「思い切って資産運用してみたいけれど、失敗して損をするのも嫌だな」
「でも、全部貯金するのもつまらないから、有効に使いたい」
コツコツ貯めた貯金や退職金、宝くじの当選金など、まとまったお金が手に入ったとき、このようにどうするのが良いのか悩みませんか?
どうするのが良いか考えている方のために、まとまったお金の管理や運用の方法について解説していきます。正しい方法で管理して、せっかくのお金を大切に使っていきましょう。
まとまったお金はどうする?3種類のお金に分けよう
まとまったお金が手に入ったら、そのまま放置してはいけません。使うお金や貯めておくお金など、種類を分けて管理しましょう。
「まだまだお金はたくさんあるから」と油断して贅沢しているうちに、いつの間にか全て使い切ってしまったというピンチに陥ってしまうかもしれないからです。まとまったお金があるなら、次の3種類のお金に分けましょう。
- 生活防衛資金
- 使う予定が決まっているお金
- 余剰資金
この3種類のお金の意味と、どのように分類すれば良いのかについて詳しく解説していきます。
生活防衛資金
生活防衛資金とは、万が一のことがあったときに使う生活費です。
もし明日、会社が倒産したり、リストラされたりしても、あなたの生活は続きます。異例の出来事が起きても、それまでどおりの生活ができるよう、まとまったお金のなかから生活防衛資金を工面しておきましょう。
生活防衛資金の金額として目安になるのは、半年から1年分の生活費です。万が一、いきなり収入が途絶えても、これだけのお金があれば、就職先を見つけるまでに困窮する恐れはほとんどないでしょう。
生活防衛資金は、資産運用には回さず、預金など元本保証の商品で取っておきます。もしもの場合に備えるお金なので、元本割れのリスクがない商品を選び、貯金しておきましょう。
使う予定が決まっているお金
生活防衛資金ではないものの、目的が決まっていて貯金しておきたいお金もあります。
たとえば、マイホームの頭金や子どもの教育費、結婚資金、老後の生活費などです。これらは今すぐ必要ではないかもしれませんが、将来のために少しでも貯金しておきたいところです。手元にまとまったお金があるなら、これらの目的のためにいくら貯金しておくのかも考えましょう。
使い道が決まっているお金は、元本割れしない預金などの商品で貯金しておくのが基本です。投資に回して元本割れし、お金が減ってしまったら、予定どおりの使い方ができなくなるかもしれないからです。
マイホームを諦めなければならなくなったり、子どもが希望する私立の学校に進学できなかったりといった事態になってしまうかもしれません。したがって、使う予定が決まっているお金は、元本保証の預金などで貯めておきましょう。
余剰資金
生活防衛資金、使い道が決まっているお金の2種類を紹介してきましたが、いずれにも当てはまらないのが「余剰資金」です。
使い道が決まっておらず、万が一の事態に備えるお金でもない余剰資金は、基本的には何に使っても構いません。今すぐに使わないのであれば、投資に使ってお金を増やすことを目指しても良いでしょう。
投資には元本割れのリスクがあるので、生活防衛資金や使い道が決まっているお金を使うのは、抵抗がある方が多いと思います。しかし、上手に運用すれば少しずつお金が増えるので、まったく投資をしないのももったいないでしょう。
そこで最悪の場合、なくなっても人生設計に大きなダメージがない余剰資金を使って、投資を始めてみるのはいかがでしょうか?
