「老後に備えた資産形成が重要」など、「資産形成」というキーワードを聞く機会が多くなってきました。文字通りお金を貯めることなので、資産形成が重要であることはみなさんもご存知だと思います。
この記事では資産形成についてもう少し掘り下げ、なぜ資産形成をする必要があるのか解説していきます。聞き慣れている「資産運用」ではなく「資産形成」である理由や、具体的にどうしたら資産形成ができるのかを説明していきます。
資産形成とは
資産形成とは、貯金などで貯めているお金を、現在の少ない状態から、少しずつ増やしていくことです。わかりやすく言えば、貯金0円の人が10万円、50万円、100万円と貯金を増やしていくようなイメージが資産形成です。
一般的には、1,000万円くらいの資産を作るまでの段階が資産形成と言われています。お金を貯めるための手段は関係なく、貯金が少ない状態から1,000万円まで増やすことが資産形成であると覚えておきましょう。
目的
資産形成の目的として多いのが、退職した後にお金に困らず生活するためです。最近では「夫婦で老後にゆとりある生活を送るためには、年金の他に2,000万円ほどの資産が必要」と言われており、退職までに2,000万円を目指して資産を形成しなければと考えている方も多いと思います。
資産形成の目的は人によって異なるので、他にもさまざまな目的が挙げられます。住宅を購入するための費用を貯めたい人や、子供に楽をさせてあげるために相続できる資産を増やしたい人などもいると思います。
各自でいくら貯めれば良いかを考え、目標の金額として貯めていくと良いでしょう。
資産形成と資産運用の違い
「資産形成」とよく似た言葉に「資産運用」があります。資産運用の方が耳なじみのある言葉かもしれません。
資産運用とは、すでに形成された資産を株式や不動産などに投資して、利益を得て資産を増やすことです。資産形成の後は、資産運用で増やしましょうという流れです。
1,000万円ほどの資産形成ができたら、投資だけでも十分にお金を増やすことができるのです。がむしゃらな節約などは重要度が下がるため、資産形成から資産運用へと言葉が変わります。
資産形成の必要性
資産形成の必要性について、「資産運用でもお金を増やせるのだから、貯金が少ない時から資産運用をすれば良いのではないか?」と疑問を持つ方もいると思います。その疑問はもっともで、資産が少ない人も資産運用して投資した方がお金を増やせます。
ただし、資産運用だけで大きなお金を貯金することは難しいでしょう。資産運用は、元手になるお金が少ないと、得られる利益も少ないからです。
そのため、資産運用以外の方法でもお金を貯める必要があります。資産運用とその他のあらゆる方法を使ってお金を増やすのが資産形成なので、貯金が少ないうちは資産形成の方が合っています。
資産形成する3つの方法
お金を多く貯めることによって、資産を形成することができます。お金を貯める方法は、次の3つに大別できます。
- 収入を増やす
- 支出を減らす
- 投資で増やす
1.収入を増やす
資産を形成するために最も効果的なのが、収入を増やすことです。生活費などの支出を節約できなかったとしても、入ってくるお金が増えれば、毎月の貯金額を増やすことができるからです。
収入を増やして資産形成をするためのポイントは、生活水準を上げないことです。せっかく収入が増えても、外食を増やしたり、ブランド物を購入したりしていては、お金は貯まらないからです。
生活水準を上げず収入を増やすことで、コツコツと貯金額を増やしていきましょう。
2.支出を減らす
資産形成をするためには、支出を減らすことも重要です。収入が変わらなかったとしても、生活費などの支出を減らすことができれば毎月貯金できる金額は増え、資産形成ができるからです。
とは言え、支出を減らすために極限まで節約し続けるのはストレスが溜まってしまいます。ストレスが爆発すると散財に走る人もいるため、逆に支出が多くなってしまう可能性があります。
無理なく続けられる範囲で節約しましょう。
3.投資で増やす
