「GAFA」とは?巨大IT企業バブルは終焉を迎えるのか?

  • 2019年1月24日
  • 2021年10月15日

Google・Apple・Facebook・Amazon

頭文字をとり「GAFA(ガーファ)」とも呼ばれる、これらの巨大IT企業は、私たちの生活を大きく変え、世界で最も影響力を持つ企業といっても過言ではありません。

米国の景気拡大局面は現時点で114ヶ月目に突入しています。

90年代に記録した過去最長記録である120ヶ月が目前に迫まる中、ここ数年の米国株の上昇を支えてきたGAFAの株価は、今年の10月以降下落が止まらない状況です。このまま景気後退局面入りを予想する声も日増しに高まっています。

GAFAバブルはこのまま終焉を迎えてしまうのでしょうか。米国や世界経済は今後どうなるのでしょうか。日本への影響は。GAFAの現状と今後の見通しについて考えてみます。

1、GAFAとは?世界を牛耳るITプラットフォーマー

GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)は、私たちの生活になくてはならないインフラのような存在です。

また他の企業の事業基盤を支える製品やサービスを提供する「プラットフォーマー」ともなっています。

企業概要
GGoogle

グーグル(アルファベット)
(GOOG)

持株会社であるアルファベット(Alphabet Inc.)が上場。米国の大手インターネット関連企業。検索サイト・グーグル「google.com」を運営するほか、検索エンジン、オンライン広告、クラウドコンピューティング、ソフトウエアなどIT関連製品とサービスを提供。携帯電話「アンドロイド」、ブラウザ「クローム」、インターネットテレビ「Google TV」等独自のOSを展開。本社はカリフォルニア州。
AApple

アップル
(AAPL)

米国のIT機器大手。メディアデバイス、PC、スマートフォン、タブレット端末などのデザイン・製造・販売に従事し、主要製品は「Mac」、「iPhone」、「iPad」、「iPod」、「Apple Watch」、「Apple TV」などの消費者製品で、「iOS」や「iCloud」、「ApplePay」なども展開する。デジタルコンテンツやアプリも販売する。
FFacebook

フェイスブック

(FB)

ソーシャルネットワーク・ウェブサイト「facebook.com」を運営。主な機能に個人や団体のページの他、チャット、ライブストリーミング「facebookライブ」、仮想通貨「facebookクレジット」がある。また、モバイル端末間でテキスト送信を行う「messenger」、写真や動画を共有できる「instagram」も提供。
AAmazon.com

(アマゾン・ドット・コム)
(AMZN)

米国最大手のオンライン小売業者。書籍、CD・DVDのほか、ゲーム、家庭用品、家電、衣料品など広範な商品販売を世界各地で運営、出品サービスと受注、梱包・発送サービスを行う。会員制「アマゾンプライム」を展開。電子書籍「キンドル」や「Fireタブレット」を取り扱う。クラウド・サービスも提供する。本社所在地はシアトル。

参考:ヤフーファイナンス

株式事象においても圧倒的な存在感を持つGAFA。2018年9月には、アップルに続きアマゾンの時価総額が1兆ドルを突破し、4社の時価総額の合計は一時3.4兆ドルに達します。

これは米国の主要500社(S&P500)の時価総額の13.2%を占め、その「占有率」は、2008年からの約10年間で5倍強にまで拡大しています。

S&P500の時価総額が3倍強上昇する間に、GAFAは10倍に上昇しており、ここ数年の米国株上昇はGAFAが牽引してきたといっても過言ではありません。

出所:日本経済新聞 2018/9/6付

またGAFAに、動画配信サービスを展開するNetflix(ネットフリックス・NFLX)を加えた5社は、各市場において圧倒的なシェアを占め、世界を牛耳る巨大IT企業として「FAANG(ファング)」と呼ばれています。

