投資信託の3つの税金のしくみとNISAとiDeCoでかしこく節税する方法

投資信託を持っている方、運用状況はいかがでしょうか。証券会社の口座残高が増えていたり、分配金の領収証が届いたりするのを見るのは嬉しいものですね。

利益が出たときに発生するのが税金です。今回は、投資信託を保有・解約したときにかかる税金について説明していきます。また、トクする節税方法についても説明していきます。メディア「BIGTRADERS」がまとめた内容なのできっとご参考にしていただけるはずです。

今回の内容が投資信託に投資中で、税金が気になる方のご参考になれば幸いです。

1、投資信託の3つの税金とは?

投資信託にかかる税金は3種類あります。

利子所得、配当所得、譲渡所得です。

(1)利子所得

利子所得とは、簡単にいうと銀行にお金を預けて利子をもらうのが利子所得です。

公社債型投資信託や公社債をもっているひとは、お金を貸しているので利息が入ります。

それを受け取ると利子所得になります。

主な利子所得はつぎのものがあります。

・公社債の利子

・預貯金の利子

・公社債投資信託の収益分配金

・公募公社債投資信託の分配金

(2)配当所得

企業の利益の配当や株式投資信託の収益の分配のことを配当所得と言います。

利子所得と配当所得は、商品による違いであり、インカムゲイン(継続的な収入)、いわゆる分配金にかかるという点では同じです。税率も基本的には変わりません。

(3)譲渡所得

譲渡所得が発生するのは償還・解約・売却によるキャピタルゲイン(値上がり益)です。

分配金にかかる税金は、公社債投資信託の場合には利子所得、株式投資信託の場合には配当所得です。

両者の違いは株式を運用の対象にするかどうかです。実際のところ資産に組み入れているかどうかではなく、ファンドの約款にどう記載されているかによって判別します。

詳しい計算方法は後述しますが、税率や損益通算などの取り扱いはほとんど同じです。

以前は公社債投資信託・株式投資信託・上場株式の税制上の取り扱いに大きな差がありましたが、2016年の税制改正によってほぼ一本化されました。

つまり、個別の株式投資と投資信託における税金はほとんど同じといえます。

株式取引の経験者は、基本的に株式と投資信託は同様に扱うと考えましょう。

2、投資信託の税金:譲渡所得税の計算方法と節税する方法

(1)基本の計算式

投資信託を換金して手仕舞いする方法には、解約と償還の2通りがあります。

どちらも税金上の区分は株式の売却と同じ譲渡所得です。

計算方式はシンプルで、値上がりした分に一定の税率をかけることで算出します。

解約(償還)価額 – (購入価額+手数料)=譲渡所得(利益)

譲渡所得×20.315%※=譲渡所得税

※所得税15%+住民税5%+復興所得税15×2.1%=20.315%

例えば次のような場合を考えてみましょう。

99万円分の投資信託を販売手数料1万円で買い、107万円のときに解約請求します。

信託財産留保額(解約時にかかる手数料)が2万円かかり、105万円が手元に残りました。

107万円 – (99万円+1万円+2万円)=5万円(譲渡所得)

5万円×20.315%=1万157円(税金)

(2)確定申告は必要か

株式や投資信託などの口座には、一般口座と特定口座(源泉徴収あり)、特定口座(源泉徴収なし)の3種類があります。

このうち確定申告する必要がないと確実にいえるのは、特定口座(源泉徴収あり)です。

名前のとおり、証券会社が投資家の代わりに納税する源泉徴収を行うからです。

上記の例の場合、利益の5万円から税金の1万157円を差し引いた3万9843円が口座に入金されるわけです。

利益の計算も納税も業者がしてくれるので、税金に関して自分では何もすることがありません。

一般口座の場合は、自分でどれくらいの利益が出たか計算し、確定申告しなければなりません。

特定口座(源泉徴収なし)も自分で申告するのですが、利益の計算は証券会社がしてくれます。

ただし、サラリーマンの場合、給与所得以外の所得が年間20万円以下であれば確定申告の必要はありません。

本来、確定申告不要な人が源泉徴収あり口座を選択すると、税金を余計に払うことになります。

例えば投資で出た利益が年間10万円で、他に給料以外の収入がなかったとします。

源泉徴収あり口座の場合は2万315円が差し引かれた額が納税されますが、一般口座か源泉徴収なし特定口座の場合は申告自体しなくてよいので、税金を納める必要がないのです。

