世界的な景気回復にアベノミクス効果なども相まって、日経平均株価は堅調に推移してきました。
しかし2月に入り突如ニューヨーク市場で株価の急落が起こり、史上最大の下落幅を記録しました。
その影響は世界に広がり、株価のさらなる暴落に対する不安が広がっています。
株価の大暴落は過去何度も繰り返されており、大きなリスクであるとともに、株式投資における絶好のチャンスともなり得るものです。
では、株価大暴落とはどのようなものなのか、そして暴落の前兆をいち早く察知してリスクに備え、ピンチをチャンスに変える方法について解説していきます。
1、米国ブラックマンデーから日本の過去の三大暴落!歴史を振り返る
まずは株式市場の大暴落とはどのようなものなのか、史上最悪の大暴落であるブラックマンデーからみていくことにしましょう。
(1)ブラックマンデー(1987年10月19日 米国・NYSE)
1987/10/16 終値 | 1987/10/19 終値 | 下落幅 | 下落率 | |
NYダウ 平均株価 | $2246.74 | $1738.74 | $508.00 | 22.6% |
1987/10/19 終値 | 1987/10/20 終値 | 下落幅 | 下落率 | |
日経平均株価 | ¥25746.56 | ¥21910.08 | ¥3836.48 | 14.9% |
1980年代前半、レーガン政権下のアメリカでは高インフレ抑制策としての金融引締めとドル高が重なり、財政赤字と貿易赤字が拡大していました。
その後、インフレが沈静化するにつれ金融緩和が進み景気は回復しましたが、貿易赤字の拡大は止まらず、ドル相場は不安定な状態となります。
そこでG5において、ドル相場の安定・自由貿易の維持を目的として、ドル安誘導を行う合意(プラザ合意・1985年9月22日)が行われます。
しかしこれによって過度のドル安が進み、再びインフレ懸念が高まってしまいます。
過度のドル安抑制のため協調介入を行う「ルーブル合意」(1987年2月22日)や、金利引き上げなどの対策は行われましたが、十分な効果はありませんでした。
このような状況の中、ブラックマンデーは起こります。
NYダウ平均は終値ベースで508ドル下落し、下落率は22.6%に達しました。
さらにこの大暴落は世界を巻き込みます。
翌日の日経平均株価は3836円48銭(14.9%)下落し、1日の下落幅・下落率としては今もその記録は抜かれていません。
この大暴落直前には、西ドイツの金利引き上げや、貿易赤字が予想を上回る(10月14日発表)ことはありました。
しかし、これほどの大暴落の引き金といえる兆候はありませんでした。
大暴落となった要因のひとつとしては、コンピューターによる自動売買プログラムによる連鎖的な売りではないかと考えられています。
しかしブラックマンデーによる株価の大暴落は、未だ明確な原因がわかっていません。
翌20日に最安値1,616.21ドルをつけた後には、株価は徐々に回復していきます。
しかし、あまり大きな下落であったため、ブラックマンデー前の株価水準を回復するのには1年以上(1989年1月24日終値・2256.43ドル)を要しました。
これほどの大暴落が明確な理由もなく起こるというのは、まさに晴天の霹靂です。
暴落がいつ起こってもおかしくないという教訓だと言えます。
(2)日本における三大暴落
日本における株価の暴落といえば、まず思い浮かぶのは90年代初頭の「金融バブル崩壊」ではないでしょうか。
