「新興国に投資すると儲かる」と言われているので、興味を持っている方も多いのではないでしょうか?結論から言うと、半分は正しいのですが、高いリスクも伴います。
大きなリスクがある反面、大きな儲けのチャンスがある新興国投資。この記事では、新興国に投資するメリット・デメリットや、おすすめの投資信託について解説していきます。
新興国とは
新興国とは、先進国ほど発達していない状態で、これから高い経済成長が期待できる国のことです。新興国は英語で「エマージングカントリー」とも呼ばれることがあります。
具体的には、中南米、東南アジア、中東、東欧の国々のことをまとめて新興国と呼ぶことが多いです。その中でも特に経済成長の期待が大きく、投資家にも注目されているのがブラジル、ロシア、インド、中国です。頭文字を取ってBRICs(ブリックス)と呼ばれています。
新興国へのメリット・デメリットは後ほど詳しく解説しますが、一言で表すと「ハイリスク・ハイリターン」ということです。投資をすれば著しい成長に乗って資産を大きく増やせると期待できる一方、法律やインフラなどが先進国ほど整っていないため、あるきっかけで暴落するリスクがあります。
新興国の投資信託とは
新興国に投資するには、新興国の債券や企業が発行する株式などを購入する必要がありますが、個人の投資家が新興国の市場に直接アクセスするのは難しいです。そこで活用したいのが「投資信託」です。
投資信託とは、大勢の投資家がお金を投資会社に預け、投資会社が代わりに運用する仕組みの金融商品です。投資会社は個人投資家よりも多様な種類の投資ができるので、新興国にも投資することができます。
よって、投資信託を利用して投資の専門家に新興国投資を託すと良いでしょう。
新興国に投資するメリット
新興国へは投資信託を利用すると解説しましたが、何となくどんなものかイメージをつかんでいただけたでしょうか?かなりハイリスク・ハイリターンな投資方法なので、さらに知識を深めて投資するべきかどうか考えてください。
次に、実際に投資した場合のメリット・デメリットをお伝えしていきましょう。まずは以下の3つのメリットを紹介していきます。いずれも利回りが高いことに関連しています。
- 成長率が高い
- 債券の金利が高い
- 分散投資ができる
メリット1:成長率が高い
冒頭でも説明したとおり、新興国の最大の魅力は高い経済成長率です。新興国は人口が増加している状態なので、人口ピラミッドは若者が多く高齢者が少ない三角形になります。
これからの働き手が増加しているので物やサービスの生産力が高く、しかも人口増で消費が増えている状態です。新興国の経済成長が著しいのは、生産も消費も増加しているからなのです。
これにより、個人の所得が伸びて使えるお金が増えていくので、経済が回っていきます。先進国のようなライフスタイルに追いつこうとして、生活必需品だけでなく娯楽や嗜好品の需要も伸びていきます。
よって、新興国で物やサービスを提供する企業は大きな利益を出せると期待できます。先進国のように人口や経済が安定している国にはない勢いで成長しているので、投資による利益も大きくなると考えられるのです。
メリット2:債券の金利が高い
先進国に投資するよりは、新興国に投資する方が大きなリターンを期待できます。債券でも同様で、先進国なら1パーセント程度しかつかない金利も、新興国の債券なら5パーセント程度の金利が期待できます。
債券とは国が発行するもので、投資家が国にお金を貸し見返りとして利息をもらえるものです。満期が来れば元本が返済され、特に先進国の債券は予定通りの金利・満期が守られることが多く、低リスクの投資先として人気があります。
新興国の債券は先進国のものよりもリスクはありますが、リターンが大きいという長所があります。株式に比べてリスクの低い債券でも大きな利回りを狙えるので、まずは債券から新興国への投資を始めてみても良いかもしれません。
メリット3:分散投資ができる
リターンはそのままで低リスクに運用する方法として、分散投資があります。既に日本や先進国に投資している人がハイリスク・ハイリターンな新興国投資も始めればさらに投資先を分散できるので、リスクを抑えつつ高いリターンを狙うことができます。
分散投資とは、投資先を複数に分けることです。全財産を一つの銘柄に投資する集中投資より、複数に分ける分散投資の方が個別の銘柄の破綻などに振り回されないため、低リスクの運用ができます。
