株式投資をするにあたり考えるべきことの一つに挙げられるのが「どんな資産にどれだけの資金を投資するか」ということです。
従来の株式・国債といった伝統的な金融商品に加え、最近では仮想通貨やロボアドバイザーといった新たな投資対象も台頭し始めてきています。
そこでよく言われるのが「ポートフォリオ」の重要性です。
ポートフォリオとは金融商品の組み合わせのことを指しますが、どんなポートフォリオを組むかによって利益・リスクのバランスが大きく異なってきます。
今回の記事ではポートフォリオを組むにあたって必要となる前提知識や、実際にどんなポートフォリオを作れば良いのか、ということについて具体例を確認しながらチェックしてみましょう。
1、ポートフォリオとは?
先にも簡単に述べたように、「ポートフォリオ」とはどんな金融商品を保有しているか、ということを指す言葉です。
投資において重要な考え方である「分散投資」では、一つの商品に集中して資金を投資するのではなく、リスクを分散する観点からも色々な金融商品でポートフォリオを組むことが良いとされています。
ここでポートフォリオの具体例として、国民年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がどのような金融商品を組み合わせて資産を構成しているのかを見てみましょう。
GPIFでは、上記画像のような割合を「基本ポートフォリオ」とし資産構成を行っています。
基本的に「債券」は「株式」に比べ、ローリスク・ローリターンな金融商品であると考えられています。
GPIFでは国内外株式と国内外債券の割合が50%:50%となっており、巨大ファンドにしては比較的リスクをとっていると言えるでしょう。
以前までは国内債券の割合60%とかなり多数を占めていたのですが、2014年10月に発表された中期計画の変更により国内株式・外国株式の割合が大きく引き上げられました。
GPIFを一つの例として紹介しましたが、「自分が今どれくらいの金融資産を持っているか」「どれくらいを投資資金として運用できるか」「どれくらいのリスクを許容できるか」といった観点により、ポートフォリオの構成は大きく変わります。
個人投資家の方が資産運用をするにあたっては、まずは現在の金融資産の状況を把握する必要があります。
次の項目で詳しくみていきましょう。
2、現在の金融資産を把握しよう
前述したように、ポートフォリオを組むにあたって大事な視点の一つが「現在の金融資産を把握する」ということです。
最近は家計簿ソフトとしてスマートフォンアプリでも利用可能な『マネーフォワード』などでかんたんに自分の持っている資産の把握やキャッシュの流れを確認することができます。
このようなツールを活かして現状どれくらいの資産があるのか正確に理解しておきましょう。
参考:マネーフォワード
現状投資を行っていないのであれば、おそらく多くの方は「現金」というかたちで預金している方が多いのではないでしょうか。
投資をする際には、この現金からいくら投資にまわせる余裕資金があるのか、ということを更に考えていく必要があります。
投資格言のひとつに、「命金には手をつけるな」というものがあります。
これは「投資はあくまでも余剰資金で行うものである」ということを意味しています。
生活資金を必要以上に削ってしまうと日々に支障が出てきてしまうため、投資に使う資金は「最悪なくなってもいいもの」として認識しておきましょう。
現在の保有資金から、自身の生活資金や手元に必要なキャッシュを引けば「投資に使ってもいい資金」になると考えられます。
実際にどれくらい投資に充てられるかというのは、人の感覚や資金によってさまざまだと言えます。
投資は数万円程度からでも簡単に始められます。
はじめは低資金からスタートして、徐々に資金を増やしていく、といったような取り組み方をするのも良いでしょう。
3、ポートフォリオの構成を考えよう
先に例として紹介したGPIFのポートフォリオでは、株式と債券の割合が半々となっていました。
株式と債券による利益というのは基本的に反比例するというのが一般的だと言えます。
「株でリスクをとり下落局面では債券でそのリスクをカバーする」というのがGPIFのポートフォリオの基本的な考え方だと見てとれます。
巨額資金を運用するGPIFのような主体では上記のように「株でリスク、債券でカバー」というような手法をとることも多いです。
資金が数十万~数百万の個人投資家のみなさんの場合は株、もしくは投資信託のみでポートフォリオを構成する方が資金効率的には良いと言えるでしょう。
(低資金のうちから債券のようなローリスク・ローリターン商品を運用しても得られる収益は少ないため)
株式の中にもいろいろな特徴を持つ銘柄がありますし、投資信託も国内・海外などたくさんの種類がありますので、分散投資は十分に可能です。
「高配当銘柄」「新興市場銘柄」「割安(バリュー)株」「成長(グロース)株」など、株式をポートフォリオに組み入れるにあたっては「どのような株を選ぶか?」ということを次に考える必要が出てきます。
ポートフォリオの構成は、無数に考えられます。
次の項目では、実際に証券会社のツールなどを使ってポートフォリオ作成のシミュレーションを行ってみましょう。
