少し前まで人気の投資信託上位だった「ひふみ投信」ですが、最近は人気がなくなってきています。以前ほどの勢いがなく、不調だからという理由で解約する方も増えているようです。
確かに、最近のひふみ投信の成績はあまり良くありません。ですが、運用に失敗していると言えるほどなのでしょうか?
この記事では、ひふみ投信を買おうか迷っている人や、すでに持っていて解約しようか迷っている人のために、ひふみ投信が不調に見える理由について解説します。低リスクに投資信託を運用する方法もお伝えするので、参考にしてみてください。
ひふみ投信とは
「ひふみ投信」は投資信託の商品の一つで、主に国内の成長株式に投資するアクティブファンドです。
アクティブファンドとは、資金の運用を行う投資会社が、市場平均の利回りを超えるパフォーマンスを出すため、銘柄を厳選して投資する投資信託のことです。ひふみ投信を運用するのはレオス・キャピタルワークスという投資会社で、ここに在籍するプロの投資家たちが値上がりしそうな銘柄を厳選しています。
ひふみプラスとの違い
「ひふみ投信」と名前が似ている商品に、「ひふみプラス」があります。こちらもレオス・キャピタルワークスが運用する投資信託で、ひふみ投信と同じ銘柄に投資しています。つまり、この2つはまったく同じ商品です。
つまり、この記事で解説する「ひふみ投資が不調な理由」は、そのまま「ひふみプラスが不調な理由」でもあります。ひふみプラスが不調な理由を知りたい方も、このまま読み進めていただければと思います。
念のため補足しておくと、両者は販売方法と信託報酬が異なります。
「ひふみ投信」はレオス・キャピタルワークスが直接販売している商品です。一方で、「ひふみプラス」は銀行や証券会社などの販売会社を通じて販売しています。
信託報酬は、どちらの商品でも基本的に0.98パーセントですが、割引の条件が異なります。
ひふみ投信の場合、投資金額に関係なく保有年数が5年以上になると、信託報酬が割引きされます。ひふみプラスの場合、保有年数は関係なく、投資金額が500億円以上になると割引きされます。
どちらの割引き条件の方が簡単かというと、ひふみ投信の保有年数5年以上の方でしょう。これからひふみに投資する人は、できればひふみ投信を選んだ方が手数料を節約できます。
ひふみ投信の運用成績
ひふみ投信は、2008年から運用が始まった投資信託です。最初は知る人ぞ知る優良ファンドだったのですが、2017年にテレビ番組で取り上げられたことで人気が爆発しました。
運用成績が好調だったのでテレビで取り上げられたのですが、最近は確かに不調気味です。近年のひふみ投信の運用成績がどのようなものなのか、振り返っていきましょう。
2016年~2017年
2016年から2017年は、テレビ番組に取り上げられて人気が爆発する前後の期間です。多くの人がひふみ投信を買ったため、運用資産額が300億円規模から1,000億円規模まで成長しました。
また、運用成績も右肩上がりで、基準価格は約3万円から約5万円へと成長しました。
ただし、2016年から2017年は市場全体も調子が良く、右肩上がりの期間です。ひふみ投信だけが利益を伸ばしたのではなく、市場平均も利益を伸ばしていました。
特に、2017年の相場は好調で、「株を買うだけで誰でも儲かる」とすら言われたほどです。つまり、2016年から2017年は市場全体として好調で、ひふみ投資も例に漏れず好調だった、とまとめることができます。
その中で、ひふみ投信は市場平均より良いパフォーマンスを出していたため、多くの投資家が買い求めて一躍人気となったのです。
2018年~2019年
好調な相場は続かず、2018年から2019年にかけてのひふみ投信は、横ばいかややマイナスの成績となりました。
ひふみ投信だけでなく、相場全体も横ばいかマイナス傾向でした。不調だったのはひふみ投信だけではありません。
ただし、相場の平均的なマイナスよりも、ひふみ投信のマイナスは幅が大きい傾向にあります。国内株式が全体的に値下がりした2018年10月には、月間騰落率がTOPIX(配当込み)はマイナス9.41パーセントでしたが、ひふみ投信はマイナス12.16パーセントとなり、市場平均を下回っています。
