親子上場「ソフトバンク」の初値と親子上場で儲ける3つのポイント

  • 2019年4月8日
  • 2021年10月15日

ソフトバンクグループ(9984)が通信事業会社を上場させるというニュースで注目を集めている親子上場ですが、親子上場にはさまざまな問題も指摘されています。

この記事では、親子上場はどのようなものなのか、そして投資家が親子上場を利用して儲けるためにはどうすれば良いのかを解説していきます。

1、平成最後の大型IPO「ソフトバンク」親子上場のその後

(1)初値1463円

2018年12月19日にソフトバンクグループの通信子会社ソフトバンクが、公開価格1,500円で上場しました。

売り出し価格決定の時点で、高すぎと言われていただけに、注目が集まりました。

上場初日は、1,463円で初値をつけ、その後も下落し、終値は1,282円となり新規公株を購入した株主全員が上場の初日から含み損という事態に陥りました。

(2)上場直前に沸いた不安材料

どうしてそんなに人気が出なかったのでしょうか。

①サウジのムハンマド皇太子の噂

上場直前10月に、在トルコ・サウジアラビア領事館での記者殺害事件で、ムハンマド皇太子の名前があがりました。

孫社長率いるソフトバンクグループは2017年、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」をムハンマド皇太子と立ち上げており、総額980億ドル(約10兆円)とされるファンドにサウジマネーを忌避する投資家が多かったもようです。

②2019年以降の携帯値下げ競争

2018年8月の菅官房長官が「携帯電話料金は今より4割程度下げられる」という発言により、各社値下げ合戦が始まり、収益の悪化が懸念されています。

③上場直前12月6日の大規模障害

ソフトバンクの大規模障害は記憶に新しいところです。携帯電話が使えないと待ち合わせすらできない不便さを思い知らされた方も多かったと思います。

発生後5日間で約1万件の解約があり、上場延期ではないかと心配する声もありました。

④ファーウェイ問題

ファーウェイの副会長兼最高責任財務責任者(CFO)が対イラン制裁違反で逮捕されました。

政府は、ファーウェイと中の通信端末大手ZTEの排除を決定しました。

以前より5G無線通信網の構築に関してファーウェイと関係を結んでいたソフトバンクグループは、「政府の方針に準拠する」とコメントをしています。

ご紹介した4つの事件が上場直前に発生したことも株価下落の要因と思われます。

2、親子上場のメリット・デメリット

(1)親子上場とは

親子上場とは、親会社と子会社のそれぞれが証券取引所に上場して株式を公開している状態のことを言います。

親会社とは、原則ある会社(子会社)の発行株式の過半数以上を保有する会社であり、子会社の経営には親会社の意向が働くことが一般的です。

欧米にはほとんど見られない親子上場ですが、日本ではNTT(9432・親会社)とNTTドコモ(9437・子会社)、トヨタ自動車(7203・親会社)と日野自動車(7205・子会社)など、どちらも日経225銘柄として採用されているような、日本を代表する企業同士が親子上場であるケースも少なくありません。

通信事業会社ソフトバンクの上場を計画しているソフトバンクグループ(9984)も、すでに子会社のヤフー(4689)と親子上場の状態にあり、今回の上場が実現すれば親子会社3社とも日経225銘柄に採用される可能性も高いとみられます。

(2)親子上場メリット

親会社にとってのメリット

子会社株式を市場で売却することにより、大規模な資金調達が可能です。

親子会社がそれぞれの事業分野で独自に成長を模索することで、企業グループ全体の価値の最大化が期待できます。

子会社の独立により負担低減効果

多角経営企業の株価が相対的に低く評価される、コングロマリット・ディスカウントの低減効果があります。

子会社にとってのメリット

  • 独立性が高まり、経営の自由度が増す
  • 従業員のモチベーションの向上

投資家にとってのメリット

  • IPOによる収益機会の獲得
  • 多角経営企業の事業分化により投資対象としての事業が明確となる

(3)親子上場デメリット

親会社にとってのデメリット

  • 子会社に対する影響力・支配力が低下
  • 子会社の独立に伴い、より詳細な情報開示が必要
  • 子会社利益の外部流出

子会社にとってのデメリット

  • 親会社から独立して事業を行うことによる、営業力の低下や管理コストの増加
  • 親会社の影響力は残り、完全に自由な経営は難しい
  • 親会社の利益が優先され、子会社の利益が侵害される恐れがある

投資家にとってのデメリット

親会社の利益が優先され、子会社の少数株主の利益が侵害される恐れがある。

3、親子上場は増えている?問題点は?

