ヘッジファンドの最低投資額はどのくらい?特徴や4つの選定基準も解説

ヘッジファンドについて、なんとなく投資ハードルが高いイメージを持って敬遠していませんか?

確かに通常の投資信託に比べると、最低投資金額も大きく、条件も厳しいため気軽にできるものではありません。

しかし、近年ではヘッジファンドへの最低投資金額も含め条件が優しくなっており、個人でも投資しやすくなっています。
ハードルが下がってきているのであれば、「最低金額はどのくらいなのか」、「自分でも投資ができるのか」知りたくありませんか?

そこで、この記事の前半では、最低投資金額の相場を説明し、ヘッジファンドの概要を整理します。そして、後半では事前に確認すべきヘッジファンド選定の4つの基準をご紹介して、中でも重要な手数料の条件までを説明します。
ヘッジファンドへの理解を深め、適切なヘッジファンド選びを目指しましょう。

・まとまった資金の運用先を探している方
・今の資金でヘッジファンド投資が可能か知りたい方
・ヘッジファンドをどんな基準で選定すればいいか知りたい方

ヘッジファンドの最低投資額はどのくらい?

ヘッジファンドの最低投資額は、現在1,000万円が標準的です。
これは、一般的な投資信託の最低投資額が1万円程度であることを考えると非常に高額に見えます。

しかし、以前は5,000万円~1億円といった金額のファンドが多く、富裕層だけが手が出せるものでした。
時代の変化とともに、富裕層がヘッジファンドから離れる傾向が強くなったことも影響して、最低投資金額が現在まで下がってきました。

なぜこのようにヘッジファンドの最低投資金額がこれほど高いのか解説するため、まずはヘッジファンドの概要について説明します。
そのあとに、ヘッジファンドを選定する上で、最低投資金額以外にも確認すべき条件についてご紹介します。

ヘッジファンドとは?

ヘッジファンドとは、投資家からの資金を募り、様々な金融商品と運用方法を組み合わせることによって、利益を生み出すプロの投資集団です。

通常の投資信託では、市場全体の相場が下がってしまえば、運用の損失が発生してしまいやすくなります。
しかしヘッジファンドでは、市場の動きに関係なく、常に利益を追求します。
このような運用モデルは絶対収益型と呼ばれており、ヘッジファンドが取る様々な戦略によって絶対収益を実現しています。

投資信託もヘッジファンドも、同じくプロが運用を行う投資商品ですが、結果は大きく異なります。
では具体的にどのような違いがあるのかを知るため、まずはヘッジファンドの定義や戦略について解説します。

ヘッジファンドの定義について

ヘッジファンドには明確な定義が存在しません。
しかし、バーゼル銀行監督委員会報告書の中で、ヘッジファンドを含む「高レバレッジ機関」の特徴として以下の3点を挙げています。

  1. 規制をほとんど受けないこと
  2. 規制対象金融機関や上場会社に比べ、情報開示の義務が厳しくないこと
  3. レバレッジが高いこと

ヘッジファンドは少人数からの投資を募る私募で成り立っているため、規制や情報開示に対する条件が公募の投資信託よりも緩くなっています。

レバレッジとは、借入れを利用することで、投資額に対して何倍もの収益を狙うことをいいます。一方で、リスクも大きくなることに注意が必要です。

そしてヘッジファンドは、レバレッジにより大きな収益を狙いながら、市場のリスクを避ける様々な戦略(ヘッジ)を行っています。
これがヘッジファンドと呼ばれる理由にもなっています。

ヘッジファンドの主な戦略について

ヘッジファンドの主な戦略をご紹介します。
ヘッジファンドの戦略の分類方法はいくつか存在しますが、ここでは日興リサーチセンターが提唱しているものを取り上げます。
主な戦略は以下の9つがあり、2020年10月~2021年9月の1年間のリターンとリスクを示しています。

ヘッジファンドの9つの戦略
戦略名 説明 リターン[%] リスク[%]
株式ロング・ショート 割安な株式を買い、割高な株式を空売りする戦略 22.18 7.85
マルチ・ストラテジー 複数の戦略を1つのファンドの中で行う戦略 12.68 4.93
イベント・ドリブン 企業の買収や再編などのイベントに着目する戦略 24.19 6.98
マネージドフューチャーズ あらゆる投資対象に投資し、相場の変動局面で利益を狙う戦略 10.39 2.14
マクロ 幅広い資産を対象に市場全体の方向性にかける戦略 9.81 1.87
債券アービトラージ 債券における市場での価格差を利用した戦略 9.3 3.47
アービトラージ 同じ商品における市場間での価格差を利用した戦略 7.89 2.86
リラティブバリュー 理論価格との価格差を利用して利益を追求する戦略 12.97 3.07
破綻債券 破綻しそうな企業の債権を買い、事業再生による価格上昇を狙う戦略 22.97 5.19

