【2020】IPO株とは?買い方・売り方・購入手順と公募割れリスクを避ける選び方

  • 2020年1月15日
  • 2021年10月15日

「市場の注目銘柄」というのは時の流れとともに移り変わりますが、その代表格とも言えるのが「IPO」でしょう。

IPO(アイピーオー:新規公開株)とは新しく市場に上場する銘柄のことで、設定された公開価格より値上がりしやすいという特徴から大きく注目を集めています。

また、上場後しばらくは投機資金が流れ込みボラティリティが高いため、その値幅を利用して利ざやを取る投資家が多いことでも知られています。

とはいえ、雑誌やネットでIPOに関する記事を見ると「儲かりやすい」「初心者でも利益が出しやすい」といった文面を目にしますが、これは果たして本当なのでしょうか?

今回の記事では、そのような疑問への答えに加え、IPOの入手方法や売買のコツなどを詳しく見ていきましょう。

IPO(新規公開株)とは

IPO(新規公開株:Initial Public Offering)は、未上場の会社が新たに上場することを意味しています。IPOによって企業は株式市場から広く資金を集められるようになったり、会社の知名度が上がって社会的な信用を高めたりすることができます。

上場・非上場に関わらず、株式会社はオーナー、つまり社長や経営幹部や役員がその株の大部分を保有していることが多いです。会社としては、資金調達をするという目的があります。

また、上場することで投資家に対する情報開示はこれまで以上に行われる必要が出てきます。

株価を上げていく(会社の市場価値を高める)ためには、経営の透明性や将来性をIR(Invester Relations)を通して開示していかなければならないのです。

IPO(新規公開株)の魅力

ipo 株

IPOの企業側のメリットは「知名度・信用度の向上」「資金調達」などであると言えますが、私たち投資家にとってのIPO株の魅力は「IPOは公募価格に対して初値が高くつきやすい」ということです。

新規上場の際は、まず株価の目安として「公募価格(公開価格)」というものが証券会社・機関投資家などによって決定されます。

それに対して「初値」が実際に上場した際の寄り値となりますが、初値が付く前に買い注文が売り注文を大きく上回っていれば売買は成立せず、売り買いの需給が一致するまで初値はつり上がっていくことになります。

IPO株は、得てして「初値が公募価格を上回る」というパターンが多く、(詳しくは後述する「2020年IPO銘柄 初値の結果は?」で解説します)、そのため初値で売却できれば手間をかけずに利益を得ることができるのです。

これが「IPOが初心者でも利益が出しやすい」と言われる理由の一つなのです。

IPO株の買い方は2択

さて、私たちがIPO株を手にする方法には「上場前の抽選当選による公募価格での購入」「セカンダリー投資(上場し、初値がついたあとに購入)」の二通りがあります。この2つの買い方について詳しくお伝えしていきましょう。

上場前

先ほど解説した「初値での売却」を行うには、まずは抽選に申し込み当選する必要があります。上場前にIPO株を買うには、抽選で当選するしか方法がありません。

公募価格で買って初値で売れば「安く買って高く売る投資」が成功しやすいため、IPOの抽選には積極的に申し込みをしましょう。

ただし、抽選に外れてしまうケースは非常に多いです。上場前に買えなかった場合、次に説明するとおり、上場後にIPO銘柄を買うことになります。

上場後

上場後は、一般の株式と同じようにIPO銘柄も売買ができます。上場前の抽選に当たらなかったら、上場後に買うのでも良いでしょう。

ただし、上場後に売買する場合の勝率は、他の株式と変わりません。初値売りほど高い勝率はないため、IPO銘柄の購入にこだわる必要があるかどうかは、銘柄そのものの将来性によります。

2020年IPO銘柄の初値の結果は?

