TOB(公開買付)とは?TOBのタイミングで儲ける3つのポイント

  • 2018年4月19日
  • 2021年10月15日

TOB(公開買付)という言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。

少し前の話になりますが、ライブドアのニッポン放送買収を阻止するためのフジテレビによるTOBなどは大きなニュースとなりました。

TOBはニュースで大きく取り上げられるかは別として、頻繁に行われているため珍しいものではありません。

しかし、TOBの当事者となる会社にとって一大事であり、それによって株価も大きく影響を受けます。

株価が動くということは、TOBは利益をあげるチャンスにもなります。

ではTOBとはどのようなものなのか、そしてTOBのタイミングで儲けるポイントについてみていきましょう。

1、TOBとは?

TOB(Take-Over Bid)とは、(株式)公開買付のことです。

具体的には、会社を買収や合併(子会社化)することなどを目的(*)として、その企業の株式を「いつまでに・いくらで・どのくらい(何株)」買うかを公に発表(公告)し、証券取引所などを通さずに、不特定多数の株主から株式を買い付けることを言います。

(*自社の株価が割安だと判断した場合や株主還元策として、自社に対してTOBを行い、自社株取得の方法として利用されることもあります。)

TOBにおける買付価格(いくらで買い付けるのか)は、市場で取引されている株価よりも高く設定されることが一般的で、この上乗せ分を「プレミアム価格」と言います。

このプレミアムによって、株主は市場で株を売るよりもTOBに応じて売るほうが有利になるため、TOBを実施する会社は株を取得しやすくなります。

2、TOBのメリット・デメリット

TOBを実施する会社やTOBの対象となる会社の株主にとっては、TOBはメリットの方が多いと言えます。

しかし買付条件やTOB当事者の関係性によっては、デメリットが生じることもあります。

(1)TOBのメリット

①【TOB実施会社】一定価格での株の大量買付、計画的な買収・合併ができる

上場企業の株を取得したいなら、証券市場を通して株を買うこともできます。

しかしTOBを実施する会社は、通常相手企業の株式を一定数以上取得し、経営権の獲得(買収・合併)を目的としています。

そのためには大量の株を取得する必要があり、もし一度に市場で買い付けを行えば、大量の買い注文によって自ら株価をつり上げてしまいます。

それを避けるためには少しずつしか株を買うことができず、また確実に予定する株数を買い付けられる保証もありません。

TOBであれば、一定価格で大量の株を買い付けられるというメリットがあります。

TOBではプレミアム分の負担は生じますが、市場で買い付けを行おうとすれば思惑などによって株価が高騰してしまうこともあり、結果的にはコストを抑えられるケースも多いと言えます。

