2018年の株式市場は乱高下する不安定な相場となり、好調が続いていた多くの投資信託でも、基準価額が大幅に下落するなど、運用成績の悪化が目立ちました。
先行きの不透明な状況が続く中では、保有している投資信託を売ったほうがいいのではという迷いも出てきます。
ただ投資信託は長期保有を前提につくられた商品が多く、売り時の判断がなかなか難しい商品でもあります。
この記事では投資信託の売り時はいつなのか、そして投資信託への投資で失敗しないためのポイントについて解説していきます。
(出所:基準価額推移 ひふみ投信)
1、投資信託の売り時は?
(1)長期的な値上がりが期待できなくなったとき
投資対象の価格が値上がりしていくと期待して投資信託を購入した場合、その前提であった値上がり期待がなくなった(低下した)ときが売り時となります。
たとえ現時点では値下がりしていないとしても、今後の値上がり期待が薄いのであれば、持ち続ける理由はありません。
逆に基準価格が一時的に値下がりしたとしても、前提に変化がないのであれば売る必要はありません。
(2)より魅力的な投資先が見つかり資金が必要となったとき
保有している投資信託自体に変化はない場合でも、相対的により値上がり期待が高い魅力的な投資先が見つかり、それに投資するためには、何かを売って資金を調達しなければならない。このような場合も、投資信託の売り時と言えます。
ただし、それ以外の資金調達方法についても検討し、投資信託を売却するのがベストなのか、また売却時のコストなども考慮して判断する必要があります。
(3)投資の目的を達成したとき
子どもの教育資金や老後資金など投資の目的や目標額を定めている場合、その目的・目標額を達成できたのであれば、投資信託を売却して利益を確定させましょう。
資金が必要となるタイミングまで時間があれば、もう少し利益を伸ばしたいという気持ちもわかります。
しかし、投資信託の価格は変動しているため、資金が必要となるタイミングで値下がりしているリスクを考えると、やはり売却して必要な資金を確保しておくべきと言えるでしょう。
その際には一度にすべてを売却してしまうのではなく、利益の一部を確定、あるいはよりリスクの低い商品に切り替えながら、段階的に売却していくなど柔軟な対応も大切です。
(4)許容できる範囲を超えて下落したとき
投資信託の運用においては、投資対象の値下がりなどは当然想定されます。
アクティブファンドであれば、投資対象の価格変動に対して、ポートフォリオの調整などの対応まで含まれており、投資家はそのコストを支払って、運用を任せている商品です。そのため、投資信託の基準価額が多少値下がりしたからといって、すぐに見切りをつける必要はありません。
とはいえ基準価格が許容できる範囲を超えて下落してしまった場合には、リスクをとり過ぎている、あるいはファンドの運用がうまくいっていないなどの理由が考えられるため、損失がそれ以上拡大する前に売却を検討すべきと言えます。
(5)ポートフォリオ運用における投資比率の調整
資産クラスごとに投資比率を決めて分散投資を行うポートフォリオ運用では、投資した資産の価格が変動するため、1年に1回程度、定期的に保有比率を当初の投資比率に調整するアセットアロケーションが必要となります。
複数の投資信託を利用してポートフォリオ運用を行う場合には、値上がりして保有比率の大きくなったファンドを売り、値下がりして保有比率の小さくなったファンドを買い増すことで調整を行うため、このタイミングで値上がりしたファンドは一部を売ることになります。
2、投資信託の売り時を失敗しないためのポイント
(1)テーマ型投資信託は極力避ける
AIなど世間での注目度が高い分野、あるいは成長著しい国などのテーマを設定し、そのテーマに関連した銘柄などを投資対象とする投資信託を「テーマ型投資信託」と言います。
テーマ型投資信託は話題性があって魅力もわかりやすく、個人投資家にもウケの良い商品です。しかし、その運用成績は振るわないものが多く、運用開始当初は好調でも、すぐにピークを迎え、そこから基準価額がズルズルと下がり続ける商品が後を絶ちません。
