【貯蓄から投資へ】投資アレルギーを克服して資産形成&運用を始めよう

超低金利時代が続く中、「貯蓄から投資(資産形成)へ」の必要性が問われています。平均寿命が延びて90歳まで生きることが当たり前になり、人生100年時代とも言われるいま、投資によって将来の資産を築くことは非常に重要です。

一方で、日本人の多くはいまだに重篤な投資アレルギーを抱えており、実際に「貯蓄から投資(資産形成)へ」の流れを実践できている人は少ないこともまた事実です。

そこで、この記事では投資アレルギーを克服し、安心して資産を形成するために大切なポイントをご紹介します。なぜ貯蓄から投資への転換が必要なのか、資産形成の重要性についても解説していきます。投資や資産形成に興味がある人はぜひ、参考にしてください。

「貯蓄から投資(資産形成)へ」とは何か

「貯蓄から投資へ」とは、政府が推奨している金融政策のスローガンで、2019年時点では「貯蓄から資産形成へ」という呼び方に切り替えられています。去る2001年の小泉政権下では、従来の預貯金を中心とした貯蓄優遇から、株式投資などの投資を優遇するよう金融のあり方について検討する経済政策が発表されました。

この経済政策を受け、2001年8月に金融庁が取りまとめた「『証券市場の構造改革プログラム』ついて」では、「貯蓄から投資への転換」について次のように言及されています。

2.我が国「証券市場の構造改革」の必要性
(1)貯蓄から投資への転換
①個人投資家が、来るべき高齢化社会にも備え、リスクとリターンを自主的に選択し、個人金融資産のより効率的な運用を図ることが重要。
② 個人投資家を含む幅広い投資家が参加する裾野の広い厚みのある証券市場を形成し、企業等の資金調達手段を多様化することにより、ベンチャー企業を含む成長企業等に対するリスクキャピタルの供給を促進することも重要。
③ 我が国経済の「構造改革」を促進するためにも、個人投資家自らが市場に参加し、市場メカニズムを通じて、効率性の低い部門から効率性や社会的ニーズの高い成長部門へと資金を移動させることが必要不可

引用:「「証券市場の構造改革プログラム」について」(金融庁)

このプログラムでは、高齢化社会に備えるために効率的に金融資産を運用していかなければいけないということが述べられています。つまり、このまま(金融資産の多くを預貯金で持っている状態)では、高齢化社会に対応できない恐れがあるということです。

 

政府や金融庁が「貯蓄から投資へ」と言い始めたのは2011年であるため、2019年でもう18年にもなります。この18年間、政府は金融庁と組み、「NISA」(投資で得た利益の税金が非課税になる制度)や「つみたてNISA」を打ち出すなどして、投資が広く世に浸透するよう尽力してきました。

それでも、いまだに多くの日本人は金融資産の預け先を銀行や郵便局の預貯金にしています。日本人に根付いた貯蓄至上主義を変えるのは、非常に難しいということがわかります。

しかし、将来の社会保障や雇用の先行きが不透明になっているいま、「貯蓄から投資へ」の転換はより喫緊の課題になっています。投資が重要な理由、日本人が貯蓄を好きな理由について、詳しく見ていきましょう。

投資や資産形成が重要な理由

投資や資産形成が重要な理由は、ただ銀行や郵便局にお金を預けるだけではお金が増えない時代だからです。

2019年現在、銀行の普通預金平均金利は年0.001%、定期預金の平均金利は年0.01%です。つまり、100万円を預けても1年で10円から100円ほどの利息しか付かず、そこからさらに税金が差し引かれてしまいます。

実際、「預貯金で得られる利息より、ATM取扱手数料のほうが高い」という実感は、多くの人が抱いているのではないでしょうか。

かつては、定期預金金利が5~6%で、預貯金だけでも高い利息を得ることができる時代でした。しかし、2019年現在はかつてないほどの低金利で、さらに政府は2%のインフレ(物価上昇)目標を設定しています。

預貯金ではまったくお金が増えないのに、物価は将来的に2%上がることが目標とされているのです。貯めているお金だけでは、とうてい物価の上昇に追いつくことができません。

そう、将来のインフレ(物価上昇)に備えるためには、お金をただ貯める・蓄える(=貯蓄)だけでは不十分なのです。投資によってお金を運用し、効率的に資産を増やして資産形成していかなければならないのです。

日本人が貯蓄を好む理由

日本人の多くは、保有資産を預貯金などで蓄えること、つまり貯蓄することが大好きです。日本銀行が発表している「資金循環統計」の2019年第一四半期の速報データでは、家計の金融資産の多くは現金・預金で、その割合は53.3%と過半数を占めています。

