投資信託で損失を出す人の原因は?発生したら損益通算・繰越控除を活用しよう

「投資信託で損失を出したくないのに、どうして損失を出してしまうのだろう?」と悩んでいる方は多いでしょう。元々、投資信託は株式投資や債券などのさまざまな資産に投資する金融商品であるため、大きな損失を出しにくい仕組みになっています。

しかし、投資信託を購入している個人投資家の半数近くが損失を出していると言われています。

 

投資信託には、元本保証があるわけではないため、損失を出してしまうことはあるでしょう。ただし、損失を出し続けたり拡大させたりするのは、投資家に原因があることがほとんどです。

そこで本記事では、投資信託で損失を出す理由や損失を少なくするためのポイント、損失を出してしまったときの対処法などを紹介します。また、個人投資家の約半数が損失を出している実態についてもお伝えしていきます。

投資信託で個人投資家の約半数が損失?

2018年6月に金融庁が発表した「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPIを用いた分析」において、投資信託を販売している主要な銀行9行と地域銀行20行を対象に、それぞれの顧客にどれくらいのリターンがあったかを数値化した指標が示されました。その中の「運用損益別顧客比率(※)」によれば、約46パーセントの個人投資家が、投資信託の購入によって損失を出したそうです。

あくまでも理論上の計算で算出された数字であるため、必ずしも投資信託を購入した投資家の46パーセントが、本当に損失を出したとはかぎりません。ただし、指標が示す程度の損失が発生していることは確かです。

 

損失の大きさからみるに、個人投資家が投資信託で損失を出すことは当たり前であることがわかります。ただ、投資信託を購入している投資家の中には、損をしやすい人とあまり損しない人がいるのも事実でしょう。

では、投資信託で損失を出しやすい理由は、どこにあるのでしょうか?

 

※「運用損益別顧客比率」とは、購入時から設定された基準日までに、顧客が保有している投資信託から出た累積運用損益を示す指標。

投資信託で損失を出す理由

続いては、投資信託で損失を出してしまう理由について解説しましょう。次の7つに分けて解説します。

  • 高リターンを求めている
  • 分配金を重視している
  • 流行りや耳寄り情報に流される
  • コストを軽視している
  • 買い付けタイミングが適当
  • 1つの商品に期待しすぎている
  • 目論見書を確認していない

理由1:高リターンを求めている

投資信託で損失を出しやすい人は、高リターンを求めている傾向にあります。高リターンを狙うと利益を出す可能性もありますが、損失を出しやすくもなります。

なぜなら、リターンとリスクは比例関係にあるからです。

 

投資におけるリターンとは値動きの幅のことで、リターンが大きいというのは利益と損失の両方が大きくなることを示しています。高リターンの投資信託には、例えば新興国株式投信やテーマ投信などがあります。

このような投資信託は短期間で高利回りとなる傾向にありますが、値動きが不安定で損失を出しやすいことでも知られています。損失を出しやすい人は、高リターンを狙って高いリスクを負っている可能性があると言えます。

理由2:分配金を重視している

投資信託の中には、定期的に分配金を受け取れるものがあります。分配金のある投資信託は、定期的に資金を受け取れることから根強い人気があります。

分配金をもらえると、得しているようにも感じるからですね。

 

しかし、分配金のある投資信託には注意が必要です。分配金は、投資信託の純資産総額から投資家へ支払われています。

純資産総額は、投資信託の値段(基準価額)を決めている一つの要素となっており、純資産総額が減ると投資信託の価格が下がってしまうのです。

投資では、安く買って高く売ることで利益を得るのがセオリーです。分配金があることで投資信託の価格が下がり、売却するときに損をしてしまうことがあるのです。

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理由3:流行りや耳寄り情報に流される

流行や耳寄り情報に流されるのも、損失を出してしまう原因になるでしょう。なぜなら、誰もが注目する投資信託は買いが先行して、自分が購入するときには高値掴みになってしまう恐れがあるからです。

人気のある産業の株式を扱っているテーマ投信は、販売会社が積極的に宣伝することもあり、短期間で買いが増え価格が上昇する傾向にあります。しかし、ずっと値上がりを続けることはなく、いずれブームは終わります。

 

すると、価格が急落し、結果として損をしてしまうのです。高値掴みになっているなら、損失はさらに大きくなるはずです。

このように、流行や耳寄り情報に流されると、損失を出してしまう恐れがあるでしょう。

理由4:コストを軽視している

コストを軽視していると、損失につながる恐れが強まります。なぜなら、1回に支払うコストは少ないと感じる一方で、何度も支払っていると大金になるからです。

投資信託には、主に次の3つのコストがあります。

  • 購入手数料
  • 信託報酬
  • 信託財産留保額

購入手数料は購入するときに発生する手数料で、信託財産留保額は投資信託を売却する際に必要な手数料です。信託報酬は運用会社への手数料で、投資信託を保有している間は、毎日支払いが必要になります。