同じリスク・リターンの投資先の場合、分散投資の方が低リスクになります。なおかつ、リターンは集中投資でも分散投資でも同じとなることが計算できるため、「投資をするなら分散投資するべき」と言われているのです。
日本や先進国だけに投資している人がハイリスク・ハイリターンである新興国投資を始めると、引っ張られてややリスクは高くなるかもしれません。ですが、分散投資されているので、新興国だけに集中投資するよりは低リスクの状態で高い利回りを狙えると期待できます。
新興国に投資するデメリット
新興国投資はハイリスク・ハイリターンなので、利回りが高いメリットがある反面、元本割れなどのリスクが高いというデメリットもあります。この項目では、デメリット3つについて解説していくので、理解して納得できてから投資を始めましょう。
- 暴落するリスクも大きい
- コストが高い
- 為替変動リスクがある
デメリット1:暴落するリスクも大きい
新興国は成長中の国なので、法律やインフラの整備が追いついていない国が多いです。加熱した経済をコントロールできず、バブル崩壊のような状態になってしまい、債券や株式など金融資産が大暴落するリスクも大きいのです。
金融危機の際に真っ先に売られるのも、新興国の株式や通貨などです。リーマンショックやコロナショックのように世界的な混乱が起こると、多くの投資家は安全そうな先進国の通貨に資産を換えようとするからです。
このような混乱が起こると、例えば100万円を新興国に投資していた場合、50万円に減ってしまうといったことが考えられます。投資には元本割れのリスクがありますが、新興国投資は先進国投資よりも元本割れの程度も大きくなる可能性があります。
デメリット2:コストが高い
新興国の市場に個人投資家が直接アクセスするのは難しいので、投資信託を活用しましょうとお伝えしました。投資信託はプロに運用を任せるため手数料を支払いますが、新興国に投資する商品は手数料が高く設定されている傾向があります。
先進国の投資信託より新興国の投資信託の方が、手数料が高いというデメリットがあるのです。信託報酬が2パーセントを超えている商品もあり、国内や先進国に投資する投資信託よりも高額な手数料がかかると言わざるを得ません。
信託報酬とは、投資信託を保有している間はずっと支払い続けるものです。利回りが5パーセントの投資信託だったとしても、信託報酬で2パーセントを支払うため、手元に残る利益は3パーセントとなってしまいます。
デメリット3:為替変動リスクがある
海外に投資する上で大きなリスクとなるのが、為替変動リスクです。先進国でも新興国でもあるリスクですが、新興国は通貨が不安定であるため、大きなリスクになる傾向があります。
わかりやすいように、馴染みのある米ドルを例に解説しましょう。
1ドル=100円のときに1万円分の米国株式を買ったら、ドルでは100ドルとなります。その後、為替が動いて1ドル=90円になったとします。
このとき、100ドルの米国株式を日本円に直すと、9,000円になります。同じ100ドルなのに、為替が動いただけで損をしてしまったことになります。
反対に、為替が動いて1ドル=110円になれば、日本円で1万1,000円になるので、得をしたことになります。このように、為替変動によって得をすることも損をすることもあるのが為替変動リスクです。
実際、米ドルなど先進国の通貨で1ドルが100円から90円に一気に下落するといったことはレアケースです。しかし新興国の場合、通貨の価値が不安定なため大きく下落する可能性は先進国より高いのです。
新興国投資のおすすめスタンス
新興国投資のメリット・デメリットをお伝えしてきました。ハイリスク・ハイリターンの投資方法なので、おもしろそうに感じる方と、リスクが怖くなった方の両方がいらっしゃると思います。
実際に新興国に投資をするなら、できるだけリスクの低い投資をしたいですよね。新興国自体にリスクがあることはどうしようもないので、個人の投資スタンスでリスクをコントロールしましょう。
新興国に投資をするなら、長期投資と分散投資がおすすめです。
1.長期投資をする
まず、10年から20年といった長いスパンで新興国投資をしましょう。というのも、新興国は投資信託でも値動きが大きく、毎日の値動きに一喜一憂していると疲れてしまいます。