当該データで預貯金に次いで多いのは、保険や年金などの定額保証商品で28.6%です。

そして、株式や投資信託といった投資性商品の割合は約15%で、この10年間金融資産の割合にはほとんど変化がありませんでした。

出典:「2019年第1四半期の資金循環」より(図表3-1) 家計の金融資産(日本銀行)

 

「貯蓄から投資へ」と、政府が熱心なスローガンを打ち出しているにも関わらず、いまだに多くの日本人が預貯金で資産を蓄えている理由は、日本では経済や金融に対する知識を義務教育で学ぶ機会がないからでしょう。欧米では、子供のころから金融に関する知識を学ぶ機会があり、投資することを資産形成の一手段として普通に受け入れている人が多いです。

しかし、そうした金融リテラシーが不足している日本は、投資をギャンブルの一種と思い、漠然とした不安を抱いて警戒している人が非常に多いことが現状です。

 

 

後述しますが、投資はギャンブルではありませんし、投資のリスクは時間が緩和してくれるものです。正しい知識を身に付けて時間をかければ、投資はそれほど怖いものではありません。

今の日本人に必要なのは、「なんとなく怖い」という投資アレルギーを克服することでしょう。

 

投資アレルギーを克服して貯蓄から投資にシフトしよう

先ほどお伝えしたように、今はただ貯蓄をしているだけではお金が増えない時代です。この先長い人生を安心して暮らしていくためには、適度な投資により、時間をかけてお金を増やしていく資産形成が必要です。

ただ、資産形成が重要とは思っていても、「投資」という言葉を聞くだけでなんとなく抵抗を感じる人もいるでしょう。しかし、投資はギャンブルではありません。むしろ、預貯金だけでいる方がリスクになります。

続いては、投資アレルギーを克服するために重要なポイントについて、詳しく解説していきましょう。

「預貯金だけ」でいることがリスクになる時代

投資の元本割れリスクを恐れ、預貯金だけで資産を持っている人もいるでしょう。しかし、預金金利が低い2019年現在は、預貯金だけで資産を持つことがリスクになる時代です。

先ほどもお伝えしたように、政府は2%のインフレ(物価上昇)目標を設定していますが、預貯金の普通預金金利の平均は0.001%です。

つまり、将来物の価値が2%上がっても、預貯金の価値は0.001%しか上がりません。これでは、物の価値が上がっている分、相対的に資産価値が目減りしてしまいます。

そのため、預貯金だけで資産を持っていると、大切なお金の価値が目減りしてしまうというリスクがあります。これからは預貯金以外の金融商品も活用し、資産を減らさないように上手に運用することが大切です。

「投資=ギャンブル」ではない

投資をギャンブルに例える人、ギャンブルだと思っている日本人は非常に多いです。

しかし、投資とは成長性が見込める事象にお金をかけて利益を得る行為で、ギャンブルではありません。ギャンブルは、不確実な事象にお金をかけて勝ち負けを競う行為で、必ず敗者がいます。つまり、ギャンブルは、敗者のお金で利益が得られる椅子取りゲームのような仕組みです。

 

一方、投資で利益が得られるのはお金をかけた企業や市場が成長し、価値を高めていくからです。そこに勝ち負けという概念はありません。ギャンブルは時間をかけ続けると負ける確率が高くなっていきますが、投資では時間をかければかけるほどリスクは小さくなっていきます。

このように、ギャンブルと投資は、本質的にまったく別物なのです。

「大金がないと投資できない」のは思い込み

「投資を始めるには、まとまったお金(大金)が必要」と思い込んでいる人は多いことでしょう。

しかし、株式投資にしても投資信託にしても、実際には数千円から1万円ほどあれば投資することが可能です。最近では100円から積立投資できるネット証券もありますし、より気軽に投資できる環境ができています。

まとまったお金で一時的な投資をするより、少額で時間をかけて投資をする方が、時間を分散することによりリスクを抑えられるので、資産形成にも効果的です。

後述する投資信託の積立投資なら、銀行の積立預金のような感覚で、毎月少額を少しずつ投資に回すことが可能ですよ。

「投資のリスク」は時間が解決してくれる

「投資にはリスクがあるから、抵抗がある」という声をよく聞きます。しかし、投資のリスクは、ある程度時間が解決してくれるものです。

そもそも、多くの人は「リスク(risk)=危険」「良くないことが起きる可能性」という意味でとらえているため、危険なことはしたくないという防衛本能で投資に抵抗を感じていると思います。