現状の資産が少ない状態でも、投資でお金を増やすことも始めていきましょう。投資は銀行預金よりも高い利回りを狙うことができますし、近頃は放置していても利益を得られる簡単な投資方法もあります。
また、収入アップや支出の削減にはすでに取り組んでいる人が多いのですが、投資をやっている人は少ないです。しかし、資産形成の方法はたった3つしかないのに、2つしか使わないのはもったいないです。
資産が少ない人も、投資を始めてみてはいかがでしょうか。
収入を増やす方法
資産形成において最も有効なのが、収入を増やす方法です。収入といえば本業だけしかないように感じられますが、意外と選択肢はあるものです。
ここでは次の3点について解説していきます。
- 昇進や転職で昇給する
- 副業をする
- 不用品を売る
1.昇進や転職で昇給する
本業で得られる収入を増やせれば、資産形成のゴールは大きく近づくでしょう。昇進だけでなく、資格を取ると報奨金がもらえる会社もあるので、制度を調べてみてみることをおすすめします。
しかし、中には努力が評価されずなかなか昇進できない会社や、昇進してもほとんど給与が変わらない会社もあります。もし、給与が低くて悩んでいるのであれば、転職も視野に入れると良いでしょう。
条件の良い会社に転職できれば、給与が増えるので貯金もしやすくなり、資産形成に役立ちます。
2.副業をする
転職はしたくないけど、本業の給与が少ない場合は、副業を始めてみてはいかがでしょうか。副業の収入を貯金に回せば、早く資産形成することができます。
最近はブログやYouTubeが副業として注目を集めています。しかし、これらは軌道に乗るまでが大変です。
始めたばかりのころは収益が出ないため、苦しい期間を乗り越えられるかが重要です。楽しく発信できることがある人には向いていますが、そうでない人は別の手段で稼ぐのが良いでしょう。
手っ取り早く副業で収入を得るなら、アルバイトのように時給が決まっている仕事がおすすめです。本業の仕事をした後、2時間ほどコンビニのシフトに入る人もいます。
サラリーマンでもできる副業を探してみてはいかがでしょうか?
3.不用品を売る
臨時収入ですが、不用品を売ることでも収入は得られます。使わなくなった電化製品や洋服など、家庭にあるほとんどのものは売れます。
最近ではネットで申し込み、ダンボールに不用品を詰めて送るだけで、査定と買取をしてくれる業者が増えています。自力で買取ショップに持ち込むなどの手間はかからず、簡単にできます。
ただし、気をつけたいのが得られたお金をすぐに使ってしまいたくなる欲求です。臨時収入が入ると気が大きくなるため、美味しいものを食べに行ったり、ブランド物を買ったりしたくなるかもしれません。
誘惑に耐えて資産形成のために貯金しましょう。
支出を減らす方法
支出を減らすにもさまざまな方法がありますが、ここではやってみると大きな金額を節約できる3つの方法を紹介します。
節約といえば月々の電気代を数円節約するなどの少額をイメージするかもしれませんが、これからお伝えする方法であれば、数万円を一気に削減できるかもしれません。
- 固定費を見直す
- ふるさと納税する
- キャッシュレス決済を利用する
1.固定費を見直す
節約において最初にやるべきなのが、固定費の見直しです。固定費とは、毎月だいたい決まった金額を支払う支出のことで、家賃や携帯電話の使用料、保険などが挙げられます。
これらの支出を減らせないか、プランの見直しなどを考えましょう。
例えば、携帯電話なら大手キャリアから格安スマホに乗り換えるだけで、月々1万円近くも節約できるケースがあります。大手キャリアのスマホを使っており、毎月1万円前後かそれ以上の請求が来ている人は、プランや契約会社を見直しましょう。
2.ふるさと納税する
ふるさと納税は、現在住んでいる場所ではない自治体に寄附できる制度です。寄付金のうち2,000円を超える部分については、所得税の還付や住民税の控除を受けることができるため、節税に役立ちます。
ふるさと納税のメリットは、自治体によっては豪華な返礼品がもらえることです。簡単に言えば、高級フルーツやブランド牛などの返礼品を自己負担2,000円でもらえるのです。