2、GAFAが抱える問題点

集取した大量のデータを成長につなげるビジネスモデルで急成長を遂げ、向かうところ敵なしにも思えたGAFAですが、今、GAFAは多くの問題に直面しています。

(1)GAFA問題点1:個人データの取り扱いに対する規制強化

2018年3月に明らかとなった、約8700万人分にも及ぶフェイスブックユーザーの個人情報流出問題(ケンブリッジ・アナリティカ問題)では、流出した個人情報が2016年のアメリカ大統領選挙でトランプ陣営に有利となるよう利用されとみられ、同社CEOのマーク・ザッカーバーグ氏が議会証言に呼ばれ、責任を追及される事態になりました。

さらに9月半ば、セキュリティ上の欠陥によって約5000万人のユーザー情報がハッキングにあった可能性があると発表しています。

またグーグルが提供するSNSサービス「Google+」において、2015年から2018年3月にかけ、50万人超の個人情報が外部からアクセスできる状態となっていたことが判明し、この件について報道された10月、グーグルはGoogle+を2019年8月末で閉鎖を発表しました。

社内ではこの情報漏洩の問題について3月時点で把握し、欠陥の修正が行われており、この件を報じたウォールストリートジャーナルは、グーグルが議会や規制当局に目をつけられ、ブランドイメージの毀損を恐れ公表を見送っていたと指摘しました。

個人データの取り扱いについては、以前から問題視されており、その対策として、ヨーロッパでは今年5月、欧州一般データ規則(GDPR)が発効されました。

これはEU加盟国に欧州3カ国を加えたEEA(欧州経済地域)域内に所在するすべての個人データに関する保護を強化する規制であり、EEA域外への個人データ持ち出しの原則禁止、事業者に個人データの削除を求めることができる権利(忘れられる権利)、他の事業者に移動することができる権利(データポータビリティー権)などが含まれます。

規則に違反すれば最高で世界売上高の4%もしくは2000万ユーロの制裁金が課される厳しい内容です。

EEA域内に拠点を持たない企業も、GAFAのようにインターネットを通じてEEA域内にサービスを展開していれば域外適用により、規制対象となります。

利用者の個人データがビジネスモデルの柱にあるGAFAへの影響は大きいと言えるでしょう。

GDPR導入に動くきっかけは、元CIS職員のエドワード・スノーデン氏により、アメリカ国家安全保障局(NSA)が各国要人の会話を傍受していることを暴露したことだと言われており、データの保護は国家の安全保障に関わる重大な問題でもあります。

日本においても、GAFAをはじめとするプラットフォーマーに対する監視や取引ルールの開示、規制や法改正に向けた議論が始まっています。

さらに最近では、中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の問題で、データ問題に関する警戒感はますます高まっており、動向には注意が必要と言えるでしょう。

このような規制やサイバーセキュリティ強化への対策のため、GAFAを含むIT企業は人材を増やし対応しています。

フェイスブックでは、この1年で従業員数が1.7倍にまで増え、コストの増加につながっています。

(2)GAFA問題点2:課税強化

GAFAをはじめとする巨大IT企業は、データという無形資産によって莫大な利益をあげてきました。

工場や店舗などの設備や多くの従業員を必要とせず、他業種に比べ極めて高い利益率によって、急成長を続けてきました。また法人税率の低い国に拠点を置き、そこで利益を計上することで節税を行っていることでも知られています。

たとえば、日本におけるネット通販市場の2強となっているアマゾンと楽天について、しんぶん赤旗は、売り上げで勝るアマゾンの法人税額が、楽天の30分の1となっており、日本での課税を逃れではないかと報じています。

2014年度売上高・法人税額
売上高法人税額
楽天5986億円331億円
アマゾン8387億円11億円
小売大手10社平均2兆0296億円329億円

*アマゾンについては、日本での売上高(2014年平均為替レートで円換算)とアマゾンジャパンおよびアマゾンジャパン・ロジスティクスの法人税の合計額(地方税を含む)を記載。