しかし実際にどれくらいの利益が出るのかは、どの口座を使うかを決める購入時にはわからないので、判断は難しいといえます。

投資金額から考えて確実に利益が年間20万円を下回るときには、源泉徴収なしの口座を選ぶのが得でしょう。

(3)損した場合は節税のチャンス

換金して損が出た場合はどうなるでしょうか。

もちろん税金は発生しません。

それどころか、

同じ年に分配金や他のファンドで利益が出ていたら、発生した赤字分を差し引くことができます。

これを損益通算といいます。

2016年以降、それまで別個だった株式と債券、投資信託を通算できるようになりました。

売却益
A株式 +40万円
B投資信託 -30万円
C債券 +5万円

このような場合、B投資信託の損がなかったとすると、A株式とC債券の売却益で約9万円の税金が発生しますが、この3つの取引は通算できるので、譲渡所得は15万円となります。

確定申告の必要もありません。

源泉徴収なし口座であれば納税しなくてよいということになります。

AとBを源泉徴収あり口座で売買していたら、確定申告して還付を受けましょう。

損益通算しても損が出た場合はどうなるでしょうか。

このようなときこそ確定申告してください。

赤字は3年間繰り越すことができます。

例えば今年30万円の赤字が出た場合、来年10万円、再来年20万円の利益が出たときにそれぞれ繰り越した赤字を差し引くことで所得をゼロにすることができるのです。

(4)継続して買っている場合

上記は株式投資の経験がある人にとっては、おさらいのような内容です。

ところで、投資信託は毎月一定額を積み立てるような買い方も人気です。

複数回にわたって購入した投資信託の一部を売却した場合、購入価額はどうやって計算すればいいのでしょうか。

国税庁のパンフレットによると、取得費(購入価額)は総平均法によるとしています。

つまり売却した証券すべての平均値です。

例えば次のように購入した投資信託30万口のうち、15万円を解約したときは以下のようになります。

金額 口数 基準価額(1万口あたり)
1回目 10万円 5万口 2万円
2回目 10万円 4万口 2万5000円
3回目 10万円 6万6667口 1万5000円
売却 31万5000円 15万口 2万1000円

(10万円+10万円+10万円)÷(5万口+4万口+6万6667口)=1.9148……(一口あたりの金額)

1.9148……×15万口≒28万7233円

31万5000円 – 28万7233円=2万7767円(利益)

2万7767円×20.315%=5640円(税金)

(5)さらに節税するためには

ここまでをまとめると、給与所得以外の所得が20万円以下の場合は、一般口座か特定口座の源泉徴収なしを選択すれば「確定申告をしない」ことで節税になります。

また、損が出た場合は損益通算と赤字の繰り越しを「確定申告をする」ことで活用し、税金をおさえることができます。

節税方法としてはもうひとつ、iDeCoやNISAなどの特別な税制を利用することがあります。

iDeCoについては後で説明しますが、NISAを簡単に紹介しておきましょう。

NISAは日本版少額投資非課税制度ともいい、専用の口座で売買した利益と配当所得について非課税となる制度です。

年間120万円までの投資について、購入後5年以内に売却すれば税金がかかりません。

5年超の長期保有を考えていないのであれば、ぜひとも利用をおすすめします。

NISAには未成年向けに年間80万円まで非課税投資が可能なジュニアNISA、上限は年間40万円までですが20年間の非課税期間があるつみたてNISAというバリエーションもあります。

3、投資信託の税金:分配金・利子所得の計算方法と節税する方法

(1)基本の計算方法

解約益・償還差益にかかる税金の計算方法が株の売却益と同じだったように、投資信託の分配金は株式の配当金と同様です。

株式投資信託の分配金にかかる配当所得は、投資信託の解約損や株式の売却と損益通算できます。

利子所得となる公社債投資信託も同じです。

基本的に特定口座(源泉徴収あり)に支払われることになり、その場合の税率は譲渡所得に対する税金と同じ20.315%となります。

配当所得の場合は自分で確定申告をすることができ、その場合は総合課税となります。

給与所得や事業所得、不動産所得などと合算した所得に対して、累進課税制で15~55%の税金(住民税含む)がかかる方法です。

計算にあたっては、2種類の分配金があることに留意する必要があります。

すなわち普通分配金と特別分配金です。

前者は純粋な運用益から配当される部分を指し、後者は元本を取り崩して支払われるものをいいます。税金がかかるのは前者のみです。

普通分配金×20.315%=税金(源泉徴収の場合)

(2)配当控除で節税できる

配当所得の場合、自分で確定申告をすると、配当控除によって税率を低くおさえられることがあります。

配当金に対して一定割合を、最終的に納める税金から差し引くことができる制度です。

なぜこのような制度があるのかというと、法人税と配当所得の2重課税を防ぐためです。

ファンドが運用で利益をあげ、その中から法人税を支払い、残った税引き後利益から投資家に分配金を払うという構造になっています。

ひとつの事業による利益から法人税と所得税の2つをとるというようなアコギな真似を、国はしませんということでしょう。

税金から控除できる金額は次のように計算します。

配当所得×配当控除率=配当控除額

配当控除率は、投資信託の資産内容および所得が1000万円を超えるか否かによって異なります。

資産の内訳 所得税

控除率

住民税控除率
①株価指数連動型ETFなどの「特定特定株式投資信託」 10% 2.8%
②外貨建て資産と株式以外の資産がともに50%以下 5% 1.4%
③外貨建て資産と株式以外の資産のどちらかあるいは両方が