しかし、投資の世界におけるリスクとは、「リターン(収益)がどれだけ増えたり減ったりするのかを示す振れ幅」のことで、単に危険性を示すことばではありません。

リターン(収益)の振れ幅は、標準偏差という統計学上の数値で表すことができ、時間をかければかけるほど、振れ幅を抑えられることがわかっています。標準偏差という過去のデータを用いることである程度振れ幅(リスク)を小さくできる点が、ギャンブルとは異なるポイントです。

投資(資産形成)を始めるなら投資信託で積立投資がおすすめ

預貯金など、今まで貯蓄メインだった人がこれから投資(資産形成)を始める場合、おすすめの方法は投資信託で積立投資をすることです。積立投資の魅力や注意点について解説していきましょう。

積立投資の魅力

投資信託で行う積立投資とは、毎月一定額を投資信託の購入に充て、投資する機会を自動化することです。そして、投資信託とは株や債券などの銘柄を投資のプロが選定し、運用してくれるパック商品です。

つまり、投資信託の積み立て投資は、銘柄の選定も運用も投資機会もすべて自動化し、手間もストレスも感じることなく投資できるというメリットがあります。

もちろん、積立投資の魅力は手軽さだけではありません。投資の機会を分散させることで、リスクを軽減させる効果もあるのです。

投資の世界では、定額で金融商品を購入してリスクを抑える方法を「ドルコスト平均法」と呼び、長期的な資産形成に効果があると言われています。ドルコスト平均法は、積立投資を設定して投資の機会を自動化してしまえば、誰でも簡単に実践できるのです。

注意点

手軽にリスクを軽減でき、長期の資産形成に有効な積立投資ですが、もちろん注意点もあります。

積立投資はリスク軽減に万能な方法ではなく、投資機会を分散させることしかできません。いくら投資機会(時間)を分散させても、投資対象とする資産が偏っていれば、本当の意味でリスク軽減にはならないのです。

投資の基本は、次の2つが重要です。

  1. 投資機会を分散させること(時間の分散)
  2. 投資対象の資産を分散させること(資産の分散)

たとえば、日本株を投資対象とする投資信託だけにコツコツ積立投資をしても、日本株市場が下落すれば大きなマイナスを被る可能性があります。こうした収益の振れ幅(リスク)を減らすためには、外国株式など、日本株とは違う値動きをする資産の投資信託にも投資をして、資産対象を分散させることが大切なのです。

積立投資するときは、値動きが異なる複数の資産に分散投資するようにしてください。

なお、積立投資については、こちらで詳しく解説しています。

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必ず活用したいiDeCoとNISA

投資信託を行う場合、必ず活用したいのがiDeCoとNISA(少額投資非課税制度)です。iDeCoもNISAも、特定の口座内で投資信託を購入して投資をすれば、投資で得た利益が非課税になる節税制度です。

一般的に、投資で得た利益には20%ほどの所得税・住民税が課されます。せっかく利益が出ても、20%も税金で持っていかれるのは辛いです。

しかし、iDeCoやNISAを使えば投資による利益が非課税になるため、リターンをより大きくすることが可能です。

iDeCoの場合は60歳以降しか引き出せない点に注意が必要ですが、投資に掛けた金額が全額所得控除になるため、個人の税金対策としても有効です。それぞれうまく活用して、節税しながら資産を大きく増やしてください。

貯蓄と投資のベストな資産配分とは

資産形成にあたり、預貯金によって貯蓄しておく資産と投資に回す資産の配分をどのようにするべきか悩むでしょう。

貯蓄と投資のベストな資産配分は人によって異なるため、正解はありません。大切なことは、資産形成の目的を明確にすることです。

貯蓄も投資も目的を明確にしておくことが大切

貯蓄も投資も、資産形成において重要なのは、自分や家族の将来設計(ライフプラン)にいくら必要なのか、資産形成の目的を明確にしておくことです。

よく、「老後資金には2,000万円から3,000万円必要」などと言われることがありますが、その人の資産や持ち家の状況、退職金の有無、また将来設計によって必要な資金額は異なります。3,000万円あっても生活が成り立たない人もいれば、2,000万円に満たなくても生活が十分成り立つ人もいます。

 

資産形成を始める前は、教育資金や老後資金がいつ、いくら必要なのか、将来設計(ライフプラン)を各家庭で確認のうえ、将来必要な資金を算出しましょう。

「必要な資金額=資産形成」の目標額が明確になれば、その目標額を貯めるために今いくら投資すべきか、貯蓄はどれくらい必要かが見えてきます。やみくもに投資を始める前に、必ず資産形成の目的と目標額を明確にしておきましょう。