自己負担は年収に関わらず2,000円なので、上限までふるさと納税するのが最もお得です。なお、上限は年収に応じて異なります。
3.キャッシュレス決済を利用する
クレジットカードや電子マネー、○○ペイなどのQRコード決済といったキャッシュレス決済を使うことで、節約もできます。キャッシュレス決済をするとポイントが貯まり、現金の代わりに使うことができるからです。
2019年10月の消費増税と同時に、政府による「キャッシュレス・ポイント還元事業」が始まりました。キャッシュレスで商品を購入すると、2パーセントから5パーセントのポイントが還元される仕組みです。
クレジットカードや○○ペイなどで通常貯まるポイントに加え、2パーセントから5パーセントのポイントが貯まるため、非常にお得です。
貯まったポイントは、生活必需品を買うために使えば節約することができます。この後お伝えする「ポイント投資」に使っても良いでしょう。
投資で増やす方法
資産が少ない人も、投資を始めて預金よりも高い利回りで運用し、少しでも資産形成に役立てると良いでしょう。投資には多くの種類があるため、ここでは資産形成を目的としている人におすすめの投資方法を6つ紹介していきます。
- 国債
- 投資信託
- ポイント投資
- おつり投資
- ロボアドバイザー
- 株式投資
おすすめ1:国債
国債は、国が発行している債券です。
投資家は国債を買うことで、国にお金を貸します。その見返りとして、投資家は利息をもらうことができ、これが利益になります。満期が来れば、貸したお金である元本が戻ってきます。
資産形成のための投資に国債がおすすめなのは、元本割れのリスクが低いからです。先進国であれば、国が破綻する可能性は極めて低いです。
よって、国に投資する国債も元本が戻ってこないリスクが低いのです。
資産形成をしている方はまだあまり資産が大きくないため、元本割れリスクが大きな恐怖になっている方も多いことでしょう。国債なら低リスクで運用することができるので、資産形成におすすめなのです。
個人向け国債の利回りは1パーセント弱です。銀行預金よりは高いですが、数ある投資の中では低い方です。リスクをあまり取らないぶん、利回りは低くなっています。
おすすめ2:投資信託
投資信託は、投資家から集めたお金をまとめ、投資のプロが株式や債券などで運用する商品です。銘柄選びや実際の運用などの難しいことは、投資のプロに任せることができます。
資産形成のための投資に投資信託がおすすめなのは、基本的に分散投資できるように設計されているため低リスクで運用ができるからです。
分散投資とは、投資資金をさまざまな銘柄に少しずつ投資することです。多額の資金がプロの下に集まるため、ほとんどの商品では分散投資をしてくれています。
分散投資すると、ある銘柄の大暴落があっても他の投資先が好調なら資産全体に大きな影響はありません。したがって、低リスクの資産運用ができるのです。
投資信託の利回りは1パーセントから3パーセントです。プロに支払う手数料などがあるため、利回りはあまり高くはありません。
おすすめ3:ポイント投資
ポイント投資とは、買い物やクレジットカードの利用で貯まるポイントを使って投資商品を購入する投資です。多くの方は買い物でポイントを貯め次の買い物で使っていると思いますが、最近では株式や投資信託の購入もできるようになってきているのです。
資産形成のための投資にポイント投資がおすすめなのは、現金の節約と投資が両立できるからです。投資商品を買う時も、通常の買い物と同じようにポイントを使えます。
ポイントだけで投資商品を買っても良いですし、現金とポイントを併用することもできます。節約を兼ねた投資なので、資産形成にうってつけなのです。
ポイント投資では、主に株式や投資信託に投資できます。利回りも投資する商品に準じるので、株式なら3パーセントから5パーセントほど、投資信託なら1パーセントから3パーセントほどです。
おすすめ4:おつり投資
