まとまった退職金が手に入ったら、何に使おうか想像が膨らみますよね。
生活費や趣味を楽しむお金に使う方が多いですが、一部を運用してお金を増やすのもおすすめです。退職金の運用には大きなメリットがあり、老後の生活を充実させるのに役立つからです。
この記事では、退職金を運用するべき理由や運用する時の注意点、おすすめの運用方法について解説していきます。初心者でも運用を始められる知識を身につけられるので、これをきっかけに退職金の運用を考えていきましょう。
退職金を運用した方が良い理由
はじめに、退職金を運用するとどのようなメリットがあるのかを解説していきます。
退職金の運用には、不労所得やインフレ対策、相続税対策といったメリットがあります。メリットを理解し、退職金の運用に挑戦してみてはいかがでしょうか?
年金代わりとなる不労所得を得られる
資産運用を行うと、年金代わりになる不労所得を得ることができます。
老後2,000万円問題で話題になったように、豊かな暮らしをするためには、年金に加えて夫婦で約2,000万円の資産があることが望ましいです。これは、年金だけでは豊かな生活ができないことを意味しています。
したがって、年金に加えて資産運用による不労所得を得られると、収入が増加します。年金だけで生活するよりも豊かな暮らしができるので、退職金は運用するのがおすすめです。
老後資産が目減りしないよう対策ができる
株式や不動産などの投資は、インフレ対策にも有効です。
インフレとは物価上昇のことですが、物の値段が上がるということは、物を基準にするとお金の価値が下がることを意味します。60歳で定年退職した場合、30年〜40年ほどは退職金で生活することになりますが、この間にインフレが進むと退職金の価値が下がり、生活が苦しくなってしまうかもしれません。
老後資産が目減りしないようにするためにも、インフレ対策に有効な投資を行いましょう。
相続税を節税できる場合がある
投資方法によっては、退職金の一部を現金で相続するよりも、相続税を節約できる場合があります。
例えば、不動産の場合は不動産の評価額を算定し、税率をかけて相続税が決定します。評価額の算定はその時の売却価格よりも低くなる傾向があるため、同じ価値の現金で相続するよりも、相続税が少なくなりやすいです。
せっかく築き上げた資産なので、税金を減らして遺族に相続させたいと考えるのは当然です。相続税対策も含めて資産運用を考えると良いでしょう。
退職金運用の基本的な考え方
続いては、退職金を運用する際の基本的な考え方について解説します。
これから解説する考え方に沿って運用すれば、リスクを低く抑えることができます。大きな損失を避けるためにも、以下のコツを理解してから退職金の運用を始めましょう。
投資先を分散させる
投資先を複数に分散させると、低リスクの運用ができます。
投資先が1箇所に集中すると、その銘柄が暴落したら投資している資産に大きな損失が生じます。しかし、複数に分散していれば、1つの銘柄が暴落しても他の銘柄の利益が損失を補ってくれると期待できるからです。
投資先を分散させることで、大きな損失を被りにくい退職金の運用ができます。
タイミングを分散させる
株式や投資信託のように価格変動する商品の場合、できれば投資するタイミングも分散させた方が良いです。これは、高値で大量に買ってしまうことを避けるためです。
タイミングを分散させることで、高値で買ったり安値で買ったりできるので、平均の購入単価を下げることができます。
投資商品は購入価格を下げることで利益が出やすくなります。大量に高値で買うことがないよう、タイミングを分散させましょう。
長期的な運用を行う
資産運用は、数日や数週間といった短期間で大きな利益が出るものではありません。退職金の運用には、10年や20年といったスパンで利益を出す長期投資が向いています。
短期で大きな利益を出す投資方法は非常にリスクが高く、大きな損失を被りやすいです。退職金は大損しないように運用することが鉄則なので、小さな利益をコツコツと積み上げる長期投資を前提としましょう。
