【2018年年末相場】モメンタム指標で分析するポイントとモメンタムファンド

2009年7月から始まった米国の景気拡大局面は、すでに9年以上続いており、平均である5年を大きく上回り、第二次大戦後の最長記録を更新しています。

そのような中、長期金利の上昇や米中の貿易戦争懸念は依然解消される見通しは立たず、サウジアラビア記者殺害事件により緊張が高まるなど、直近の株式市場は不安定な状況が続いています。

10月に入ってからは突如株価が急落し、NYダウが1週間あまりで直近高値から一時約2,000ドル以上下落し、ついにこの上昇相場も終わりかとも囁かれました。

しかし、トレンドのサポートラインとなっている200日移動平均線で株価が反発したことで、ひとまずトレンドの継続が確認されています。

これから迎える年末相場はどうなるのか。この記事では、モメンタム指標を使って相場を読み解くポイントについて解説していきます。

1、モメンタムとは?

モメンタム(momentum)とは、相場の勢いや方向性を判断するために用いられるオシレータ系の指標です。

また、相場のトレンドが形成されたことを確認し、その勢い(モメンタム)に着目して利益を狙う投資手法を、「モメンタム投資」といいます。

(1)モメンタムの求め方

モメンタムの求め方は、当日の終値から一定日前の終値を引くという、とてもシンプルなものです。

モメンタム=(当日の終値)ー(一定日前の終値)

例:10日モメンタムの場合(10営業日前の終値:1,000円・当日の終値:1,100円)

10日モメンタム=1,100円ー1,000円=100円

上記の10日モメンタムのほか、期間の違う以下のようなモメンタムがよく用いられます。

(日足)10日モメンタム、25日モメンタム

(週足)9週モメンタム、13週モメンタム、26週モメンタム

(月足)3ヶ月モメンタム、6ヶ月モメンタム、9ヶ月モメンタム

(2)モメンタムの見方

モメンタムは、トレンドのある相場で有効に機能し、トレンドの勢いの変化を捉える先行指標となります。その変化から、売買のタイミングを図る指標としても用いられます。

(チャート:楽天証券)

①【モメンタム基本的な見方】

モメンタムがゼロ以上なら強気相場、ゼロ以下なら弱気相場

モメンタムが拡大していれば、トレンドの勢いが強まっている

モメンタムが横ばいとなると、トレンドの勢いが弱まっている

②【モメンタムによる売買シグナル】

(買いシグナル)

  1. モメンタムがゼロラインを上抜けたとき(株価反発)
  2. ゼロラインの上にあるモメンタムがさらに上昇したとき(上昇加速)
  3. 株価が安値を更新したものの、モメンタムは直近安値を下回らない(株価反発)

(売りシグナル)

  1. モメンタムがゼロラインを下抜けたとき(株価反落)
  2. ゼロラインの下にあるモメンタムがさらに下落したとき(下落加速)
  3. 株価が高値を更新したものの、モメンタムは直近高値を上回らない(株価反落)

(3)モメンタム投資

モメンタム投資はグロース投資の一種で、業績の伸びが加速している銘柄、株価の上昇が加速している銘柄を対象として、その勢い(モメンタム)に乗って利益を狙う投資手法です。

株価の上昇に着目する手法(プライス・モメンタム)では、上記のモメンタム指標を参考に、モメンタムの拡大している間は銘柄を保有し、モメンタムが弱まった段階で売却することにより利益をあげていきます。

エントリーするタイミンングとしては、トレンドラインまで下落した株価が反発し、直近高値(レジスタンス)を上回ってトレンド継続が確認できたポイントが、最もオーソドックスなものです。

 

(4)モメンタムの注意点

①ダマシが多く発生する

モメンタムは株価を引き算するというシンプルな仕組みゆえ、株価のちょっとした変動によってもゼロラインをクロスしやすく、ダマシも多く発生します。

その対策としては、動きがより滑らかなモメンタムの移動平均線を利用したり、計算期間を変えるといった方法のほか、その変動をもたらした原因を確認した上で判断を行うことも大切です。

②モメンタム投資ではトレンドの継続が前提

モメンタム投資は、相場のトレンドの勢いに乗って利益を狙う手法であり、トレンドが崩れると、上記で説明した売買シグナルも機能しなくなります。

その前提となっているトレンドが崩れた段階で、手仕舞いするのが鉄則となります。

(チャート:楽天証券)

2、2018年年末相場はどうなる?

