「レバレッジ」は、うまく利用すれば効率的に利益を得られる一方、間違った使い方をすれば大きな損失にもつながる「諸刃の剣」です。
この記事では、
- そもそもレバレッジの意味とは何か
- レバレッジをかけるメリット・デメリット
- レバレッジ取引ができる資産運用方法
など、レバレッジの良い面を活かすために、知っておきたいポイントを解説していきます。ご参考になれば幸いです。
1、レバレッジの意味は?
レバレッジ(Leverage)とは「てこ」のことで、小さな力で大きなものを動かすことができるという、原始的ながら非常に強力な原理です。
このレバレッジは物理的な意味だけでなく、ビジネスや投資においても使われています。
資本主義経済は、まさにレバレッジの仕組みが基礎となっています。
手元にある資金だけでは工場を建てることができなくても、借り入れというレバレッジを利用することでそれを可能にします。
借りてきたお金(資本)で工場を建て、原料を仕入れ、従業員を雇い、それにより新たな価値を生み出していくことで、資本主義は発展してきました。
資本主義やビジネスでは、このような「借入」というかたちのレバレッジが活用されています。
借入とは、つまり借金であり、ビジネスが成功したかどうかにかかわらず返さなければなりません。
手元資金以上のお金を借りているため、ビジネスが失敗して利益が出なければ、借金を抱え、ときには破産ということもあります。
投資においても、同じように手元資金以上の取引(投資)を行う、レバレッジ取引(レバレッジ投資)が行われています。
レバレッジ投資では、資金や株式などを借り、手元資金以上の取引を行うことで、同じ利益率でも、金額ベースではより大きな利益が得られ、高い利回りが期待できます。
一方で、手元資金以上の損失が出るリスクを伴うものでもあります。
ここからは投資におけるレバレッジについて、より詳しく見ていきます。
2、レバレッジをかけるメリット・デメリット
(1)メリット
① 資金効率が上がる
レバレッジ投資では手元資金以上の取引ができるため、同じ利益率で運用できた場合には、より多くの利益が得られるため、資金効率が飛躍的に向上する効果があります。
【手元資金100万円にレバレッジをかけず、10%のリターンが得られた場合】
- 利益額:100万円×10%=10万円
手元資金に対する利回り:10万円/100万円=10%
【手元資金100万円にレバレッジをかけて、10%のリターンが得られた場合】
200万円を借り入れて、手元資金とあわせて300万円を運用したケース。
(レバレッジ3倍)
- 利益額:300万円×10%=30万円
手元資金に対する利回り:30万円/100万円=30%(*)
(*金利・手数料などは考慮していません)
② 投資対象が広がる
例えば100万円しか持っていない場合、いくら上がると思う株でも、200万円の株は買うことができません。
しかし最高3倍のレバレッジがかかる信用取引を利用すれば、100万円の手元資金で200万円の株を買うことができます。
不動産投資などでも同様に、頭金を用意すれば、借入・ローンというレバレッジを利用して、数千万円、数億円といった不動産を購入することができます。
このように、レバレッジによって投資対象が広がり、投資機会が増えるというメリットもあります。
(2)デメリット
① 元本を上回る損失リスク
レバレッジ投資では、借りた資金を含めて、元本以上の金額で取引を行うため、元本を上回る損失が生じることもあります。
例えば、10万円の元本に3倍のレバレッジをかけて、30万円の株(株価3,000円×100株)を購入した場合、株価が2,000円以下になれば、損失額は元本の10万円を超えてしまいます。
レバレッジをかけずに株を買った場合には、会社が倒産して株価が0になったとしても、損失は元本以上にならないことに比べ、リスクは高くなります。
レバレッジ投資では、リターンだけでなく、リスクにも同じようにレバレッジがかかるということは忘れてはいけません。
② 金利や手数料などの負担がある
レバレッジ投資では、投資資金を借り入れるための金利や、空売りする際の貸株料などのコストを負担する必要があります。
このコスト分だけ、レバレッジ投資はマイナスからのスタートになります。
3、レバレッジ取引ができる4つの方法
レバレッジがかかる金融商品取引には、「信用取引」、「先物取引」、「FX(外国為替証拠金取引)」、「仮想通貨FX」などがあります。
