投資を学ぶ!アクティビスト著名投資家10人と日本のアクティビストファンドの紹介

巨額の資金をもとに大量の株を買い、その企業の経営に関与することで自ら利益を実現していくアクティビスト。

世界的に著名なアクティビストともなればその規模も桁違いです。

ここでは世界的なアクティビスト10人の投資手法や、実際の投資内容についてみていくことにしましょう。

1、カール・アイカーン氏

カール・アイカーン(Carl Icahn)氏は、Icahn Capital Managementの創業者であり、ウォール街で最も成功した投資家のひとりともいわれる著名アクティビストです。個人資産は225億ドル(2018年9月2日時点・FORBES)。

アイカーン氏は、威嚇的で大量の株を買い占めて企業の経営権を取得する「乗っ取り屋」として名を馳せていましたが、近年では少数の株式を握って経営改善を迫り、その後に市場で売却する手法が多くなっています。

今年1月には富士フイルムHD(4901)による米ゼロックス社の買収交渉において、「ゼロックスを劇的に過小評価している」とし反対を表明し注目を集めました。

アイカーン氏はゼロックス社の約9%の株式を保有する筆頭株主であり、最終的には合併合意は白紙となり、表面的にはアイカーン氏側の軍配が上がりました。

ただこの交渉の間に株価が約10%下落、ゼロックス株主には買収による配当も入ってこなくなり、勝利とは言い切れないものとなりました。

(写真:FORBES

2、ダニエル・ローブ氏

ダニエル・ローブ(Daniel Loeb)氏は米国の著名アクティビストであり、1995年にヘッジファンドThird Pointを創設、ファンドの運用資産は約170億ドル。様々な業種、国でアクティビスト活動を展開し、多くのファンドが苦戦する中でもThird Pointは安定したリターンをあげています。

強硬な手段も辞さないことで知られており、2012年には投資先である米ヤフーのCEO更送において主導的な役割を果たしました。

また他のアクティビストがあまり着目していない日本企業へも積極的に投資しており、ソニー(6758)やソフトバンクグループ(9984)などがその投資先となっています。

ソニーへの投資では、不振のエレクトロニクス部門に、映画・音楽といったエンターテインメント部門の高い価値が埋もれてしまっていることを指摘し、エンタメ部門の分社化、株式上場などを提案しています。

結果的には上場には至っていませんが、情報の透明化やコスト削減を実現しました。

ソニーの業績回復を支えたエンタメ部門にいち早く着目した点はさすがだと言えます。

(写真:FORBES

3、ディビット・アイホーン氏

ディビット・アイホーン(David Einhorn)は米国の著名アクティビストであり、70億ドルの運用資産を持つヘッジファンド・Greenlight Capitalを率いています。

ファンドは1996年の運用開始から年15.4%のリターンをあげています。

空売りを得意とし、リーマンブラザースの破綻をいち早く見抜き空売りを仕掛けたことでも知られています。

彼が株価が割高だと名指しした企業の株価が急落するほどの影響力を持つ存在となっています。

空売りを得意とする彼も買いを行うこともあり、そのひとつがアップル(であり、多額の資金を投じています。

積み上がるアップルの資産に対し、彼はアクティビストとして株主還元の強化を繰り返し要求し、その後の自社株買いなど株主還元の拡大に貢献したとみられています。

現在は空売りしているアマゾン(Amazon)やネットフリックス(Netflix)などで損失を出し、冴えない運用成績が続いています。しかし長期に及ぶ上昇相場に警鐘を鳴らし、いずれくる下落に自信をみせています。

(写真:FORBES

4、ライフ・ホイットワース氏

ライフ・ホイットワース(Ralph Whitworth)氏は、ヘッジファンドRelational Investors LLCの創業者として、多くの実績を残してきた著名アクティビストです。

とりわけ米ヒューレット・パッカードの会長に就任し行った経営改革はよく知られています。

そのほかにも、廃棄物処理サービスを手掛けるウェイスト・マネジメント社の会長にホイットワース氏が就任して再建を行ったケースでは、1年弱で約18%のリターンをあげ、企業再生に強みを持つアクティビストとして名を馳せました。

このようにアクティビストとして多くの企業の経営に関与し、実績をあげてきたRelational Investors LLCではありましたが、ホイットワース氏の健康上の理由により、2016年2月で解散しています。

現在は新体制でのファンドの設立に向け準備が進んでいる状況です。

5、ジェフリー・アッベン氏

ジェフリー・アッベン(Jeffrey Ubben)氏は、米大手運用会社フィデリティーでバリュー投資を手がけた実績を持ち、2000年にValue Act Capitalを設立した、著名アクティビストです。

ファンドの運用資産は140億ドルと、世界有数の規模を誇ります。

Value Act Capitalは比較的穏健派のアクティビストとして知られています。

とはいえ2013年に投資したマイクロソフトに対しては取締役を派遣し、クラウドビジネスの分野で出遅れていた同社の経営陣のテコ入れを求めてスティーブ・バルマー前CEOの交代劇を後押しするなど、アクティビストとして、経営への積極的な関与をすすめています。

直近では今年5月オリンパス(7733)株の5.0%を保有したとする大量保有報告書を提出し、日本企業へ初めて投資を行っています。

企業統治ルールの改善への動きが進む日本企業の変化を評価したうえで、日本企業への投資を活発化させる第一歩であり、今後日本企業に対してどういった要求を行ってくるのか、その動向に注目です。

6、ネルソン・ペンツ氏

ネルソン・ペンツ(Nelson Peltz)氏は、当初父親の経営する食品会社でビジネス経験を積み、1980年代に中堅製缶企業をM&A(合併・買収)で大きくして転売する取引で成功を収めます。