また買取総額を事前に想定することができるため、計画的な買収・合併ができるというメリットもあります。

②【TOB実施会社】予定した株数が集まらなければTOBをキャンセルできる

TOBを発表したものの、当初予定した株数の買い付けができないことがわかった場合、買付を実施せず(株式を返却)、TOBをキャンセルすることができます。

経営権の獲得を目的としていた場合、一定数以上の株を確保できなければ買付は失敗です。

TOBでは、中途半端に株を買ってしまうといった失敗のリスクがないというメリットがあります。

③【株主】株を高く売れる

TOBでは買付価格にプレミアムがつくことが多く、株主は株を高く売れるというメリットがあります。

TOBによる買付価格が発表されると、通常は市場価格もその価格にさや寄せする形で上昇していきます。

そのため、TOB発表前に株を保有していた株主だけでなくとも、TOBによる株価上昇で利益を得るチャンスがあります。

(2)TOBのデメリット

①【TOB実施会社】買収される企業・他の投資家による抵抗

TOBでは買付をオープンに行うため、買収計画が明らかになるというデメリットがあります。

当事者間で合意の上行われる買収や合併、自社株買いであればあまり問題にはなりません。

そうでない場合、買収される企業などが買収に抵抗し、防衛策によってTOBが失敗に終わることもあります。

②【株主】流動性低下・上場廃止による投資機会の喪失

市場に流通する株式の一部を取得するTOBの場合、TOBの成立によって、その会社の大量の株が市場で流通しなくなります。

結果的に、その銘柄の流動性は大幅に低下します。

もし買取対象からもれるなど、引き続きその銘柄を保有する場合にはデメリットとなります。

また、TOBによって流通する全株式が取得され、上場廃止となることもあります。

上場廃止となれば、長期的な成長を期待して保有していた銘柄に対する投資機会が奪われるというデメリットが生じます。

③【株主】TOBに応じるには、指定された証券会社に口座開設・株式移管が必要

TOBに応じるためには、その銘柄を保有しているだけではなく、TOBを実施する会社が指定した証券会社に口座を開設した上で手続きを行う必要があります。

すでに口座を持っている証券会社であればいいですが、そうでなければTOBの手続きに加え、新規口座開設や株式移管などの手間と時間がかかってしまいます。

それが面倒であれば、株価が買付価格に近づいてきたところで、市場で売却するという方法もあります。

しかしTOBのように買付価格で必ず売れる保証はありません。

3、TOBに参加する流れを確認

では、実際にTOBに参加する方法についてみていきましょう。

TOBに参加するには、前提としてTOBの対象となる銘柄を保有していなければなりません。

その上でTOBに応募する手続きを行います。

(1)すでにTOB対象銘柄を保有している場合

TOBの応募を受け付けてくれる証券会社は、通常TOBを実施する会社が指定した証券会社に限定されます。

そのため、TOB対象銘柄をどの証券会社で保有しているかによって、必要な手続きは変わります。

①TOB対象銘柄を指定証券会社で保有している場合

その指定証券会社にTOB申込書を提出することで、手続きは完了します。

TOBが成立すれば、提示されていた買取価格で株を買い取ってもらうことができます。

TOBに応じて株を売却する場合、売却手数料はかかりません。

②TOB対象銘柄を指定証券会社で保有していない場合

まず指定証券会社の口座にTOB対象となる株を移管します。

指定証券会社に口座がなければ、まずはその証券会社の口座を開設しなければなりません。

その後TOBの申込書を提出するという流れとなります。

口座開設や株式の移管をネット上で行える証券会社もありますが、郵送が必要な場合もあり、手続きに1週間程度かかることを想定しておかなければなりません。

(2)TOB対象銘柄を保有していない場合

TOBの発表後に市場で対象銘柄を購入し、TOBに参加するという方法もあります。

これは、市場における株価がTOBにおける買付価格を下回っている場合に有効な方法で、市場で購入しTOBに応募することで、その差額を利益とすることができます。

ただし、TOBが成立する可能性が高いほど、あるいは株を買い取ってもらえる可能性が高いほど、市場の株価はすぐに買付価格まで上昇し、買付価格以下で株を買うのは難しくなります。

もし買付価格以下で簡単に株を買えるとすれば、すべての株式が買付対象ではなく、TOBを申し込んでも確実に買い取ってもらえるわけではない、あるいは買収企業が抵抗するなどしてTOBが成立しない可能性が高い場合がほとんどです。

TOBの抽選に漏れた場合TOBが不成立となった場合、たとえ買付価格以下で株を買えたとしても利益が出るとは限らず、株価が下落し損失が出る場合もあります。

TOB銘柄を発表後に購入して利益を狙う場合には、そのリスクを理解した上で購入するかを判断しなければなりません。

4、友好的TOBか敵対的TOBかその違いは?

