未来の株価変動の兆しを眺める投資家

一目でわかる株価材料の値動きリストといち早く情報収集する方法

  • 2019年5月20日
  • 2021年10月15日
未来の株価変動の兆しを眺める投資家

「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがあります。

  1. 風が吹くと、土ぼこりがまって目に入り盲人が増える。
  2. 盲人は三味線で生計を立てようとして三味線の需要が増加する。
  3. 三味線の胴体部分に使われる猫の皮の需要が増加して猫の数が減る。
  4. 猫が減ると桶をかじるネズミが増えて、桶の買い換え需要が発生する。

その結果、桶屋が儲かるという論理で、意外なところに影響がでるという意味で使われます。

そんなうまくはいかないだろうということで、あてにならない期待をすることのたとえとして使われることもありますが、世の中には、こういう意外なことが起こるものです。

この「風が吹く」という情報(=材料)をいち早く得て、業績向上を予想して「桶屋」の株を買う、株式投資に通ずるものを感じませんか。

株価上昇に影響する材料には、このような遠回りをしてたどり着くものから、もっと直接的なものまでさまざまです。

この記事では、株価上昇に直結するすぐに使える材料を中心に、どうすればその情報を得ることができるのかを解説していきます。

1、個別材料で株価はどう動くか?

市場や業種・業界全体における外部要因も株価に影響しますが、やはり最も大きな影響があるのは、その企業の業績や新商品の発売などの個別要因(材料)です。

(1)株価を上昇させる好材料

①業績(予想)の情報修正

企業は決算発表において、実績値とその後の業績予想を発表します。その際、業績が好調に推移しており、前回発表時に比べ予想を上回っている場合には業績予想を引き上げ、「上方修正」することがあります。
企業業績は、株価を決定する上でも非常に重要な要素であり、業績予想が上方修正がされれば株価は上がります。

②増配の発表

配当(インカムゲイン)は値上がり益(キャピタルゲイン)とともに、株主にとって収益源の2本柱のひとつです。その配当の多さは株主にとって魅力であり、買いたいと思う投資家が増えることで株価が上昇します。
また、配当は企業の利益の中からしか支払えないと法律に定められています。その配当を増やすということは、企業がしっかりと利益を出せていることを示すもので、それも株価を上昇させる要因となります。

③株主優待制度の導入・拡充

機関投資家やヘッジファンドなど大口投資家にはあまり評判のよくない株主優待制度ですが、個人投資家には根強い人気があります。
そのため、企業が新たに株主優待制度を導入する、あるいは内容を拡充するという発表を行えば、一定の買いが見込まれ株価が上昇します。

④自社株買いの発表

自社株買いとは、企業が市場で取引されている自社の株の一部を買い上げることです。自社株として買い上げられた株は市場で流通しなくなるため、利益額が変わらなければ、1株あたりの利益はそれだけ増えることになり、株価を上昇させる要因となります。
また営利企業は利益にならないことはしないと考えれば、自社株買いは企業がその時点の株価は安いと判断したと見ることができ、適正水準までの値上がりを期待できるとも言えます。

⑤M&A(企業合併・買収)・ TOB(株式公開買付)などの発表

M&AやTOBでは、買収する企業は買収される企業の株を買い集めていきます。つまり買収される企業の株には、確実に買ってくれる買い手が現れることになり株価は上昇しやすくまります。
また一般の投資家が保有している株を計画通り買い集めるためには、それらの投資家に株を売ってもらう必要があり、市場よりも有利な買取価格を設定することが通常であり、その価格にさや寄せする形で市場価格も上昇します。

(2)株価を下落させる悪材料

基本的には、好材料の逆のことが悪材料となります。

①業績(予想)の下方修正

企業決算において実績値が予想を下回ったという発表や、業績予想の下方修正が発表されると、企業業績の悪化を嫌って株価が下落します。

②減配の発表

減配も企業業績の悪化を示唆することから、株価を下落させる要因となります。

③株主優待制度の廃止・縮小

優待株は、優待目的で長期保有する個人投資家が一定数いることから、株価が下がりにくいという特徴があり、業績など本来の企業価値に比べ株価が割高な傾向があります。
そこに優待廃止や縮小という発表があると、優待目的のファンが離れて人気が剥落し、株価が下落します。人気の高い優待株などでは、特にこのリスクに注意が必要だといえるでしょう。

