設定来の利回りが約400%と、脅威の成果を出している投資信託「ひふみプラス」。数年前から人気を集めており、気になっている人が大勢います。
しかし、「今から投資して間に合うの?」と感じている人も多いでしょう。
この記事では、ひふみプラスの特徴や注目されてきた理由を紹介し、今からひふみプラスに投資するメリットと注意点を解説します。今からひふみプラスに投資して良いのか迷っている方は、参考にしてみてください。
ひふみプラスの概要
まず、ひふみプラスはどのような投資信託なのかについて解説していきます。運用方針や手数料、最低投資額など、基本的な知識を押さえましょう。
運用方針
ひふみプラスは、日本の成長企業を中心に、国内外の上場株式で運用する投資信託です。アクティブ型投資信託で、投資する銘柄は運用会社が選定します。
運用会社は、敏腕ファンドマネジャーとして知られる藤野英人氏が率いる、レオス・キャピタルワークス株式会社です。多くの投資信託はインデックス型で、市場を代表する指数に連動するパフォーマンスを目指します。市場で取引できる銘柄に幅広く投資をして、市場平均並みの成果を狙います。
それに対して、アクティブ型はインデックス型を上回る成果を目指し、銘柄を厳選して資産運用を行います。ひふみプラスは、レオス・キャピタルワークスのファンドマネジャーらが将来有望と判断した銘柄を中心として運用する投資信託です。
純資産総額
2022年1月7日現在、ひふみプラスの純資産総額は約4,623億9800万円です。これは他の投資信託と比較してもかなり大きな規模で、投資家から多くの申し込みを受けたことを示します。
実際、日経新聞が公表している投資信託の純資産総額ランキングによると、同日時点でひふみプラスが20位となっています。国内には6,000本に上る投資信託があるので、ひふみプラスはトップクラスの純資産総額を誇っているといえます。
純資産総額が大きいことは、大勢の投資家が申し込んでいると言い換えられます。ひふみプラスは、多くの投資家たちから信頼を得ているのです。
基準価額
2022年1月7日時点、ひふみプラスの基準価額は49,166円です。2021年9月14日に55,758円と最高額をつけ、価格が少し戻したところです。
ひふみプラスが運用を開始した2012年の基準価額は10,000円で、概ね右肩上がりに推移し、約5万円まで価格が上がっています。順調に運用してきたファンドと評価できるでしょう。
利回り
2012年12月末時点における基準価額の変動は、下表のとおりです。
期間 | 基準価額の変動 |
---|---|
1ヶ月 | 1.32% |
3ヶ月 | -4.09% |
6ヶ月 | -1.02% |
1年 | 3.32% |
3年 | 53.54% |
設定来 | 410.81% |
コロナ禍に突入して株式市場が不安定化した背景もあり、数ヶ月間の短期の利回りではマイナスが出ることもありますが、他の投資信託でも珍しくない一般的な傾向です。
注目したいのが、1年以上の中長期における利回りです。直近1年は約3%と控えめでしたが、直近3年間は約50%です。これは、3年前に投資を始めた人の資産は現在1.5倍になっていることを意味します。
また、設定来の利回りは脅威の400%超えです。2012年の運用開始時から投資をしている人の資産は、現在5倍に成長していることを意味しています。
現在の利回りは少し落ち着いてきましたが、運用開始からの数年間、ひふみプラスは圧倒的な利回りを誇ってきました。そのため、注目を浴びる機会が多く、「ひふみプラスがおすすめ」と書くメディアやネット記事が急増しました。
手数料
投資信託はプロに運用を任せる商品のため、保有するには手数料がかかります。ひふみプラスも同様で、購入時手数料や信託報酬、監査費用といった手数料がかかります。
購入時手数料や解約時の手数料は、上限を3.30%(税込)として、販売会社(証券会社や銀行など申し込みをする会社)が手数料を定めます。楽天証券やSBI証券などのネット証券では、購入時手数料も解約時の手数料もゼロとなっていることが多いです。
レオス・キャピタルワークスに支払う手数料は、下表のとおりです。
手数料の名称 | 信託報酬 | 監査費用 |
---|---|---|
