日本取引所グループの2018年2月時点の公開情報によると、上場を果たしている会社はおよそ3600社近くに及びます。
そのため株を買う、となったときにどういった区分分けをして銘柄選択をすればよいのか困った方は多いでしょう。
その区分にも数多くの方法がありますが、今回は「内需関連株」というくくりに重きを当てた情報をピックアップして見ていきます。
為替との関連性も高い内需株および外需株の特徴やメリットを知ることによって、投資・銘柄選定のスキルが上がることは間違いないでしょう。
1、内需関連株とは?
そもそも「内需」および「内需関連株」とは一体どのようなもののことを指すのでしょうか?
簡単に言ってしまえば読んで字のごとく、内需とは「国内の需要」のことを指します。
なので「内需関連株」は国内需要があるサービス・産業を扱う銘柄群をひとまとめにした言い方になるわけですね。
内需産業は国内の需要を主として狙っているので、国内景気の調子が良いほど業績にも恩恵が出てくるということになります。
昨今ビジネスもグローバル化が進み、完全に日本国内向けのみで事業を行う、という会社は少なくなってきていますが、ここでの内需関連株は「収益セグメントの中でも国内の比率が高い」企業も含めていると考えてください。
東京証券取引所の上場銘柄は33業種に分けられますが、
その中でも内需株の代表業種として挙げられるのが「不動産」「銀行」「保険」といった金利に影響を受ける金融系、「建設業」「倉庫・運輸」「陸運(電鉄)」「電気・ガス」といったインフラ系、国内で事業展開の多い「小売」「サービス」といった業種、そして「鉄鋼」「紙・パルプ」といった素材産業になります。
(あくまでも大まかなくくりなので、この他の業種でも内需関連株と言われるものは多く存在します。
決算短信・決算説明会資料などをチェックすると収益を国内・海外のどこから得ているか、ということを簡単に確認できるので、気になった企業のIRは積極的にチェックしてみるとよいでしょう。)
2、内需関連株を業種別に見てみよう
先に内需株を「金融系」「インフラ系」「小売・サービス系」「素材産業系」といったような業種で改めて区分分けしましたが、今回の項目ではそれらを更に詳しくチェックしていきましょう。
(1)金融系(不動産、銀行、保険)
不動産はどちらかと言うと建設業のようなインフラ系にも分類されると言えますが、金利の影響を大きく受けるという側面から今回は金融系に分類しています。
銀行の収益源を大きく占めるのが資金利益、つまり「金利の利子収益」によるものです。
他企業にお金を貸し出し、その利子で収益を稼ぐというビジネスモデルは直近のマイナス金利政策により規模が縮小しつつあるものの、まだまだ健在の収益源だと言えます。
簡単に表すと、国内景気が上向きになればなるほど企業は事業拡大や投資のために資金を必要とし銀行からの借り入れを増やすようになり、それがそのまま貸し出しを行った銀行の業績に寄与することになります。
また、こういった金融系の内需株は「金利」に大きく影響を受けることも知っておくとよいでしょう。
基本的には金利が高いほど利差益が大きくなりますので、金融系の銘柄にはプラスに働きます。
(2)インフラ系(建設業、倉庫・運輸、陸運(電鉄)、電気・ガス)
インフラに関しても上記の金融系と同じように、「景気がよければよいほど受注が増えやすく業績拡大につながりやすい」と言えます。
例えば2020年に東京オリンピックが開催されますが、それに伴うスタジアムの開発などで建設会社の仕事が増える、ということは容易にイメージしやすいのではないでしょうか。
また補足になりますが、陸運、なかでも電鉄系の中では東急急行電鉄 <9005> や西部HD <9024>は不動産事業での収益拡大を図っています。
収益基盤の多角化を目指す企業は少なくないですが、こういった観点からも陸運はより内需に目を移しつつある業種だと言えるでしょう。
