PCFRという株式指標を知っていますか?PERやPBRほどよく知られてはいないので、あまり聞いたことがないという人も少なくないかもしれません。
このPCFRは、株価が割安かを判断する際にPERやPBRを補う指標として、最近注目を集めてきています。
ここでは、PCFRの意味や計算方法だけでなく、なぜPERやPBRだけでは足りないのか、投資にどのように使えばいいのかを解説します。
これを参考に、一歩進んだ割安株投資にチャレンジしてみてください。
1、PCFRとは?
PCFRは、株価キャッシュフロー倍率(Price Cash Flow Ratio)のことを言います。
株価が一株あたりのキャッシュフローの何倍かを表しており、株価が割高か割安かを測る指標の一つです。
2、PCFRを計算してみよう
では、具体的にPCFRを計算してみましょう。PCFRの計算式は以下です。
PCFR=株価÷1株あたりのキャッシュフロー※
※1株あたりのキャッシュフロー=営業キャッシュフロー÷発行済株式数
キャッシュフローは、簡便な方法として当期純利益+減価償却費を用いることもありますが、営業キャッシュフローを用いる方が一般的です。
では、具体的に計算してみましょう。
2018年4月20日のソニー(6758)を例にします。
- 株価 5,385円(2018年4月20日終値)
- 営業キャッシュフロー 809,262百万円(2017年3月期/連結)
- 発行済株式数 1,266,552,1491株
これを上の式に当てはめると、PCFRは、8.4倍となります。
営業キャッシュフローは決算短信や会社四季報などから、発行済株式数はYahooファイナンスなどから取得することができます。
なお、自分で計算するのが面倒な場合には、証券会社のHPなどで直接PCFRを調べることもできるので、その方が楽かもしれません。
3、PCFRを使うメリットとは?
では、このPCFRがPERやPBRを補う役割を果たす、というのはどういうことなのでしょうか。
ここでまず、PERとPBRについて簡単に見ておきましょう。
(1)最も代表的な指標、PBRとPER
PBRは、株価純資産倍率(Price Book-value Ratio)のことで、以下の式で計算されます。
PBR=株価÷1株あたり純資産(BPS)
※BPS=株主資本÷発行済株式数
PBRは、株価が一株あたり純資産の何倍かを表しており、資産面から株価が割安かを判断する指標です。
一般的には1倍が目安とされており、数値が大きいほど割高、小さいほど割安だと考えられています。
PERは、株価収益率(price earnings ratio)のことで、以下の式で計算されます。
PER=株価÷1株あたり当期利益(EPS)
※EPS=当期純利益÷発行済株式数
PERは、株価が一株あたり利益の何倍かを表しており、収益面から株価が割安かを判断する指標です。
PERの数値が大きいほどその銘柄の株価は割高で、小さいほど割安とされます。
(2)PERを補完する
PCFRは、営業キャッシュフローを用いることからわかるように、収益面から株価が割安かを判断する指標です。
では、PERとの違いはどこなのでしょうか。
PERの計算式は、あくまでも利益を基準にしています。
ここで見落としてしまうのは、売上が好調でキャッシュフローを積極的に設備投資にまわしている企業です。
こういった企業は、設備投資をする分利益が少なくなりますが、決して業績が悪いわけではありません。
むしろ今後の成長が見えるために積極的に設備投資をしていることが多く、将来にわたって好業績が続く可能性が高いと考えられます。
利益だけを重視するとこういった企業を見落としてしまうので、それを補う指標としてPCFRが注目されているのです。
(3)企業間比較がしやすくなる
また、PCFRはキャッシュフローで算出されるため、減価償却法の異なる企業の比較ができるというメリットもあります。
利益は減価償却費が差し引かれた後の数値なので、減価償却法が異なっている企業同士の比較がしにくいですが、キャッシュフローの場合は差し引かれていないので、比較がしやすくなります。
このように、異なる会計制度の影響を受けにくいことから、企業の国際比較も用いられることが多い指標です。
4、PCFRの目安はどれぐらい?