退職金を運用する際に知っておくべきこと
次に、退職金を運用する際に知っておくべき注意点を解説します。
知らずに始めてしまうと、元本割れや高額な手数料による損失が生じるかもしれません。自分の資産を守るためにも、注意点を理解してから退職金の運用を始めましょう。
元本割れにより老後の資産が減る可能性がある
投資は元本保証ではありません。運用に失敗してお金が減ってしまうリスクがあるものです。
したがって、退職金の運用に失敗して老後の資産が減るリスクもあります。 元本割れのリスクを理解したうえで投資をしましょう。できる限りリスクの低い商品を選ぶのもおすすめです。
余剰資金のみ投資する
投資には元本割れのリスクがあるため、余剰資金のみの運用にとどめましょう。
余剰資金とは、生活費や目的が決まっているお金(住宅ローンの返済費用や旅行資金、医療費など)のことです。最悪、減ってしまっても生活に支障のない範囲で投資をしましょう。減らしたくないお金は、預金など元本保証の商品で運用します。
運用には手数料がかかる
資産運用の商品には、手数料がかかることが一般的です。株式は売買手数料がかかりますし、投資信託は購入時手数料や運用を委託するゆえに発生する信託報酬といったコストを投資家が負担します。
手数料の支払いが少ないほど利益が守られるため、できる限り低コストの商品や方法を選びましょう。いつどのような時に手数料がかかるのか把握することが、手数料の節約につながります。
退職金のおすすめの運用方法
では、退職金の運用におすすめの方法を解説していきます。
退職金で最も避けたいのは大きな損失なので、元本保証の定期預金や国債を中心に、余剰資金でリスクのある商品にも投資をしていくと良いでしょう。以下で詳しく説明していきます。
定期預金
定期預金は預ける期間を決めた預金で、普通預金よりも高い金利が期待できます。
元本保証でお金を減らすことなく運用できるので、退職金の運用に向いています。退職金が大きく減ってしまうと老後の生活に支障が出る可能性があるので、定期預金をメインに運用すると良いでしょう。
さらに、退職金専用の定期預金という商品もあります。これは通常の定期預金よりも金利が魅力的なので、預けたお金を増やしやすいメリットがあります。
通常の定期預金だと金利は最大でも0.2%程度ですが、退職金専用の定期預金なら0.5%や1%の金利も期待できます(2021年4月現在)。
ただし、退職金専用の定期預金は預け入れの期間が3ヶ月など短い期間しか選べないデメリットがあります。3ヶ月などの期間を過ぎると通常の定期預金に切り替わるので、金利が下がってしまいます。
期間限定とはいえ高金利で魅力的なので、まずは退職金専用の定期預金を活用しましょう。その後、通常の定期預金や以下で解説する投資方法を併用していくと良いでしょう。
個人向け国債
国債とは、国が資金調達のために発行する債券です。運用期間が決まっており、期間中は利息が得られ、満期が来たら元本が投資家に返済されます。個人が購入できる国債、すなわち個人向け国債の場合、期間は3年、5年、10年の3種類です。
個人向け国債のメリットは、元本割れしないことです。財務省がホームページで元本保証と公開しているとおり、日本の個人向け国債は預金と同様に元本割れしません。大きな損失を出したくない退職金の運用にも向いている商品です。
ただし、利回りはあまり高くないデメリットがあります。2021年4月時点で、10年ものの変動金利が0.08%となっており、定期預金よりも低い水準です。マイナス金利などの要因のため、運用環境が悪くなっており、国債の利回りは下がっています。
とはいえ、元本保証は大きなメリットです。資産をリスクにさらしたくない方は、預金と国債を中心に運用していくと良いでしょう。
投資信託
投資信託は、投資法人に投資する商品で、投資法人に在籍するプロに資産運用を任せられる商品です。プロの力を借りられるので、資産運用の経験がない初心者にもおすすめです。
