老後保障のための確定拠出年金のしくみと運用のコツ

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確定拠出年金は、制度改正によって専業主婦を含め、現役世代の日本国民のほとんどの方が利用できるようになりました。

しかし、「会社の制度として加入している」「よくわからないから利用していない」「そもそも自分が加入しているのかさえわからない」といった状態になってはいないでしょうか。

老後資金準備のための最強ツールでもある確定拠出年金制度を、知らないままにしておくのは宝の持ち腐れになります。

この記事では、確定拠出年金制度を知り、正しく付き合うためのしくみと運用のコツを解説します。

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Contents

1、確定拠出年金とは?

確定拠出年金は、国民年金や厚生年金といった公的年金とともに、わたしたちの老後の生活を支える年金制度の一翼を担う制度です。

従来、年金と言えば「公的年金」と企業が支給する「確定給付企業年金」というのが一般的でした。

この「確定給付」型の企業年金では、将来の給付額がある程度約束されているため、加入者である従業員にとっては将来の見通しが立てやすいといったメリットがあります。

しかし、長期にわたる低金利など厳しい運用環境が続き、給付に必要な運用成果を将来にわたって確保できるかが不透明な状態となってしまいました。

確定拠出年金はそのような中で導入された制度です。

確定拠出年金制度では、企業や加入者が毎月一定額の掛金を拠出して、自分で運用先を決めて運用を行います。

将来受け取れる年金額は約束されていませんが、運用成果によっては受け取れる年金額を増やすこともできるのが特徴です。

企業や加入者が拠出した掛金や運用による成果は加入者ごとに個別に管理されます。

そのため、掛金をまとめて運用し、全体の運用成果から年金給付を行う公的年金や確定給付企業年金と違って、運用成果や将来の年金額がどうなるかは自己責任となります。

確定拠出年金の給付内容
老齢給付金 加入者が60歳(*原則)以降、年金または一時金として支給
(*受取開始年齢は70歳までの間で任意に決めることができます。加入年齢(加入期間)によっては、受取開始年齢が最長65歳まで引き上げられることもあります。)
障害給付金 加入者が高度障害状態となった場合に、年金または一時金として支給
死亡一時金 加入者が死亡した場合に、一時金として支給

2、企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)の違いは?

確定拠出年金は誰が掛金を負担するかによって、企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)の2つのタイプがあります。

企業型確定拠出年金 個人型確定拠出年金(iDeCo)
対象者 会社員 会社員 公務員 自営業 専業主婦
など
①企業型確定拠出年金制度のほかに、確定拠出年金以外の企業年金制度がある

②企業型確定拠出年金制度のほかに、確定拠出年金以外の企業年金制度がない

③企業型確定拠出年金制度、確定拠出年金以外の企業年金制度のどちらもない

加入 原則全員加入 任意加入(加入するには申込が必要)
掛金拠出者 企業(事業主) 加入者本人
拠出限度額
(月額)
27,500 55,000 12,000 20,000 23,000 12,000 68,000 23,000
税制
メリット
掛金は企業の損金となる 掛金は全額所得控除対象
(小規模企業共済等掛金控除)
拠出方法 企業が納付 給与天引き
または口座振替
口座振替
運用方法の決定 加入者本人が行う 加入者本人が行う
運営費用
負担者
規約により企業または加入者 加入者本人
給付方法 規約により定められた方法 5年以上20年以内の年金受取、または一時金
受給権
付与条件
少なくとも勤続3年 拠出開始じから受給権あり
運営主体 企業(事業主) 国民年金基金連合会
運営管理 企業(事業主)が選定 加入者本人が選定
資産管理 企業(事業主)が選定 国民年金基金連合会(委託金融機関)

企業型確定拠出年金は企業が掛金を負担し、退職金制度・福利厚生制度の一部として行うものです。

一方個人型確定拠出年金は加入者本人が掛金を拠出し、自助努力として行うものであり、両者には違いがあります。

しかし運用先・運用方針を決定するのは加入者本人であるということは、どちらにも共通しています。

続いては、それぞれの年金制度のメリットとデメリットについてみていくことにしましょう。

3、企業型確定拠出年金のメリット・デメリット

企業型確定拠出年金の加入者には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

(1)企業型確定拠出年金のメリット

①掛金負担がない(企業が掛金を負担してくれる)

企業型確定拠出年金は退職金制度・福利厚生制度の一環として、掛金は企業(事業主)の負担となります。

そのため、掛金の負担なく将来年金を受け取ることができるというのが企業型確定拠出年金最大のメリットと言えます。

個人型確定拠出年金では、運営管理機関などに支払う管理コストなどは、加入者本人が負担しなければなりませんが、企業型確定拠出年金では企業が負担することが一般的になっています。