その後2005年に設立したTrian Fund Managementは、世界で最も影響力のあるアクティビストのひとつとも称されています。

彼らの投資スタイルは、「通常7年間にわたり投資を続け、役員の責任感を高めること」指針とするなど、長期的な企業価値の向上を目的とした投資が中心となっています。

過去には化学大手のデュポンと株主総会での委任状争奪戦(プロキシーファイト)を繰り広げたり、直近ではゼネラル・エレクトリック(GE)やプロクター・アンド・ギャンブル(PG)に取締役を送り込むなど、世界の名だたる企業の経営に対して、積極的な関与を行なっています。

(写真:iBillionaire

7、バリー・ローゼンスタイン氏

バリー・ローゼンスタイン(Barry Rosenstein)氏は、2001年イベントドリブン型ヘッジファンドであるJana Partnersを設立した著名アクティビストです。

Jana Partnersでは通常、フリーキャッシュフロー倍率に基づいて投資を行なっていますが、株価を上げるために必要と判断した場合には、アクティビストとしての投資活動を行なっています。

Jana Partnersの運用資産は2017年12月時点で46億ドルとなり、2015年8月の110億ドルから半分以下まで落ち込む厳しい状況となっています。

これは2017年にプラス5.6%、2016年はプラス2.3%と運用成績が低迷しており、ファンドからの資金の引き上げが要因となっています。

しかしファンドがアクティビストとしてポジションを保有する企業の株価は、同社が保有株式を開示して以降29%上昇しており好調です(この間のS&P500の上昇率は11.4%)。

このような状況から、今後アクティビスト投資の割合が高まることも予想されます。

(写真:写真家Andrew Harrer / Bloomberg

8、ポール・シンガー氏

ポール・シンガー(Paul Singer)氏は、1977年にElliott Managementを設立した著名アクティビストです。

同ファンドは年金や政府系ファンド、大学の基金など350億ドルもの運用資産を誇る、世界最大のアクティビストファンドです。

英調査会社アクティビスト・インサイトによって、2017年に最も影響力のあったアクティビストにも選ばれており、オランダの塗料大手アクゾ・ノーベルやアルミニウム加工製品の米アルコニックのトップを辞任に追い込むなど投資先の企業へ積極的に関与しています。

2001年にアルゼンチン政府が債務不履行に陥った際には、国債を大量に買い集め、15年に渡る裁判の末に勝利を収め多額の利益をあげています。

法廷闘争も辞さず、海軍の船舶を差し押さえるなどあらゆる手を尽くして利益を追求する姿勢は、まさに「ハゲタカ」という名がふさわしいファンドと言えます。

最近ではACミランを買収し話題となりました。日本企業に対してはアルプス電気(6770)との統合をめざすアルパイン(6816)株を5%保有しており、アクティビストとして関与してくるのかに注目です。

(写真:iBillionaire

9、ビル・アックマン氏

ビル・アックマン(Bill Ackman)氏は、ヘッジファンドPershing Square Capital Managementを率いる著名アクティビストです。

同ファンドの2017年の運用成果は4%のマイナスと冴えず、運用資産は87.7億ドル(2017年末)と過去2年間で約100億ドル縮小しており苦戦が続いています。

(写真:Photographer: Patrick T. Fallon/Bloomberg

10、村上世彰氏

村上世彰氏はかつて一世を風靡した旧村上ファンドの代表を務め、日本におけるアクティビストの先駆けとなった投資家です。

2000年に当時、東証2部に上場企業していた昭栄(3003・現・ヒューリック)に対し、日本で初めて敵対的TOB(株式公開買い付け)を行なったのを皮切りに、次々とアクティビストとしての活動を展開していきます。

2002年には東京スタイルの筆頭株主となり、内部留保によるファッションビル建設計画を中止し、その資金での自社株買いを求める株主提案を行います。

いずれの提案も否決され村上ファンド側は敗北します。しかし会社は誰のものか議論する契機となり、日本においてもアクティビストが一般的に知られるようになりました。

しかしその矢先の2006年、ニッポン放送株のインサイダー取引によって村上氏が逮捕されたことでファンドは解散し、表舞台からは姿を消しました。

その後2015年8月に、黒田電気の臨時株主総会で社外取締役選任提案を行い、アクティビストとしての活動を再開しました。

その後の黒田電気のTOBによって380億円近くを稼ぐなど、見事に復活を果たしています。

村上氏の個人会社であるオフィスサポートのほか、レノ、エフィッシモ・キャピタル・マネジメント、ストラテジックキャピタルなど、村上氏を含む旧村上ファンド出身者が立ち上げた投資会社は多く、日本のアクティビスト内で存在感を示しています。

アクティビストに馴染みの2000年代、歯に衣着せぬ村上氏の発言や要求には批判的な意見も多くみられました。

しかし株主利益を重視するという視点からみれば正論であるものも多く、時代の先を行きすぎていたとも言えます。

現在は外国人投資家の増加や企業統治ルールの改訂など、株主重視の経営がより強く求められるようになってきており、村上氏を含む旧村上ファンド勢がどのように活躍していくのか注目です。

(写真:Twitter @murakamifnd

まとめ

いかがでしたでしょうか。

最近ようやく日本でも受け入れられ始めてきたアクティビストですが、世界に目を向ければ、多くの名だたる企業の経営にアクティビストが関与しています。

株主価値の向上を目指すアクティビストの働きかけは、経営方針や株価をも左右するほどの影響力を持ち、彼らの投資する企業の株価は上昇しやすい傾向があります。

彼らの投資する銘柄やアクティビストへの投資を選択肢とすれば、投資の可能性はさらに拡がるはずです。