年収1,000万円になると税金はどれくらいになるか、知っていますか?
年収が多くなればなるほど、税負担は大きくなってしまいます。したがって、年収は増えても、手取り額がそれほど増えないと感じることはよくあることでしょう。
しかし、税金対策により税金負担を軽減することで、手取り額を増やすことができます。税金対策は、基本的に自動的には適応されるものではないため、対策を知って行動しなければ、ただ税金として重くのしかかるだけです。
では、どんな税金対策ができるのでしょうか?
この記事では、
- 税金対策なしの年収1,000万円の手取り額
- 誰もが取り入れたい7つの税金対策
- 特定の場合に適応できる6つの税金対策
について解説します。
税金対策を理解し、少しでも手取り額を増やしましょう。
通常の年収1000万円の手取りはいくら?
手取りとは、年収から税金や社会保険料を引いて、実際に手元に入ってくる金額のことを言います。
年収1,000万円の人には税金や社会保険料がいくらかかり、最終的に手取りがいくらになってしまうのか前後の年収も含めて確認していきましょう。
年収1000万円前後の手取りを比較
年収800万円、1,000万円、1,200万円では手取りはいくらになるのかそれぞれ計算します。
年収から引かれる税金の控除額は、家族構成などによって控除額が変わってきます。また、社会保険の内容は、自営業かサラリーマンかによっても変わるため、同じ年収でも手取り額は人によって様々です。
社会保険料を年収の15%と仮定し、年収から算出した手取り額の概算値を以下の表に示します。
年収800万円の手取り | 年収1,000万円の手取り | 年収1,200万円の手取り | |
---|---|---|---|
片働き | 約590万円 | 約710万円 | 約827万円 |
共働き (年収の半分ずつ) | 約629万円 | 約776万円 | 約920万円 |
年収が多いほどかかる税金等の割合が大きくなります。したがって、年収が大きいほど年収に対する手取りの額が小さくなります。
以下では、さらに具体的にかかる税金とその計算方法について一つずつ確認していきましょう。
かかる税金の種類と計算式
年収から引かれる税金は大きく分けて、以下の3つです。
- 所得税
- 住民税
- 社会保険料
これら3つを年収から引いた金額が、手取りとなります。
所得税
年収の違いに応じた所得税額の違いを算出します。また、1人で稼いだ場合と共働きで半分ずつの収入であった場合、どの程度の違いがあるのでしょうか?
ここで考慮する所得控除は、「基礎控除」と「給与所得控除」、「社会保険料控除」のみとして算出します。基礎控除は48万円、給与所得控除は以下の表から収入に応じた額、社会保険料控除は年収の15%と仮定します。
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円から1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
まず、年収から控除額を引き、課税所得金額を求めます。計算式は以下の通りです。
課税所得= 年収額面 -(基礎控除+給与所得控除+社会保険料控除)
上記に当てはまると、片働き年収1,000万円の課税所得金額の計算は次のようになります。
607万円= 1000万-(48万+195万+150万)
この計算を各年収別にまとめると、次の表のようになります。
年収800万円の所得税 | 年収1,000万円の所得税 | 年収1,200万円の所得税 | |
---|---|---|---|
片働き | 442万円 | 607万円 | 777万円 |
共働き (年収半分ずつ) | 336万円 | 466万円 | 596万円 |
続いて、課税所得金額に該当の所得税率をかけて所得税を求めます。
所得税においては「累進課税制度」が採用されており、所得が多いほど税率が高くなります。したがって、年収が2倍になったからといって手取りが2倍ほど増えない仕組みです。所得税の速算表は以下になります。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
上記の早見表をもとに年収1000万の片働きの税額を計算すると、次のようになります。
所得税額= 課税所得× 税率-控除額
↓
786,500円= 607万×20%-427500
これらの計算を行った場合の、片働きと共働きの場合の各年収による所得税額を以下の表に示します。
年収800万円の所得税 | 年収1,000万円の所得税 | 年収1,200万円の所得税 | |
---|---|---|---|
片働き | 約46万円 | 約79万円 | 約115万円 |
共働き (年収半分ずつ) | 約17万円 | 約27万円 | 約40万円 |
住民税
住民税は、課税所得額に応じて金額が決まる「所得割」と一律で割り当てられている「均等割」があります。均等割はそこまで金額が大きいものではないので、ここでは割愛します。
所得割は、課税所得に対して10%かかります。各年収の住民税額を算出すると、以下の表の通りです。
年収800万円の住民税 | 年収1,000万円の住民税 | 年収1,200万円の住民税 | |