②個人型に比べ拠出限度額が大きい

個人型確定拠出年金では、ほかに企業年金などがない会社員でも月23,000円までしか拠出することはできません。

一方企業型確定拠出年金であれば、ほかに企業年金があれば月27,500円、なければ月55,000円と、拠出限度額が大きいというメリットがあります。

しかも掛金は会社持ちです。

ただし、掛金をいくらにするかは退職金制度の一部として企業が決めるため、必ずしも限度額いっぱいまで拠出してもらえるわけではありません。

そこで、企業の拠出額が拠出限度額未満であれば、拠出限度額との差額分を限度に、加入者自身が掛金を上乗せして拠出できる仕組みも用意されており(マッチング拠出)、自助努力によって拠出枠を活かすことができます。

またマッチング拠出に加え、個人型確定拠出年金に加入して拠出額を増やせば、将来受け取れる年金額や、税制面のメリットをさらに大きくする効果も期待できます。

③会社の経営悪化や運用失敗による影響が小さい

確定給付型の企業年金では、企業による運用がうまくいかず、給付額が削減されてしまうリスクがあります。

また企業の経営悪化が原因で給付額が削減されたり、倒産ともなれば年金が受け取れないといったリスクもあります。

企業型確定拠出年金であれば、拠出された掛金は会社財産とは別に管理され、会社の事情によって年金資産が影響を受けることがないため安心だと言えます。

(2)企業型確定拠出年金のデメリット

①3年以内に退職すると受給権が得られない場合がある

企業型確定拠出年金では、勤続3年未満で退職すると「事業主返還」という仕組みによって、事業主が拠出した掛金が事業主に返還され受給権が得られないことがあります。

転職を重ねながらキャリアアップを図るといった働き方も増えてきているおり、そのような働き方を望む方にとっては、せっかく企業型確定拠出年金の制度があっても無駄になってしまいます。

また受給権が得られた後も、転職や退職の際には注意が必要です。

他の企業型確定拠出年金や個人型確定拠出年金に移換し忘れてしまうと、年金資産が自動移管されてしまい、不利益を被ることもあります。

②将来の受取額が確定しない

確定給付型の企業年金では将来受け取れる給付額が確定しないため、老後の資金計画が立てにくいというデメリットがあります。

また運用リスクは加入者本人が負うことになり、運用成果がよければ年金資産を大きく増やすことができる反面、うまくいかなければ年金額も減ってしまいます。

そのため、どのくらいのリスクを取って、どのくらいの運用成果を目指すのか、老後の資金計画を見据えて運用先を選択することが重要です。

③60歳まで引き出せない

確定拠出年金は、原則60歳以降でなければ積立金を引き出すことができません。

あくまで老後資金準備のための制度だという認識を持っておきましょう。

4、個人型確定拠出年金(iDeCo)のメリット・デメリット

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

(1)個人型確定拠出年金のメリット

①掛金が全額所得控除の対象となる

個人型確定拠出年金の掛金は、全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。

そのため掛金の分だけ所得税や住民税の計算のもとになる所得が少なくなり、税金が安く済みます。

課税所得(収入から各種所得控除を引いたもの)が500万円の方であれば、税率(所得税+住民税)は約30%です。

この方の場合、個人型確定拠出年金の掛金として月2万円を拠出したとすると、年間24万円、この30%の7.2万円分税金が安くなる(還付される)ことになります。

この節税分7.2万円も運用成果の一部だと考えれば、24万円の投資で30%リターンであり、これだけでもかなり大きなメリットです。

②運用益も非課税

個人型確定拠出年金では、掛金でインデックスファンドなどの投資信託などに投資し運用を行います。

通常、投資信託などから得られた利益は譲渡所得や配当所得として約20%の税金が掛かり、手元には利益の約80%しか残りません。

しかし個人型確定拠出年金で運用して得られた利益には、税金は掛かりません

年金として受け取る場合には所得として税金が掛かりますが、一時金として受け取れば退職所得、年金として受け取る場合には公的年金として扱われるため、退職所得控除や公的年金等控除の対象となります。

