不動産投資信託(REIT)のメリット・デメリットなど具体的に投資するために知っておくべき11つのこと

不動産投資、というとお金持ちの資産家がやっている投資という印象を持たれる方は多いかもしれません。

そのイメージはあながち間違っておらず、不動産投資を始めるのには一般的に数百万~数千万円が必要とされています。

ですが同じ不動産投資でも「不動産投資信託(REIT)」は、投資商品としての本質は変わらないまま、比較的少額から投資を行うことが可能となっています。

今回は、不動産投資信託に興味がある方に向けて、「そもそも不動産投資信託(REIT)とは何なのか?」ということから始め、そのメリット・デメリットなどについても詳しく見ていくことにしましょう。

目次

1、不動産投資信託(REIT)とは?

(1)そもそも不動産投資信託(REIT)とは何なのでしょうか?

不動産投資信託(REIT)は、一般的に投資信託と言われる金融商品とほぼ同様の仕組みとなっています。

個人投資家から資金を集め、その資金を使ってオフィスビル、商業施設、マンションやホテルなどを購入し、賃貸収入、不動産売却益を投資家に還元する仕組みの商品です

株式や債権などを運用していた投資信託との違いは、投資先が不動産になったことです。

多くの投資信託はポートフォリオにおける投資対象として株や債券を組み込んでいますが、REITの場合はそれを不動産にし、賃貸収入・売却益などによって利回りを確保しています。

アメリカで始まったREITは、Real Estate Investment Trustの略です。

日本ではJ-REITと呼ばれています。

(2)REITの種類

REITの投資先となる不動産はオフィスビル、商業施設など多々ありますが、そういった投資対象という観点からREITを大きく2つに分類することが出来ます。

  • 単一用途特化型
  • 複数用途型

①単一用途特化型

単一用途特化型はその名の通り、一つの不動産形態に特化したREITです。

例えばオフィスビル特化型、ホテル特化型、などといったものがその例として挙げられるでしょう。

②複数用途型

対して複数用途型は、複数の不動産形態に投資を行うREITです。

2つの形態の不動産に投資をする「複合型REIT」、3種類以上に投資もしくは用途を限定しない「総合型REIT」に更に分類されます。

(3)REITの特徴

それぞれの不動産の特徴は当然大きく異なります。

①「単一用特化型REIT」は、株でいう集中投資、一つの銘柄や業種に集中して資金を投資するイメージです。
②「複数用途型REIT」は、分散投資、様々な不動産形態にバランスをとって投資を行うことで、リスク・リターンバランスを調整しているという特徴があります。
③「地域特化型REIT」は、扱う不動産のみでなく「投資先の不動産の地域」によっても分類されることがあり、「地域特化型」「地域分散型」のような区別をされているものもあります。

多くのREITは都市部の不動産を中心に投資していますが、一部は地域特化型のものも存在しています。

なお、不動産投資信託についてはこちらの「」の記事も参考になりますのでより詳しく知りたい方は本記事と併せてお読みください。

2、不動産投資信託と普通の投資信託の違いは?

不動産投資信託と、通常の投資信託の違いは何なのでしょうか?

どちらも個人投資家から資金を集め、投資を行いそこでリターンを得ることを目指すという点には変わりはありません。

主だった違いとして言えるのは「投資対象が不動産かどうか」という点です。

またREITはその多くが上場しており、普通の株式と同じように購入のタイミングを自分で決められる、というのも大きな違いでしょう。

通常の投資信託はそれに比べると購入・売却(解約)にやや時間がかかり、また流動性の面でも少し劣っているというところがあります。

3、不動産投資信託(REIT)の仕組みは?

ここでは、REITを購入し利益を得るまでの仕組みを見ていきましょう。

(1)不動産投資法人

通常の投資信託においても関わってくるのは、我々個人投資家と運用会社のみではなく、

販売会社(証券会社)、受託会社(信託銀行)など間に仲介業者がいくつか存在しています。

出典:楽天証券

これに対してREITの場合はJ-REITという投資法人が中心となって仕組みが成り立っており、我々はJ-REITが発行した投資証券を買う、というかたちでREITに投資を行っていることになります。

J-REITは「不動産投資法人」とも呼ばれ、一つの会社のような形態となっており、不動産の取得・運用を行うという名目で各会社のハブ的な役割を担っています。

出典:一般社団法人 投資信託協会

我々投資家にとってはこの仕組みの違いによって恩恵を受ける、ということはありませんが、一つの知識として頭に置いておくとよいでしょう。

4、不動産投資信託(REIT)の利回りの相場は?