概要 | 投資信託の運用・管理にかかる費用で、日々計算される。信託財産の純資産総額に対し、以下の手数料率をかける。預ける資産額に応じて料率が異なる。 | 信託報酬と同様、日々計算されて毎計算期末または信託終了のときに信託財産から支払われる。 |
手数料率 | ・~500億円:年率1.078%(税込) ・500億円~1,000億円:年率0.968%(税込) ・1,000億円~:年率0.858%(税込) | 年率0.0055%(税込) ※上限は年間88万円(税込) |
個人投資家の場合、500億円を超える資産を預ける人は稀だと考えられるので、信託報酬は年率1.078%、監査費用は年率0.0055%となります。運用資産に対し、1年間でこれだけの手数料がかかります。
アクティブ型投資信託の信託報酬は、1%~2%程度の場合が多いので、ひふみプラスの手数料は一般的か良心的な水準といえます。
最低投資額
ひふみプラスの最低投資額は、販売会社によって異なります。投資を申し込む証券会社や銀行に確認しましょう。
人気のあるネット証券の楽天証券やSBI証券では、100円から投資を申し込むことができます。
ひふみプラスが注目されてきた理由
純資産総額でトップ20に入るなど、投資家たちから絶大な信頼を得ているひふみプラス。ここまで注目されているのには、理由があります。
ここでは、なぜひふみプラスが注目されてきたのか、その理由について解説していきます。
「カンブリア宮殿」に取り上げられた
ひふみプラスは、2017年2月16日に放送されたテレビ番組「カンブリア宮殿」で一気に注目を集めました。
カンブリア宮殿は、テレビ東京などで放送される情報番組で、日経新聞社がスポンサーとなっている番組です。小説家の村上龍さん、タレントの小池栄子さんが出演しています。
この番組にレオス・キャピタルワークスの社長兼CIOである藤野英人氏が出演し、ファンドマネジャーとしての実績が紹介されました。番組によると、2013年に純資産総額が121億円だったひふみ投信(ひふみプラスと同じ方法で運用する投資信託)が、2014年には250億円、2015年には553億円、2016年には1155億円と、倍々で純資産総額を増やしたのです。
カンブリア宮殿の影響は大きく、驚異的な成果を知った大勢の視聴者がひふみプラスに申し込みをしました。2017年2月以降、急激に純資産総額が増加したのは、番組の影響が大きいでしょう。
カリスマファンドマネジャーが運用している
カリスマファンドマネジャーとして知られる藤野英人氏が運用している点も、ひふみプラスが注目される大きな理由です。
藤野氏は、野村投資顧問(現・野村アセット)、JPモルガン・アセット、ゴールドマン・サックス・アセットなどで投資の経験を積んだプロフェッショナルです。JPモルガン時代には約200億円を約2,800億円にした実績で有名になり、「カリスマファンドマネジャー」としてマスコミにも追いかけられる存在になりました。
道を歩いていると、知らない人が「運がつくから」といって、藤野氏の身体をベタベタ触るほどの有名人になってしまったそうです。
ひふみプラスは、これほど実績がある人が立ち上げた投資信託で、きちんと実績も出ています。注目されるのは当然といえるでしょう。
高い利回りを出した実績がある
ひふみプラスが注目されるのは、高い実績を出しているからでもあります。
上述のとおり、2012年の設定から現在までで、基準価額は400%以上も増加しています。運用開始時から投資をしている人の資産は、たった8年で5倍と驚異的な速度で成長しているのです。
現在まで概ね右肩上がりで基準価額を伸ばしており、期待されるのは当然です。
今からひふみプラスに投資をするメリット
カンブリア宮殿で話題になったのが2017年なので、約5年が経過した現在、「今から投資しても遅いのでは?」と投資に踏み切れない人も多いでしょう。ここからは、今からひふみプラスに投資するメリットを解説していきます。
償還リスクが低い
今からひふみプラスに投資をする人にとって、いつまで運用が続くかは気になるところです。投資を申し込んですぐに、運用が終了しては意味がないからです。
ひふみプラスは純資産総額が大きく、償還リスクが低いというメリットがあります。少しの金融危機が起きても、簡単には運用は終了しないと考えられます。
現在一般的な投資信託は、運用終了の日時を決めず、無期限で運用を行っています。ひふみプラスもその一つです。
しかし、投資家からの申し込みが集まらなかったり、運用に失敗して資産が大きく減少したりしてしまうと、運用を終了せざるを得ません。