④公募増資の発表

公募増資とは、企業が新たに株を発行し買う出資を募ることです。市場で流通する株数が増えることから、自社株買いの逆で1株あたりの利益が希薄化し、株価の下落要因となります。

⑤大型投資の発表

これは投資の内容にもよりますが、短期的には企業のキャッシュフローを悪化させ、株価の下落要因となります。大型投資とともに、しっかりとしたビジョンを示すことができれば、その後株価は回復していき上昇要因ともなります。

2、株価材料とは?初動の動き方

「材料」とは、前述の「風が吹けば」に部分にあたる、株価に影響を与える可能性のある情報(要因)のことを言います。

参考:https://www.jins.com/jp/st/lens/antifog/

三味線や桶屋だとあまり馴染みがないので、「風が吹けばメガネ屋が儲かる」とでもしてみましょう。

中国の方から風が吹いてくると、黄砂やPM2.5対策でマスクが売れます。

みんなマスクをするようになると、メガネをかけている人のメガネが曇ります。

曇りにくいメガネへの買い替え需要が増えてメガネ屋が儲かります。

つまり「風が吹く」という要因が、マスク関連企業・メガネ関連企業にとっては業績・株価に影響を与える可能性のある「材料」となります。

このように株価にとってプラスに働く材料を「好材料」、逆に株価にとってマイナスに働く材料を「悪材料」といいます。

好材料・悪材料が本来の意味どおりに株価に影響するのは、基本的には最初に材料が出た(風が吹くという予報が出た)段階です。

その材料が実現した(風が吹いてきた)頃には、「材料出尽くし」として株価は本来とは逆の動きをすることもよくあります。

期待で買って事実で売る」という相場格言があるように、予想通りの結果が発表されると期待で先行して買われていた株が、利益確定のために売られるということが起こるのです。

逆に悪材料が出て株価が下がっていた株が、結果の発表でその悪影響についての目処が立ち、もうこれ以上は下がらないだろうと見込まれ買われるということも起こります。

ただし予想を上回る(下回る)結果が発表された場合には、「サプライズ」となり、新たな好材料(悪材料)として株価は上昇(下落)します。

また、材料には金利や為替、政治・経済の状況など市場全体の動き(外部要因)によるものと、企業の業績や新商品の発売などその企業独自の動き(個別要因)によるものがあります。

3、株価材料のタイプ別値動きリスト

外部要因・個別要因とも様々な材料がありますが、同じ材料(要因)でも、企業によって好材料となることもあれば、悪材料となることもあります。

たとえば為替が円安にふれた場合には、輸出企業では円換算した利益額が増えるため好材料ですが、輸入企業にとっては輸入(仕入)額が増えてしまうため悪材料となります。

そのため、各企業の株価にどの材料がどう影響するのかを理解しておかなければ、せっかくの材料を活かすことができません。

そこで、主な材料と株価への一般的な影響について、一度整理しておきましょう。

各企業や他の要因の影響で株価が異なった動きをする場合もありますので、あくまで一般的な傾向として参考としてください。

材料株価への影響
(↑:上昇 ↓:下落)
為替円高(輸入企業)↑
(輸出企業)↓
円安(輸入企業)↓
(輸出企業)↑
金利上昇
下落
物価上昇
下落
雇用増加
減少
原油価格上昇
下落
輸出増加(輸出企業)↑
減少(輸出企業)↓
設備投資増加
減少
投資判断
(レーティング)
引き上げ
引き下げ
企業動向増益
増配
減益
減配

