)の始値
これはある企業の株を一度に6,000株購入した場合と、6年間に分けて1,000株ずつ購入した場合の合計購入額を比較したものです。
6年後の最終的な保有株数は6,000株で同じですが、合計購入額は一度に購入した場合が約1,200万円、分散して購入した場合は約410万円と3倍近い違いが生まれます。
保有株の2016年の株価(689円)での評価額は約413万円なので、前者では約780万の損失、後者はわずかですが利益が出ています。このように投資のタイミングを分散することにより、リスクが大きく軽減されます。
この例では、2011年から2012年にかけて、株価が1/10以下に下落したことがこのような極端な結果を生みました。こんな危ない会社の株を買うからだと思われるかもしれませんが、株を買った2011年1月の段階ではそんなことを想定できる人はいないほどの超優良企業だったのです。
もうお気付きの方もいるかもしれません。そうです、東京電力です。
かつての電力株は、需要がなくならず景気にも左右されにくくて株価は安定、配当利回りも3%以上と安定優良株の筆頭でした。
株価の安定した電力株を退職金で買って、元金を減らさずに年金と配当金で老後の生活費をまかなうというような人もいました。それが2011年3月11日、東日本大震災によって激変したのです。株価は暴落し、配当はなくなりました。
株が危ないといっているのではありません。どんな資産にもリスクはあります。ただこのようなリスクに直面しても、投資のタイミングを分散していた場合には、震災前から東京電力株を購入していた場合にも損失を吸収し、利益がでるまでに回復しています。
これはうまくいった例のひとつではありますが、時間の分散は、誰も予想できないような未曾有のリスクをも軽減できるだけの効果を持った有効な投資方法だといえるのです。
資産運用において資産の分散と時間分散は大きな効果を発揮します。この効果を活かし、リスクをより低く、リターンをより高めた資産運用を行いましょう。
まとめ
最後に今回のポイントをまとめていきます。
- 運用資金が3,000万円あれば、大きなリスクを取らなくとも運用を行うことである程度の運用成果が期待できるため、まずは運用を始めることが大切
- 資産運用の目的にあったリスク・リターンの運用商品を選択する
- リスクを軽減し、より高いリターンを得るには、資産の分散・時間の分散を行うことが大切
今回の内容が安定した資産運用のためのご参考になれば幸いです。
証券会社、生損保代理店での勤務を経てファイナンシャルプランナーとして独立。
(保有資格)1級FP技能士・証券外務員一種
(試験合格)宅建士・行政書士