TOBは、TOB当事者間の関係性などによって「友好的TOB」と「敵対的TOB」に分かれます。

(1)友好的TOBと敵対的TOBの違い

①友好的TOB

買収する側と買収される側の会社が同意の上行われるTOB

②敵対的TOB

買収される側の会社が同意なく行われるTOB

敵対的TOBはいわゆる会社の乗っ取りであり、TOBを仕掛けられた会社はそれを阻止しようと、通常何らかの防衛策をとります。

③防衛策

防衛策としては、第三者に株を大量に買ってもらい、買収を仕掛けた会社に経営権を握れるだけの株を取得できないようにしたり(通称:ホワイトナイト)、新株を大量に発行することで経営権を握るために必要な株数を増やす(通称:ポイズンピル)といった方法が取られます。

(2)友好的TOBと敵対的TOBによる株価への影響

①友好的TOBの場合

TOB対象銘柄の株価は買付価格にさや寄せするように動く傾向があり、買付価格が高く設定されれば株価は上がりやすくなります。

②敵対的TOBの場合

買収する側と買収される側の会社で攻防が行われることになり、株価は不安定になります。

③ポイズンピルが行われた場合

流通する株が大量に増えることで株価が下がりやすくなります。

④複数の会社が仕掛けた場合

また1つの会社(A社)に複数の会社(B社・C社)がTOBを仕掛けることもあり、B社とC社で買付価格を競い合う「TOB合戦」となることもあります。

そうなると買付価格がつり上がっていき、株価が大きく上昇しやすくなります。

5、TOBのタイミングで儲ける方法は?

もともと保有していた株がTOBの対象銘柄となることもありますが、TOBを狙って株を買うことで儲ける方法もあります。

TOBが発表されてから株を買う方法もありますが、その方法では発表された段階ですでに株価が上がっていることが多く、儲けることは難しくなります。

TOBのタイミングで儲けるためには、TOBが発表される前に先回りして「TOBされそうな銘柄」を狙いましょう。

TOBされそうな銘柄の特徴をみていましょう。

(1)すでに他の会社の子会社となっている銘柄

すでに過半数の株を保有している親会社が、その子会社の株をすべて取得し完全子会社化するための方法としてTOBがよく利用されます。

(2)大企業と業務提携している関連企業・中小企業銘柄

業務提携している関連企業や中小企業などを、大企業が買収し子会社化や、合併し傘下に収めるための方法としてTOBがよく利用されます。

(3)独自技術やサービスなども持っているが、赤字・業績の低迷している銘柄

独自技術やサービスを持っているものの、赤字や業績の低迷している銘柄は、株価が割安に放置されていることも多く、その独自技術やサービスを取り入れたい企業により買収対象となりやすいと言えます。

以上がTOBの特徴になります。

それらの目的達成のための買収方法としてTOBが利用されます。

これは、あくまで「TOBされそう」という可能性の域を出ず、いつTOBされるのかを正確に予想するのは難しいです(TOBされない場合もあります)。

とはいえ、「TOBされそうな銘柄」は買収される可能性を見込めるということであり、買収するに見合う価値がある銘柄が多いとも言えます。

「TOBされそう」という理由とともに、投資対象として魅力がある銘柄を選ぶことが大切です。

6、TOBの注意点

TOBでは儲けることもできますが、注意しなければ損してしまうこともあります。

(1)一部買付と全部買付

TOBには、流通しているその会社の株式のすべて取得する「全部買付」と、一部のみを取得する「一部買付」があります。

完全子会社化するのであればすべての株式を取得する必要がありますが、経営権を確保するだけであればすべての株を取得する必要はなく、一部買付によるTOBもよく行われます。