(1)信用取引
信用取引とは、投資資金または株式を借り、その資金や株式を使って売買を行うものです。
取引を行うためには、証券会社に担保となる証拠金を預け、証拠金の約3倍の資金または株式を借りることができます。
(2)先物取引
先物取引とは、将来の売買の価格や数量などを現時点で約束しておき、約束の日が来た段階で実際に売買を行うものです。
事前に売買の価格を決めておくことができるため、商品の価格変動リスクを回避できるというメリットがあります。
買い手側からみれば、約束した価格より商品の市場価格が上がっていても、約束通りの価格で商品を買うことができ、値上がりリスクを回避できます。
購入した商品を市場で売って、差額分の利益を得ることもできます。
逆に、市場価格下がってしまったとしても、約束通りの価格で買わなければなりません。
転売して利益を得ようと思っていた場合には、値下がり分は損失となります。
取引所で行われる先物取引では、実際に商品や代金をやり取りするのではなく、満期(約束の日)までの間の価格変動を利用して利ざやを稼ぎ、差額だけをやり取りすること(差額決済)が行われます。
この取引所における先物取引も、証拠金を担保とするレバレッジ取引です。
例えば日経平均株価を対象とした日経225先物の場合、投資資金(証拠金)の約20倍程度の取引ができます。
(3)FX(外国為替証拠金取引)
FXとは、証券会社などに預けた証拠金を担保として外貨を売買するものです。
例えば、1ドル=100円のときに1万ドル(=100万円)の外貨を買い、1ドル=105円のときに売れば、5万円の利益が出ます(1ドル=95円なら、5万円の損失)。FXではこの差額だけがやり取りされます(差額決済)。
個人の場合国内の証券会社では、証拠金の最大25倍の取引ができます。
上記の例では、100万円分の外貨を購入するために、4万円の証拠金を預ければ取引ができます。
(4)仮想通貨FX
今話題のビットコインなどの仮想通貨でも、外国為替証拠金取引と同様のレバレッジ取引が可能です。
仕組みは外国為替証拠金取引と同じであり、外貨がビットコインなどの仮想通貨に置き換わったものです。
レバレッジ倍率は取引所により異なり、国内の取引所では証拠金の5〜25倍となっています。
4、不動産投資のレバレッジ効果とは?
上記のような金融取引以外でレバレッジの効果が発揮されるのが、不動産投資です。
年間収益180万円(経費控除後)、3000万円(諸経費込み)の物件を、全額自己資金購入する場合の利回りは6%です。
一方、2000万円のローン(35年固定金利1.5%・元利均等返済)を組み、自己資金を1000万円とした場合、自己資金に対する利回りは、18%にもなります。
借入によって年間約30万円(初年度)のローン利息の支払いが必要となるため、実質的な利回りは約15%ですが、それでも借入によって利回りは約2.5倍にもなります。
ちなみに上記の条件のローン返済額は年間約73.5万円となるため、手元には100万円以上残る計算です。
このように借り入れ(融資)によるレバレッジ効果により、不動産投資の利回りは大きく向上します。
収益物件を買うためのローンであれば、普通のサラリーマンでも安定収入があれば、数千万円の融資を受けることは十分可能だと言えます。
しかし、いくら値上がりが期待できると熱弁しても、銀行は株を買うための資金の融資はしてくれないでしょう。
銀行からの融資でレバレッジをかけられるのは、不動産投資ならではメリットだと言えます。
ただし不動産投資には、空室や不動産価格の下落といったリスクもあり、当初の想定通りにならないケースもあります。
ローンを組むということは借金を抱えるということでもあり、慎重な物件選び、判断が必要なことはいうまでもありません。
5、失敗しない信用取引の心得!レバレッジ取引の注意点
信用取引によって大きな利益を出している人もいる反面、信用取引の失敗によって株式投資から撤退を余儀なくされる人も後を絶ちません。
初めから信用取引を行わないというのも方法ではありますが、信用取引をうまく活用できれば、ここぞ!というときに大きな利益につながることもあります。
信用取引で失敗しないためにも、押さえておくべきポイントをしっかり確認しておきましょう。
(1)投資枠一杯まで投資しない