新規上場社数は、その年の景気や市場動向によって異なります。

例えば、ここ数年の新規上場社数を見てみると、最近は90社から100社ほどの企業が毎年上場していることがわかります。つまり、これだけIPO投資のチャンスがあるということです。

そして、気になるのはIPO銘柄の公募価格と初値の関係です。

2019年の92社のうち、2019年12月7日時点で上場している69社をチェックしてみると、初値が公募価格を上回ったケースは69社中57社(82.6%)、逆に下回ってしまったのは10社(14.5%)のみでした。[a]

過去数年も、同様に初値が高くつくケースの方が圧倒的に多くなっています。

中でも、騰落率が100パーセントを超えている銘柄は22社となっており、初値売りをしただけで売却資金が購入資金の2倍以上になるという事例も決して珍しくないと言えるでしょう。

今回は2019年のみを抜き出してデータを見ましたが、過去のケースを見ても初値が公募価格を下回るというパターンは非常に少ないです。

「公募価格を高く設定しすぎるとそもそも購入されない」「公募価格割れしてしまうとイメージが悪いので証券会社の買い支えが入る」というのがその背景にある理由で、そもそも公募価格が低めに設定されることが多いということが前提としてあるからだと考えられます。

ただ、先ほどの数値を見てもわかるとおり、「100パーセント初値が公募価格より高くなる」というわけではなく、当然例外も存在するということは頭に置いておきたいポイントです。

IPO株の購入手順

この項目では、IPOを実際に購入するまでのプロセスについて解説していきます。

証券会社によってややその過程は異なるのですが、今回はSBI証券を例として見ていきましょう。
SBI証券 新規上場株式(IPO)のお申し込み方法こちらのページを見ると、購入の流れは次ようになっています。IPO簡単にそのステップをまとめていきましょう。

手順1:ブックビルディング申込(指定期間内に抽選申込)

先ほどお伝えした通り、初値が高くつきやすく利益を出しやすいIPOは非常に人気が高いため、公募価格で入手をするためには抽選に当選しなければなりません。

指定された期間内に抽選を申し込むことで、まずは購入の意思を示すと言うことになります。

このブックビルディングに費用はかからず、「株数」「値段」を入力して申し込むだけですが、「値段」に関しては仮条件の上限の価格で申込をすることが重要です。

上限価格以外で入力すると、抽選に当選しない可能性が高くなってしまうためです。

また、SBI証券に関しては、この申し込みの際に入力した「株数」×「値段」分の買い付け余力が口座になければなりません。

このあたりの詳細が他の証券会社と違うところで、SBIの場合は「申し込んだ数が多い(≒買い付け余力が大きい)ほど当選確率が上がる」となっていることがわかります。

宝くじを買う際に、枚数を買えば買うほど高額当選の確率が増えるのと同じですね。

手順2:抽選

すでにお伝えしたように、抽選に当選しないとIPO銘柄を購入することはできません。

銘柄にもよりますが、この抽選倍率は非常に高く、人気銘柄・注目銘柄になればなるほど当たりづらいというのが現状です。

逆に、当選しやすい銘柄もありますが、そういったケースは「人気がなく公募割れ」という場合もあるため注意が必要です。

手順3:購入意思表示

抽選に当選した場合、実際に購入をするかどうかを決めることになります。

ここでキャンセルをしても損失や罰則のようなものはないため、「当たったけどやっぱり買わない」という選択をすることも可能です。

SBIに関しては「IPOチャレンジポイント」という制度があります。ブックビルディングに申し込むことでポイントが貯まり、ポイントを使ってて申し込むと当選確率が上がるという仕組みです。ポイントを貯める目的で、「実際に購入までは費用もかからないし申し込みしておく」といったように、ひとまず抽選に応募するというスタイルでも良いかもしれません。

手順4:購入

上記のプロセスを経て、最後に購入です。

購入意思表示期間が終わったあとに約定処理が行われ、このステップで実際に資金を支払い購入となります。

上場日前に、公募価格で新株を保有しているといった状態になることを確認できます。

代表的な主幹事証券会社の紹介


企業がIPOを行うときには、その準備や審査対応、アドバイス等をおこなう証券会社が必要です。このような業務を行う証券会社を「幹事証券会社」と呼び、幹事証券会社が複数ある場合は1社が代表として「主幹事証券会社」を務めます。

後述するように、主幹事証券会社でIPO株のブックビルディングを申し込むと当選する確率が高くなります。そこで、代表的な主幹事証券会社を3つ紹介していきましょう。

  1. SBI証券
  2. SMBC日興証券
  3. マネックス証券

1.SBI証券

SBI証券でのIPOに関しては前述した通り、買い付け余力があればあるほど有利になります。

単元株ごとに当選・落選の判定がされるため、例えば500株の申し込みを行えば、100×「5回」のチャンスがあります。

また、SBI証券の大きな特徴はIPO抽選申込のたびにIPOチャレンジポイントが付与されることです。

IPO申込の際にこれまで貯めたチャレンジポイントを利用することで、「チャレンジポイントが高い順に当選する」というSBI証券独自のシステムでの当選権を得ることが可能になっています。