そのため譲渡所得や配当所得として課税されるよりも、有利であることには変わりありません。

③転職や退職しても年金資産を持ち運べる

個人型確定拠出年金の年金資産は、転職や退職などで勤務先や職業が変わってもそのまま掛金の拠出や運用を続けることができます。

働き方が多様化する今の時代にあった年金制度だと言えます。

④自己破産しても、年金資産は保護される

通常自己破産すれば、預金や有価証券などの財産は清算されて返済に充てられることになります。

しかし個人型確定拠出年金の年金資産は、国税滞納分の返済を除き差し押さえの対象とならず保護されます(確定拠出年金法第32条)。

そのため、たとえ自己破産してしまったとしても、それまで積み立てた年金資産は60歳以降に受け取ることができます。

公的保障も少なく、大きなリスクを抱え働く個人事業主や中小企業経営者の方にとっては、資産や生活を守るための大きな支えだと言えるでしょう。

(2)個人型確定拠出年金のデメリット

①60歳まで引き出せない

個人型確定拠出年金は、企業型と同じように原則60歳以降でなければ積立金を引き出すことができません。

いくら税制メリットが大きくても、あくまで老後資金準備のための制度であり、それまでに必要となる資金まで拠出してしまわないようにしましょう。

②手数料がかかる

個人型確定拠出年金では、以下のような手数料がかかります。

加入時のみかかる手数料
加入時手数料 3,000円弱
毎月かかる手数料
国民年金基金連合会手数料 103円(共通)
事務委託金融機関手数料 64円(共通)
運営管理機関手数料 0〜600円程度(金融機関による)
信託報酬 運用商品・運用残高により異なる

このうち運営管理機関手数料は金融機関によって差があり、無料の金融機関もあれば600円近くかかる金融機関もあります。

また個人型確定拠出年金の運用商品では、信託報酬が比較的安いものが多いですが、商品による差があります。

どちらも毎月発生する費用であるため、積み重なれば金額も大きくなります。

金融機関や運用商品は、この費用も考えた上でしっかりと選ぶようにしましょう。

5、上手に資産を増やすための運用先の決め方

ここまで、企業型、個人型それぞれの確定拠出年金のしくみやメリット・デメリットについて見てきました。

どちらにも共通しているのが、運用先を自分で決めなければならないということです。

確定拠出年金は税制面での優遇もあり、通常よりも有利な位置から投資をスタートすることができるのが特徴だと言えます。

ここからは、このアドバンテージを活かして上手に資産を増やしていくための、運用先の決め方についてみていくことにしましょう。

(1)運用先は一度決めたら終わりではない

確定拠出年金は運用先を選び、一定額を長期にわたり継続して投資していくものですが、運用先を1つに絞る必要はなく、投資対象の異なる様々な運用商品の中から、配分を決めて複数の商品に投資することができます。