信用取引には様々なルールが定められており、そのひとつに最低保証金維持率が一定割合を下回った場合の「追証(おいしょう)」というものがあります。
最低保証金維持率とは、信用取引で保有しているポジション(建玉)の額に対する、証拠金の割合です。
この割合が一般的に20%を下回ると、保証金を追加するが必要となります。
これが追証であり、期限までに追証がされないと、ポジションは強制的に決済されてしまいます。
信用取引では保証金の約3倍、100万円の保証金であれば、約300万円の取引ができます。
もし投資枠をすべて使い300万円まで投資したとすると、40万円の含み損が生じれば、証拠金は300万円に20%(60万円)を下回り追証が発生することになります。
300万円に対して40万円は約13%であり、このぐらいの値下がりは1日でも十分起こります。
もし追証が間に合わなければ、ポジションは強制的に決済されてしまい、その後株価が回復したとしても後の祭りです。
追証を発生させないためにも、投資枠には余裕を持って投資することが大切です。
(2)逆張り・ナンピン買いはしない
信用取引のルールとして、制度信用取引では6ヶ月以内に決済しなければならないというルールもあります。
そのため、信用取引は基本的に短期投資となります。
株価が下がってきて値ごろ感が出てきたからと、まだ底打ちしたのを確認しないまま逆張りしてしまうと、そのまま株価が下がっていくということもあります。
現物取引であれば含み損を抱えたまま、いわゆる塩漬け状態で株価が持ち直すまで持ち続けるという選択もできます。
しかし信用取引では、6ヶ月経てば強制的に決済されてしまいます。
また、株価の下落が止まらなければ含み損が拡がり、6ヶ月を待たずして追証が発生してしまう可能性もあります。
少しでも取得価格を下げて含み損を早く取り戻そうとポジションを追加する「ナンピン買い」も危険です。
ナンピン買いした後、さらに株価が下がってしまえば、傷口に塩を塗るようなもので追証リスクが一気に高まってしまいます。
信用取引の基本は、トレンドに沿った順張り・短期投資を基本と心得ておきましょう。
(3)躊躇せず損切りする
現物取引でももちろん損切りは大切ですが、株を持ち続けることのできない信用取引では、より重要になります。
信用取引の失敗の多くが、損切りを躊躇して損失が拡大し、追証や強制決済などで資金を失ってしまったことによるものです。
追証は決していいものではありませんが、損切りできない投資家が、元本以上の損失を出してしまう前に強制的に損切りしてくれるという意味では、最後のセーフティネットとも言えます。
もっとも、強制決済されるまで損切りできないようであれば、信用取引を行うのは危ないといわざるをえません。
躊躇なく損切りができることが、信用取引を行う条件になります。
投資において失敗はつきものです。
しかし致命傷となるような大きな失敗となってしまうのは、身の丈に合わない投資や、損切りなどの適切なリスク管理ができていなかったケースがほとんどです。
信用取引はレバレッジが効いている分、傷口が拡大するスピードも早く、より迅速な対応が求められます。
まずは小さくはじめ、しっかりとリスクに対応できるようになってから投資額を増やしていくようにしましょう。
6、成功・失敗?レバレッジ取引の体験談を参考に!個人投資家のブログ
(1)株道‐人に教えたくない私の相場帳
信用取引(空売り)で失敗することの怖さなどについて、実例を交えて紹介されています。
これから信用取引をしようと考えている方は、安易な気持ちで信用取引をしてしまうことの怖さを知るために一読していただきたい内容です。
(2)京大准教授の投資日記
信用取引のリスクを理解した上で、規律をもって信用取引を行う方法について紹介されています。
(3)85年生まれサラリーマンが株式投資で億り人を目指す
自身も信用取引を行いながらも、その上で感じる信用取引の問題点について述べられています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
レバレッジ投資は、資産効率を高めるために有効な方法です。
しかし失敗すれば資金を失うだけでなく、元本以上の損失を出してしまうリスクのある、「諸刃の剣」でもあります。
レバレッジ投資をするのであれば、リスクをしっかり理解した上で、心して臨むことが大切です。
くれぐれも安易な気持ちでは、レバレッジ投資をしないようにしましょう。