1回に支払う手数料は、投資資金の数パーセントにすぎませんが、何度も支払うことで大きな支出になるのです。

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理由5:買い付けタイミングが適当

投資信託は、買い付けタイミングによっても損失を出す危険性が上がります。特にリスクが高いのが、まとまった資金の一括購入です。なぜなら、時間の分散ができないからです。

投資信託の価格は、毎日動いています。一括購入だと価格の基準が、その1回のみのものになってしまうでしょう。

 

例えば、ある投資信託を1万円のときに一度だけ購入したとします。あるときに5,000円まで価格が下落すると、5,000円の損失が出ますね。

一方、同じ投資信託を7,000円のとき、1万円のとき、1万2,000円のときなど、時期をずらして購入すれば基準価格が平均的になり安定していきます。

すると、大きな下落に耐えやすくなるのです。

理由6:一つの商品に期待しすぎている

投資信託は、もともと株式や債券など、さまざまな資産へ投資する金融商品であるため、価格の下落の影響が少ないです。ただし、一つの商品に頼ってしまうと、価格の急落で資産が減ってしまうことがあります。

投資信託には元本保証はなく、経済状況や投資先によっては大きな下落を招くことがあるからです。

 

近頃の例では、コロナ・ショックによって株式市場が急落し、損をした投資家は多くいたでしょう。その中でも、一つの投資信託だけしか購入していなかった投資家のダメージは、大きかったはずです。

理由7:目論見書を確認していない

ここまでお伝えしてきたことに通じる話ですが、投資信託で損をしやすい人は目論見書を確認していません。目論見書とは、投資信託の説明書のようなもので、例えば次のような内容が記載されています。

  • 手数料
  • リスク
  • 組入資産・銘柄

手数料を知らなければ、コストの低い商品に買い換えることはできません。リスクを知らなければ、リスクを下げる努力ができません。

目論見書を見ないということは、カンで投資信託を購入していることになり、とても危険です。

投資信託で損失を抑えるためのポイント

これまで、投資信託で損失を出してしまう原因をお伝えしてきました。損失を出し続けている方は、これから紹介する7つのことを意識してみてはいかがでしょうか?

いきなりすべてを改善することは難しいので、一つずつ取り組んでみてください。

  • 高リターンを狙いすぎない
  • 分配金を重視しない
  • 営業マンの話を鵜呑みしない
  • 目論見書をみてリスクを確認する
  • 低コスト商品を中心に購入する
  • 購入はドルコスト平均法を参考にする
  • 複数の商品の購入を検討する

ポイント1:高リターンを狙いすぎない

高リターンの投資信託は、リスクが高いことをお伝えしました。そのため、損失を避けたいなら高リターンの投資信託の購入を控えることをおすすめします。

高リターンの投資信託には、次のようなものがあります。

  • アクティブファンド
  • テーマ投信

どちらも積極的な運用で、高リターンを目指しているファンドです。損するリスクも高いでしょう。

では、どのような投資信託への投資が良いのでしょうか?ここでは、インデックスファンドへの投資をおすすめします。

理由は、インデックスファンドがリターンの比較的安定した投資信託だからです。

 

インデックスファンドとは、株価指数や債券市場指数などのベンチマークに連動する運用成績を目指す投資信託です。株価指数や債券市場指数は、ときに価格の暴落もありますが、その後には必ず回復し安定的に成長しています。

そのため、インデックスファンドはアクティブファンドやテーマ投信に比べて安定したリターンを得やすい投資信託であり、損するリスクも低いでしょう。

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ポイント2:分配金を重視しない

分配金のある投資信託は定期的に資金を受け取れるため、得した気になってしまいます。しかし、分配金のある投資信託は基準価額が下がりやすく、売却するときに損をしてしまっていることがあります。

以上のことを理解せずに、分配金のある投資信託を購入するのは危険です。

 

したがって、インデックスファンドなどシンプルに運用成果を把握できる投資信託の購入から始めてみることをおすすめします。投資信託の購入に慣れて、知識がついてきたところで、分配金のある投資信託を購入するのがおすすめです。

ポイント3:営業マンの話を鵜呑みにしない

銀行や証券会社の営業マンから、おすすめの投資信託を案内される機会があります。ただし、すべての話を鵜吞みにすることは危険です。

なぜなら、営業マンに都合の良い商品を案内している可能性が高いからです。例えば、宣伝費を受け取っていたり、手数料が高かったりなどです。

 