また運用先は一度決めたら終わりではなく、運用期間中何度でも変更することができます

この変更の方法には「配分変更」と「スイッチング」の2つの方法があり、これらを使いこなすことで機動的な運用が可能になります。

配分変更 掛金で購入する運用商品の種類や配分割合を変更する方法。

配分変更後も、それまで積み立ててきた資産の割合は変わらない。

スイッチング それまで積み立ててきた資産の一部または全部を売却し、別の商品を購入することで、積立資産全体の構成(種類・割合)を変更する方法。

スイッチング後も、積立資産全体の残高は変わらない。

(2)20代・30代はリスクを取り積極的に資産を増やす

20代・30代であれば、ある程度リスクをとった積極的な運用を行い、大きなリターンを狙うことができます。

この時期には運用残高もまだ少ないため、価格変動による影響も比較的小さくて済みます。

また年金を受け取るまでに時間があるため、損失がでても挽回しやすいということがアドバンテージとなります。

元本確保型の預金商品やリターンの小さい債券型商品の割合を抑え、株式型商品の割合を高めることで高いリターンを狙うのがおすすめです。

株式型商品は価格変動が大きくリスクも大きい商品であり、リーマンショックのようなことが起これば、資産は大きく目減りしてしまうこともあります。

しかし、一定額を継続的に購入していく確定拠出年金では、そのような株価下落局面では多くの株を買い溜めることができます。

そして株価が回復したときには、そのとき買った株が大きなリターンをもたらし、資産を増やすことにつながります。

(3)年金受取時期が近づくにつれ、低リスク資産へスイッチングし資産を守る

年金受取直前に年金資産の価値が急落してしまうと、それを挽回することが難しくなります。

そしてこの急落はいつ起こるかは通常予想できません。

このようなリスクに備えるため、年金受取時期が近づくにつれ値動きの小さい低リスク資産へスイッチングし、資産を守っていくことが大切になります。

株式型商品の割合を下げ、元本確保型の預金商品や債券型商品の割合を増やすことで、資産価値の変動を抑えるようにします。

(4)配分変更・スイッチングをしすぎない

定期的に運用状況や資産配分などを確認することは必要ですが、短期的な目先の値動きに左右されて度々配分変更・スイッチングをするのはおすすめできません。

確定拠出年金では一定額を長期的・継続的に購入するため、価格が高いときには少なく、価格が安いときには多く買う仕組み(ドルコスト平均法)となっています。

この仕組みによって、何もしなくても一定のリスク軽減効果があるのです。

それにもかかわらず、価格が下がったからといってすぐにその商品の購入割合を下げたりすると、せっかく安く買えるときに買いそびれ、その後価格が回復したときのリターンも少なくなってしまうということが起こります。

あれこれ考えすぎるよりも、はじめにきちんと商品や配分を決め、いじりすぎないことも大事です。

煮物と同じですね。

もちろん吹きこぼれたら火を弱めるように、場合によっては手を加えることも必要です。

鍋を火に掛けたまま出かけてしまわないように、定期的な確認は必要です。

6、退職金と確定拠出年金の違いを知って老後の生活保障に役立てよう

退職金制度の一部としても活用される確定拠出年金ですが、退職金とは大きな違いもあります。

ここではその違いについてまとめました。

退職金 確定拠出年金
原資 会社が準備 【企業型】
会社が掛金を拠出
*マッチング拠出では、加入者本人も共同で負担
【個人型】
加入者本人が掛金を拠出
運用方法 運用方針は会社が決定
(社外積立の場合)
運用方針・運用商品は加入者本人が決定
転職・退職時の
取り扱い
転職・退職時に支給されるが、勤続年数をもとに給付額が決まるため、勤続年数が少なければ少額となる傾向がある。 転職先に資産をそのまま移管して、
掛金拠出・運用を継続できる
会社倒産時の
取り扱い
社内積立(内部留保)となっていた場合、保護されないことがある 社外積立で、会社財産とは別に個別管理されているため、保護される
将来の給付額 社内規定であらかじめ決まっている 拠出額と運用成果によって変動する
税制面での
取り扱い
受給した退職金は退職所得控除対象 掛金は全額所得控除対象
運用益は非課税
一時金で受給すると退職所得控除対象
年金で受給すると公的年金等控除対象

退職金は基本的に会社がすべて準備するのに対して、確定拠出年金は運用方針を自分で決めるというところに大きな違いがあります。

確定拠出年金は、運用成果によって給付額が変動するリスクも伴いますが、税制面での優遇措置によってかなり有利な運用ができるため、うまくいけば給付額を大きく増やせる可能性があります。

また、転職時にも資産をそのまま持ち運ぶことができる(ポータビリティ)という特徴があり、転職によってキャリアアップを図るなど多様な働き方に対応した制度となっています。

確定拠出年金は、自分の人生設計にあわせて計画的に老後の資産形成を行うことのできる制度だと言えます。

7、確定拠出年金のすべてがわかるオススメ本3選

最後に、確定拠出年金について、より詳しく知るためにオススメの本をご紹介します。

(1)一番やさしい!一番くわしい!個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門 竹川美奈子(著)

個人型確定拠出年金について、基礎から具体的な商品の選び方、そして受け取り方まで、一通りわかりやすく解説されている個人型確定拠出年金の入門書です。

一番やさしい!一番くわしい!個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門

(2)はじめての確定拠出年金投資 大江英樹(著)

運用のコツや始め方、金融機関の選び方など、確定拠出年金について押さえておくべきポイントがわかりやすくまとめられています。

将来のお金の心配を2時間で解消する一冊です。

はじめての確定拠出年金投資

(3)確定拠出年金の教科書 山崎元(著)

多くの金融機関での経験がある著名経済評論家・山崎元氏による確定拠出年金解説本です。

具体的な商品例などとともに、確定拠出年金との付き合い方や運用商品の選び方がシンプルかつロジカルに解説されています。

確定拠出年金と超簡単に付き合えるようになる一冊です。

確定拠出年金の教科書

まとめ

いかがでしたでしょうか。

確定拠出年金は、従来型の確定給付型の企業年金や退職金、資産運用にはない大きなメリットのある老後資金準備の方法です。

そのしくみをよく理解した上で確定拠出年金をうまく活用し、安心して老後を迎える準備を始めましょう。

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証券会社、生損保代理店での勤務を経てファイナンシャルプランナーとして独立。

(保有資格)1級FP技能士・証券外務員一種
(試験合格)宅建士・行政書士

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