50%超75%以下

2.5% 0.7%
④外貨建て資産と株式以外の資産のどちらかあるいは両方とも75%超 控除なし 控除なし

所得が1000万円超の場合、上記の1/2となります。

①は株式の配当と同じ控除率です。

実質的に株を持っているのと同じなので、配当控除も同じにしようという趣旨と考えられます。

例えばTOPIX連動型のETF(上場投資信託)は東証一部上場の全株式を少しずつ持っているようなものです。

そのため両者のあいだに税制上の差が生じると不公平になるといえるでしょう。

②以下は、2つの観点で考えます。

まず投資する資産が国外の場合は、日本国が税金を2重どりしているという問題が生じないので対象から外れます。

株式以外の債券などの場合はそもそも2重課税ではありません。

このような考えに基づいて、控除率が決められています。

投資信託の分配金における総合課税を少し簡単に整理すると次のようになります。

(給与所得+事業所得+配当所得……)×税率(所得金額によって異なる) – 配当所得×2.5~10%(配当控除の税率)=総合課税による所得税

配当控除は確定申告しなければ受けることができません。知っている人だけが得をする制度なのです。

(3)NISAやiDeCoで分配金も非課税に

先ほど紹介したNISAと、次に紹介するiDeCoは、分配金についても非課税となります。

証券会社によっては、受け取った分配金で同じファンドを購入する分配金再投資の設定ができることもあります。

税金がかからず、複利効果で資産が増えていく非常に有利な方法です。

4、投資信託の税金:iDeCoで節税!譲渡所得税だけでなく給与などの所得税や住民税も安くなる!

iDeCoは個人型確定拠出年金ともいいます。

最大の特徴は、分配金と譲渡益、両方とも税金がかからないことです。

さらに買い付けにかかったお金は所得控除の対象となります。

毎月一定額を積み立てる形になり、基本的に60歳になるまで口座から引き出すことはできません。

また、証券会社によりますが、年間3,000円~6,000円ほどの手数料がかかります(一部金融機関は無料です)。

運用商品は自分で選ぶことができ、口座の中であれば自由に売買できます。

毎月1万円ずつ通常の口座で投資信託を買った場合と、iDeCoで積み立てた場合を比較してみましょう。

1月から毎月購入し、12月最終営業日に換金したところ、13万円になったとします。

10月に5,000円分の分配金を受け取りました。

  • 元本:12万円
  • 償還額:13万円
  • 分配金:5,000円

<通常口座>

  • 譲渡所得税:(13万円 – 12万円)×20.315%=2,031円
  • 配当所得税:5,000円×20.315%=1,015円
  • 運用結果:13万円+5,000円 – 2031円 – 1015円=13万1,954円

<iDeCo>

  • 手数料:年間3,000円とします。
  • 譲渡所得税:かかりません。
  • 配当所得税:かかりません。
  • 所得控除:所得税率は20%、住民税率は10%、合計30%とします。

12万円×30%=3万6,000円

この所得控除は年末調整または確定申告することにより還付されます。

  • 運用結果

13万円+5,000円 – 3,000円+3万6,000円=16万8,000円

(このうちiDeCo口座が+13万5,000円、手元の現金が+3万3,000円)

運用結果は通常の口座を利用すると13万1,954円、iDeCoの場合は16万8,000円と大きな差が出ました。

運用に税金がかからないだけでなく、給与所得など他の所得から差し引くことができるのが大きいといえます。

iDeCoは将来のへの資産形成に向けて、非常に有効な運用方法なのです。

まとめ

投資信託にかかる税金には、譲渡所得、配当所得、利子所得の3つがあります。

譲渡所得は基準価額が上昇したときに売るとかかるキャピタルゲイン課税で、株式の売買と同様に取り扱い、損益通算も可能です。

分配金に対しては株式投資信託の場合は配当所得が、公社債投資信託の場合は利子所得がかかり、前者の場合は総合課税を選択することで配当控除を受け節税することができることがあります。

税率は配当所得の総合課税のみが所得の金額によって決まり、それ以外は所得税と住民税合わせて一律20.315%です。

いずれの税金も、NISAかiDeCoを活用することで非課税とすることができます。

投資信託にかかる税金についてご理解いただけましたでしょうか?

ご紹介した節税の方法を活用いただき、賢く資産運用を行いましょう。