チャートを使って売買タイミングを判断するテクニカル分析では、様々な指標が用いられます。
移動平均線はご存知の方も多いのではないでしょうか。
MACDも代表的なテクニカル指標のひとつであり、移動平均線とともに多くのトレーダーに利用されています。
この記事では、相場トレンドに乗るために知っておきたいMACDのポイントについて解説していきます。
1、MACDとは?
MACD(Moving Average Convergence Divergence・移動平均収束拡散法)とは、期間の違う2つの移動平均を使って作られる指標です。
MACDでは移動平均の値として、平均する期間のうち新しい価格のウエイトが大きくなるように計算される「指数平滑移動平均」が使われます。
この方法で計算した期間の違う2つの移動平均のうち、期間の短いほうが短期平均、期間の長いほうが長期平均と呼びます。
MACD(MACDライン)はこの短期平均から長期平均を引いた差のことであり、この指標における基本線となります。
また、ある期間におけるMACDを単純平均した値をシグナル(MACDシグナル)と言います。
MACDを用いたトレンド分析では、このMACDラインとシグナルの位置関係がトレンドを把握するための重要な要素となります。
2、MACDを活用した売買シグナルの見方と使いかた
ここからは、MACDを活用して売買のタイミングを判断する方法についてみていきます。
(1)MACDとMACDシグナルの関係
MACDラインとMACDシグナルは、それぞれ短期のトレンドと長期のトレンドを示します。
移動平均線では、短期移動平均線と長期移動平均線が交差することを、交差の仕方によってゴールデンクロスやデッドクロスと呼び、それぞれ買いと売りのタイミングとされます。
MACDでは、MACDラインが短期移動平均線、MACDシグナルが長期移動平均線に対応する形で、それぞれゴールデンクロスやデッドクロスを形成し、売買のシグナルとなります。
①買いシグナル(ゴールデンクロス)
MACDシグナルの下で推移していたMACDラインが、MACDシグナルを上抜けた場合が買いシグナルです。
底値圏で発生した場合には、上昇トレンドへの転換点となりやすいです。
②売りシグナル(デッドクロス)
MACDシグナルの上で推移していたMACDラインが、MACDシグナルを下抜けた場合が売りシグナルです。
高値圏で発生した場合には、下降トレンドへの転換点となりやすいです。
移動平均線に比べ、MACDの売買のシグナル(ゴールデンクロス・デッドクロス)は早い段階で現れる傾向があり、より売買のタイミングやトレンドの変化に気付けるというメリットがあります。
しかし売買シグナルが発生しても必ず株価がその通りに動くわけではありません。
特にMACDラインとMACDシグナルが並行してもみ合っているような状態では、一見売買シグナルが発生したように見えてもダマシが多くなります。
逆にある程度の角度を持ってクロスする場合のシグナは確度が高くなる傾向があります。
(2)ゼロラインを使ってトレンドを確認する
ゼロラインとは、MACDチャートの「0」を示すラインです。
MACDラインがこのゼロラインの上にあるのか(MACDがプラス)、下にあるのか(MACDがマイナス)がトレンドの状態を確認する目安となります。
①上昇トレンド
MACDラインがこのゼロラインの上にある(MACDがプラス)
MACDがプラス圏で右肩上がりであれば上昇トレンドが加速しているとみます。
②下降トレンド
MACDラインがこのゼロラインの下にある(MACDがマイナス)
MACDがマイナス圏で右肩下がりであれば下降トレンドが加速しているとみます。
ただしMACDがプラス圏でも右肩下がりになってきた場合やMACDがマイナス圏で右肩上がりになってきた場合には、トレンドの勢いが衰えてきたとみることができ、先ほどのゴールデンクロスやデッドクロスが発生しやすくなります。
これはトレンドが転換する可能性が高まっていると判断する重要なポイントとなります。
(3)MACDを使う際のポイント
MACDはトレンドをいち早く捉えるために有効な指標ですが、それだけダマシも多くなります。
せっかく指標を使ってもダマシであれば判断を間違ってしまうため、ここでMACDを使う際のポイントを改めて確認しておきましょう。
押さえておきたいのは次のようなポイントです。
・(ゴールデンクロスの場合)ゼロラインより下(底値圏)で出現しているか?
・(デッドクロスの場合)ゼロラインより上(高値圏)で出現しているか?
これらの条件を満たす場合にはトレンドの転換点である可能性が高くなり、狙える値幅が大きくなります。
ゼロラインから離れた位置でクロスしているか?
MACDの値は短期平均から長期平均を引いた差であり、その値が大きいということは、短期平均長期平均から大きく乖離している、つまり相場に過熱感がある状態です。
過熱した相場では元の水準に戻ろうとする力が働きやすく、そのような状態でクロスが発生すれば反動も大きくなり、狙える値幅も大きくなりやすいと言えます。
ただし、トレンドの強さによっては過熱状態が続き、高値(底値)をブレイクしてトレンドが継続することもあり、そういったことも想定してリスク管理を行う必要があります。
ある程度の角度を持ってクロスしているか?
MACDラインとMACDシグナルが並行してもみ合っているような状態は、トレンドが弱い状態であり、一見売買シグナルが発生したように見えてもダマシが多くなります。
そのため、ある程度の角度を持ってクロスが形成されているかは、勢いを持ってトレンドが転換したかどうかを確認する上でのポイントとなります。
3、実例でトレンドラインを確認
では、実際のMACDと株価の動きを比較しながら確認してみましょう。
このチャートでは、赤で示した時点でゴールデンクロスが出現しており、その後上昇トレンドが強まっています。
一方、青で示した時点でデッドクロスが出現しており、その後下降トレンド(調整局面)に転換していることがわかります。
またこのチャートでは全体的には緩やかな上昇トレンドを描いていますが、それはMACDの値が概ねプラス圏で推移していることにも現れています。
4、MACDを活用した投資のメリットと注意点
MACDはトレンドをいち早く捉えることのできるテクニカル指標として、多くのトレーダーに利用されております。
それによってMACD自体がきっかけとなって値動きに影響を与えることもあり、注目しておきたい指標だと言えます。
特にゼロラインから離れた位置(高値圏・底値圏)で出現したクロスには、トレンド転換を判断する有効なシグナルとして利用することができます。
一方で値動きの少ないレンジ相場やなだらかなトレンド相場では、クロスが頻繁に発生しやすくなり、ダマシも多くなります。
そこで勢いのあるトレンドなのかを判断するために、チャートの形状のほか、ゼロラインからの距離やRSIやストキャスティクスといったオシレータ系の指標を併用するのが有効な方法です。
このようにMACDだけで判断するのではなく、複数の指標を組み合わせて利用することも判断の正確性を高めるためのポイントとなります(これは他の指標についても共通しています)。
またトレンドに勢いがなく、MACDラインとMACDシグナルが並行してもみ合いが続いたり、クロスしてもその角度が緩い場合にはダマシである可能性が高くなるため、無理に売買せず様子をみることも大切なことです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
MACDはトレンドをいち早く捉えることのできるテクニカル指標として、有効な指標と言えます。
とはいえいつも正しいとは限らないため、ほかの指標と併用したり、判断の難しい場合には様子をみたりするなどして、MACDをうまく活用していくことが大切です。