もちろん、中には親身になって相談に乗ってくれる営業マンもいます。ただし、営業マンにはノルマが課せられており、営業マンの都合でアドバイスされることが多いでしょう。

良い話は、自分のもとには来ないものだと考えておいた方が良いでしょう。

ポイント4:目論見書をみてリスクを確認する

投資信託の目論見書は、必ず確認するようにしましょう。特に確認したいのが、リスクです。

リスクを知れば、損失を減らしリターンを高める工夫ができるからです。

 

目論見書には、次のようなリスクが書かれています。

  • 価格変動リスク
  • 為替変動リスク
  • 信用リスク
  • 流動性リスク

例えば、流動性リスクとは、投資信託を売りたいときに買い手が見つからず、実際の価値より低い価格でしか売れない恐れのことです。

流動性リスクがあることを知っていれば、売れなくなる前に早めに売るという工夫ができます。知らなければ、そのような行動は思いつかないでしょう。

リスクをあらかじめ把握しておけば、損する可能性を少なくしリターンを多くする工夫を取りやすくなるのです。

ポイント5:低コスト商品を中心に購入する

投資信託のコストは、投資活動に重くのしかかってきます。そのため、コストを優先的に考慮すると良いでしょう。

今では、購入手数料がかからない「ノーロード」といわれる投資信託や、信託財産留保額のかからない投資信託もあります。運用会社間では、インデックスファンドの信託報酬を低くする競争が激化しています。

今後もまだまだコストが低くなる気配があります。

ポイント6:購入はドルコスト平均法を参考にする

ドルコスト平均法とは、投資信託を定期的に一定額で購入していく購入方法です。定期的に購入するので、先ほどお伝えした「時間の分散」ができます。

そのため、ドルコスト平均法を参考に投資すれば、価格の下落に強くなり継続的な利益が得られる可能性が上がるでしょう。

ポイント7:複数の投資信託の購入を検討する

一つの投資信託しか購入していない方は、複数の購入を検討しましょう。理由は、リスク分散できるからです。

例えば、投資信託Aと投資信託Bを購入したとしましょう。Aは価格の下落で5,000円損したのに対して、Bは価格が上がって、2,000円の利益を得られたとします。

 

すると、全体の損益はマイナス3,000円となって、Aだけを購入するよりも損失を少なくできるでしょう。

このように、複数の投資信託を購入することで、損失のリスク分散をして損失を少なくできるのです。

投資信託で損失を出したらやっておきたい対策

これまでお伝えしているように、投資信託に損失はつきものです。利益を永遠に出し続けられる人はいないはずです。

では、損失を出してしまったらどうすれば良いのでしょうか?ここで紹介するのは、損失をプラスにする方法ではなく、損失を活かす方法だと理解してください。

対策1:損益通算

損益通算とは、一定期間内に生まれた利益と損失を相殺することを言います。例えば、投資信託で10万円の損失を出したのに対して、株式で20万円の利益があったとしましょう。

本来、株式の20万円の利益には課税されますが、投資信託の損益10万円と相殺することで、課税金額を少なくすることができるのです。

 

損益通算は、利用している口座によって確定申告の要否が変わります。特定口座(源泉徴収あり)の同じ口座内であれば確定申告は要りませんが、別の金融機関口座との損益通算なら必要になります。

また、特定口座(源泉徴収なし)と一般口座は、確定申告が必要です。

対策2:繰越控除

繰越控除とは、一定期間に生じた損失を翌年以降3年間に渡って得られた利益から控除できる制度のことです。損益通算で、最終的に損失が残った場合に利用できます。

例えば、ある年の運用成績が損益通算後に10万円の赤字だったとしましょう。そして、その翌年に5万円の利益が発生したとすると、10万円の損失と5万円の利益を相殺し課税対象となる利益をなくすことができます。

 

相殺して残った5万円の損失も、さらに翌年に繰り越すことができるのです。繰越控除は確定申告が必要になるので、注意しましょう。

注意:損益通算・繰越控除はNISA・つみたてNISA口座ではできない

損益通算と繰越控除は、NISA・つみたてNISAの場合は活用できません。NISAとは、一定額の投資金に生じた利益に対して課税されなくなる制度のことです。

税金を支払わなくて良い代わりに、損益通算ができません。それでも、NISAやつみたてNISAの節税効果は大きいので、活用すると良いでしょう。

まとめ

投資信託に、損失はつきものです。一方で、損失を出し続けている方は、次のような原因のいずれかには当てはまるはずです。

  • 高リターンを求めている
  • 分配金を重視している
  • 流行りや耳寄り情報に流される
  • コストを軽視している
  • 買い付けタイミングが適当
  • 一つの商品に期待しすぎている
  • 目論見書を確認していない

損失を出したら、損益通算や繰越控除を活用できますが、そもそも損失を出したくないですよね。本記事で紹介した、損失を少なくするためのポイントを参考にしていただければ幸いです。