定期的に入ってくるお金に安心感を抱く人は多いでしょう。
給与、年金、不動産からの家賃収入などがこれに当たります。
給与や年金といった生活資金とは別であり、不動産投資のような高いハードルもなく、定期的な分配が得られる方法として、分配型の投資信託があります。
日本で根強い人気を誇る分配型の投資信託ですが、投資をする前にその仕組みをしっかり知っておくことは重要でしょう。
今回は、投資信託の分配金について紹介していきます。
具体的には、分配金の相場や分配金が支払われる仕組みについて紹介していきます。
メディア「BIGTRADERS」が徹底リサーチしてまとめた内容なので、お読み頂くことできっと投資信託選びの参考になるはずです。
ご参考になれば幸いです。
1、投資信託における分配金とは?
(1)分配金とは?
そもそも投資信託とは、複数の人から集めた資金をまとめ、プロのファンドマネージャーが運用する仕組みを持つ商品です。
投資対象に規定はなく、株式や債券から不動産、金などの商品に至るまで多岐に及びます。
投資信託は企業と同じように、定期的に決算を行いますが、その際に投資家に還元されるお金のことを分配金と呼びます。
株式で言うと、配当金に当たるイメージです。
基本的には、投資対象である株式などの値上がり益(キャピタルゲイン)や債券などの利息(インカムゲイン)に基づき、利益を還元するために支払われますが、中には分配金を出すことを目的とする投資信託もあります。
(2)分配型投資信託とは?
分配金を出すことに主眼が置かれた投資信託を分配型投資信託と呼んでいます。
特に日本では、毎月決算を行い、分配金を支払う毎月分配型投資信託が人気を博しており、分配型投資信託と言えば、毎月分配型を指すケースが多いです。
もちろん、分配金を出すことに主眼を置いていると言っても、利益を追求していることに変わりはありません。
ただ、後で説明しますが、儲かっていない時でも無理をして分配金を支払うケースが多いという点が純粋な値上がり目的の商品と異なる点です。
(3)人気の高い毎月分配型
日本では、分配金ニーズは非常に高く、分配金を出すことを主眼に置く商品に多くの資金が集まっています。
上場ETFを除く、国内で運用されている公募投資信託では、2017年9月末時点での純資産総額トップ5は全て毎月分配型となっています。
上位10本のうち9本が毎月分配型であることを見ても、分配型投資信託の人気の高さが分かります。
2、投資信託における分配金の受け取り方は?
では分配金はどのように受け取るのでしょうか。
方法は大きく分けて2つあり、直接受け取るか、再び投資に回すのかを選ぶこととなります。
(1)直接受け取る
直接受け取る方法では、支払われた分配金を運用している証券会社や銀行の口座に入れたり、それ以外の指定口座へ振り込んでもらうことができます。
正に定期的な収入のイメージとなります。
特に毎月分配型投資信託の保有者では、多くの人がこの方法で受け取っています。
(2)再投資に回す
支払われた分配金で同じ投資信託を再び購入する方法があります。
分配金の使用予定がなく、そのまま寝かせておくのももったいないという人はこちらの受け取り方を選択するケースが多いです。
再投資では、その投資信託が値上がりする場合、再投資分の値上がり益も享受できるため、複利を活用した運用で効率良く資産を増やすことが可能です。
一方で、投資信託が値下がりする場合は、再投資分も値下がりし、損失額も多くなる点には注意が必要です。
分配金の受け取り方は、投資信託を保有している金融機関で確認、変更することができます。
3、分配金はどのように決まる?