(1)不動産投資信託(REIT)高い利回りの訳

不動産投資信託(REIT)のメリットの一つとして挙げられるのが、高い利回りです。

株式の平均利回りが1~3%であるのに比べ、REITの利回りは3%~と、勿論そのときの時価などによって利回りは異なりますが、一般的には株式よりも高い利回りを保持し続けています。

REITの利回りが高めとなっている大きな理由の一つは、REITが得た利益に対して法人税がかからないということが挙げられます。通常の株式会社であれば「税引き前当期利益」から法人税が引かれ、それが「当期純利益」となり、そこから配当が投資家に渡る、という仕組みになっています。対してREITの場合は当期利益において、その90%以上を分配金に充てるという仕組み上から法人税が免除されているのです。

株式、REITともに我々が得ることのできる利益は「値上がり益」「配当金(分配金)」となりますが、REITの場合は後者の配当が株式に比べかなり高めになっているということですね。

とは言え、だからと言ってREITの方が総合的な利回りが高いということではありません。「値上がり益」というのは配当金に劣らず重要で、そちらも重視して見ていきたいポイントの一つです。

5、他の金融商品と比較した不動産投資信託(REIT)のメリットは?

ここまでも株とREITを少し比較しながら見てきましたが、他の金融商品と比べてREITのメリットにはどんなものがあるのでしょうか?

まず挙げられるポイントとしては、

(1)不動産投資信託(REIT)のメリット

  • 不動産投資に比べ、少額から投資が可能
  • NISA口座で買い付け可能
  • 単一用途特化型、複数用途型を選択でき分散投資をすることが可能
  • 高い配当利回り
  • 上場しているものが多いため、好きなタイミングで売買を行える(流動性が高い)

などが挙げられるでしょう。

またREITは新規上場銘柄(IPO)となるものの数が多く、種類が増えてきているというのも一つの特徴です。

恐らく個人投資家にとって一番大きなメリットと言えるのは「高い配当利回り」であり、確かに利点の一つではあるのですが、先にも書いた通りREIT自体の基準価額(株価のようなもの)が下がり続けてしまうのでは意味がありません。

株式市場と不動産市場には相関関係はありますが、株が上がれば不動産もそれについていくという単純な構図であるとは言えません。

REITを購入する際には将来の不動産市場についても目を配っておくべきでしょう

6、他の金融商品と比較した不動産投資信託(REIT)のデメリットは?

他の金融商品と比べたREITのデメリットは、何よりも「投資対象が不動産」である点だと言えるでしょう。

(1)不動産投資信託 (REIT)のデメリット

これはデメリットと言うよりは懸念点、といった方が正しいのかもしれませんが、不動産市況にとっては急な自然災害などが商品価値を著しく下げる要因となります

また不動産市場が悪化すれば賃料などにも影響が出てくる、ということも考えられます。

REIT固有のデメリットというよりは不動産を扱うがゆえに考えざるをえないリスクを含有している、というイメージですね。

他にもデメリットはいくつかあり、

  • 投資法人(J-REIT)が倒産する可能性
  • REITは上場しているため、上場廃止になる可能性がある
  • 不動産の所有ができない

なども挙げられます。

デメリットが完全にない、という金融商品はないため、こういった側面があるからREITはハイリスクというわけではありません。

メリット・デメリットを把握したうえで投資に臨むことが重要であると言えるでしょう。

7、不動産投資信託(REIT)への投資はアリか?

こういった点を踏まえたうえで、不動産投資信託(REIT)への投資は「アリ」なのでしょうか、「ナシ」なのでしょうか?

何度か書いてきているように大事なのは、「我々個人投資家が利回りを享受できるか?」という点です。

高い配当利回りがREITのメリット、と書いてきましたが、REIT自体の基準価額が大きく下落してしまったり上昇しなかったりするとそのメリットを打ち消しかねません。

そのため、軽くでもいいので不動産市況に関するニュースを自分で調べ、将来の予測を立てるのがよいでしょう。

また、資金的側面から見るとREITへの投資は比較的少額からでもOKとなっています。

一口あたりの価格であれば10万程度のものも多く存在しており、敷居はかなり低いと言えます。

ただ、どんな時でも分散投資を念頭に入れ、資金をREITだけに絞らず、株式、投資信託などに振り分けて、買うのが良いでしょう。

8、不動産投資信託(REIT)に投資してもいいと思われるタイミングは?

(1)不動産市況のチェック

先にも書いたように、REIT投資を行うにあたっては不動産市況をざっくりとでもいいので把握しておくことが大事です

2013年のアベノミクス以降不動産は盛況化していましたが、段々と陰りも見え始め、新規上場したREITには公募価格割れをしているものも目立ち始めてきています。

2016年2月からの日銀のマイナス金利政策は不動産の価格上昇に影響を与えたものの、かつてのような活発な市況は見られず、値上がり益を享受しにくい状態が続いている印象です。

(2)値下がりがチャンス?