まとめると、2018年から2019年は相場が全体的に弱く、ひふみ投信も利益を伸ばせませんでした。また、マイナスになるときは、ひふみ投信は市場平均よりも大きなマイナス幅になることがわかりました。
2020年前半
この記事の執筆時点2020年3月では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界的な株安が起こっている最中です。感染の収束見込みが立たないため相場全体が暴落、ひふみ投信も暴落しています。
2020年3月現在、市場平均とひふみ投信のマイナス幅は同程度となっています。
片方のパフォーマンスが著しく良い、または著しく悪いといったことはありません。相場全体が落ち込んでおり、ひふみ投信も値下がりしています。
ひふみ投信が不調になった理由
2016年から2020年現在までのひふみ投信の成績を見てきました。2017年までは好調、2018年からは不調になったと言えます。
この項目では、なぜ2018年からひふみ投信が不調になったのか解説していきます。大きな理由は次の3つです。
- 人気・期待が急激に高まりすぎたから
- 国内株式は軒並み不調だから
- アクティブファンドは変動が大きいから
理由1:人気・期待が急激に高まりすぎたから
ひふみ投信は2017年に人気が急上昇し、運用総額が約300億円から1,000億円以上へと急増しました。大金が集まったことにより、それまでと同じ方法での運用ができなくなってしまったため、運用方法を変えざるを得なくなったのです。
これが、ひふみ投信が不調に見える最大の理由です。
運用総額が小さい間は、「有望なのにあまり知られていない割安な株式」を発掘して投資をしていました。見事な選球眼で次々と有望株を掘り当てたので、運用開始から2017年まで好調な運用成績を残すことができました。
ところが、人気が高まって資金が集中すると、「あまり知られていない有望株」だけで運用するのが難しくなってきました。マイナーな株式は株数が少ないので、ひふみが大量に買い付けたら値段が上がってしまいます。
大量の資金を運用するため、割安な有望株だけでなく国内の大型株式や海外の株式への投資割合を上げることになったのです。
それ自体は、悪い施策ではありません。大型株式で運用してはいけないなんてことはないからです。
ただし、大型株式は歴史がある企業で安定成長期に入っている銘柄が多く、急成長は望めません。そのため、2017年以前と比べてひふみ投信のパフォーマンスは低くなってしまいました。
理由2:国内株式は軒並み不調だから
2018年から運用環境が悪化したことで、ひふみ投資の成績も悪くなってしまいました。外部環境が悪くなったため、ひふみ投信以外の投資信託も多くが不調になっています。
ひふみ投信は、主に国内の株式に投資する商品です。2018年からは国内の株式が全体的に不調になったので、ひふみ投信もつられるように不調になってしまいました。
理由3:アクティブファンドは変動が大きいから
他の投資信託も不調とはいえ、「ひふみ投信の不調具合の方が大きいのはなぜだろう?」と疑問に思われている方も多いと思います。それは、「アクティブファンド」であるひふみ投信と「インデックスファンド」の成績を比べているからではないでしょうか?
インデックスファンドとは、市場平均と同じくらいのパフォーマンスになるよう運用する投資信託です。他方、アクティブファンドとは市場平均を上回るために、ファンドマネジャーが独自の目線で銘柄を選ぶ投資信託です。
アクティブファンドはインデックスファンドよりハイリスク・ハイリターンな商品です。ひふみ投資もアクティブファンドですが、インデックスファンドよりも高い利回りが確約されているものではありません。
より高い利回りを狙うために、より高いリスクを取っています。昨今のひふみ投信の不調は、高いリスクが表面化したものと考えられます。
ひふみ投信を解約するべきか?