その原因は、そのテーマに注目が集まり、運用会社が売れると判断してからテーマ型投資信託がつくられ、発売されるためです。
そのためテーマ型投資信託が実際に販売される頃には、関連する企業の株価はすでに高騰してしまっていて、割高な銘柄を多く組み入れることになるテーマ型投資信託の運用成績はなかなか伸びないのです。
テーマとなっている分野の成長と関連企業の株価上昇は別物です。
その分野が成長を続けるとしても、関連する企業の株価には将来の成長まで織り込まれていることも多く、株価がその後も上がり続ける保証はないのです。
好調な運用成果をあげるファンドも中にはありますが、上記のような事情を考えるとテーマ型投資信託は避けるのが賢明と言えます。
(2)値下がりしてもすぐには売らない
投資信託の基準価額が下がると不安になって売ってしまいたくなるかもしれません。
しかし、長期的な運用を考えているのであれば、すぐに売ってしまうのは得策とは言えません。
長期的にみて値上がりが見込めるのであれば、一時的な値下がりは買い増しを行うチャンスとなります。
なぜ下落しているのか、その原因を見極めた上で判断することが大切です。
判断が難しい場合には、一度に売却するのではなく、様子を見ながら段階的に売却し、リスクを軽減するのもひとつの方法です。
3、投資信託売却!次の投資に迷ったときの投資先は?
(1)鎌倉投信
鎌倉投信は2008年、鎌田恭幸氏が外資系金融機関で共に働いていた仲間4人と設立した独立系の投資会社です。
バークレイズ・グローバル・インベスターズなどで20年近く資産運用のプロとしてのキャリアを築いていた鎌田氏は、利益志向が強く、投資先の最終利益にしか興味を持たない金融業界の在り方に疑問を感じ、それまで培ってきた投資スキルを「社会の持続的発展に貢献する」ために活かそうと同社を創業しました。
鎌倉投信で運用しているのは、2010年3月に設定された『結い2101(ゆい にいいちぜろいち)』のみであり、証券会社を介さず投資家へ直接販売しています。
「2101」には2101年という次なる世紀に向けて、”人と人””世代と世代”を”結ぶ”豊かな社会を、共に創造したいという想いが込められています。
「人材を生かせる会社(人)」「循環型社会を創造する会社(共生)」「匠(たくみ)の技術・感動的なサービスを提供する会社」という3つを銘柄選択の柱に投資しています。
(2)ファイブスター投信
ファイブスター投信は、2009年設立されたヘッジファンド型の投資会社です。
ファンドの愛称は、とにかくユニークなものが多く、ゼニガメ・ウミガメ・ミノガメなど投資がより身近に感じることができる投資会社です。
ヘッジファンド投資を採用し、オルタナティブ投資に特化し、絶対収益の追求を目指す、プロの戦略に期待ができそうです。
(3)ひふみ投信
ひふみ投信は、藤野英人氏率いるレオス・キャピタルワークス株式会社が、直接投資信託を販売する直販型投資信託です。鎌倉投信と同様に証券会社を介さず投資家へ直接投資信託を販売しています。
「ためて、ふやして、進化する」というキャッチフレーズを掲げ、顧客に寄り添い、応援するといった想いが込められており、身近なイメージが持たれています。
ひふみ投信は、「主に日本の成長企業を投資先とする、守りながらふやす運用、顔が見える運用」という3つの特徴があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
投資信託は一般的には長期保有が基本の商品です。
頻繁に売買するようなものではなく、値下がりしたからといってすぐに売るべきではありません。
ただし、それは長期的にみて値上がりする見込みがあることが前提です。
もしその前提が崩れたのであれば、値下がりしているかに関わらず売却を検討すべきと言えます。
ただ基準価額が大きく下がって初めて売却を検討するというのは避けたいところです。
そうならないためには、保有する商品の運用状況について日頃からしっかり把握しておくことが大切になります。