(3)小売・サービス系
小売やサービスが国内需要や景気の影響を受けやすい、というのも普段の生活を思い出してみると非常にイメージしやすいのではないでしょうか。
景気が縮小し賃金が低下すればそれだけ消費も少なくなりますし、スーパーに比べて比較的高価だと言えるコンビニに足を運ぶことも少なくなるでしょう。
(4)素材産業系(鉄鋼、紙・パルプ)
鉄鋼、紙・パルプは国内外問わず世界景気に大きく影響を受けやすい業種だと言えるでしょう。
その点からは「内需」だけでなく、「外需」産業とも考えられます。
企業によって国内への割合が大きいか、海外への割合が大きいかということは異なりますが、前述したように東京オリンピックのような事案があれば国内鉄鋼産業が大きく恩恵を受けることは間違いありません。
で見てきたように、ここまで挙げたもの以外にも多くの業種が存在しますが、その中でも「鉄鋼」「紙・パルプ」「機械」といった素材系の業種に属する銘柄は「景気敏感株」と呼ばれます。
こういった素材を基に建設や設備投資などが行われるわけですから、素材産業系の受注高や生産高が多いことは「これからの景気が拡大傾向にある」という示唆ということになります。
そのため、景気敏感株は上昇相場のはじめに他の銘柄より先抜けて株価が上がることが多いのが特徴の一つです。
しかし景気後退期には逆に下げのけん引役となる、ということも注意しておきたいポイントだと言えるでしょう。
3、為替の変動と内需関連株の関係
「為替の変動」の中でもドル円というのは内需関連株にも大きく影響を与える要因の一つです。
為替の変動が業績に関係してくる理由は「輸入・輸出」が事業サイクルに組み込まれているためと言えますが、基本的には内需企業においては円高・ドル安がプラスに作用してくると言うことができます。
出典:SMBC日興証券
原料を他国から輸入している企業にとっては、上記の図の通り支払いコストが(円ベースで)安くなるためそれだけ必要な費用が削減されるということになります。
輸入家具を扱うような会社もそういった企業に含まれるでしょう。
また内需株とは言えませんが、円高になれば円ベースでの海外費用が割安となるため、旅行会社や空運の会社にも関心が集まると言えます。
4、内需関連株のメリットは?
内需関連株におけるメリットは、「景気の動向を肌感覚で感じやすい」という点にあります。
株式投資においてはアメリカをはじめとした他国のマーケットや景気状況ももちろん重要となりますが、ニュースで情報収集をすることは出来ても、実際に実地にいるかどうか、というのはリサーチにおいて大きな差となるでしょう。
また日本の景気動向に関しては毎年3,6,9,12月に発行される『日銀短観』などをチェックすることで容易に情報収集が可能となっています。
こういった公式の発行物を日本語で読める、というのもやはり内需株を売買・調査するうえで重要なポイントの一つなのではないでしょうか。
リサーチ以外の観点からは、内需株の中でも「ディフェンシブ銘柄」と言われるものは不景気時でも下がりにくいという傾向があることに要注目です。
前述した日本・世界各国の景気動向に影響を受けやすい「景気敏感株」に対し、どんな景気であっても一定需要が見込めるのが「ディフェンシブ株」で、業種では食料品・医薬品などがその代表格として挙げられます。
食料品や医薬品などの内需株は景気動向を織り込んで急激な株価上昇をする、というケースはあまり見込まれませんが、「ディフェンシブ」の名の通り、相場の下落局面やデフレ時に比較的耐性を持っている銘柄群だと言うことができるでしょう。
このように内需関連株の中でも銘柄選定を上手く行うことで、状況に応じたポートフォリオを組めるというのが、数多く種類がある内需株のメリットだと考えられます。
5、内需関連株の探し方
さて、ここまで紹介してきたような内需関連株は実際にはどのように探していったらよいのでしょうか?