PCFRはPERと同様、これ以上であれば割高、というような明確な数値基準はありません。
市場平均やその会社の過去の数値、同業他社などとの比較で割高か割安かを判断します。
だいたい5〜15倍程度がおおよその目安とされるようですが、設備投資の大きい電力会社や自動車など、減価償却費は業種によって異なる傾向があるため、あまり数値基準にとらわれない方がいいでしょう。
5、PCFRを使うときに注意しておきたいこと
このように、PCFRは割安株を探すのに役立つ便利な指標ですが、使う上でいくつか注意しておきたいことがあります。
(1)PERと併用で使う
PCFRがあればPERは不要かといえば、そんなことはありません。
PCFRはPERを補完する指標であり、併用することが望ましいです。
PERは利益、PCFRはキャッシュフローと似て非なるものです。
PERが低く出ていてもPCFRは高い場合や、またその逆の場合もありえます。
慎重に銘柄を選定するのであれば、必ず両方をチェックするようにしましょう。
(2)低PCFRが割安、好業績とは限らない
低PCFR銘柄は、その会社のキャッシュフローに対して株価が安いということになりますが、それだけで必ずしも投資に適しているというわけではありません。
現時点ではそこそこのキャッシュフローがあり、積極的に設備投資をしていても、その設備投資が必ずしも好業績に結びつくとは限らないからです。
実際に投資に適しているかは、その設備投資が無理のないもので、かつ将来性のあるものであるか、よく吟味してからにしましょう。
6、PCFRをスクリーニングする
それでは、実際にPCFRのスクリーニングはどうすればよいでしょうか。
PCFRの計算式は先に述べたとおりですが、実際に自分で数値を調べて計算するのは少し手間です。
特に、PCFRはその会社だけでなく同業他社などとの比較も大事なので、その都度自分で計算するのは大変です。
そこで、証券会社などのスクリーニング機能を利用することをおすすめします。
PCFRは、PERほどよく知られた一般的な指標ではないので、計算されていない場合もありますが、以下の証券会社ではPCFRを用いたスクリーニングをすることができます。
口座開設している証券会社があれば、ぜひスクリーニング機能を利用してみてください。
もし口座開設していない場合でも、口座開設さえすれば利用することができるので、口座開設して使ってみましょう。
(1)楽天証券
楽天証券のスクリーニング機能は、「スーパースクリーナー」です。
PCFRはもちろんのこと、スクリーニングできる項目が多く、他社と比較して最も機能性の高いスクリーニングツールと言っても良いでしょう。
使い方について解説した動画もあり、PC版だけでなくモバイルにも対応しています。
「スーパースクリーナー」についてはこちら
(2)マネックス証券
マネックス証券のスクリーニング機能は、楽天証券ほどの機能はありませんが、初心者にとっては見やすくシンプルなものです。
もちろんPCFRのスクリーニングもできます。
最大5項目まで検索項目を選ぶことができるようになっています。
スクリーニング機能の使い方はこちら
(3)カブドットコム証券
カブドットコム証券のスクリーニング機能もPCFRを用いて行う事ができます。
スクリーニング機能の使い方はこちら
(4)KabuTool 日本株ランキング
スクリーニング機能の使い方はこちら
自分にとって使いやすいスクリーニング機能を、ぜひ見つけてみてください。
7、割安株投資をしてみよう
割安株投資は一番よく知られている投資手法なので、さまざまな方法がありますが、PCFRを用いるのであれば、PBR、PERと合わせてそれぞれの条件を決め、スクリーニングをかけて銘柄を選ぶやり方がわかりやすいでしょう。
例えば、PBRは1倍未満、PERとPCFRを同業他社と比較して業種平均未満とするというような条件も考えられます。
なお、PBRとPERは東証から毎月業種平均値が発表されていますが、PCFRについては発表されていません。
口座開設した証券会社のスクリーニング機能などを活用して算出してみてください。
また、実際に投資するのであれば、この3つの条件以外に利益(黒字であること)や自己資本比率などについても確認しておく必要がありますが、スクリーニング機能を使うのであれば、そういった条件も加えて銘柄を絞り込むことができます。
自分のこだわりたい項目や条件を加えて、銘柄を探してみましょう。
まとめ
いかがでしたか。
PCFRは、最近注目を集め始めたとはいえ、まだそれほどよく知られた指標ではありません。
しかし、PCFRを用いることによって見落とされていた有望な銘柄が拾えることはご理解いただけたかと思います。
株式投資に用いる指標は多ければ多いほど良い、というわけではありませんが、割安株に投資することを目的とするのであれば、PERを補う役割を果たすPCFRは見逃せない重要な指標です。
PCFRを用いて、ぜひ一歩進んだ割安株投資に挑戦してみてください。