(出所:しんぶん赤旗 2018年5月14日付

アマゾンは現在日本法人としてのアマゾンジャパン合同会社を設置していますが、「物流施設のひとつであり、アマゾンが日本で直接的な事業活動を行っているわけではない」と主張しています。

2009年には、これを問題視した国税庁がアマゾンに対し約140億円の追徴課税を請求したものの、アマゾン側は反発。2010年日米税務当局間協議の末、その請求は退けられていました。

しかし2016年4月、別件の訴訟において、アマゾン側が「日本語サイトの運営主体は、日本法人のアマゾンジャパンである」と主張して敗訴し、日本法人の実体があることを自ら認めた形となり、過去に遡って追徴課税が科される可能性が出てきています。

また現在の国際課税にルールにおける、国内に店舗や工場といった恒久的な施設がない限り、外国企業の売り上げや利益には課税できないという原則です。

これについてヨーロッパでは、IT企業に対しては、利益ではなく売上高に課税する「デジタル課税」導入に向けた検討が進んでいます。

しかし低税率で企業誘致を図っているアイルランドやルクセンブルクの反対などもあり、EUでは実現には至っていませんでした。そこにきてブレグジットでEUを離脱することとなったイギリスが、いち早くデジタル課税導入に動き、2020年にも売上に2%課税する方針が示されています。

このように着々と進むGAFAへの課税強化の動きは、将来の利益を減少させる懸念材料となっています。

(3)GAFA問題点3:成長率・利益率の低下

GAFA 2018年7~9月期売上高・純利益
売上高

(前年同期比)

純利益
(前年同期比)
Google

グーグル(アルファベット)
(GOOG)

337億ドル
(21%増)
91億ドル
(36%増)
Apple

アップル
(AAPL)

629億ドル
(20%増)
141億ドル
(32%増)
*過去最高
Facebook

フェイスブック

(FB)

137億ドル
(33%増)
51億ドル
(33%増)
Amazon.com

(アマゾン・ドット・コム)
(AMZN)

565億ドル
(29%増)
28億ドル
(1126%増)*過去最高

iPhoneは世界的な販売不振による減産が伝えられており、iPhone XRは、販売開始から1ヶ月足らずで実質的な値下げが行われるなど苦戦するアップル。

個人情報流出・不正利用を受け、個人データを第三者に提供しないことをユーザーが選択できるようにしたことで広告収入の伸び悩むフェイスブック。

個人情報流出を受け、個人データ保護のための対策コスト増加が避けられないグーグル。

利益を社会や従業員へ還元していないとの批判を受け、従業員の最低時給を15ドルに引き上げたアマゾン。

 

2018年7~9月期の業績を見る限り、増収増益の好調な数字が並んでいますが、今後成長率、利益率の低下が見込まれています。

株価
(ドル)
時価総額

(億ドル)

予想
PER
業績(実績)(予想)
Google
(GOOG)
1042.10728125.23(決算期)2017/122018/122019/12
売上高

(10億ドル)

111136163
(成長率)22.80%23.12%19.32%
当期純利益

(10億ドル)

132934
(成長率)-34.99%132.46%14.29%
(利益率)11.42%21.56%20.65%
Apple
(AAPL)
165.48785312.42(決算期)2018/092019/092020/09
売上高

(10億ドル)

266278290
(成長率)15.86%4.76%4.11%
当期純利益

(10億ドル)

606263
(成長率)23.12%3.46%2.67%
(利益率)22.41%22.13%21.83%
Facebook

(FB)

144.06414019.52(決算期)2017/122018/122019/12
売上高

(10億ドル)

415569
(成長率)47.09%36.16%24.45%
当期純利益

(10億ドル)

162222
(成長率)55.95%36.32%2.47%
(利益率)39.19%39.24%32.31%
Amazon.com
(AMZN)
1591.91778481.41(決算期)2017/122018/122019/12
売上高

(10億ドル)

178232280
(成長率)30.79%30.61%20.37%
当期純利益

(10億ドル)