この金融バブル崩壊を含め、「ITバブル崩壊」「リーマン・ショック(サブプライム問題)」が現在までに日本における三大暴落となるでしょう。
日経平均株価 | 下落率 | 下落期間 | ||
最高値 | 最安値 | |||
①金融バブル崩壊 | 38,915円 (1989/12) | 14,309円 (1992/8) | 63% | 2年8カ月 |
②ITバブル崩壊 | 20,833円 (2000/4) | 7,607円 (2003/4) | 63% | 3年 |
③リーマン・ショック | 18,261円 (2007/7) | 7,054円 (2009/3) | 61% | 1年8カ月 |
① 金融バブル崩壊
最初の金融バブル崩壊は、起こるべくして起こったともいえる大暴落です。
史上最高値をつけた時点での平均PERは60倍を超える状況にあり、誰が見ても明らかなバブルです。
しかし、土地や株は上がり続けるという錯覚に陥った日本人は、買い続けました。
借金をしてでも土地や株を買い、その利益でまた買いました。
さらに土地、株を担保にしてさらに資金力を上げ、買い続けました。
そこに過度なインフレを抑えるため、金利引き上げや融資を制限する総量規制が行われます。
その結果、買い手がいなくなった資産の価値は暴落したのです。
過度の期待や思い込みがバブルを生み、大暴落を招くという典型だと言えます。
わかってはいるけれど、やめられない、それが人間の欲深さなのかもしれません。
② ITバブル崩壊
ITバブルは、アメリカのシリコンバレーを中心にハイテクブームをきっかけに、ハイテク企業が多く上場するNASDAQ市場から始まります。
東京市場においてもハイテク関連銘柄・IT関連銘柄が外国人投資家によって大きく買われました。
それをきっかけとして株価が急上昇し、ITバブルへと繋がっていくことになります。
しかしITバブルの中心であったNASDAQ市場において、ハイテク銘柄として買われていた企業の業績予想が、当初の想定を下回ることが明らかになるにつれ、株価は急落します。
その結果ブームの恩恵を受け急騰していた東京市場も、暴落することになったのです。
先ほどの金融バブル崩壊は、日本人が勝手に盛り上がった結果として起こったものですが、ITバブルは外国人投資家の買いをきっかけに始まり、外国人投資家の売りをきっかけに崩壊したという点で両者には大きな違いがあります。
この頃には外国人投資家の日本株保有比率は20%近くに達しており、東京市場において外国人投資家は影響力を増してきていました。
③ リーマン・ショック
低所得者向けの個人向け住宅ローン、いわゆるサブプライムローンの不良債権化に端を発した金融不安は、当時アメリカ4位の大手証券会社・リーマン・ブラザーズを破綻にまで至らせました。
世界的な不況をもたらし、東京市場もなす術なく暴落します。
さらに、円高が急速に進んだことで輸出関連企業を中心に業績が悪化し、日本は長期にわたる不況に苦しむことになりました。
(3)アメリカが咳をすると日本は風邪を引く
東京市場は大小いくつもの暴落を経験していますが、金融バブルを除けば、そのほとんどがニューヨーク市場に端を発するものです。
また、日本株の外国人保有比率は30%を超え(2016年度末時点)、東証における売買のシェアの約70%は外国人投資家が占めるなど、外国人投資家の影響力はますます大きくなっています。
つまりニューヨーク市場や外国人投資家の動向が、東京市場にほとんどそのまま反映される状況となっていると言えます。
2、日経平均株価が暴落するきっかけは?