投資信託のメリットは、低リスクの商品が多いことです。数百、数千の銘柄に分散投資している投資信託が多く、上述した分散投資の観点から低リスクの設計となっています。
市場平均と同じくらいのパフォーマンスを目指すため、平均に比べて大きな損を被りにくい商品です。そのため、大きなリスクにさらしたくない退職金の運用に向いています。
デメリットとしては、利回りが低いことが挙げられます。大損はしにくいですが、平均に比べて大きな利益を出すことも難しい商品だからです。利回りは0パーセントから3パーセント程度の商品が多いです。
数ある投資方法の中では利回りは低い方ですが、定期預金や個人向け国債に比べると魅力的な利回りです。小さなリスクで挑戦できる投資方法なので資産運用の初心者にもおすすめです。
株式投資
株式は企業が資金調達のために発行する証券です。株式を購入すると企業の出資者の一員となり、企業の利益の一部を配当金として受け取ることができます。また、買った時よりも株価が値上がりしたら、売却して差額を利益とすることもできます。
さらに、株式には株主優待というメリットもあります。一部の企業では株主に自社製品や割引券を提供しており、優待によって生活を充実させることができます。
おいしいお取り寄せ商品や外食チェーン店の割引券などをもらうと、生活にハリが出るのではないでしょうか。退職後の生活に彩りを添えられるので、株主優待をもらうのを楽しみの一つにするのもおすすめです。
ただし、銘柄選びはやや難しいです。将来有望な企業を見極めて投資しなければならないので、財務情報や投資家向け情報 (IR)をよく確認して銘柄を選ばなければなりません。
株式投資の初心者の場合、小額で投資を始めるのがおすすめです。銘柄によって予算は異なりますが、1単元あたり10万円〜20万円で購入できる銘柄が多いため、退職金の一部を使って少しずつ試してみましょう。
不動産投資
不動産投資とは、マンションやアパートなどを購入して他人に貸し出し、家賃収入を得る方法です。また、購入時よりも不動産の価格が上昇したら、売却して差額を利益とすることもできます。
不動産投資のメリットは、生命保険代わりになったり相続税対策になったりと、人生の後半で必要なニーズを満たしていることです。そのため、退職金の運用におすすめです。
不動産の購入時にはローンを組むことが多いですが、生命保険代わりになるのは、団体信用生命保険に加入するからです。相続税対策になるのは、先ほどお伝えしたように資産価値が低く評価される傾向にあるからです。
一方のデメリットとしては、空室が生じて家賃収入が入ってこない可能性が挙げられます。家賃が入ってこなかったとしても、ローンの返済をしなければならないため、退職金の残りや年金から返済することになります。
退職金で不動産投資を始める方は、借り入れの金額をできるだけ少なくするなどの工夫をしてから始めましょう。
ヘッジファンド
ヘッジファンドは投資信託に似ており、投資会社に資産運用を任せる商品です。投資信託が市場平均と同じくらいのパフォーマンスを目指したのに対し、ヘッジファンドはより大きな利益を追求している点が異なります。
運用の自由度が高いため、他の商品よりも利回りが高いです。
例えば、Japan Act合同会社というヘッジファンド会社は、年利10パーセントといった高い利回りを実現してきました。この会社はアクティビスト投資を行なっており、個人では銘柄選びがが難しい上場企業に投資することで、大きな利益を狙っています。
したがって、大きなメリットは利回りの高さにあります。年利10パーセントや20パーセントを達成しているヘッジファンドも珍しくなく、プロに任せて大きな利益を期待できることが特徴です。
ただし、運用方法によってはリスクが大きいことも特徴です。利回りが高い分、大きなリスクを取っている商品もあるため、退職金中の余剰資金を運用することに留めましょう。
まとめ
退職金を運用すると、不労所得やインフレ対策、相続税対策などができます。定期預金や国債といった元本保証の商品を中心に、余剰資金をリスクのある投資に回し、リスクを下げつつリターンを狙うと良いでしょう。