したがって、前述した通り、将来IPO株に申し込む場合に備えて、今は買わないにしてもSBI証券でIPO申込をしてポイントを貯めておくということは大事だと言えるでしょう。

2.SMBC日興証券

SMBC日興証券の大きな特徴は「IPOの主幹事を務めることが多い」という点です。

主幹事は他の証券会社よりも割り当てられる株数が圧倒的に多いため、IPO申込を行う際は「主幹事の証券会社から申し込む」というのが一つのポイントになるでしょう。

その点で、SMBC日興証券は主幹事を務める機会が多いため、メインの口座で使わないにしても口座開設を行っておくと良いと言えます。

3.マネックス証券

SBI証券同様、ネット証券会社において大きなシェアを占めるマネックス証券もIPO投資に向いていると言えるでしょう。その大きな特徴は、SBI証券とは異なり抽選方法が平等であるという点で、何口応募しても一人につき当選権利が一つしかありません。

そのため抽選は完全な運となりますが、資金力のない方にとっては優位性を見出せるのがマネックスだと言えます。

IPO銘柄の当選確率を上げる方法

以上の点を踏まえたうえで、IPOでの当選確率を上げる方法を3点チェックしていきましょう。

  1. 複数証券会社でIPOの申し込みを行う
  2. 主幹事の会社を選ぶ
  3. 口座開設数が少ない穴場の証券会社を狙う

いずれの方法も「とにかく数を打つ」という点が共通しています。IPO投資を専門にしている投資家もいるくらいなので、倍率はかなり高めだと考えて数を打つことをおすすめします。

方法1:複数証券会社でIPOの申し込みを行う

複数の証券会社で口座を開設しておき、各証券会社で同じIPOの申し込みをしましょう。当たり前と言えば当たり前かもしれませんが、「数打ちゃ当たる」作戦です。

一つの銘柄が新規上場するにあたって複数の証券会社に新株が割り当てられるため、その一つ一つの会社で申し込みを行うという手法です。

ただし、ほとんどの証券会社ではIPO申込の際に「買い付け余力」が十分である必要があります。各口座にお金を入金しておかなければならず、資金が必要なことは覚えておきましょう。

ですが、岡三オンライン証券、ライブスター証券ではその前受金がなくても参加可能です。この2つの会社はIPO用と割り切っても良いので、口座を開設しておくことをおすすめします。

この2つの会社が主幹事を務めることはほぼありませんが、当たったらラッキーくらいの気持ちでIPO抽選に参加しておくと良いでしょう。

方法2:主幹事の会社を選ぶ

先ほどお伝えしたように「主幹事の会社を選ぶ」ということはIPO当選において非常に大事なポイントです。主幹事会社は割り当て株数が多く、当選確率が高いからです。

他の投資家からの申し込み数によって抽選への当たりやすさは変わるため、主幹事の証券会社なら当選確実とまでは言い切れません。それでも、割り当て株数の多い主幹事の会社でIPOを申し込まないという選択肢はないでしょう。

方法3:口座開設数が少ない穴場の証券会社を狙う

メジャーではない証券会社からのIPO申し込みを狙うということも一つの方法です。口座開設数が少なければライバルも少ないということになり、当選確率を上げることができるからです。

ただ、残念ながらメジャーではない証券会社はIPOの割り当て株数が少ないです。しかし、その証券会社の口座開設数や申し込み数が少なければそれだけ競争は緩くなります。

公募割れしないIPO株の選び方


IPO株への投資で最大のリスクとなるのが「公募割れ」です。

公募割れとは、株式公開後の初値が公募価格を下回ることです。そもそもIPO株が人気なのは、初値が公募価格より高くなりやすく、公募価格で買って初値で売れば儲かるからです。しかし、公募割れになると「高く買って安く売る」状態になるため、損失を出すことになってしまいます。

したがって、IPO株を選ぶときは「公募割れしにくい銘柄」を選ぶことが重要です。ブックビルディングに申し込む前に次の3つのポイントをチェックして、公募割れのリスクを下げましょう。