おつり投資とは、電子マネーで買い物をした時の端数を自動的に投資するサービスです。おつりを使う投資なので、5円などの少額でも投資することができ、貯金感覚で始められます。
資産形成のための投資におつり投資がおすすめなのは、おつりを貯金するのと同じような感覚で始められるからです。
自動的におつりを投資してくれるサービスなので、無駄遣いがしにくくなって節約もできます。なおかつ、少額ですが運用もでき、おつりで利益を生むことが期待できるのです。
おつり投資の場合、主に投資信託に投資できます。利回りも投資信託と同様で、1パーセントから3パーセントほどです。
おすすめ5:ロボアドバイザー
ロボアドバイザーは、毎月決まった金額を自動で積立投資してくれるサービスです。
投資先を選ぶことも簡単で、アンケートに基づいて投資家のリスク許容度を診断し、投資先を決めてもらえます。投資の知識がなくて、商品選びに困っている人でも、始めやすい特徴があります。
資産形成のための投資にロボアドバイザーがおすすめなのは、投資家が放置していても問題ないからです。資産形成を頑張るためには、仕事でお金を稼いだり、支出を切り詰めたりすることに労力をかけたいですよね。
「正直、投資にまで手間をかけられない」という方も多いと思いますので、自動で投資をしてくれるロボアドバイザーがおすすめです。
ロボアドバイザーの利回りは、投資する商品によりますが、3パーセントから5パーセントほどです。基本的には、投資信託やその類似商品で運用されます。
おすすめ6:株式投資
株式投資は、投資家が株式を買うことでお金を企業に出資する投資です。企業はそのお金で事業を行って利益を出し、投資家に「配当」という形で利益の一部を還元します。
資産形成のための投資に株式投資がおすすめなのは、株主優待をもらうことで節約も同時にできるからです。企業によっては、自社製品や自社サービスの割引券などを優待として、株主に送っています。
株主優待を使えば、日常的に使う商品やサービスを安く手に入れられるので、節約になるのです。節約と投資を両立できるので、株式投資は資産形成に向いています。
ただし、株式がリスクの高い投資方法であることは覚えておいてください。投資した企業が不祥事を起こすと、株価は大暴落してしまいます。
すると、保有している株の価値が下がって資産が少なくなるので、資産形成のゴールが遠のく可能性もあるのです。
株式投資の利回りは、3パーセントから5パーセントが目安です。今回紹介した投資方法の中では高利回りです。
利回りが高い一方で、株価が暴落するリスクもあることは覚えておいてください。
投資に回すべき金額の目安
先ほども触れたように、投資には元本割れのリスクがあります。そのため、全財産を投資につぎ込むのではなく、リスクにさらさず貯金するお金と、リスクを取ってリターンを取りにいく投資のバランスが重要です。
そこで、投資に回すべきお金はどれくらいがベストなのか考えてみましょう。
まず、半年から1年分の生活費は貯金です。投資に回してはいけません。
万が一、会社が倒産したりリストラされたりしたら、再就職までの期間は貯金で生活しなければならないため、半年から1年分の生活費を目安に貯めておきましょう。
次に、使い道が決まっているお金は貯金しておき、投資には回さないようにしましょう。住宅購入や養育費など、将来的に必ず使うお金はリスクにさらさない方が無難です。
最後に、生活費と使い道が決まっているお金を除いて残ったのが余剰資金です。余剰資金なら、投資でリスクにさらしても大きな問題はないでしょう。
余剰資金ならなくなっても良いとは言いませんが、お金を増やすためにリスクを取ることが投資です。
まとめ
資産形成について解説してきました。収入を上げ、支出を減らし、投資で増やすことで資産を形成することについておわかりいただけたことでしょう。
3つの方法をすべて行うことで、資産形成のゴールを引き寄せることができます。仕事と節約は頑張っているものの、投資は手を出したことがない人が多いのですが、投資も始めたほうがお金の増えるペースは上がります。
この機会に投資を始めてみてはいかがでしょうか?