ひふみ投信が不調であることがわかると、「解約した方が良いのかな?」と迷ってしまいますよね。筆者としては、すでに投資をしている人は解約しなくて良いと考えています。
解約しなくて良い理由と、このまま投資し続ける人に向けた注意点について解説していきましょう。
投資信託は中長期で成果を見る
投資信託は、中長期で利益を出す性質のものです。中長期とは、数年から数十年のスパンのことで、短くても5年は見て欲しいです。
5年以上をトータルで見たときに利益が出ていれば、投資信託での運用は成功していると捉えられます。
ひふみ投信が不調なのは、2018年から2019年までのたった2年です。残念ながら2020年もコロナショックで絶望的な始まり方になっており、経済の見通しが立たない不安もありますが、急激に回復する可能性もあります。
運用を開始した2008年から2017年までの10年間は、右肩上がりで好調な成績でした。つまり、2008年から2019年までの12年間のうち不調なのは2年で、10年は好調でした。
したがって、中長期的に見ればひふみ投信は好調と捉えることができます。最近不調だからといって、今すぐ解約した方が良いほどの商品だとは言えません。
基本的には市場平均に連動している
コロナショックに伴い、ひふみ投信を始めとするあらゆる商品の価格が下落しています。市場全体が下落しているため当たり前だと言えます。
もし、相場全体が好調なのにひふみ投信だけ下落しているなら解約した方が良いと考えられます。ファンドマネジャーが運用に失敗しているからです。
しかし、ひふみ投資は今のところ市場と連動する値動きをしています。相場全体が不調なときは、どんなに優れたファンドマネジャーでも利益を出せないものです。
特に運用に失敗しているわけではないと考えられるため、解約しなくても良いと解釈できます。
ひふみ投信しか投資していない人は注意
ただし、ひふみ投信にしか投資していない人は状況が異なるかもしれません。もし貯金のすべてをひふみ投信に預けている場合は、いくらか売って現金にしたり、よりリスクの低いインデックスファンドに投資したりした方が良いかもしれません。
上述したように、ひふみ投信を始めとするアクティブファンドはハイリスク・ハイリターンな商品です。ハイリターンに魅了されて投資を始めた方が多いと思いますが、近年は「ハイリスク」の方が顕在化しているため、今後も下落し続けるかもしれません。
有事の際にお金がなくなってしまっては困るので、全財産に近い大金を預けている人は一部を解約するのも良いでしょう。
投資信託のリスク・注意点
これまではひふみ投信についての注意事項をお伝えしましたが、ここでは投資信託の一般的なリスクを3つ解説します。
ひふみ投信以外の商品に投資をしたい方も参考にしてみてください。
- 元本保証ではない
- 過去の成績は将来のリターンを保証するものではない
- 為替変動で損をする可能性がある
リスク・注意点1:元本保証ではない
投資信託は、元本保証の商品ではありません。100万円を投資しても、運用に失敗して80万円に減ってしまう、といったことがあり得るのです。
ノーリスクでリターンを得ることはできません。お金が減るリスクを取って、リターンを狙うのが投資です。
元本割れがどうしても許せないと考えるなら、銀行預金しか方法はありません。投資信託に限りませんが、投資には元本割れのリスクがあることを理解しておきましょう。
リスク・注意点2:過去の成績は将来のリターンを保証するものではない
投資信託に限りませんが、投資商品がこれまで良い成績を残しているからといって、将来もずっと運用がうまく行くとは限りません。過去の成績は将来について何も保証してくれないのです。
ひふみ投信に投資をしている方の多くも、過去のパフォーマンスの良さに惹かれていたのではないでしょうか?