大切なのは、前日に比べて増えたか減ったかではなく、長期の資産形成に役立っているかどうかです。定期的に運用成績を確認する必要はありますが、数ヶ月から1年の単位で成果を見て、おおむねプラスになっていれば問題なしと考えて良いでしょう。
2.世界中に資産を分散させる
新興国に全財産を投資するのは、一般的にはリスクを取り過ぎだと考えられます。日本やアメリカ、ヨーロッパなどの先進国にも投資をし、低水準から中程度のリスクを取った運用をベースに、トッピングとしてハイリスク・ハイリターンな新興国投資を行うのがおすすめです。
リーマンショックやコロナショックのような市場の暴落は突然やってくるので、明日そのような事態になっても、生活に困らないように投資家は資産を管理しなければなりません。これを踏まえると、新興国への投資は余剰資金のさらに一部にとどめ、大部分はもう少しリスクの低い投資先で運用した方が良いでしょう。
新興国の投資信託を選ぶポイント
新興国投資のスタンスとしては、長期投資、分散投資がおすすめなことは前の項目で解説しました。ここまでで、新興国投資の基礎知識は身についたと思います。
ここからは、実際に投資信託を選ぶときに必要な知識を解説していきます。
投資信託を比較するとき、多くの方は直近の利回りが高い商品につられがちです。しかし、過去の成績がこれからも続くとは限りません。
過去の利回りを参考にするのは構いませんが、以下の3つのポイントも注目していただければと思います。
- 低リスクなら債券、高リスクなら株式
- 純資産総額が大きい
- コストが低いもの
選び方1:低リスクなら債券、高リスクなら株式
インターネット証券会社などで投資信託を選ぶとき、条件ごとにスクリーニングすることができます。
投資先は大きく分けて「債券」と「株式」を選べますが、ざっくり言うと債券の方が低リスク、株式の方が高リスクです。リスクとリターンはおおむね比例するので、逆に債券は低利回り、株式は高利回りが期待できると言い換えることもできます。
この違いは投資先にあります。
債券は基本的に国債なので国に、株式は企業に投資するのですが、国と企業なら国の方が破綻するリスクは低いです。そのため、債券の方が低リスクです。
これまでに投資の経験がある方は、債券でも株式でもご自身に合ったリスク・リターンの商品をお求めください。これまで投資をしたことがない方は、価格変動や元本割れのリスクに慣れていないと思うので、比較的リスクの低い債券の投資信託から始めてみてはいかがでしょうか。
選び方2:純資産総額が大きい
投資信託を選ぶときは、純資産総額の大きさにも注目してください。
純資産総額とは、投資信託が預かっている資産の合計で、大きければ大きいほど投資家からの申し込みが殺到していることになります。できれば、純資産総額が大きい投資信託の方を選んだ方が良いと考えられます。
純資産総額が小さい投資信託は、これ以上運用を続けられないというレベルまで資産が減ると、運用をやめてしまいます。その時点での資産は投資家に返還されますが、途中で運用をやめられて嬉しい投資家はいないでしょう。
純資産総額が大きい投資信託は、途中でやめられてしまうリスクが低いです。そのため、純資産総額が大きい商品に投資した方が良いと一般的には考えられます。
選び方3:コストが低いもの
デメリットの項目で、新興国の投資信託は手数料などのコストが高いことを解説しました。どの商品も手数料が高いのですが、比較してみると若干安い投資信託もあります。
似たような商品はたくさんあるので、迷ったら手数料を比較し、安い方にするという考え方もできます。
2020年4月末現在、新興国の投資信託の信託報酬は他の商品に比べてかなり高いです。ですが、広く人気のある国内の投資信託を中心に手数料の引き下げ競争にあるので、今後は新興国の投資信託も手数料が下がって買いやすくなるかもしれません。
【債券】おすすめの新興国の投資信託
投資信託を選ぶときに注目したいポイントを解説しましたが、そんな知識をすっ飛ばしておすすめの商品を教えて欲しいと思っている方もいるでしょう。
その声にお応えして、ここからはおすすめの新興国の投資信託を紹介していきます。債券型で3つ、株式型で3つ掲載していきます。