まとまったお金が手元にあると、全額を投資に回し、お金を増やしたいと夢見る方がいるかもしれません。しかし、投資にはリスクがあるので、生活に必要なお金まで投じるのは良くありません。
余剰資金を使い、リスクをコントロールしながら上手に運用していきましょう。
元本保証で運用できる商品
まとまったお金のうち、生活防衛資金、使い道が決まっているお金は、元本保証の商品で運用しましょう。元本保証の定期預金と個人向け国債を紹介していくので、これらの商品の活用を検討してください。
定期預金
定期預金は、申し込み時に満期を決めてお金を預ける預金です。いつでも引き出せる普通預金と異なり、満期が来るまで引き出すことはできません。
自由に引き出せない代わりに、定期預金は普通預金よりも金利が高いメリットがあります。2021年現在、普通預金の金利は0.002%程度であるのに対し、定期預金では0.2%前後の商品があります。
普通預金と同様、定期預金は元本保証の商品です。ペイオフに注意する必要はありますが、生活防衛資金や使い道が決まっているお金の貯金に適しています。
退職金専用の定期預金
定期預金には退職金専用のプランがあり、通常の定期預金よりも高い金利で預金することができます。手元にあるまとまったお金が退職金という方は、退職金専用の定期預金を検討してみてはいかがでしょうか?
金融機関によって異なるものの、退職金プランの金利は0.5%から1%程度に設定されている商品が多いです。通常の定期預金の金利が0.2%前後であることを踏まえると、退職金プランの定期預金はかなり魅力的です。
注意点として、3ヶ月など短い期間限定で金利が優遇されているだけで、3ヶ月が経過したら通常の定期預金の金利になる、というシステムが多いことは覚えておきましょう。
また、1%前後の高利回りの商品は、投資信託に加入することを条件としている場合が多いです。後述するように、投資信託は元本割れのリスクがある投資商品です。
元本保証ではないため、生活防衛資金や使い道が決まっているお金の運用には不向きといえます。
個人向け国債
国債とは、国が資金調達のために発行する債券です。債券を購入すると、半年ごとに利息がもらえて、満期が来ると投資元本が返還されます。個人向け国債は、個人の投資家が購入できる国債です。
財務省が公言しているとおり、国債は元本保証の商品です。利回りは定期預金と同程度か、やや魅力的な傾向があります。生活防衛資金や使い道が決まっているお金を運用するのに、向いている商品といえます。
プロに運用を任せられる商品
ここからは、余剰資金の運用に向いた商品を紹介していきます。
「プロに運用を任せられる商品」
「年金代わりの定期収入が狙える商品」
の2つに分けて解説していきますが、まずは各商品の概要を一覧表でご覧ください。
金融商品 | 最低投資額 | リスクの高さ | 目安の利回り |
---|---|---|---|
投資信託 | 100円 | 低 | 1%~3% |
ETF(上場投資信託) | 数万円 | 低 | 2%~4% |
REIT(不動産投資信託) | 数十万円 | 中 | 4%~6% |
ヘッジファンド | 1000万円 | 中 | 5%~20% |
不動産 | 数百万円 | 中 | 5%~10% |
株式 | 数万円 | 高 | 3%~5% |
基本的に、リスクと利回りは比例します。利回りが高い商品は魅力的に見えますが、利回りだけで投資先を選ぶのではなく、リスクの大きさも検討した上で、まとまったお金の投資をしましょう。
ここからは、表で紹介した商品を具体的に解説していきます。
まずは「プロに運用を任せられる商品」として、投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)、ヘッジファンドの4つを紹介します。
投資信託
投資信託は、お金を投資会社に預け、代わりに運用してもらう商品です。銘柄選びや実際の売買をプロに任せられるため、初心者でも大きな失敗をしにくい商品です。
インターネット証券会社では100円から投資信託の購入ができるので、手軽に始められるのも大きなメリットです。投資に興味はあるけど、ちょっと不安という方が少額で試してみるのにも向いています。