4、株価材料業種別要因材料

株価が動く要因となる材料には、その企業がどんな業種なのかが関係してきます。

そこで、東証でも採用されている33業種(証券コード評議会)について、業種ごとにどのような材料で株価が動きやすいのかをまとめました。

ある材料を見つけた場合にどの銘柄を選べばいいのか、その参考にしてみてください。

業種(セクター)材料
水産・農林業・季節・天候・収穫(漁獲)高
・消費者嗜好
・食品関連法制
鉱業・原油価格
・消費量
建設業・景気
・公共事業
・建築着工単価・件数
・労働力、労働単価
・金利(住宅ローン金利)
食料品・原材料価格
繊維製品・消費者嗜好
パルプ・紙・為替(原材料輸入価格)
・アジアの古紙・パルプ需要
化学・為替(原材料輸入価格)
・原油、石油化学製品価格
・新素材開発
医薬品・新薬開発
・医療制度、薬価
・世界的な流行病
石油・石炭製品・為替(原材料輸入価格)
・原油価格
ゴム製品・ゴム価格
ガラス・土石製品・景気
・液晶、プラズマ用ガラス需要(家電・スマホなど)
・コンクリート需要(建設・公共事業など)
鉄鋼・景気(アジア需要など)
・原材料価格(鉄鉱石・石炭など)
・鋼材価格
非鉄金属・貴金属価格(金・プラチナ・銀など)
・インフラ整備
・アジア市場動向
金属製品・為替
・アジア市場動向
機械・輸送用機器の動向
電気機器・為替
・半導体市場
輸送用機器・為替
・原油価格
精密機器・為替
その他製品・ヒット商品発売など
電気・ガス業・為替
・季節・天候
・自由化
陸運業・原油価格(燃料)
・物流量
海運業・原油価格(燃料)
・貿易
・海外の需要や情勢
空運業・原油価格(燃料)
・海外情勢
・景気
倉庫・運輸関連業・原油価格(燃料)
・流通、在庫
情報・通信業・通信技術開発
・電波・通信関連法制
卸売業・景気
・消費動向
小売業・景気
・消費動向
・出店
銀行業・景気
・金利
・金融政策
証券、商品先物取引業・景気
・金利
・金融市場動向
保険業・金利
・死亡率、平均寿命
その他金融業・景気
不動産業・景気
・金利(住宅ローン金利)
・地価
・需給
サービス業・景気
・労働力、労働単価
・消費動向

5、株価材料を手に入れる方法4選

「期待で買って事実で売られる」株で利益をあげるためには、”新鮮”な材料が欠かせません。

それには常日頃から情報取集を行い、最新の市場ニュースや決算発表速報から、いち早く材料を入手しておくことがポイントとなります。

以下のようなサイトを積極的に活用して行きましょう。

(1) TRADERS WEB

TRADERS WEB

市場で注目を集めた銘柄と材料を当日大引け後に公開されている、有料版「トレーダーズ・プレミアム」では、個別株材料を寄り付き前からいち早く配信されています。

(2)Kabutan

Kabutan 

決算発表や業績予想修正、自社株取得など個別材料を速報で出しています。

(3)四季報オンライン


四季報オンライン

株式投資のバイブルともいえる四季報。オンライン版では、各種市場情報をリアルタイムで配信、有料会員登録でより詳細な情報を確認することができます。

(4)フィスコ

フィスコ

有料レポートでは、多くの注目銘柄情報をいち早く公開しています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

株価は様々な材料をもとに動きます。

どのような材料が、どのような銘柄に、どのように影響するのかを正しく認識することが大切です。

そして、その材料をいち早く手に入れ、株の動きをしっかり予想して売買できるようになること、これらが身につけば、株式投資において安定的な利益を得ることにつながります。

いきなり完璧に材料を使いこなすことは難しいでしょう。

しかしご紹介したサイトなどを参考に様々な材料に触れ、それぞれの材料が株価にどう影響するのかを学んでいくことが大切です。

まずは材料を得て、どんな銘柄を買えばいいか候補が浮かぶようになることを目標に、経験を積んでいきましょう。