基本的には「2. 内需関連株を業種別に見てみよう」で紹介してきたような業種群に属す企業が内需関連株となりますが、更に銘柄選定を行っていくうえでは、「国内と海外での事業規模の割合」を確認してみることが必要となります。
例として、コンビニエンスストア「セブンイレブン」で有名なセブン&アイ・ホールディングス <3382> の平成30年2月期第3四半期の決算説明会資料、2ページをチェックしてみましょう。
該当期における営業利益は2957億円、そのうち海外コンビニは639億円との記載があります。
ここから言えるのは、セブン&アイ・ホールディングスの営業利益のうち約20%近くが海外事業、つまり「外需」に依存しているということになります。
逆に他のセグメントで海外事業が含まれていなければ残りの80%は内需に関係した事業ということになりますね。
このように内需関連株を探す際には、まずは業種別でざっくりと銘柄を調べてから、個々の会社の国内と海外の事業割合をチェックしてみる、ということが大事になると言えそうです。
国内における収益基盤が大きければ大きいほど内需に寄せた事業展開を行っている企業だということが分かります。
業種別に銘柄を探す際には、以下のようなサイトを活用するとよいでしょう。
6、オススメの内需関連銘柄10選
ここからはオススメの内需関連株を10銘柄紹介していきます。
もちろん投資は自己判断ですので、「5. 内需関連株の探し方」に挙げたような情報リサーチなどを自身でも行いつつ、あくまでも参考銘柄として見ていただければと思います。
(1)オリエンタルランド <4661>
ディズニーランドの運営で有名なオリエンタルランドは内需株の代表格として挙げられるでしょう。
優待のディズニーチケットの人気もさながら、2020年にはディズニーランド・ディズニーシー両方で新エリアのオープンが予定されており、更なる入場者増加が見込めること間違いなしです。
(2)マツモトキヨシ <3088>
ドラッグストアはここ最近も伸びを見せており、中でもマツモトキヨシは関東圏での強みを持つ企業です。
訪日外国人(インバウンド)が足を運びやすいことでも知られ、化粧品の共同開発やプライベートブランドの展開を行っているのも同社の強みです。
(3)資生堂 <4911>
化粧品産業の中でも国内首位の売上高を誇るのが資生堂です。
こちらも中国人はじめとした訪日外国人が注目している産業の一つで、他社との競争が激しさを増しつつあるものの、年々増収増益傾向にあり2017年12月期の売上高は前年同期の8500億から1兆へと大きく増加しています。
(4)ラオックス <8202>
家電を扱うラオックスもかつてインバウンド銘柄として大きく名を馳せた銘柄です。
都心部でよく見られるラオックスは2015年12月期に前年同期比の8倍となる純利益を出したものの、その後は勢いが衰えつつ、ここ数年は低迷期が続いていました。
ただ落ち込んでいた売上高は復調が予想されており、インバウンドが再び勢いづけばかつての勢いを取り戻す可能性もあると言えるでしょう。
(5)三越伊勢丹HD <3099>
百貨店最大手の三越伊先端HDは都心部好立地に構えられた店舗が多いことで知られています。
ネットECの普及により百貨店産業には逆風が吹きつつありますが、それだけに各社のかじ取りが重要になってくると言えるでしょう。
三越伊勢丹HDは店舗閉店などの構造改革により収益改善を図っており、ここからの復活が期待される内需企業です。
(6)イオン <8267>
日本最大手のスーパーであるイオンは総合スーパー事業、食品スーパー事業の他にも金融・不動産(デベロッパー)事業と幅広い事業セグメントを持つ企業です。
総合スーパー事業はやや厳しい状況にありますが、イオングループ全体としての業績は上向き傾向にあるため、各セグメントでの更なる収益効率改善に期待したいところです。
(7)三井不動産 <8801>
賃貸、商業施設、分譲とほとんどの分野において強みを持つ総合デベロッパーであるのが三井不動産です。
国内不動産の中でも最大手で、他不動産会社と比べかなりの多角化を図っているのが同社の強みだと言えます。
(8)みずほフィナンシャルグループ <8411>
メガバンクのひとつであるみずほフィナンシャルグループは「銀行・信託・証券の一体化」を図る「One MIZUHO戦略」により、収益基盤やビジネスモデルの転換を狙いつつあります。
昨今のマイナス金利で収益源の確保が厳しくなりつつある銀行業ですが、それだけにいかに他の収益基盤を築いていけるかがこれからのカギになると言えるでしょう。
(9)エーザイ <4523>
先ほども書いたように「ディフェンシブ株」の一角に数えられる医薬品業に属するのがエーザイです。
医薬品メーカーはどういった新薬開発を行っているか、またその新薬が実際に利用されるかというのが大きな注目ポイントになります。
エーザイは認知症約の開発品が多いことが特徴の一つです。
(10)ユニゾホールディングス <3258>
先に挙げた三井不動産よりは大きく規模は劣るものの、オフィスビル・ビジネスホテルの展開に強みを持つのがユニゾホールディングスです。
2018年3月期は40%近くの営業利益増が見込まれており、またPBRも0.86倍と比較的割安な企業です。
まとめ
今回の記事では「内需関連株」にスポットを当ててきましたがいかがだったでしょうか。
中でも「景気敏感株」「ディフェンシブ株」といったくくりに注目し毎日の相場の騰落を眺めてみると、その日の相場の状況が詳しく読み取れるでしょう。
様々な内需株の特徴を知り、ポートフォリオにうまく組み込むことで投資成績は格段に向上するはずです。
当記事などを参考に、色々な銘柄リサーチの腕、そして投資の腕を磨いていきましょう!