31014
(成長率)27.92%229.24%36.76%
(利益率)1.70%4.29%4.88%

2018年12月14日時点 出所:トムソン・ロイター/SBI証券

GAFAの株価は個人情報流出問題などを受けて7月に急落したフェイスブックのほか、9月期の決算発表を受けた成長率・利益率の鈍化懸念から、残る3社も10月以降下落が続いている状況となっています。

出所:日本経済新聞2018/11/3付

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3、GAFAの株価急落が招いた米国株式市場の下落

VIXショックや米中の貿易問題など不安定な動きが続き、今年の米国株式市場は何度も大きな急落に見舞われています。

しかし、200日移動平均線がサポートラインとなり上昇トレンドは継続してきました。

出所:SBI証券

しかし2018年10月の急落では200日移動平均を大きく割り込み、その後の戻り鈍く、これまで続いてきた株価の上昇トレンドが、本格的な調整入りした可能性があります。

この急落の背景には、これまで米国市場を牽引してきたGAFAの成長期待の剥落という要因のほか、利上げが続いていることも大きく影響しています。

12月は株価が上がりやすい月とされていますが、2018年はNYダウ、S&P500とも、世界大恐慌の起こった1931年以来最大の下落ペースとなっています。

(出所:CNBC)

足元の米国の景気自体は依然好調であり、すぐに景気後退(リセッション)に入るといった状況とは言えません。

ただロイターの最新の調査によると、今後2年以内に米国が景気後退に陥る確率は予想中央値で40%と、1カ月前の前回調査時から5%上昇し、リーマン・ブラザーズ破綻8カ月前の2008年1月以来の高い水準となっています。

ヨーロッパや中国など世界的な景気減速や貿易摩擦懸念に、株価の下落も加わり、今後FRBの利上げペースは鈍化すると予想されることは、株価にとってはプラス材料です。

とはいえ、このようなしばらくは大丈夫、でも景気後退も近いのではないかという状況では、成長期待で買い、最高値を更新し続けてきたGAFAバブル相場は、終わったと言わざるを得ません。

景気減速に先行する形で、株式相場は調整入りし、2019年は大きな株価下落に備えておくべきと言えるでしょう。

4、GAFAの日本市場への影響は

出所:SBI証券

米国市場の影響を強く受ける日本市場でも、10月以降株価が急落し、11月にかけての1ヶ月日経平均株価の3,000円以上下げるなど大きく調整しました。

年初には日経平均株価が3万円超えを予想する声さえあり、アナリストの多くは上昇して年末を迎える予想を立てていました。

しかし現状では年初を下回り、12月18日時点で東証1部の新安値銘柄数は600を超えるなど、悲観ムード満載といった状況が続いています。

11月頭に出揃った3月決算企業(金融を除く全産業)の業績は、2018年4~9月期の売上高が前年同期比7.4%増、経常利益が同12.2%増、純利益が19.6%増。通期(2019年3月期)予想は売上高が前期比3.6%増、経常利益が同6.2%増、純利益が1.2%増の見込みとなっています(日本経済新聞による集計)。

企業業績については依然好調が続いていますが、米中貿易摩擦やiPhoneの販売減速による半導体関連企業へ影響など、企業業績への逆風は強まってきています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

わたしたちの生活を大きく変え、ここ数年の株式市場を牽引してきたGAFAバブルの熱が冷めつつある今。GAFAそして米国経済の失速による株価の大きな下落へ市場は警戒感を強めています。

とはいえGAFAがこれからも大きな影響力を持ち続ける状況に変化はありません。

しかしこれまでのような株を買えば上がる相場は終わりを迎えています。

このような投資家が悲観ムードとなり相場全体が下落している時こそ、しっかりと銘柄を見極め、優良株を安く仕込むチャンスが訪れます。

また判断に迷うときには休むも相場。過度に悲観的になることなく、冷静に次につながる行動をとることが大切です。