まずは、債券で運用する投資信託のおすすめ商品3つを紹介していきますので、投資を始める方は参考にしていただければと思います。
債券1:三菱UFJ国際-エマージング・ソブリン・オープン(毎月決算型)
エマージング・ソブリン・オープン(毎月決算型)は、新興国が米国市場などで発行する米ドル建ての債券で運用する投資信託です。
為替ヘッジされているので、為替変動リスクは影響しません。新興国投資信託の中では安定した運用が期待できます。
純資産総額は約172億円で、新興国投資信託の中ではかなり大きい方です。信託報酬は1.727パーセントで、新興国投資信託の中では平均かやや低いくらいです。
毎月分配金がもらえるので、投資の収益がわかりやすいのも特徴です。不労所得が欲しくて投資をする人にもおすすめできる投資信託です。
債券2:日興-日興ピムコ・ハイインカム・ソブリン・ファンド毎月分配型(米ドルコース)
日興ピムコ・ハイインカム・ソブリン・ファンド毎月分配型(米ドルコース)も、米ドル建ての新興国債券で運用する投資信託です。
三菱UFJ国際の商品と異なり、為替ヘッジされていないので、為替変動リスクが影響します。通貨が下落するリスクがある一方、通貨が強くなれば利益が出るメリットがあります。
純資産総額は約160億円で、類似の商品と比較すると大きい方です。信託報酬は1.76パーセントで、新興国投資信託の中では平均かやや低い水準です。
この投資信託も、毎月分配金をもらうことができます。不労所得が欲しい人に向いている投資信託です。
債券3:三井住友TAM-SMT 新興国債券インデックス・オープン
SMT 新興国債券インデックス・オープンも、新興国の債券で運用する投資信託です。過去には分配金がありましたが、最近の実績ではないので、分配金がない投資信託だと思っておきましょう。
分配金がないのは、悪いことではありません。利益を投資家に支払わない代わりに、再投資に回して利益を生むことに使われているからです。
純資産総額は約180億円で、類似商品に比べて大きい特徴があります。さらに、信託報酬は0.66パーセントであり新興国投資信託の中では非常に安いです。投資家が負担するコストが低い分、利益を消費しなくて済みます。
【株式】おすすめの新興国の投資信託
次に、株式で運用する新興国投資信託でおすすめの3つの商品を紹介していきます。他にも商品はたくさんあるので比較していただきたいですが、迷ったらこれらへの投資を考えてみてはいかがでしょうか。
株式1:三菱UFJ国際-eMAXIS新興国株式インデックス
eMAXIS新興国株式インデックスは、新興国の株式で運用する投資信託です。為替ヘッジは行われないので、為替変動リスクがあります。
純資産総額は約247億円で、大きな規模を誇っています。信託報酬が0.66パーセントで低いのも、投資しやすいです。
分配金はないので、長期の資産形成をしたい人におすすめの商品です。
株式2:三井住友TAM-SMT 新興国株式インデックス・オープン
SMT 新興国株式インデックス・オープンも新興国の株式で運用する投資信託です。純資産総額は約180億円で、信託報酬が0.66パーセントです。
投資先がeMAXIS新興国株式インデックスと重複しているので、純資産総額が大きいeMAXIS新興国株式インデックスの方が投資しやすいと考えられます。もしこの商品に投資できない場合、次点でSMT 新興国株式インデックス・オープンへの投資を考えるのが良いでしょう。
株式3:SBI-EXE-i新興国株式ファンド
i新興国株式ファンドも、新興国株式で運用する投資信託です。純資産総額は約83億円と少ないのですが、信託報酬が0.3635パーセントと低いのが特徴の商品です。
純資産総額が小さいのは、i新興国株式ファンドの運用が始まってから7年ほどしか経っておらず、一部の投資家しか知らない状態だからです。信託報酬の低さは際立っており、運用成果も類似商品と比較して悪くないので、今後注目できる商品です。
まとめ
新興国への投資や投資信託について解説してきました。著しい経済成長の恩恵を受けて高い利回りが期待できる一方、法律やインフラが脆弱なのでいつ暴落するかわからないリスクもあります。
ハイリスク・ハイリターンの投資なので、余剰資金の一部で投資を試してみるなどリスクのコントロールが必要です。節度ある投資で、高い利回りを享受しましょう。