もちろん、商品を選ぶときにわざわざ成績が悪いものを選ぶ必要はありません。ですが、過去の成績が良いからといって、将来もその成績が保証されるわけではないのです。
リスク・注意点3:為替変動で損をする可能性がある
海外にも投資をする商品の場合、為替変動によって損をする可能性があります。投資先がどんなに利益を出しても、為替が不利な方に動いて損をしてしまうことがあるのです。
ただし、為替が得な方向に動くこともあり、運用益が多くなることもあります。為替変動によって損をする可能性も得をする可能性もあることを押さえておきましょう。
投資信託で低リスクに運用する方法
ひふみ投信に大金を預けている人は、リスクを取りすぎかもしれません。ここでは、低リスクで投資信託を運用する方法を紹介するので、ご自身の投資を見直すきっかけにしてみてください。
低リスクに運用するためには、次の3つのポイントが重要です。
- インデックスファンドをメインに分散投資する
- アクティブファンドはサブの投資信託という位置づけにする
- 高成長の海外投資も組み込む
方法1:インデックスファンドをメインに分散投資する
インデックスファンドはローリスク・ローリターン、アクティブファンドはハイリスク・ハイリターンです。リスクを下げた運用をするなら、インデックスファンドを中心に据えると良いでしょう。
インデックスファンドは、市場平均に変動する商品です。
国内への投資なら、日経平均株価やTOPIXに連動する商品があります。海外なら、世界中の株式に分散投資した商品や、先進国株式に分散投資した商品があります。
これらのインデックスファンドを投資のメインとすれば、概ね市場と連動する低リスクの運用ができます。市場全体が上がるときは一緒に上がり、全体が下がるときも一緒に下がる商品です。
方法2:アクティブファンドはサブの投資信託という位置づけにする
ひふみ投信を始めとするアクティブファンドは、少額を使ってサブの運用とすることがおすすめです。アクティブファンドはハイリスク・ハイリターンで、成績が良いときと悪いときのブレが大きいため、メインに据えると値動きが大きすぎてストレスになってしまうからです。
ローリスクなインデックスファンドをメインにして値動きを安定させ、サブで少しアクティブファンドに投資してリターンも追求するという使い分けがおすすめです。
方法3:高成長の海外投資も組み込む
日本の経済は安定成長期のため、株価の大きな値上がりはあまり期待できません。インデックスでもアクティブでも、海外の成長国にも少し投資すると投資家の収益が良くなると考えられます。
おすすめはアメリカです。アメリカは先進国ですが、人口が増えていることもあり経済成長しやすい国です。
新興国のような破綻リスクが少ないのに成長が期待できるため、アメリカへの投資も視野に入れることを検討してみてください。
ひふみ投信以外におすすめの投資信託
インデックスファンドをメインに、アクティブファンドをサブで運用すると良いことをお伝えしました。ひふみ投信はアクティブファンドなので、メインに投資できるインデックスファンドを探しましょう。
ここでは、メインにおすすめのインデックスファンドを3つ紹介していきます。いずれも運用総額が大きくて運用が終了するリスクが小さく、手数料も低い商品です。
- ニッセイ日経平均インデックスファンド
- eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
- eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
おすすめ1:ニッセイ日経平均インデックスファンド
国内の株式に投資し、日経平均株価に概ね連動する投資信託です。日経平均株価は日本を代表する225企業の株式を平均化した指数なので、ニッセイ日経平均インデックスファンドに投資すれば、これらの企業に間接的に投資することになります。
よく知られた安定成長中の企業が多いので、投資信託を始めたばかりの人によくおすすめされる商品です。
買付手数料や信託財産留保額が無料で、信託報酬は0.154パーセント以内と保有コストが安いことも長所です。日本国内に投資をしたいなら、まずはこのインデックスファンドがおすすめです。
おすすめ2:eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
日本以外の先進国の株式に投資するインデックスファンドです。約7割がアメリカの株式で、残りの約3割がイギリスやフランス、カナダなどの先進国です。
海外への投資を始めたい人におすすめの投資信託です。
買付手数料や信託財産留保額は無料です。信託報酬は1.0615パーセント以内から1.0230パーセント以内に引き下げられました。
業界最低水準を目指すとの宣言どおり、コストを抑えてくれている優良ファンドです。
おすすめ3:eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
1つの投資信託で、8つの投資カテゴリーに分散して投資してくれる商品です。8つの投資カテゴリーは次のとおりです。
- 国内株式
- 先進国株式
- 新興国株式
- 国内債券
- 先進国債券
- 新興国債券
- 国内REIT
- 先進国REIT
世界のさまざまな国に分散投資しているため、値動きが最小限に抑えられています。国だけでなく、
とあらゆる商品が入っており、他の商品と比べて暴落にも強いと言えます。
買付手数料や信託財産留保額が無料で、信託報酬は0.154パーセント以内となっています。保有コストが低いのに8資産に分散投資できるため、今後人気が高まると予想できる商品です。
まとめ
ひふみ投信が不調な理由についてお伝えしました。人気が高まって資金が集中したことや、運用環境が悪くなったことが、最近の不調の要因として挙げられます。
12年の運用期間の中で、不調なのは直近の2年だけなので、あまり悲観的に捉える必要はないと考えられます。
そもそも、アクティブファンドは値動きが大きい商品です。値動きを抑えたいなら、ローリスク・ローリターンなインデックスファンドを組み合わせるなどの工夫をしましょう。