株価は買いたい人と売りたい人の需給関係で決まるものです。
そのため今は株価が上がっていても、いつまでも上がり続けることはありません。
そのうち買い手が減り、いつかは下落する時がきます。
それがいつかわかれば苦労はしませんが、企業の価値を表す株価が、その企業の現在の評価を大きく超えて上昇していれば、ちょっと高いのではないかと思う人は増えてきます。
その現在の評価を「超える部分」を支えているのは、その企業に対する期待です。
日経平均株価は日本を代表する企業の株価の平均値であり、いわば日本経済に対する評価、そして期待が日経平均株価だと言えます。
この期待が大きければ大きいほど日経平均株価は大きく上昇します。
大きく膨らんだ期待は相場を過熱させます。
そして「相場の過熱」が行き過ぎた状態がバブルです。
このような相場の過熱状態では、平常時ではなんでもないようなことがきっかけで株価暴落が起こることがあります。
またリーマン・ショックのような「金融危機」やテロや戦争といった「地政学リスク」なども株価暴落の要因となります。
ここまでいろいろと過去を検証してきた結果、相場の過熱・金融危機・地政学リスクの3つが株価暴落の主なきっかけと思われます。
今、世界中の市場は、全て連動するような形で動いています。
そのため、これらの要因がどこで起こっても、東京市場(日経平均株価)が暴落するきっかけとなります。
3、大暴落の前兆を察知する方法
大暴落は突発的に起こることもあり、こればかりは前兆を察知することができません。
しかし、相場の過熱感や国家間の緊張状態が徐々に高まっていった結果として起こる大暴落では、以下のような前兆を察知することができます。
- 特定の業種の人気が高まる(ITバブル、不動産バブルなど)
- 投資経験のない人が投資を始める
- 地政学リスクの高まり(中東情勢、北朝鮮情勢など)
1.や2.は「相場の過熱」や「金融危機」に、3.は文字通り「地政学リスク」に関連する前兆です。
2.について、金融バブル崩壊直前には証券会社に「日経平均」を買いに来た人がいたと言う話があります。
最近では、「ビットコイン」がその典型と言えるでしょう。
これらは大暴落の前兆であることもありますが、感覚的なところもあって、なかなか判断が難しい部分もあります。
そこでより客観的に大暴落の前兆を察知する方法として、いくつかの指数が用いられています。
4、VIX指数(恐怖指数)とバフェット指数から暴落を察知する方法
その大暴落の前兆を察知するために用いられる指数の中でも、代表的なものが「VIX指数(恐怖指数)」と「バフェット指数」です。
(1)VIX指数(恐怖指数)
VIX(Volatility Index:ボラティリティ・インデックス)指数は、米国の株価指数S&P500を対象とするオプション取引の値動き(ボラティリティ)をもとに算出され、投資家心理を示す指標として用いられています。
別名「恐怖指数」とも呼ばれ、投資家心理が悪化し、相場の先行きに不安が高まると上昇するという特徴があります。
VIX指数(恐怖指数) | 投資家心理 |
10〜20 | 平常時 |
20〜 | 先行きに不安感を感じる |
30〜 | 株価下落リスクを意識する |
40〜 | 大きな不安、パニック状態 |
VIX指数が20〜30となると株価下落の前兆です。
40を超えると株価暴落リスクのかなり高い状態だと言えます。
リーマン・ショックの発端となった、2008年9月15日リーマン・ブラザーズ破綻時のVIX指数は31.7でした。
直近NYダウ平均が過去最大の下落幅を記録した2018年2月5日の直前、2月2日のVIX指数は17.16(終値)でした(その後2月6日には一時50.30まで上昇)。
これだけをみるとVIX指数は目安となる20を下回っており、事前に暴落を察知できないではないかと思われるかもしれません。
しかし、時系列をみると直前1週間でVIX指数は上昇しており、全く兆候がなかったとは言えません。
数値の大きさだけでなく、その推移もチェックしておくこと大切なことです。
出所:VIX INDEX CHART/TradingView
(2)バフェット指数
バフェット指数は、世界一の投資家とも称されるウォーレン・バフェット氏が考案したもので、株式市場の時価総額をGDP(国内総生産)で割って求める非常にシンプルなものです。
バフェット指数=株式市場時価総額 ÷ GDP(国内総生産)
このバフェット指数が1を超える、つまり株式市場時価総額がGDPを上回っている場合には、相場が過熱していると判断します。
金融バブル崩壊直前1989年12月末には、バフェット指数は1.45となっており、かなり過熱していたことがわかります。
また日本におけるバフェット指数は、2016年11月以降1を上回る状況が続いています。
2018年3月15日時点でのバフェット指数は1.23と、指数上はかなり過熱感が高まっている状況であり、株価暴落には一応の警戒が必要な状況となっています。
出所:バフェット指数(日本版)チャート・日経平均株価 AI予想
5、暴落の前兆を察知したらどうすればいいか
では、実際に暴落の前兆を察知したら、わたしたちはどのように対処すればいいのでしょうか。
それは保有している株を売るということです。
一旦暴落が起こってしまうと、みんなが投げ売りしようとして買い手がつかず、なかなか株が売れないという事態も想定されます。
また、売れたとしても相応の損失は覚悟しなければなりません。
そうなる前に売ってしまうことが、リスクを回避するためのシンプルかつ最善の方法だと言えます。
さらに投資資金をキャッシュとして保有しておくことで、暴落後の安値で株を買うことができ、ピンチをチャンスに変えることもできます。
ただ前兆だと思ったものの、杞憂に終わることもあります。
たとえそうなったとしても、大暴落に巻き込まれ投資資金を失うよりは良いのではないでしょうか。
しっかり次のチャンスが来るのを待ちましょう。
6、暴落時は買いの大チャンス!