分配金の概要が分かったところで、分配金はどのように決められているのかをご説明します。
(1)分配金は運用会社のさじ加減
一言で言うと、分配金の決定方法は投資信託の運用会社のさじ加減です。
分配金の額や回数は運用会社で決定されるため、投資信託ごとに異なります。
投資信託ごとに決められたタイミングで決算が行われ、そこで運用会社が決定した分配金が支払われることとなります。
(2)分配金の注意点
注意すべき点は、分配金は必ずしも収益から払われるというわけではないことです。
分配金を受け取ると、儲かっているように感じますが、その分配金は元本を切り崩して支払われている可能性もあります。
分配金は運用会社のさじ加減で決まるため、運用会社が毎回一定額の分配金を支払うことに主眼を置く場合、儲かっていない時でも元本を切り崩して分配金を支払うケースは往々にしてあります。
特に毎月分配型の投資信託では、こういった傾向が非常に強いです。
分配金額が毎回同じである投資信託も多いですが、毎回しっかりと儲かっているわけではなく、儲かっていない時でも無理をして払っているから成り立っているのです。
(3)普通分配金と特別分配金
儲けの部分から支払われている分配金は普通分配金、元本を切り崩して支払われている分配金は特別分配金と呼ばれます。
また、特別分配金はタコ足配当と呼ばれることもあります。
タコが空腹時に自分の足を食べて生き延びるという習性を持つことと、投資元本を切り崩してまで分配金を受け取ることを重ね合わせた表現ですが、非常に面白く的確な表現ではないでしょうか。
普通分配金は利益ですので、20.315%の税金(2038年からは20%)が課せられます。
一方で特別分配金は元本の切り崩しであり、儲けではないため、税金は掛かりません。
自分の受け取った分配金が普通分配金か特別分配金であるかは、取引金融機関の取引履歴などで確認できます。
分配金が全て利益であると思わないように、注意が必要です。
4、投資信託の分配金の相場は?
(1)分配金の相場は?
さて、分配金の仕組みについて理解したところで、投資信託の分配金がいくら払われるのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。
投資信託の分配金の相場について説明していきます。
投資信託の分配利回りは運用資産や運用会社の方針によって大きく異なっています。
毎月分配型の場合、全体で見ると、税引き前分配利回りは低いもので2~3%程度、高いものだと30%近くに達するものもあります。
(2)人気ファンドの分配金相場
公募投資信託において、2017年9月末時点での純資産総額上位10本のうち9本が毎月分配型となっていますが、1本を除き税引き前分配利回りは年率で15~25%程度となっています。
分配利回りの高い投資信託には資金が集まりやすい傾向にあり、人気の高い投資信託は高い分配利回りを誇っています。
特に分配利回りの高い投資信託は、アメリカのREIT(不動産)やジャンク債と言われるようなハイイールド債券、ブラジルレアルやトルコリラといった新興国通貨に投資をしているものが多くなっています。
(3)投資資産ごとの分配金相場
分配金額は投資する商品の種類によっても相場が異なります。
外国株式や金利の高い通貨、不動産など、リスクの高い商品で運用されている投資信託の分配金は高く設定されていることが多いです。
毎月分配型での分配利回りは10%~20%超となっている投資信託も多く見られます。
一方で国内債券や高格付債券など、リスクの比較的小さい商品で運用されている投資信託の場合は、数%程度の分配利回りとなっているケースが大半です。
(4)分配金だけでなく、運用利回りも重要
利回り20%の商品と聞けば、非常に魅力的ですが、毎年20%の運用益を残している商品は皆無に等しいです。
資産運用は、いくら儲かっているかが全ての評価基準と言えます。
分配利回りが20%の商品でも年間の運用利回りが10%の場合、分配金の半分は資産を切り崩して支払っていることとなります。
分配利回りに惑わされるのではなく、しっかりと運用利回りもチェックするようにしてください。
(5)運用成績はトータルで判断
最近では運用実績を遥かに超える高い分配利回りを前面に押し出している投資信託が問題視されており、分配金の引き下げが行われている投資信託も多くあります。
今後は実際の運用利回りに近づくよう、分配利回りの相場は下がっていくかもしれません。
ただ、運用利回りとの差があったとしても、高い分配利回りの商品を購入したいという人も大勢います。
重要な点は、運用利回りをしっかり把握し、分配金と商品評価額のトータルで運用成績を考える視点を持つことでしょう。
5、分配型がいい?投資信託で分配型を選ぶメリットとデメリット
分配型投資信託を検討されている人が気になるのは、そのメリットとデメリットではないでしょうか。
メリットとデメリットを説明していきます。
(1)メリット
まず、メリットについてですが、定期的な収入が得られるというものがあります。
