バリュー投資のカリスマ『ジョン・テンプルトン氏』の相場格言から学ぶ投資術

2018年10月に入り、長期にわたり好調が続いていた相場が一転し、株価は急落により節目となる水準を割り込むなど、投資家の間には相場の先行きに対する不安が漂っています。

賢明な投資家ジョン・テンプルトン氏の言葉は、このような先行きの不透明な相場を生き抜くための、重要な指針を与えてくれるものです。

1、バリュー投資のカリスマ ジョン・テンプルトン氏

ジョン・テンプルトン氏は、最も賢明で高く評価された投資家の一人として知られ、経済誌フォーブスで「the dean of global investing (グローバル投資の長)」や「one of the most successful money managers in history(歴史上、最も成功したマネーマネージャーの一人)」として紹介された人物です。

2008年に亡くなるまで50年以上にわたり第一線で活躍し、市場平均を上回る運用成果を上げ続けたバリュー投資のカリスマ的存在です。

1912年にアメリカ生まれ、エール大学、オックスフォード大学で法律を学び、大学卒業後は証券会社を経て、1940年投資カウンセラーとして独立、1954年にファンドを設立しました。

世界中から投資先を見極めた上で、人が売るときに買い、買うときに売る「逆張り」による長期投資を得意とし、その投資手法は、バリュー投資の父と言われるベンジャミン・グレアム氏のバリュー投資に通じています。

2、ジョン・テンプルトンの言葉

彼の投資哲学、投資理念はその言葉に残されており、彼が築いた投資理念はファンドに受け継がれており、投資家に多くの学びを与えてくれるものです。

(以下、フランクリン・テンプルトン・インベストメンツ株式会社・テンプルトン10の投資理念より抜粋)

(1)実利を目指して投資する

“長期投資とは、より多くの実質的な利益を得るために行うものです。”

(2)偏見を持たない

“特定の投資対象や銘柄選択手法にこだわることは避けましょう。

変化に対しては偏見にとらわれず柔軟に対応し、また当たり前だとされていることを鵜呑みにしないことが大切です。”

(3)大衆の後追いをしない

“他人と同じことをしていては、他人と同じ結果しか得られません。

他の投資家と同じ投資行動を取っている限り、彼らよりも高い収益を得ることはできません。他の投資家が落胆して売っている時に買い、熱狂して買っている時に売ることを辛抱強く実行できれば、その見返りは多大なものになるでしょう。 ”

(4)マーケットは常に変化する

“上昇相場も下落相場も永遠に続くことはありません。

特定の業種や銘柄が市場でもてはやされても、その人気は大抵一時的なものに終わります。一度人気を失うと、その後何年間も脚光を浴びないことがよくあります。”

(5)人気株を避ける

“長期投資で成功する秘訣は、自分が保有する銘柄が人気を集めた時に、市場で注目されていない銘柄に乗り換えることです。”

(6)過去の誤りに学ぶ

“「今回こそは違う」という言葉は、市場の歴史において最もコストの高い過ちです。”

(7)悲観で買い楽観で売る

“強気相場は悲観のもとで生まれ、疑いの中で育ち、楽観の中で成熟し、熱狂とともに終わります。したがって、最も悲観的なときが買い時であり、最も楽観的なときが売り時です。”

(8)価値ある掘り出し物を見つけ出す

“多くの投資家は、株価の見通しやトレンドに注目し過ぎる傾向があります。視点を変えて株式の投資価値に目を向ければより大きな利益が得られます。

株式市場において “バーゲン(掘り出し物)” を手に入れる唯一の方法は、ほとんどの投資家が売っている銘柄を買うことです。”

(9)世界中を探す

“環境の悪い時に1つの国に全てを投資することは賢明ではありません。分散して投資することが大切です。

1つの国の市場にこだわらず世界中の市場を探せば、より多くの “バーゲン(掘り出し物)” を見つけ出すことができるでしょう。”

(10)すべてを知ることはできない

“すべての答えがわかっているつもりでも、実は何が問題なのかも分かっていないものです。”