---|---|---|---|
片働き | 約44万円 | 約61万円 | 約78万円 |
共働き (年収半分ずつ) | 約34万円 | 約47万円 | 約60万円 |
住民税は、累進課税制度である所得税ほどは年収による差が小さいことがわかります。
社会保険料
社会保険料の金額と種類は人によって様々です。年収によっても変わりますが、他にも年齢や会社員かどうかによっても保険料の負担割合が変わります。会社員と事業主との社会保険の違いを以下の表にまとめます。
社会保険 | 会社員 | 自営業 |
---|---|---|
医療保険 | 健康保険組合 (会社と折半) | 国民健康保険 (全額自己負担) |
年金保険 | 厚生年金 (会社と折半) | 国民年金 (全額自己負担) |
介護保険 | 40歳以上で加入 (会社と折半) | 40歳以上で加入 (全額自己負担) |
雇用保険 | 雇用保険 (自己負担) | ― |
労災保険 | 労災保険 (会社が負担) | ― |
大まかに把握する場合は、会社員の場合は給与の15%程度が目安となります。
まずは取り入れたい7つの税金対策
上記までの計算により、年収が大きくなっても税金によって、手取りはそれほど多くならないことがわかります。
ただし、税金額は「控除額」を最大限活用することによって減らすことが可能です。
ここからは7つの控除を利用した税金対策を具体的にご紹介します。
- 配偶者控除&扶養控除
- 保険料控除
- 住宅ローン控除
- 医療費控除
- 特定支出控除
- つみたてNISAやiDeCo(イデコ)
- ふるさと納税
配偶者控除&扶養控除
配偶者控除は、配偶者を養うにあたって税負担が軽減される制度です。
所得額に応じて控除額が決定します。なお、納税者本人の所得金額が1,000万円以下でないと適応できません。
また、扶養控除は、配偶者以外の親族を扶養するにあたって税負担が軽減される制度です。扶養控除の場合は所得金額が1,000万円以上でも適応できます。
例えば、家族構成が「自分(40歳)、妻(40歳)、長男(19歳)、長女(16歳)」であり、所得が1,000万円であったと仮定します。
この場合の配偶者控除は13万円になり、扶養控除は、長男が特定扶養親族で63万円、長女が一般の控除対象扶養親族で38万円が適応されます。
したがって、配偶者控除と扶養控除により、所得金額から114万円が控除されます。
生命保険料控除
生命保険料控除は、納税者が加入している保険に支払った金額の一定額において所得控除を受けることができる制度です。
控除の対象となる保険は以下の3種類に分類されます。
- 一般の生命保険料控除
- 介護医療保険料控除
- 個人年金保険料控除
平成24年から新しく介護医療保険料控除が追加され、それぞれの控除額も変わりました。現在では、それぞれの最大控除額が4万円なので、合計12万円までの控除が可能です。
支払保険料が年間で8万円以上であれば保険料控除額はそれぞれの上限である4万円になります。
例えば、個人年金保険で毎月1万円の保険料を払っていれば、個人年金保険料控除は上限の4万円です。
医療費控除
医療費控除は、自己または、生計を一にする配偶者や親族に支払った医療費の一定額において所得控除を受けることができる制度です。
医療費控除の金額は以下の式で算出されます。
医療費控除の金額=実際に支払った医療費―保険金―10万円
例えば、けがで入院したことにより医療費が80万円かかったとします。また、保険契約による入院の給付金で50万円もらえたとします。この場合、医療費控除の金額は20万円です。
そもそも医療費の支払いが10万円未満であった場合や保険により全額補てんされた場合は医療費控除が適応できません。
特定支出控除
会社の業務を自腹で清算した費用に関して、一定の条件を満たす場合に所得控除を受けることができる制度です。
認められる費用は以下の7種類です。
- 通勤費
- 職務上の旅費
- 転居費
- 研修費
- 資格取得費
- 帰宅旅費
- 勤務必要経費
いずれも自己申告だけでなく、会社から支払いの証明書を出してもらわなくてはなりません。また、給与所得控除額の1/2以上の支出がなければ適応できません。
例えば、年収1,000万円の場合、給与所得控除額は約200万円になるので、100万円以上の支出証明ができなくては適応できないことになります。
住宅ローン控除
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマイホームを取得した人が、住宅ローンの残高に応じて所得税から控除を受けられる制度です。
上記までの所得に対する控除とは違い、住宅ローン控除は税額から控除されます。控除額は年末残高の1%です。
例えば、5,000万円の住宅を購入し、その年末の住宅ローンの残高が4,000万円だったとします。この場合、住宅ローン控除額は40万円となり、所得税から控除するので、税金がそのまま40万円安くなることになります。
控除期間は基本的には10年間ですが、消費税増税の関係上、ある一定期間に住宅を購入した場合は13年間適応されます。
ふるさと納税
ふるさと納税は、日本全国の好きな自治体への納税(寄付)により、税金の控除が受けられる制度です。