各戦略のリターンとリスクについては、2020年10月~2021年9月の1年間での結果を示しており、当然、毎年結果は異なります。参考までにしましょう。

ヘッジファンドの特徴

ここまでで、ヘッジファンドの概要について説明しました。
次に、ヘッジファンドについてより詳細に見ていくために、特徴を以下の4つに分けてご紹介します。

  • 絶対収益
  • 自由な運用戦略
  • 情報が少ない
  • 投資ハードルが高い

絶対収益で相場に左右されない

ヘッジファンドは、市場の相場に左右されず、常に利益を上げる絶対収益を追求しています。

これに対し、投資信託は相対収益を追求しているといえます。
投資信託の場合、基準となる指標(日経平均株価や債券指数など)に対してのパフォーマンスを求めます。そのため、市場全体の相場が下がると、結果として損失が発生してしまう場合がほとんどです。

しかしヘッジファンドでは、相場が下がる前に空売りを行い、下がってから買い戻すということによって、「安く買って高く売る」という取引を実現します。

上記は戦略の一例ですが、ヘッジファンドではこういった戦略を駆使し、相場の上昇や下降に関係なく、常に利益を上げることを目指します。

運用戦略を自由に立てられる

ヘッジファンドでは、直接的な規制や監督をほとんど受けないため、自由な運用戦略によって高収益を実現することができます。

投資信託では、投資対象やその地域を事前に目論見書によって開示しており、それに沿った運用を行っています。

しかし、ヘッジファンドでは投資マネージャーが市場の動向に応じて自由に戦略を変えることができます。
また、先物取引やオプション取引などのデリバティブ取引についての制約を受けることがありません。さらに、投資期間の設定により自由に資金確保ができるため戦略も立てやすくなります。

情報が少なく、詳しい人も少ない

ヘッジファンドに関する情報はあまり出回らないため、情報を入手することは困難です。
これは、ヘッジファンドが規制対象金融機関や上場会社に比べて情報開示義務が厳しくないことに起因しています。

また、最低投資金額が高いことから、ヘッジファンドへの投資経験者もあまり多くなく、詳しい人も少ないでしょう。
そのため、有価証券報告書と目論見書が開示される投資信託とは異なり、ヘッジファンドは投資の判断材料が少ない中で検討しなければなりません。

投資ハードルが高い

ヘッジファンドは、投資信託と比べると投資のハードルが高くなります。
その理由は、私募のため募集人数が少なく、1人の最低投資金額が高くなるためです。

投資信託の場合、基本的には期間に制限なく不特定多数に募集しますが、ヘッジファンドの場合、限られた少人数で投資するため1人の投資額が多くないと効率的な運用ができません。
まとまった資金がないと投資できないため、気軽に投資できるものではありません。

ヘッジファンドを選ぶ4つの基準

ヘッジファンドは情報開示が少ないですが、投資前には確認すべき基準があります。ここでは、ヘッジファンドを選ぶ際に見るべき以下の4つの基準について解説します。

  • 投資方針
  • 運用期間や利回り
  • 実績
  • 投資条件

投資方針で将来性は期待できるか

投資方針が明確かつ差別化できているのか確認し、将来性があるかどうかを検討することが大事です。

ファンドの投資対象と運用方法を把握し、安定性や将来の成長性について考えます。
投資方針の将来性を予測することは難しく、そもそもプロの投資家でも外れることはよくあります。個人が検討してもなおさらわからないことは多いでしょう。
ですので、ファンドが掲げている投資方針とその根拠を確認し、将来性について少しでも納得できるものを選びましょう。

納得できる投資方針を掲げているファンドは信用できるため、運用内容が期待できるだけでなく、ファンドとしての将来性も期待できます。

運用期間や利回りは目的と合致するか

ヘッジファンドが公表する運用期間や運用利回りが、自分の投資の目的と合致しているか確認することが大事です。

検討している投資について、どのくらいの期間で、どの程度増やしたいのか、そのためにどの程度のリスクまで許容できるか検討が必要です。

例えば、ハイリスクハイリターンで年利10%超のヘッジファンドがあるとします。リターンが大きい分、基本的にはリスクもある程度大きくなります。
数十年使わない資金として、投資を検討しているのであればよいでしょう。
しかし、将来的に使う予定がある資金をハイリスクハイリターンなヘッジファンドに入れてしまうのは、目的と合致しません。投資前に必ず確認すべき事項です。

実績があり安心できるか

過去の運用実績から、信用できるファンドかどうかを確かめる必要があります。

投資方針や目標の利回りを立派に公表していても、それが実現できていなければ意味がありません。運用の計画から実行までは、ファンドマネージャーがすべてをにぎっており、ファンドマネージャーの実力次第で運用成績は変わるといわれています。

