「投資信託を購入すると、損をするの?」
「投資信託で損をするにしても、どういうときに損するのか知りたい」
今回は、こういった思いや疑問を持っている方に向けて、投資信託で損した体験談を紹介し、投資信託で損するパターンを紹介していきます。
投資信託の損益の仕組みや、損を小さくするための対策もあわせてお伝えします。
投資信託に限らず、投資や資産運用には損がつきもの。そのことは頭でわかっていても、損はしたくないものです。
損を恐れている投資家の多くが、損する理由や損しないための対策を知りません。知らないからこそ、損に過敏になっているとも言えるでしょう。
当記事から得た知識を活かせば、価格の上下におびえることのない投資生活を送れるはずです。
投資信託の損益はどのように決まる?
まずは、投資信託の損益の仕組みを確認しましょう。そもそも、投資信託とは投資家から集めたお金を一つの資金としてまとめ、プロがさまざまな投資対象に投資して生まれた利益を投資家に還元する金融商品です。
一つのまとまった資金のことをファンドと呼び、ファンドの運用を手がけるプロがファンドマネージャーです。投資対象には、国内外の株式や債券、不動産、金、仮想通貨などさまざまなものがあります。
では、そのような投資信託はどのように損益が決まっているのでしょうか?投資信託の損益が決まる要素には、大きく次の2つがあります。
- 基準価額をもとにした売却損益(キャピタル・ゲイン/キャピタル・ロス)
- 分配金(インカム・ゲイン)
基準価額をもとにした売却損益で決まる
投資信託の基準価額とは、投資信託の値段のことです。計算式は次のようになります。
- 基準価額=投資信託の純資産総額÷総口数
純資産総額とは、投資信託に組み入れられている株式や債券などの資産の時価総額ことです。口数とは、投資信託の取引単位のことで、総口数はすべての投資家が購入した口数の合計のことです。
基準価額は、日々の運用成績などによって変動します。つまり、投資信託の損益は購入したときの基準価額より、売却したときの基準価額が高いか低いかによって決まるのです。
例えば、基準価額が1万円の投資信託Aがあったとします。1年後に、Aの基準価額が1万5,000円になって売却したとすると、5,000円の利益になりますね。
一方で、1年後のAの基準価額が7,000円になっていたなら、売却すると3,000円の損になります。このように、基準価額の変動によって投資信託の損益は変わるのです。
分配金で決まる
投資信託の分配金とは、投資信託の運用で得られた利益から決算日に投資家に分配するお金のことです。投資信託には分配金があるものとないものがあり、ないものなら分配金は受け取れません。
分配金の受け取り時期は投資信託によって異なり、毎月のものや3ヶ月に1回のもの、1年に1回のものなどさまざまです。
分配金は投資家に支払われるお金なので、投資家にとって利益にしかならないと思われがちです。しかし、分配金を支払うことで損をしてしまうことがあります。
というのも、分配金の支払いは運用で得た利益から配られるため、その投資信託の純資産総額が減ってしまい、基準価額が低くなる恐れがあるのです。分配金は必ずしも、利益を得られるだけではないことを理解しておきましょう。
損益は手数料や税金にも左右される
投資信託の最終的な損益は、手数料や税金に左右されます。投資信託の手数料には、次のものがあります。
- 購入手数料
- 信託報酬
- 信託財産留保額
手数料は投資資金に対して、毎日1パーセントから3パーセントずつ支払うことになるため、利益は目減りして損失は拡大します。
また、投資信託から得られた利益には、「所得税」と「住民税」の課税があります。投資信託から得られた利益の約2割が税金として課税されるのです
たとえば、投資信託から10万円の利益を得られたとしたら、税金として約2万円をおさめなければならないことになります。
投資信託で損を小さくして利益を大きくしたいなら、手数料を低くして税金対策をしなければなりません。
【体験談】投資信託で損した経験
投資信託の損益が出る仕組みについてご理解いただけたところで、筆者が投資信託で損した体験談を紹介します。エピソードをもとに、投資信託ではどのように損するかを把握していきましょう。
ここで紹介する、損した体験談は次の4つです。
- 手数料の高い投資信託に投資
- 急な価格の下落にあわてて売却
- 高値掴みした投資信託を一括購入
- 分配金で基準価額が下落
体験談1:手数料の高い投資信託に投資
筆者自身の体験談ですが、投資信託での資産運用を始めたころ、よくアクティブファンドを購入していました。アクティブファンドとは、株価指数や債券市場指数などのベンチマーク以上の運用成果を目指して、プロが積極的な運用決定をする投資信託のことです。
筆者が購入したアクティブファンドは購入してから、順調に基準価額が高くなっていき、売却すればいつでも利益を得られると感じていました。
しかし、その投資信託の収支を確認してみると、なんと元本割れしていたのです。なぜ基準価額が高くなっているのに元本割れをしているのかわからなかった筆者は、そのとき初めて投資信託の手数料を確認しました。