実際に株価が暴落した場合、それは買いの大チャンス到来となります。
暴落時には、どんなに業績のいい優良株であっても一様に売り込まれるのが特徴です。
本来の企業価値を大きく下回る水準まで株価が下がることも珍しくなく、定価の2割引、3割引、ときには半額といった大バーゲンセールとなります。
しかし、それは株価の暴落から投資資金を守り抜くことが前提となります。
また、一度株価が持ち直しても、すぐに底を打ったと判断するのは危険です。
暴落直後は株価の変動が大きくなっており、二次災害に巻き込まれる可能性もあるため、慎重な姿勢は崩さないようにしましょう。
暴落時に買いを入れる際のポイントとして、次のような点をおさえておきましょう。
(1)底を見極める 複数回に分けて打診買い
暴落時はまさに異常事態であり、それまでの安値といったものは役に立ちません。
ここが底値かなと思っていたら、簡単に底を抜けることもあります。
そのため、底値だと思っても一度に買うのでなく、タイミングをずらして複数回に分けて買う(打診買い)を行うのが基本です。
またチャート上に「2本連続の長めの陽線」や「下ひげ」が現れると、上昇へ転換したと判断するひとつの材料となります。
相場急変に備え、資金には余裕を持って投資することも大切です。
(2)短期間で大きなリバウンドを狙う基準
業績に問題がない優良株であり、暴落によって企業価値が損なわれていないのであれば、株価の下落が大きい銘柄ほど株価の回復(リバウンド)は大きくなる傾向があります。
短期間で大きなリバウンドを狙うのであれば、値動きが落ち着いた段階でそのような銘柄を選ぶと良いでしょう。
5日移動平均乖離率が-10%以下(短期で株価が大きく下落)かつ、直近の売買代金が10億円以上(一定の流動性)というのが銘柄を選ぶひとつの基準となります。
(3)リバウンドしやすい業種
株価の暴落後、短期間でリバウンドしやすい業種が「保険業」と「証券業」です。
保険や証券といった金融関連銘柄は暴落により株価が影響を受けやすい反面、回復局面には大きなリバウンドへとつながります。
7、日経平均株価をAIで予想するサイト
様々な分野で活躍が期待されるAI(人工知能)ですが、株式投資においても活用が進んでおり、そのひとつとしてAIによる株価予想があります。
AIによる株価予想はまだ発展途上ではありますが、日経平均株価暴落の兆候を察知するためのツールのひとつとして取り入れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
日経平均株価の大暴落は、これまで何度も繰り返されてきました。
その暴落はいつ起こるかはわかりません。
しかし暴落には前兆を事前に察知できる場合もあり、その場合には事前に備えておくこともできます。
暴落は起こるという前提で日頃から意識的に備えることが、リスク回避し、暴落を投資におけるチャンスに変える方法だと言えます。