  1. 新規公開株数が多い銘柄を避ける
  2. 赤字の銘柄を避ける
  3. 公募価格が仮条件の上限で決まらない銘柄は避ける

選び方1:新規公開株数が多い銘柄を避ける

新規公開株数が多すぎる場合、公開後に価値が下がってしまうケースがあります。

未上場のときから知名度の高い企業の場合、新規公開や売り出しの株数が多く、時価総額が数千億円を超えることもあります。知名度が高いため注目はされるのですが、公開株数が多すぎるため上場して「誰でも手に入れられる状態」になると価格が下がってしまうのです。

知名度の高い大型上場銘柄にはなんとなく安心できそうなイメージがあるかもしれませんが、公募割れのリスクがあります。特にメディアなどでIPOが大きく取り上げられるような企業は、避けておいた方が無難です。

選び方2:赤字の銘柄を避ける

IPOは赤字の会社でもできるので、資金調達のために上場する会社もあります。ですが、赤字の会社は現在のビジネスモデルで利益を出せていないということなので、当然ながら投資家から不人気です。初値が公募価格を下回る可能性は非常に高いので、赤字の銘柄も避けるようにしましょう

選び方3:公募価格が仮条件の上限で決まらない銘柄は避ける

申込の段階では公募価格は仮条件で決まっており、1,000から1,500円などの幅が持たせてあります。実際に購入するときには価格が決まるのですが、上限の価格にならない銘柄は避けた方が良いでしょう。

仮条件が1,000から1,500円の場合、1500円になれば買い、1500円未満なら様子見ということです。

なぜなら、人気のある銘柄なら「上限の価格でも買いたい人」が殺到し、上限の価格になるからです。上限に決まらなかった場合、不人気の銘柄と言えます。

不人気の銘柄は、株式が公開されても不人気のままと考えられます。したがって、公募価格よりも初値が安くなり、公募割れとなる可能性が高いのです。

上限の価格よりも安く買えるとお得なように感じられますが、実は不人気銘柄かもしれません。IPO株で失敗したくないなら、仮条件の上限で決まらなかった銘柄をあえて買う必要はないでしょう。

IPO銘柄の売り方

IPO銘柄は「公募価格で買って初値で売る」ことを前提に解説してきましたが、その他に2つの売り方があります。この項目ではIPO銘柄の売り方を3つ紹介していきます。

  1. 初値で売却する
  2. 短期保有してから売る
  3. 長期保有してから売る

売り方1:初値で売却する

IPO銘柄を上場した直後の初値で売ることを「初値売り」と言います。IPO銘柄は初値が公募価格を上回るケースが多いので、成行注文で初値売りの注文を出しておくだけで、大きな利益を得られることが期待できます。

ただし、初値売りは成行注文のため、「いくらで売るか」を自分では決められません。市場の需要と供給によって価格が決まるため、公募価格を下回る価格になってしまうことがあります(上述した「公募割れ」です)。

公募割れのリスクを避けるなら、次に説明するようにしばらく保有してから売る方法もあります。基本的には勝率の高い初値売りがおすすめですが、銘柄に応じて売り方を変えるのも良いでしょう。

売り方2:短期保有してから売る

IPO銘柄の場合、短期保有してから売ることはあまりおすすめできません。初値で売るか、長期保有のどちらかが良いでしょう。

短期保有がおすすめできないのは、IPO銘柄は時間とともに株価が下がりやすいからです。特に上場後の1週間は株価が下がる傾向にあります。

IPO銘柄を短期保有してから売る場合、ちょうど価格が下がっているときに売ることになって損をしてしまいます。そのため、初値で売るか長期保有の方がおすすめです。

売り方3:長期保有してから売る

上場してからも業績が良い企業の場合、IPOの後も株価は安定しているか、上がっていくかのどちらかです。長期保有して株価が上がってから売ったり、配当をもらうためにずっと保有し続けたりするのも良いでしょう。

短期保有の項目で解説したように、IPO銘柄は上場直後に価格が下がりやすいです。しかし、その企業に見どころがあるなら株価は戻ってきますし、いつかは上場来高値を更新するでしょう。IPO銘柄に将来性があると判断できる場合、長期保有も検討してみると良いでしょう。

まとめ

IPO(新規公開株)の特徴や購入方法、選び方や売り方についてお伝えしました。

例えて言うなら、IPOは宝くじのようなもので、倍率は高いけど当たれば利益が出ることが多いプラチナチケットだと言えます。

これまでIPOを知らなかったという方も、まずは抽選応募から始めてみると良いでしょう。