3、ジョン・テンプルトン氏の言葉から相場をみる

テンプルトン氏の言葉に、“強気相場は悲観のもとで生まれ、疑いの中で育ち、楽観の中で成熟し、熱狂とともに終わる”というものがあります。

これは相場サイクルと、その時々の投資家心理を表したもの。周囲に惑わされず客観的に相場を捉え冷静な判断をするために、常に意識しておくべき言葉と言えます。

アマゾンなど一部の銘柄は、業績自体は伸びているものの、熱狂する投資家の“過度”の期待に応えられず、決算発表後に株価が急落しています。

相場全体では2月、10月の2回の急落もあり、強気一色だった昨年に比べ相場の先行きに悲観的な投資家も増えています。

しかし業績好調な銘柄は多く、そのような銘柄の株価が下落したタイミングは投資するチャンスが到来していると言えます。

市場全体が下落しているタイミングで投資するには勇気がいるかもしれませんが、それは目先の値動きにばかり捉われているからだと言えます。

銘柄の本来の価値を基準としていれば、株価が急落したタイミングは、待ち望んだ買い場となります。

いつ起こるかわからない急落にすぐ対応し、買い場を逃さないためには、日頃から投資対象となる企業の分析を怠らず、常に買うべき銘柄のリストを準備しておくことが勝つためには重要です。

またそれを買うための資金がなければ話にならないので、資金にはある程度余裕を持って投資することが大切です。

4、ジョン・テンプルトン流バリュー投資の投資基準「PEGレシオ」

ジョン・テンプルトン氏の投資手法は、人が売るときに買い、買うときに売る「逆張り」による長期投資を基本とする、バリュー投資です。

投資対象は、株価がその銘柄の適正価値の半分以下の株のうち、成長性を加味した上で割安と判断できる銘柄です。

適正価値を測る際、テンプルトン氏は「PEGレシオ(Price Earnings Growth Ratio)」を重視し、10年間の平均成長率がPERの1倍以下(PEGレシオ1倍以下)であるかが割安性を判断する基準となります。

実際には、PEGレシオほか、業界平均に比べ売上高成長率・収益力が高いか、負債比率が低いか、ブランド力や経営者の株主還元姿勢などを考慮し、総合的に判断されます。

またテンプルトン氏はかつてグローバル投資家の長とも言われ、世界に投資することが大切であると言います。

特定の国や市場に限定することなく、より広く世界に目を向けることで、必ずバーゲン銘柄はあると言い、テンプルトン氏自身、1960年代に高度経済成長の中割安感のある日本株に投資し、大きな利益を上げています。

5、テンプルトン流バリュー投資をさらに詳しく知る

テンプルトン氏の投資手法についてより詳しく知りたいという方は、以下の書籍を一読されることをおすすめします。

『テンプルトン卿の流儀』 ローレン・C・テンプルトン(著)

「20世紀最高のストックピッカー(銘柄選択者)」とも称えられた伝説的ファンドマネジャー、ジョン・テンプルトン卿。

世界一流のバリュー投資家として尊敬され、グローバル投資を創始し、50年にわたって市場平均をアウトパフォームしたことで広く知られる彼の、時代を超え受け継がれる投資の原則と方法が解き明かされる一冊です。

この本では、テンプルトン卿が実証した投資選択を貫く方法から、最高の成績を上げた歴史的事例の紹介、今日の投資家がテンプルトン卿の勝利につながるアプローチを自分のポートフォリオに取り入れる方法が説明されています。

さらにテンプルトン卿の最も有名な投資原則とも言える「悲観の極み」における投資について詳細に解説され、「悲観の極み」の時点をとらえて成功につなげるために生涯を通じて用いてきたテクニックについて知ることができます。

著者はジョン・テンプルトン卿を大叔父に持つローレン・C・テンプルトン氏。

自らもバリュー投資を実践し、ローレン・テンプルトン・キャピタル・マネジメントを所有しています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

テンプルトン氏の言葉の多くは、投資家であれば当たり前に知っているようなものです。

ただ、それを実践できない投資家がほとんどであり、成功する投資家との大きな壁となっています。

もちろん投資では失敗することもあります。

しかし、“すべてを知ることはできない”、“過去の誤りに学ぶ”という言葉にも示されているように、謙虚な姿勢で失敗から学び、次の投資に活かしていくことがパフォーマンスの向上につながるのです。

先行きの見えない相場を勝ち抜くために、テンプルトン氏の言葉を“実践”していきましょう。