実際、目標を到達していない成績のヘッジファンドもあります。
何があるかわからない投資の世界だからこそ、目標達成できるかどうかは誰にもわかりません。
だからこそ、過去の運用実績を基に、今後の成長の期待を検討することが必要です。

投資条件は問題ないか

そもそも自分が、ヘッジファンドの投資条件を満たしているか、また、問題ないかを確認する必要があります。主に以下の4項目についてです。

個人または機関投資家

ヘッジファンドは私募ファンドであるため、プロや一部の富裕層である機関投資家でないと受付けていない場合があります。
最近では一般の個人でも投資できるファンドが増えています。募集の対象次第で、個人では投資できない場合もあるので注意が必要です。

最低投資金額

最低投資金額はヘッジファンドによって様々です。自身の予算に合わせた検討が必要です。
もし募集の条件に満たない場合は、相談を受け付けてくれるファンドもあるかもしれません。

ロックアップ期間

ロックアップ期間とは、いわゆる運用開始から解約の制限がかけられている期間のことをいいます。一般的には、数か月であり、長いと年単位のものもあります。解約がいつから可能かということを把握しておくといざというときに安心です。

手数料

ヘッジファンドの手数料は一般的に高いです。詳細については後述しますが、手数料を引かれた上で投資家に戻ってくる資金が確保できていなければ意味がありません。手数料が高いことによって損失を被ることがないようにしましょう。

ヘッジファンドの手数料体系はどんな仕組み?

ヘッジファンドの手数料は、運用報酬と成果報酬の2つで構成されています。投資信託と同様の点もあれば、異なる点もあります。

以下では、ヘッジファンドの手数料体系について、投資信託と比較しながら解説します。
また、一般的にヘッジファンドは手数料が高いといわれていますが、実際にどれくらいかかるものなのか具体的に紹介します。

運用報酬とは

運用報酬は、資産を管理・運用するための運用会社の経常経費に充てられる手数料です。
投資信託でも同様にかかっている手数料であり、運用資産残高に基づいて徴収されます。

例えば、運用資産残高が1億で運用報酬が年率2%の場合、1年間で200万円が運用会社への費用として支払われます。
運用報酬は0.5%未満のものから2%以上のものまで幅広くあります。かつては2%程度が定番でしたが、近年では減少傾向にあるようです

もちろん、運用報酬はファンドマネージャーのモチベーションにもかかわる部分なので、安ければ良いというわけではありません。報酬が安くても、リターンも少なければ投資信託の方が良いパフォーマンスになる可能性があります。

あくまで運用報酬ではなく、結果が見込めそうかを重視するようにしましょう。

成果報酬とは

成果報酬は、運用成果に応じてヘッジファンドへ支払われる手数料です。
投資信託にはない手数料体系です。投資信託では、運用損失が発生していたとしても信託報酬は徴収されますが、ヘッジファンドの場合、運用で利益が出なければ成果報酬は支払われません。

例えば、成功報酬が20%で、運用利益が100万円の場合、20万円はヘッジファンドへ支払われ、投資家は80万円分の利益が得られます。
成功報酬は10%未満のものから20%以上のものまであります。20%以上であることが一般的ですが、こちらも近年減少傾向にあるようです

ハイウォーター・マーク式とは

成果報酬の算出方法の1つに「ハイウォーター・マーク式」があります。成果報酬が発生する基準の価格のことをハイウォーター・マークと呼びます。

例えば、投資家から1,000万円の資産を預かり、ハイウォーター・マークを1,000万円にするとします。
1年後、運用により資産が1,400万円になり、成果報酬が20%とすると、運用益400万円に対して80万円が成果報酬になります。
そして、2年目からは資産額から成果報酬を引いた1320万円が新たにハイウォーター・マークとなります。

このように、運用がうまくいくと、成果報酬の発生基準となる価格はどんどん上がっていきます。逆に、運用がうまくいかず、資産が減ってしまっても、一度設定されたハイウォーター・マークが下がることはありません。

まとめ:ヘッジファンドの最低投資金額は1,000万円。特徴を理解し、適切な選定を!

この記事では、ヘッジファンドの最低投資金額についての理解を深めるため、ヘッジファンドの概要や特徴について解説しました。
また、ヘッジファンドを選ぶ際の最低投資金額以外の確認すべきポイントや手数料体系について解説しました。以下に要点をまとめます。

  • 最低投資金額は以前より下がってきており、現在は1,000万円が標準的
  • 規制や情報開示の適応が緩く、高パフォーマンスの絶対収益を目指す
  • 選定基準:将来性、目的との合致、実績、投資条件
  • 手数料は基本的に、運用報酬と成果報酬の2種類

ヘッジファンドへの投資ハードルは依然として高いですが、昔と比べると低くなりつつあります。
まとまった資金が用意できた場合、ヘッジファンドへの投資も選択肢の1つとして考えてみてはいかがでしょうか。