低リスクの商品で大きな利益を狙い難いこと、プロに任せる手数料がかかることなどから、利回りは1%から3%ほどが目安となります。
ETF(上場投資信託)
ETF(上場投資信託)も、投資信託と同様、プロに運用を任せられる商品です。ETFは証券取引所に上場しており、投資信託は非上場という違いがあります。
ETFは投資信託に比べて、手数料が低い傾向にあります。銀行や証券会社の窓口で購入する投資信託と異なり、ETFは証券会社を介して証券取引所に注文を出して売買するため、低コストであるといえるでしょう。
したがって、ETFのほうが利回りは高くなる傾向があり、2%から4%ほどが目安となります。
REIT(不動産投資信託)
REIT(不動産投資信託)は、不動産を運用する投資信託です。ETFと同様、証券取引所に上場しています。
1口あたりの購入額は銘柄によって異なりますが、数十万円程度で購入できる銘柄が多いです。小口で不動産に投資できるので、投資資金が少ない方にもおすすめです。
投資信託やETFだけで運用すると、投資先が株式や債券に集中してしまいがちです。投資先を幅広く分散すると、大きな損失を被るリスクを低くできるので、REITを使った不動産への投資も検討すると良いでしょう。
ヘッジファンド
ヘッジファンドも、投資会社に銘柄選びや実際の売買を任せられる商品です。投資信託よりも運用の自由度が高く、専門的な商品を駆使しているので、高い利回りを狙うことができます。
利回り10%や20%を達成しているヘッジファンド会社も珍しくはありません。
なお、ヘッジファンドの最低投資額は1000万円としている会社が多いです。原則として1,000万円ですが、500万円から投資を始めて少しずつ増やすなど、柔軟な対応を行っている会社もあるようです。ヘッジファンドに投資をする際は、自分の予算に合った会社を探しましょう。
国内ヘッジファンドは情報が少ないので、実際に問い合わせて確かめてみるとよいでしょう。
以下の記事では国内ファンドについてまとめています。
年金代わりの定期収入が狙える商品
次に、投資している間、定期収入が得られる投資先として、不動産投資と株式投資を紹介していきます。年金代わりの収入が欲しい、給料の他に副収入が欲しいと考えている方におすすめです。
不動産投資
不動産投資は、マンションやアパートを購入して他人に貸し出し、家賃収入を得る投資方法です。不動産が値上がりしたら、売却によって利益を得ることも可能です。
不動産投資の主な収益は家賃なので、入居者がいる限り、毎月一定額の収入を得られます。年金代わりの収入や副収入として、定期的な収入が欲しい人におすすめです。
ただし、所有している家を借りる人がおらず、空室になった場合、家賃収入は得られなくなります。賃貸需要のあるエリアの不動産を購入したり、近隣の住宅と差別化できる設備をしつらえたりするなどの工夫が必要になるでしょう。
株式投資
株式は、企業が資金調達のために発行する証券です。株式を買うと企業への出資者(株主)になり、企業の利益の一部を配当金としてもらうことができます。
配当を実施している企業の場合、半年に1回か年に1回の頻度で、株主の口座に配当金が入金されます。株式投資というとパソコン画面の前に貼り付き、1日中トレードしているイメージがあるかもしれませんが、配当金はトレードしなくてももらえます。保有しているだけでもらえるので、労力のかからない不労所得です。
ただし、株式には銘柄選びが難しいデメリットがあります。業績不振や不祥事によって株価が下がり、購入時の株価よりも下がってしまうと、損失が生じてしまいます。
資産運用のおすすめポートフォリオ
多くの投資商品を紹介してきましたが、気になる商品はありましたか?「種類が多すぎて、どれに投資すれば良いのか、ますますわからなくなってしまった」という方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、この章では運用資金別に、コアサテライト戦略に基づいたおすすめのポートフォリオを紹介します。コアサテライト戦略とは、低リスクから中リスクの商品をコアに据え、中リスクから高リスクの商品をサテライトとしてトッピングする投資戦略です。