そしてTOBでも、全部買付なのか一部買付なのかによって株価の動きは違います。

①全部買付の場合

株価は買付価格にほぼ等しい価格で落ち着く

買付価格と完全に一致しない理由は、TOBが中止(キャンセル)される可能性があるためで、株価は買付価格を少し下回るのが普通です。

②一部買付の場合

株価は買付価格よりも低い価格で落ち着く

一部買付の場合、TOBに応募する株主が予定より多い場合には抽選となり、抽選に外れた場合には買付価格で買い取ってもらうことができません。

買付価格での買い取ってもらえないリスクが株価に反映されるため、一部買付の場合の株価は、通常買付価格よりも低い価格となります。

そのため、買付価格よりも安く株を取得していれば必ず儲かるというわけではありません。

そのTOBが一部買付、全部買付のどちらなのかは注意しなければなりません。

(2)TOBが行われる時期

TOBは会社が正式に発表される前に、速報として報道されることもありますが、正式な発表が、その報道から数ヶ月経ってからということもあります。

TOBの報道で買われて上がった株価も、その後正式発表がなければ次第に下落しやすくなります。

もし報道に飛びついてTOB銘柄を買ってしまうと、正式発表を待っている状態で下落によって含み損を抱え、いつTOBが発表されるのか、あるいはTOBが行われないのではないかという不安な状態に置かれてしまうリスクがあります。

しかしTOBが正式に発表されてからでは、すぐに株価は上がってしまうため利益を出しにくく、その点がTOBで利益を狙う難しさとなっています。

(3)全部買付のTOBに応じないとどうなるか

再開発などで周りの土地所有者がすべて立ち退いている中、立ち退きに応じずポツンと一軒だけ取り残されている家を見たことはありませんか?

TOBは反対で、いくらお金を積まれても株は売りません。

上場廃止されても株を保有し続けるという場合には、これと同じような状態になることがあります。

TOBに応じれば済む話ではあります。

しかし株価が1,000円のときに買った株が100円まで値下がりしてしまい、いわゆる塩漬け株となっているような場合には、買付価格が110円、150円だとしてもなかなか見切りをつけられないということもあります。

その株が高配当株で、配当で少しずつでも含み損を回収しているのであればなおさらです。

ただ実際には上場廃止ともなれば流動性はなくなり、保有し続けるメリットに比べて、デメリットはかなり大きいと言えます。

それでも抵抗する株主には、「株式併合」と「特別支配株主の株式等売渡請求」という仕組みを使って、株主としての権利を強制的に奪うという方法が取られることもあります。

この場合、例えば1,000株を1株とする変更(株式併合)によって、1,000株未満しか保有しない株主は、株主としての権利を失い、1株に満たない株は会社によって買い取られることになります(特別支配株主の株式等売渡請求)。

つまり、いくら抵抗しても基本的には株を手放さなければならないのです。

ならば最初から手放したほうが無難だということです。

(4)買取価格に納得できないときの対処法

TOBに応じない理由が、自分で買った価格よりも安いという個人的な理由であれば、基本的には買取に応じなければならないと言えます。

しかし、買取価格が市場の株価やその企業価値に比べて安すぎるという場合には、裁判所に「株式取得価格決定申立」を行うことができます。

この制度によって裁判所に適正な買取価格を決定してもらい、その価格での買取を会社に求めることができます。

この手続きには時間と費用もかかるため、通常は申立てをするよりも素直に買取に応じるのが無難です。

ただ金額が大きいなど、そのまま買取に応じるには不利益が大きすぎるという場合には、このような制度があると知っておけば役立つことがあるかもしれません。

7、TOBを狙う個人投資家のブログ

最後にTOBを狙って取引を行っている個人投資家のブログをご紹介しますので、これからTOBを狙う際の参考にしてみてはいかがでしょうか。

(1)ど素人の株ブログ

企業IRの情報や独自の視点でTOB銘柄の解説がされています。

気になる企業の情報が見つかるかもしれません。

ど素人の株ブログ

(2)偏屈たぬきのへそまがり投資日記

TOBの概要も初心者にもわかりやすく解説してあります。

取引の状況も見ることができますので、これからTOBに挑戦してみたい方もとても参考になるブログです。

偏屈たぬきのへそまがり投資日記

まとめ

いかがでしたでしょうか。

TOBの当事者となる会社にとって一大事であり、株価も大きく影響を受けることから、儲けるチャンスともなります。

しかし、TOBの発表にすぐに飛びつけば、損をすることも多く注意が必要です。

TOBで儲けるためには、その発表前からしっかり準備しておくことがポイントとなります。

TOBを正しく理解し、日頃からTOBに関連する情報にアンテナをもっておくことで、TOBでチャンスを掴みましょう。