資産計画を立てる上で、定期収入の有無は非常に重要となります。
分配型投資信託は正にそうしたニーズを満たすために存在しているのです。
もちろん、分配金の中には元本の切り崩しとなるケースがあったり、分配金額が運用会社の意向で変更されることもあるなど、完全なものとは言えません。
しかし、これらの注意点を理解し、運用利回りをチェックした上で、そうした仕組みを有効活用することができる人にとっては非常に魅力的な商品となるでしょう。
(2)デメリット
次に、分配型投資信託のデメリットを大きく3つに分けて見ていきます。
①複利効果が得られない
分配金を直接受け取る場合、受け取った資産は手元に現金として残ります。
今後、価格が値上がりしていった場合でも、受け取ってしまった分配金が増えることはありません。
投資の世界では、複利効果は資産形成に非常に大きな力を発揮します。
分配金を再投資にする場合では、複利効果を得ることも可能です。しかし、こちらも問題があります。
分配金が発生するたびに、利益がいったん確定されるため、再投資に回る金額は税金を引かれた金額となります。
分配金を出さない投資信託と比べると、毎回税金が引かれてしまう分、分配型投資信託の複利効果は薄いと言わざるを得ないのです。
資産を大きく増やそうと考える人にとっては、複利効果のメリットを完全に享受できないことは大きな痛手と言えるでしょう。
②高コスト
毎月分配型投資信託のコストは、年1回分配型の投資信託と比べて、高くなるケースが非常に多いです。
買付け時の購入手数料だけでなく、定期的に掛かるコストである信託報酬も非常に高くなります。
毎月の決算に多くのコストが掛かることに加え、分配手続きや振込みに掛かるコストも大きくなります。
コストは投資信託の中、つまり投資資金から支払われるため、分配回数の多い投資信託は値上がりしづらい傾向にあります。
③分配利回りに惑わされてしまう
分配利回りが運用利回りで無いことは説明しましたが、どうしても分配利回りや毎月の分配金で判断してしまいがちとなります。
また、定期的な分配金に安心してしまい、商品の状況を深く見ない人も出てきます。
いざ売却しようと思った時に、元本が大きく目減りしていたというケースも多くあります。
評価額と分配金受取額を合わせて、運用成績をトータルで判断できる人でないといけません。
6、節税しながら投資信託をするならiDeCoやNISAがおすすめ
これまで分配型投資信託の内容を説明してきたが、国の制度を使うことで、より効率的な運用を行うことができるようになります。
投資信託に使える2つの制度を説明しますので、制度を有効活用し、しっかりと無駄な税金を抑えた運用を行ってください。
(1)iDeCo
まずはiDeCoについてです。iDeCoは個人型確定拠出年金と呼ばれ、公的年金に上乗せする個人年金を積み立てていく制度です。
老後の生活を自助努力でまかなうことが前提の制度であり、60歳未満での引き出しはできないことや、毎月の掛金は最大で23,000円となっているなど制限は多くあります。
積立投資のイメージで、投資対象は定期預金や投資信託です。
その最大のメリットは、iDeCoで積み立てる商品に掛かる税金が非課税となることです。
iDeCoではどれだけ値上がりしても税金をとられることがなく、分配型投資信託の分配金にも税金が掛かりません。
もちろん、60歳まで受け取りはできませんので、分配金は自動的に再投資されることとなりますが、複利効果を期待した運用を行うことができます。
他にも、拠出額は所得控除の対象となり、年間で所得税、住民税の節税にもなります。
対象商品は限られていますが、将来のための資産運用を考えている人は是非検討してみてください。
(2)NISA
次はNISAという制度です。
NISAは個人の投資促進を図るための制度です。
年間120万円×5年で最大600万円まで非課税枠が与えられ、その範囲内で買った株式や投資信託に掛かる税金が非課税となります。
NISAは国内の公募株式投資信託であれば、何でも対象とできますので、気に入った分配型投資信託があれば、NISAを使って買うことがお勧めです。
本来は20.315%取られる税金が非課税となるため、効率的な運用ができるでしょう。
なお、2018年よりつみたてNISAが始まります。
つみたてによりリスクヘッジできることが特徴です。つみたてNISAでも投資信託への投資が可能です。
まとめ
投資商品には全てメリットとデメリットが存在し、完璧な商品は存在しません。
今回は分配型投資信託について説明しましたが、こちらも同様です。
分配型投資信託の魅力は何と言っても定期的な収入を得られるという商品設計にあります。
もちろん、その仕組みの理解や分配金に惑わされずにしっかりと運用利回りを把握することが必要となりますが、その魅力に関心のある方にとっては、唯一無二の商品ともなり得るでしょう。
しっかりと内容を理解した上で、分配型投資信託を資産運用に役立ててみてはいかがでしょうか。