コアサテライト戦略には、運用資産の大部分を占める商品のリスクが比較的低いので、大損するリスクを下げられるメリットがあります。リスクが低いので利回りも低くなりますが、中リスクから高リスクの商品を少し加えることで、利回りを少し引き上げることができます。
ここからは、コアサテライト戦略に基づき、おすすめの商品とそれぞれの投資割合を紹介していきます。ご自身の余剰資金の金額に応じた箇所をご参考ください。
運用資金:10万円~100万円
まとまったお金を3種類に分けたら、余剰資金が10万円~100万円だったという方には、投資信託と株式での運用がおすすめです。
投資信託 | 8割 |
---|---|
株式投資 | 2割 |
投資信託は比較的リスクの低い商品なので、運用のコアとして8割程度投資します。利回りが1%から3%ほどと低めですが、3%から5%程度の利回りが期待できる株式を2割程度トッピングすると、利回りを少し引き上げることができます。
株式の最低投資額は、銘柄によって異なりますが、10万円から20万円の銘柄が多いです。数万円で購入できる銘柄もあるので、余剰資金の2割程度の資金で購入できる銘柄を探し、保有したい銘柄があるか検討してみましょう。
投資信託は100円から購入できます。株式を購入したあと、残っている資金で買い付けを行うと良いでしょう。投資信託にもさまざまな種類があるので、複数の銘柄に分散投資するのがおすすめです。
運用資金:100万円~1,000万円
まとまったお金を3種類に分けたら、余剰資金が100万円~1,000万円だったという方には、ETF、REIT、株式での運用がおすすめです。
ETF | 5割 |
---|---|
REIT | 2割 |
株式投資 | 3割 |
国内で取引できるETFはインデックス型なので、市場平均と同程度のパフォーマンスを出す低リスクの商品です。銘柄によって1口あたりの価格は異なりますが、数万円で購入できる銘柄が多いので、100万円~1,000万円の資金がある方なら、問題なく5割程度の買い付けができるでしょう。
ETFだけだと利回りが2%から4%ほどと低めなので、もう少しリスクを取った商品を加え、利回りを引き上げていきます。REITはミドルリスク・ミドルリターンで、高リスクというほどでもないのに、年率4%から6%ほどと利回りが高く、コアとサテライトの中間のような役割を果たします。
もう少し利回りを引き上げたい人は、株式をトッピングするのがおすすめです。株式の配当利回りは3%から5%ほどですが、この数値に値上がりによる利益は含まれません。大きく値上がりすれば利益も大きくなるので、サテライトとして株式をトッピングすると、高利回りを狙うことができます。
運用資金:1,000万円~
まとまったお金を3種類に分けたら、余剰資金が1,000万円以上あるという方には、ETF、ヘッジファンド、不動産投資での運用がおすすめです。
ETF | 2割 |
---|---|
不動産投資 | 3割 |
ヘッジファンド | 5割 |
このポートフォリオは、一般的なコアサテライト戦略のポートフォリオと比べると、変則的な組み合わせになっています。低リスクのETFと、中程度のリスクである不動産投資とヘッジファンドで構成しているからです。コアとなる低~中リスクの商品のみであり、高リスク商品は特に含めていません。
理由としては、ヘッジファンドの期待利回りが5%から20%、不動産の期待利回りが5パーセントから10%ほどと高めだからです。わざわざ高リスク商品を含めなくても、高い利回りが期待できるのです。
ヘッジファンドの最低投資額は1,000万円、不動産は物件や投資スタイルによって異なりますが、数百万円程度が目安の最低投資額となります。まとまったお金を必要とするこれらの投資は、資金力がある人向きである反面、中程度のリスクで高い利回りを狙えるメリットがあります。
まとめ
まとまったお金をどうするのが良いのか、貯金と運用の方法について解説してきました。
まず、まとまったお金は生活防衛資金、使い道が決まっているお金、余剰資金の3つに分けます。生活防衛資金と使い道が決まっているお金は元本保証の商品を活用し、大切に取っておきましょう。
運用して良いのは、余剰資金です。予算の範囲で自分に合った商品を購入し、投資でお金を増やすことにも挑戦してみてください。