投資信託で投資に慣れたら次のステップへ進もう

投資信託で投資に慣れてくると、他の投資法を試したりもっとアクティブに利益を追求したりしたくなることでしょう。確実な資産を築くためには投資信託から次のステップに進み、さまざまな資産に資産を分散させることが大切です。

ここでは、投資信託の次のステップでおすすめの投資法を4つ紹介しましょう。

1.投資の手間を省きたいなら「ロボ・アドバイザー」

投資信託で積立投資をする方法はとても手軽ですが、投資する投資信託を選んだり、リバランス(ポートフォリオの調整)が必要になったりという手間はどうしても発生します。そういった手間も面倒くさい、最初の投資信託選びで悩んでしまうという人は、すべて自動化でできるロボ・アドバイザーへの投資がおすすめです。

ロボ・アドバイザーには、投資の助言をしてくれるサービスから投資のすべてをお任せできるサービスまでさまざまなものがあります。おすすめは、資産管理を一任できるサービスです。

資産管理を一任できるロボ・アドバイザーサービスは最先端の投資理論によるアルゴリズムを利用し、投資家のリスク許容度に応じた資産運用を完全自動で提供しています。手間をかけずに、確実に利益を上げたいという人は、ロボ・アドバイザーサービスで理論に基づいた投資をしてみてはいかがでしょうか?

2.手数料を抑えたいなら「ETF(上場投資信託)」

積立投資に慣れてくると、投資信託の手数料をもっと抑えたいと思う人も出てくると思います。確かに、投資信託は投資のプロに運用を任せる金融商品なので、保有している限り永続的に手数料がかかるのがデメリットです。

手数料を抑えたいのであれば、金融商品取引所に上場している投資信託であるETFに投資することがおすすめです。ETFは、現物株式と同じようにリアルタイムの時価で取引でき、信託報酬(保有手数料)が非上場の投資信託よりも圧倒的に低いことが大きな特徴です。

ただし、ETFは投資信託のように積立投資を自動化したり、分配金を自動で再投資したりする仕組みがありません。手数料面では優れているETFですが、投資信託に比べると手間がかかるというデメリットもあるので、自分に適した方法を選んでください。

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3.利益を追求したいなら「株式投資」

利益をもっと追求したいなら、投資信託から株式投資へステップアップすることもおすすめです。

投資信託の場合、ファンドの中に入っている株式銘柄を自由に選ぶことはできませんし、運用会社に投資を託す分、信託報酬という手数料がかかります。

株式投資であれば、自分が好きな株式銘柄に直接投資できますし、株式の保有に手数料がかかるということもなくなります。そのため、投資の自由度が上がり、よりリターンを追求しやすくなります。

ただ、株式投資の場合は国内の大型銘柄は最低購入資金が数十万円するものが多く、ある程度まとまった資金が必要です。まだ余裕資金がない場合は、投資信託でコツコツ余裕資金を増やしてから株式投資にシフトしていく方が良いでしょう。

4.プロに運用を任せたいなら「ファンド」や「投資会社」

自分での投資には限界があるという人は、ヘッジファンドや投資会社に運用を任せるという方法もあります。投資信託では、おもに株式や債券に投資して運用を行いますが、ヘッジファンドや投資会社ではさまざまな運用手法を用いて絶対的な利益を追求することが特徴です。

まとまった資金がすでにあり、できる限り利益を増やしたいという人は、このような投資ファンドや運用会社を使い、プロにすべてを一任することもおすすめです。

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まとめ

「投資から貯蓄(資産形成))へ」とは何か、投資や資産形成が重要な理由についてお伝えしました。内容をまとめると、次の4つのポイントが重要です。

  1. 低金利下では、預貯金だけで資産を持つことがリスクになる。預貯金に資産を集中させるのではなく投資にも資産を分散させ、効率的に資産形成していくことが大切。
  2. 投資はギャンブルではない。時間をかけてコツコツ積立投資すればリスクを軽減することができる。
  3. 投資初心者は、少額で手軽に始められる投資信託の積立投資がおすすめ。
  4. 投資に慣れてきたら、ロボ・アドバイザーや株式投資など、次のステップに進むのもアリ

繰り返しますが、投資とは成長性のあるものにお金をかけることで、やみくもにお金をかけるわけではありません。時間をかけてさまざまな資産に分散投資していけば、リスクを抑えて資産を形成できるのが投資です。

この機会に投資アレルギーを解消し、少しでも貯蓄から投資へ資産をシフトさせて大切な資産を成長させていきましょう。