4、ポートフォリオを作成してみよう
「ポートフォリオを作成するにあたっての前提知識はなんとなくつかめたけれど、そこから実際にどのように、どれくらいの割合で資産構成を行えば良いか分からない」といった課題にぶつかる方も多いかもしれません。
証券会社の提供するツールは、それらの悩みを解決する手助けになってくれます。
まずは、習うより慣れろの精神で始めてみましょう。
(1)ポートフォリオツール「X-Ray」(モーニングスター)
モーニングスターのX-Rayでは、自身の保有している株式や投資信託の情報を入力することで、自身の保有している運用資産の状況を簡単に確認することができます。
またその他にもそれに関わるコスト分析やリスク・リターンの分析を行うことも可能です。利用には会員登録が必須ですが、無料ですし煩雑な手続きは必要ありません。
またモーニングスターの別サービスでは、自身の投資金額や積立期間に応じたポートフォリオ作成例を提案してくれるものも存在します。
目標金額に必要な利回りでポートフォリオを組む
こういったサービスを利用することで、「どんなポートフォリオを組めば良いか」という道筋が見えてくるでしょう。
(2)eMAXIS(三菱UFJ国際投信)
こちらも現在の金融資産からどんなポートフォリオを作成すれば良いかを提案してくれるツールとなっています。
現在の投資可能額を入力するだけで、タイプに沿った具体的なポートフォリオ構成をシミュレーションしてくれます。
リターンとリスクの割合も表示され、「そのポートフォリオを組むことでどれくらいの資産効率が発生するか」ということを可視化してくれる有用なサービスです。
(3)SMART FOLIO(みずほ銀行)
みずほ銀行のSMART FOLIOは、自身のリスク許容度・投資可能資産額から資産配分モデルの提案を行ってくれるサービスです。
具体的にどんなサービスなのかについては、3分程度の動画を見る方が早いですし理解も深まるでしょう。
体験版を試してからSMART FOLIOを利用することも可能(どちらも利用無料)なので、まずは体験版から気軽に試してみると良いでしょう。
(4)ポートフォリオ・お気に入り登録機能(楽天証券)
楽天証券のポートフォリオ・お気に入り登録機能では、自身がどんな商品を保有しているのかという確認ができるほか、「仮にこういったポートフォリオを組んだ場合、損益や資産構成はどうなるか」というシミュレーションを行うことが可能です。
楽天証券でなくても各証券会社が類似機能を備えているため、自分が利用している証券会社のこういったツールを使ってみると良いでしょう。
どの証券会社も口座開設は無料なので、まだ口座を持っていないという方も適当に数口座開いてみるのをオススメします。
5、ポートフォリオブログを参考に見てみましょう
「4、ポートフォリオを作成してみよう」では金融機関のツールでポートフォリオ構成のシミュレーションを行えると述べましたが、実際に他の個人投資家がどんなポートフォリオを組んでいるか、ということも非常に参考になる情報です。
自身の資産運用割合や保有銘柄を公開している人は少なくありません。
どんなポートフォリオで運用しているのか3つのブログを見ていきましょう。
(1)ビスくんのフリースタイルライフ
国内外株式を主にポートフォリオを組んでいる方のブログです。
どのような銘柄を保有しているかを詳細に書かれており、また2017年も安定した結果を出されているため、非常に参考になるモデルケースだと言えるでしょう。
資産運用のほかにも市況状況やお得な情報を書かれており、また更新頻度も高く定期的にチェックしておきたいブログです。
(2)実録!平凡社員が1億円貯蓄を目指す奮闘記
子供二人の四人家族世帯で、それぞれの持つ金融資産でどんな投資スタイルをとっているか、どんな投資商品を保有しているか、が該当記事では記載されています。
詳細なポートフォリオの割合は書かれていませんが、各投資商品のリスクや投資戦略を併せて読むことができ、投資に対する理解を深めることのできるブログです。
(3)板橋宿のとあるインデックス投資家。の日記
株式、国債のほかソーシャルレンディングといった比較的新しい金融商品をポートフォリオに組み込まれている方のブログです。
現金預金の割合が高いのは注目で、個人投資家の中には保有資産の大半投資に使うという方も珍しくないのですが、保守的な投資スタイルから組まれているポートフォリオはかなり参考にしたいところです。
これまで見てきたように、ポートフォリオをどう組むかというのは人によってさまざまです。初めは効率性の良いポートフォリオを組むことは難しいかもしれませんが、見様見真似で段々と慣れていければ良いと思います。
まとめ
ここまでポートフォリオについて見てきましたが、いかがだったでしょうか。
ポートフォリオを組むにあたって、まずは現状の保有資産・投資可能額を適切に判断し、そこから自分のスタイル・考え方にあった金融商品を選んでいくというのが今回の記事の簡単なまとめです。
どんなポートフォリオを組むか、どんな株を買うか、というのはやはり一番の悩みどころだと思いますが、最近ではTwitterなどでもポートフォリオを公開している投資家の方もいますので、身近な例として参考にしてみると良いでしょう。