すると、投資資金から毎月差し引かれる信託報酬が約2.5パーセントと、他の投資信託よりも割高になっていたのです。投資信託の基準価額が上がっていても、手数料によって損することを知りました。
体験談2:急な価格の下落にあわてて売却
あるとき、筆者が保有していた投資信託の基準価額が大きく下落し、約20パーセントのマイナスとなっていました。下落の理由は世界的な経済の停滞で、日本とアメリカの株式市場が大幅下落してしまったことです。
その下落に筆者は焦り、それ以上のマイナスを出したくない一心で、保有していた投資信託を売却してしまいました。しかし、その後2ヶ月ほどで株価が下落前の水準までに回復し、その1ヶ月後にはさらに株価が上昇していたのです。
結局のところ、下落による損失と株価の上昇による利益を逃したことになります。
体験談3:高値掴みした投資信託を一括購入
筆者は銀行からすすめられたテーマ型投資信託を購入していました。テーマ型投資信託とは、「AI産業」や「環境事業」など、あるテーマに絞った株式へ投資する投資信託のことです。
銀行の営業マンからその投資信託の今後の値上がりが期待できると案内されたのです。そこで筆者は、まとまった資金でそのテーマ型投資信託を購入しました。
購入した当初は徐々に値上がりを続けていたものの、1ヶ月ほどで下落し始めその後も値上がりすることはありませんでした。筆者は投資資金が半分くらいになったところで売ることにしました。
結果として、割高な投資信託を一括で購入して損をしてしまったのです。
体験談4:分配金で基準価額が下落
筆者は、毎月分配金のある国内リート(J-REIT)へ投資していました。リートとは、不動産投資信託のことです。
分配金の仕組みを理解していなかった当時の筆者は、毎月必ず受け取れる分配金に期待していました。
しかし、基準価額があまり上がっていきません。数ヶ月間、ほぼずっと横ばいなのです。その後、約10パーセントの下落があり、さらに横ばいが続いたところで売却しました。
受け取った売却金の総額よりも、基準価額の下落で損した金額の方が大きい結果となってしまいました。
損する人が選びやすい投資信託
これまでお伝えした体験談から、損する人が選びやすい投資信託を紹介します。ここで紹介するのは、次の3つの投資信託です。
- アクティブ型
- 分配型
- テーマ型
これら3種類の投資信託は、決して投資対象として優れていないわけではありません。ただし、仕組みや特徴を知った上で投資しないと高い確率で損することになるでしょう。
アクティブ型
アクティブ型投資信託とは、ベンチマーク以上の運用成果を目指してプロの運用担当者が積極的に投資していく「アクティブファンド」と呼ばれる投資信託です。
アクティブファンドが損しやすいと言える理由は、手数料の高さです。
アクティブファンドの信託報酬は、1パーセントから3パーセント以上のものがほとんどです。基準価額は上がっても、手数料の負担が大きくて大きな利益になりにくいでしょう。
一方で、手数料が低いのがベンチマークに連動する成果を目指す「インデックスファンド」です。中には信託報酬が1パーセント未満のものもあります。
手数料だけで損してしまう可能性があるため、手数料が割高なアクティブファンドには注意が必要です。
分配型
分配型投資信託とは、分配金のある投資信託のことです。何度もお伝えしているように、分配金型の投資信託は基準価額が下がりやすいため注意が必要です。
定期的に受け取れる分配金によって得している気分になりやすいですが、基準価額の動きと合わせて本当に利益を得られているのかはわかりません。分配型投資信託について、わからないことがあったり利益をきちんと把握できたりしないうちは、購入をひかえておくのが無難でしょう。
テーマ型
テーマ型投資信託は、AI(人工知能)やロボット、宇宙産業などのテーマに絞った株式に投資する投資信託です。テーマ型投資信託にはさまざまな種類がありますが、共通した注意点があります。
その注意点とは、ブームになって高値掴みしやすいということです。
テーマ型投資信託は、注目を集めていて成長が期待されている株式などに投資します。そのため、情報を聞きつけた投資家によって買いが増え、基準価額が高くなりやすいです。
つまり、テーマ型投資信託を購入するときには、実際の価値以上に高くなっている可能性が高いのです。すると、ちょっとしたきっかけで価格の下落がおき、高値掴みしているだけ損も大きくなります。
投資信託で損を最小限にするための対策
では、投資信託で損を最小限にするには、どのようにすれば良いのでしょうか?ここでは、損を最小限にする対策として、次の7つを解説します。
- コストが低いファンドを選ぶ
- 長期保有を前提にする
- ドルコスト平均法で購入する
- 複数銘柄を購入する
- 非課税制度を利用する
- 少額から試してみる
- 「インデックス型」を中心に投資する
対策1:コストが低いファンドを選ぶ
投資信託で損をしないためには、できるだけコストの低いファンドを選ぶと良いでしょう。なぜなら、コストが少なければ投資での支出が減って、損失の拡大を防げるからです。