納税者は寄付した額に応じた返礼品をもらうことができます。
自己負担は2,000円でそれ以上の寄付額が所得税や住民税の控除対象となります。控除の上限額は収入や家族構成によっても変化します。
例えば、年収1,000万円で独身の人は、控除の上限額が約18万円です。したがって、18万円分のふるさと納税を行うことで、自己負担である2,000円を除いた全額が所得税及び住民税から控除され、実質2,000円で返戻品を受け取ることができます。
つみたてNISAやiDeCo(イデコ)
つみたてNISAとiDeCo(イデコ)は、長期的な資産形成が節税を行いながらできる制度です。
つみたてNISAでは、毎年40万円までの積立投資が可能で、最長20年間の運用益が非課税になります。通常では、運用益に約20%の税金がとられますが、つみたてNISAでは運用益をそのまま受け取ることができます。
また、iDeCoでは、つみたてNISAと同様に、運用益が非課税になります。
さらに、毎月の掛金全額が所得から控除され、受け取る時は公的年金等控除や退職所得控除を受けることができます。
節税という観点では非常に優位なiDeCoですが、60歳になるまで引き出すことができないという制限があるので注意が必要です。
特定の場合で使える6つの税金対策
前項ではだれでも取り入れやすい税金対策について解説しました。手取りを増やすためにも、可能な限り活用することをおすすめします。
ここからは、特定の事情がある場合に使える6つの税金対策を具体的にご紹介します。
- 雑損控除
- ひとり親控除または寡婦控除
- 損益通算
- 繰越控除
- 小規模企業共済
- 中小企業倒産防止共済
災害や盗難にあった場合
災害や盗難などで資産に損害を受けた時、損失の分の一定額について所得控除を受けることができます。これを「雑損控除」と言います。
損害の原因は以下のものに限られます。
- 自然現象の異変による災害
- 人為的による異常な災害
- 害虫などの生物による異常な災害
- 盗難や横領
例えば、台風や地震などの災害によって、自宅が損害を受けた場合には、雑損控除を適応できます。ただし、保険金によって補てんされた場合には、保険金の分は損害額から控除されます。
配偶者との離婚や死別の場合
配偶者との離婚や死別した場合、条件に応じて所得控除を受けることができます。この制度には「ひとり親控除」と「寡婦控除」があります。どちらも配偶者との別れによる生活難を支援するための制度であることは同じですが、適応条件や控除額の違いがあります。以下の表に違いをまとめます。
ひとり親控除 | 寡婦控除 | |
---|---|---|
控除額 | 所得控除35万円 | 所得控除27万円 |
扶養条件 | 所得48万円以下の生計を一にする子がいること | 扶養親族(子、親、祖父母、孫)がいること |
控除者の性別 | 男女両方 | 女性のみ |
この2つの制度は併用できないため、まずは控除額が大きいひとり親控除が適応できるか検討するのが良いでしょう。
株取引で損失が出た場合
上場株式の株取引で損失が発生した場合には、その年の利益と損失を相殺できる「損益通算」もしくは、損失を3年間繰り越して利益と相殺できる「繰越控除」を適応することができます。
例えば、株式の売却で100万円の損失と配当による10万円の利益があったとします。本来、配当所得10万円には約20%の税金がかかりますが、株取引の損失と通算することで税金の還付を受けることができます。また、翌年以降の3年間に発生する利益とも相殺することができます。
複数口座間での損益通算や繰越控除を利用する場合には確定申告が必要です。
個人事業主の場合
個人事業主の場合には、小規模企業共済や中小企業倒産防止共済への加入により、節税対策をすることができます。
小規模企業共済とは、個人事業主を対象にした退職金制度です。掛金の上限月額が7万円であり、もし毎月7万円を支払っていれば、年間84万円の全額が所得控除になります。
また、中小企業倒産防止共済は、取引先が倒産した際に、連鎖倒産を防ぐ目的で、掛金に応じた借入ができる制度です。
掛金は経費に算入でき、所得を小さくできるため、節税効果があります。
さらに、個人事業主は法人化することにより、節税効果が得られる場合があります。個人事業主と法人では事業所得の算出方法が異なりますので、法人化することで節税の選択肢も広がります。
まとめ:13種類の税金対策を駆使して手取りを増やそう
この記事では、年収1,000万円の手取り額や13種類の税金対策について具体例を交えて解説しました。
- 一般的な手取りは年収の75~85%
- 所得税は年収が多いほど、多くかかる
- まずは使用しやすい7つ税金対策を取り入れよう
- 特定の場合に使用できる6つの税金対策を把握しよう
年収1,000万になったら、節税方法を学んでおくことは、これからの人生で大きく役立つことでしょう。
ただ、仕事でも責任あるポジションについている方も多くなってくるので、節税できても使う暇がないという方も少なくありません。
そんな方は、ただ銀行にお金を預けておくだけではもったいない機会損失をしている可能性もあります。
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