今月に入ってからの株価急落の直前には、米国主要株価指数のモメンタムはゼロラインを下抜けており、モメンタムが先行指標として機能したことが確認できます。

ただ米国株の急落を受けて下落した日本株では、モメンタルの動きにも遅れが生じています。

現状ではモメンタムはゼロラインを下回ったままですが、横ばいから上昇に転じる兆候も見られます。

年末に向けては例年株価が上昇しやすい傾向があり、今後株価が上昇トレンドへ回帰する可能性も高いと言えます。

ただ11月には米国中間選挙を控えており、金利、米中関係など懸念材料は多く、難しい相場が予想されます。

相場の急変に備え、割高感のある銘柄、モメンタムが弱まっている銘柄などは売却し、キャッシュ比率を高めておくほうが良いかもしれません。

3、モメンタムファンド

ここでは、モメンタム投資を行うファンドをご紹介します。

現在パフォーマンスが好調な銘柄や業種を知る上で、ファンドの組み入れ銘柄・業種は参考となります。

(1)iShares Edge MSCI USA Momentum Factor ETF(MTUM)

【S&P500インデックスとのパフォーマンス比較】

(チャート:Bloomberg

iシェアーズ・エッジMSCI米国モメンタム・ファクターETF(iShares Edge MSCI USA Momentum Factor ETF)は、手数料・費用控除前のモメンタムが比較的高水準の米国中大型株の指数に連動する投資成果を目指す、米国ETFです。

現在日本の証券会社では取り扱いがないが、S&P500と比較しても高いパフォーマンスをあげており、指数構成、流動性、コストなどの点で優れたファンドといえ、組み入れ銘柄や業種などは大いに参考となります。

iShares Edge MSCI USA Momentum Factor ETF(MTUM)
現在値(201810/19) 109.13 USD
1年トータルリターン 12.19%
3年トータルリターン 16.32%
経費率 0.15%

 

iShares Edge MSCI USA Momentum Factor ETF(MTUM)組み入れ上位銘柄
銘柄 組入比率(%)
AMZN:US アマゾン・ドット・コム 5.74
MSFT:US マイクロソフト 5.63
V:US ビザ 5.10
BA:US  ボーイング 4.99
MA:US  マスターカード 4.68
JPM:US JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー 4.31
CSCO:US シスコシステムズ 4.01
NFLX:US  ネットフリックス 3.48
INTC:US  インテル 3.16
ADBE:US アドビシステムズ 3.04

(2018年10月19日時点・Bloomberg

(2)ダイワ DBモメンタム戦略ファンド(為替ヘッジなし)

米国の株式、米国の長期金利、米ドルキャッシュおよび金を実質的な投資対象とし、ドイツ銀行が開発した「DBモメンタム・アセット・アロケーター指数」の動きを反映した投資成果をめざすファンド。

「DBモメンタム・アセット・アロケーター指数」は、モメンタムに着目し、相対的に良好なパフォーマンスの投資対象への配分比率を増加させ、その全体のパフォーマンスを指数化したものです。

市場環境に合わせて緩やかに投資対象の配分比率を変更することで、投資のタイミングに左右されず安定したリターンの確保をめざします。

(チャート:モーニングスター

 

ダイワ DBモメンタム戦略ファンド(為替ヘッジなし)
現在値(201810/19) 10,570円
1年トータルリターン 6.27%
信託報酬率 1.94%

まとめ

いかがでしたでしょうか。

モメンタム指標は、トレンド相場において、トレンドの勢いの変化を知り、相場を予測する有効な先行指標となります。

またモメンタムの強い銘柄・業種に順張りで投資するモメンタム投資は、トレンド相場でその効果を発揮し、著名ヘッジファンドマネージャー、スティーブン・コーエン氏をはじめ、成功を収めた多くの投資家が用いる投資手法でもあります。

注意点などをよく理解した上で、モメンタムを投資にうまく役立てていただければ幸いです。