手数料の中でも特に重要なのが、信託報酬です。信託報酬は、運用会社へ運用費を支払うための手数料で、毎日支払わなければなりません。
信託報酬の低い投資信託であるため、できるだけ1パーセントほどのものを選びましょう。
また、購入手数料のかからない、ノーロードという投資信託もあります。購入前はチェックしてみてください。
対策2:長期保有を前提にする
投資信託で短期売買を繰り返すと、損しやすくなります。なぜなら、売買のたびに手数料がかかる上に、適切なタイミングで売買できないからです。
投資で利益を出すには、安く買って高く売る必要がありますが、優れた投資家でも安い買いのタイミングや高い売りのタイミングをはかることはできません。
ましてや経験の浅い投資家であれば、適切な売買ができず、結果として高く買って、安く売ることになりかねません。
しかし、長期保有を前提としていれば、価格の長期的な上昇をじっと待ち、衝動的な短期売買を防げるでしょう。
対策3:ドルコスト平均法で購入する
ドルコスト平均法とは、毎月一定の購入金額で投資信託を購入し続ける投資方法のことです。ドルコスト平均法によって損を小さくできるのは、購入時期がばらつくことで基準となる価格を多く作れるからです。
基準価額は、日々変動しており、たとえば次のようにバラバラの値段で投資信託を毎月、購入したとします。
- 1月に基準価額1万円で購入
- 2月は5,000円で購入
- 3月は1万5,000円で購入
あるときに価格が下落しても基準がたくさんできるため、ある基準からみたら値上がりしているかもしれません。4月の基準価額が1万1,000円になったとしたら、3月から見れば価格の下落ですが、1月と2月からは値上がりしていることになりますね。
ドルコスト平均法では、基準となる価格を分散できるので損に強くなるのです。
対策4:複数銘柄を購入する
投資信託は、一つの商品だけでなく複数購入することで、損に強くなります。なぜなら、価格下落のリスクを分散できるからです。
たとえば、株式型の投資信託Aに2万円、債券型の投資信託Bに1万円を投資したとします。あるときAが約10パーセントの損失を出し、Bは5パーセントの利益が出たとしましょう。
すると、Aの損失は2,000円で、Bの利益は500円となり、合わせて1,500円の損失となります。
結果として損していますが、Aだけに投資していたよりも損は少なくなっていますよね。むやみに分散すると、逆に利益が出なくなりますが、適度に分散することで損するリスクを小さくできるのです。
対策5:非課税制度を利用する
投資信託から得た利益は、課税されます。そのため、税金対策することで利益を残しやすくなるのです。
投資信託で利用できる税金対策に、「NISA」と「つみたてNISA」があります。NISAとは、国によって実施されている個人投資家のための税制優遇制度です。
NISAとつみたてNISAの主な特徴の違いは、次の表のようになります。
項目 | NISA | つみたてNISA |
---|---|---|
非課税投資期間 | 5年 | 20年 |
年間投資可能額 | 120万円 | 40万円 |
投資対象 | 投資信託、株式、ETF | 一部の投資信託・ETF |
どちらにも、優劣はありません。ご自身にあったものを選んでみてください。
対策6:少額から試してみる
アクティブ型やテーマ型など、損する可能性の高い投資信託を紹介しました。繰り返しになりますが、そのような投資信託は決して投資対象として優れていないわけではありません。
ただ、よく知らないまま購入すると予期せぬ損をしてしまう恐れが高いことは事実です。そのため、アクティブ型やテーマ型などの購入する際は、余裕資金の中の少額から始めると良いでしょう。
仮に投資した資金がゼロ円になっても、あまり気にならない程度の投資額が最適です。購入している投資信託の運用に慣れてきたら、徐々に資金を増やしていくと良いでしょう。
対策7:「インデックス型」を中心に投資する
損を抑えながら利益を得たいなら、インデックス型投資信託の購入がおすすめです。なぜなら、手数料が低く長期的な成長を見込めるからです。
インデックス型投資信託とは、株価や債券市場などの指数(インデックス)に連動する運用成果を目指す投資信託です。インデックス型は、ノーロードや信託報酬が低い商品が多く、コスト面でとても優秀です。
さらに、株式市場や債券市場などは、長い歴史の中で拡大してきました。この先20年から30年で、必ず成長するとは限りませんが、期待感を持って投資できるのです。
インデックス型をNISAかつみたてNISAを活用しながら、ドルコスト平均法で複数銘柄を長期間購入していく方法が、損を最小限に抑える対策です。
まとめ
投資信託は、基準価額をもとにした売却損益と分配金によって、損益が決まります。また、手数料が高い投資信託を購入したり投資信託をまとまった資金で一括購入したり、損をしやすい購入の仕方があります。
まずは、損を小さくするための対策をすることで、損する可能性や損を拡大させる可能性は少なくなるはずです。お伝えした内容を参考に、安定感と成果のある投資活動をしてもらえれば幸いです。