(1)親子上場は外国人投資家に受け入れられにくい

親子上場にはメリットもありますが、子会社上場に対しては問題視されることも多く、特に上記の子会社にとってのデメリットであげた点については、企業統治(ガバナンス)の観点から問題が指摘されています。

特に企業における「所有」と「経営」の独立性とガバナンスが重視される欧米諸国では、親子上場に否定的であり、欧米では親子上場がほとんどみられないこともそれを示しています。

日本市場においても外国人投資家の影響が大きくなるにつれ、2006年のピーク時には400社を超えていた東証の親子上場企業は、2016年度末には270社(2017/7/6付・日本経済新聞)まで減少しました。

また中核的な子会社を上場させ親会社が利益を得ることには、新規公開による利益の二重取りではないかという問題も指摘されています。

そのため子会社上場に際しては、独立性(持株比率や実質的に親会社の一事業部門となってないか)やグループ企業内での内部管理体制整備など、特に慎重な審査が行われることになっています。

(2)減少傾向にある親子上場が再び注目される

外国人投資家に受け入れられにくい親子上場は、時代に逆行するものとして減少が続いていました。

それが最近になって再び注目され始めました。

これは株高によって子会社上場による資金調達のメリットが大きくなったことや、投資家にとって新規株式公開(IPO)が重要な投資機会として認識されるようになったことが要因と考えられます。

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4、親子上場が解消されるのはどのようなケース?株価はどう動くか?

親子上場は、親会社が上場する子会社の株式を取得し、子会社を上場廃止とすることによって解消されます。

子会社の株式を取得する方法としては、親会社が子会社の株式を買い集める「株式公開買付(TOB)」と、子会社の株主に対して親会社の株式を割り当てる「株式交換」などが用いられます。

(1)株式公開買付(TOB)

TOBによる方法では、親会社が子会社の株を買い受ける「期間」「株数」「価格」を公に提示して、証券取引所の外で子会社の株を買い集めます。

上場廃止を目的としたTOBでは、流通する子会社株式の全部を買い付ける「全部買付」が行われることが一般的です。

子会社の株価(市場価格)は、通常TOBにおける買付価格にさや寄せするように動きます。

TOBでは、プレミアムのついた市場価格よりも高い買付価格が設定されることが多く、TOBによって子会社の株価が上昇しやすくなっています。

また子会社の規模にもよりますが、親会社の株価へはそれほど影響しません。

(2)株式交換

株式交換による方法では、子会社の株主に親会社の株式を割り当てます。

株式交換は株主総会の特別決議(出席した株主の議決権の3分の2以上による賛成)があれば行うことができ、子会社株主全員から株を買い取ることができなくとも完全子会社化が可能となります。

株式交換では、子会社株1株あたり親会社株何株を割り当てるのかという「株式交換比率」が定められます。

子会社(A社)の株価が1,000円、親会社(B社)の株価が500円である場合、対等な、A社株1株に対してB社株2株が割当てられれば対等な条件であり、このときの株式交換比率は1:2となります。

もしA社株1株にB社株2株以上を割り当てる株式交換比率となれば、理論的には子会社株主にとって有利な条件となり、子会社の株価は対等な条件で釣り合う水準まで上がります。

一方子会社株主にとって不利な条件で株式交換比率が決まった場合には、子会社の株価は下がることになります。

ただ、株式交換発表直後には様々な思惑から株価の変動が大きくなりやすく、注意も必要です。

5、親子上場銘柄で儲けるための3つのポイント

最後に、親子上場銘柄で儲けるためのポイントを押さえておきましょう。

(1)親子上場前

企業価値の向上やコングロマリット・ディスカウントの低減などが見込まれる場合、親会社の株価の上昇が期待されます。

また新規上場となる子会社の株価についても、IPOが人気を集めている今、公開価格を大きく上回る可能性が高いと言えます。

(2)親子上場中

親会社と子会社が別々に上場している場合であっても、連結決算が義務付けられていることから、子会社の業績や保有資産などは親会社にも反映されることになります。

これによって親子会社間の株価には連動性が生まれますが、反映されるまでのタイムラグなどによって株価に歪みが生じる場合もあります。

通常この歪みはすぐに解消されますが、市場の注目度が思ったより低いときや、そのほかの要因が影響して歪みが放置されたままになることもあります。

この放置された歪みを見つけ投資することができれば、歪みが解消されることによる利益が期待できます。

(3)親子上場の解消時

組織再編などによって親会社が子会社を完全子会社化し、親子上場を解消するタイミングは儲けのチャンスとなります。

完全子会社化のためTOBが実施されれば、プレミアムのついた買付価格が設定されることが多いため株価の上昇が期待できますし、株式交換の場合でも株式交換比率次第では株価が上昇する要因となります。

組織再編などが期待される親子上場会社の子会社の株は、TOBなどを見据えて買われやすく、株価が上昇しやすい傾向があるため、儲けるチャンスとなります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

親子上場は利益相反などガバナンスの問題もあり、投資家にとってメリットばかりではありませんが、仕組みを理解していれば儲けるチャンスを掴むこともできます。

親子上場について正しく知り、投資に活かしていただければ幸いです。