「安く買って高く売る」というのは投資の鉄則の一つです。

不動産価格が下がったときにREITを買うというのは良いタイミングだと言えますが、「この価格よりも更に下がってしまう可能性はないか」というのは頭に置いておくべきでしょう。

不動産市況の詳しい状況に関しては国土交通省が出しているデータが参考になります

REITの購入を検討している方はぜひチェックしておきましょう。

不動産価格指数(平成29年4月・第1四半期分)の公表(国土交通省)

http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo05_hh_000135.html

(3)高値掴みをしないためには?

よく耳にする「不動産バブル」という現象にも気を付けたいです。

株や不動産など金融商品の価格が上がると、それまで注目していなかった人もそれを買い始め更に値上がりし、そして需給バランスがおかしくなったところで暴落する。

というのは過去何回もあったケースです。

不動産バブルを感じ取る一つの方法は、「セミナーがやたらと目につくようになってきたかどうか」をチェックする。

不動産市況が活況な時にセミナーは多くなります。

セミナーを受けられる方は、全く不動産投資をしたことのない人から現在不動産投資を始めていらっしゃる方まで様々です。セミナーを受けた先の投資不動産やREITを、あまりよく理解しないまま飛びついて買ってしまうこともあるようです。

気がつかないうちに高騰した不動産を購入しないように注意しましょう

そういった意味で価格が低迷している、というのは一つの投資チャンスでもあり、淡々とチャンスを狙っておくべきでしょう。

9、不動産投資信託の銘柄と海外投資銘柄の探し方?

不動産投資信託(REIT)は、証券会社のページから簡単に検索することが出来ます。

(1)SBI証券

https://www.sbisec.co.jp/ETGate

(2)楽天証券

https://www.rakuten-sec.co.jp/

(3)カブドットコム証券

http://kabu.com/company/

(4)海外の投資対象

REITの投資対象となっている物件には国内のものから海外のものまで多く存在しています。

まずは、国内REITから始め、慣れてきたらアメリカをはじめとした先進国やブラジル・アジアなどの新興国のREITも組み込んでみるとよいかもしれません。

新興国REITはリターンが高めという一方で値下がりリスクもあるため、あくまでもポートフォリオの一部として考えるのがよいでしょう。

目論見書を見ると、どこの国に不動産に投資を行っているのか、決算頻度はどのくらいなのかという基本情報を確認することが出来ます。投資をするにあたっては目論見書を読むことは必須だと言えます

10、不動産投資信託の銘柄の選び方は?

不動産投資信託(REIT)を選ぶにあたってのポイントは、基本的には通常の投資信託を選ぶ場合と変わりません。

(1)手数料が安い

REITは、手数料のかからないものも多く存在しています。

(2)分配金が安い

分配金に関してはファンド自体の基準価額を削って捻出している、というものも少なくないので、「基準価額と分配金の関係を目論見書でチェックしておく」ことを忘れないようにしましょう。

(3)年間収益率に大きなブレ幅がない

過去のパフォーマンスをチェックし、年間収益率を見ておくということも大事です

一時的に高い収益を出していてもある年では-10%以上のパフォーマンスとなっているものは注意が必要です。

値動きの幅が極端に大きいファンドはリスク管理という観点から初心者にはオススメしづらいです。

他にも、先ほど紹介したSBI証券会社のスクリーニング機能を使えば様々な条件で絞ることが可能です。

自身の求める条件にあったものを選ぶようにしましょう。

SBI証券 投資信託 パワーサーチ

11、不動産投資信託するならNISAの利用がおすすめ!

年間120万円までの投資枠が無課税になる「NISA口座」をREITに使う、というのは一つのアイデアとして非常に賢い方法です。

中長期投資にあっているNISAと、短期間で大きく価格が変動しないREITは相性が非常によいためです。

NISAといえば個別銘柄という投資家も多いようですが、高い利回りが見込めるREITも選択肢に入れましょう。

NISAは運用金額に限度はありますが、逆に少額投資の方はNISAを使ってREITを購入すればその恩恵を充分に受けることが可能になります

まとめ

ここまで不動産投資信託(REIT)の特徴やメリット・デメリットについて見てきました。

不動産投資に対して抵抗がある方でも、REITは、口座を持ってさえいれば簡単に購入することが出来ます。

メリット・デメリットを押さえたうえで、「不動産市況について情報を仕入れ、将来予測をたてる」というのがREIT投資にとっても重要になってくると言えるでしょう。