何らかの理由で運用を終了し、残ったお金を投資家に分配することを、「償還」といいます。純資産総額が小さい投資信託は、途中で償還されるリスクが高く、投資家にとって不本意な形で運用が終了する可能性があります。
一般的に、償還リスクが低い投資信託の目安は、純資産総額が100億円以上とされています。また、金額が大きいほど償還されにくい傾向があります。
特徴の項目でも解説したように、ひふみプラスの純資産総額は4,000億円以上あり、運用規模は十分に大きいです。また、一定の割合を現金で運用していることから、少しの金融危機で潰れるリスクは低いと考えられます。
長期的な資産運用に向いている
ひふみプラスは長期的な資産運用に向いている商品です。始めるタイミングはあまり重要ではないことも、今から始める人にとってのメリットです。
ひふみプラスはアクティブ型投資信託で、レオス・キャピタルワークスが厳選した銘柄に投資しています。しかし、運用規模が大きいので、市場にある幅広い銘柄に投資をしており、基本的にはインデックス型投資信託と似たような値動きをします。
投資先を広く分散しているので、相場の変動に強い特性があります。たとえば、ある投資先が不調で株価が下落しても、一部の資金しか投資していないので、運用資産全体に与える影響は軽微です。他の銘柄の利益が損失を補ってくれる可能性もあります。
こうした特性から、短期的に利益を上げるより、長期的にじっくり資産形成したい人に向いている商品です。始めるタイミングは成果にあまり関係ありません。
機動的な運用が期待できる
ひふみプラスの良いところは、ファンドマネジャーらの判断で機動的な運用ができることです。たとえば、2021年3月のコロナショックで、中国で最初の感染が確認された頃から、現金比率を上げるなど万が一に備えた対応を行ってきました。
実際にコロナショックが起きて世界の株価が同時に値下がりしたとき、ひふみプラスの基準価額も下がりましたが、下げ幅を限定することができました。また、コロナ禍で恩恵を受けると予想される企業も株価が下がっていたため、積極的に買い向かい、コロナが落ち着いてきてからの株価の上昇を味方につけることができました。
こうした機動的な運用ができるのは、アクティブ型投資信託ならではです。インデックス型の投資信託だと、決まった銘柄に淡々と投資を続ける仕組みであるため、先のリスクがわかっていても対処できず、市場の変動に身を任せる形になります。
機動的な運用ができ、しかも読みが鋭いところは、ひふみプラスの大きなメリットです。始めるタイミングに関係なく、今後もチャンスをものにしてくれると期待できます。
今からひふみプラスに投資をする際の注意点
今からひふみプラスに投資をするか考えている人のために、注意点も解説していきます。始めるタイミングに関係なく、一般的な注意事項です。
分配金はない
ひふみプラスは、分配金のない投資信託です。運用で生じた利益は再投資されます。投資家が利益を得られるのは、ひふみプラスを解約したタイミングです。
お小遣いがもらえると人気の毎月分配型の投資信託とは仕組みが違います。分配金が目的の方には、ひふみプラスは向いていないでしょう。
損失が生じるリスクはある
設定以来、ひふみプラスは高いリターンを上げてきましたが、損失が生じるリスクがないわけではありません。他の投資信託と同様に、損失が生じる可能性はあります。
実際、コロナショック時には基準価額が大きくマイナスとなりました。コロナショック直前に投資を始めた人は、いきなり大きなマイナスになり、焦ったかもしれません。ただし、その後の回復が目覚ましかったので、このときは継続保有で問題ありませんでした。
今後も同様に、マイナスが生じる可能性はあります。また、継続保有が常に正しいとは限らないことも、理解しておきましょう。
運用方針が変わる可能性がある
これまで成果を出してきたひふみプラスですが、運用方針が変わる可能性がないとはいえません。純資産総額が大きくなると。運用規模が小さかった頃と同じ方法での運用が難しくなり、運用方針を変えることは珍しくないからです。
実際に現在は、運用規模が大きくなったため当初とは運用方針が異なることでしょう。
ひふみプラスも、今後さらに人気が高まったり、大きな利益が出て純資産総額が大きくなったりしたら、さらに運用方針の変更が必要になるかもしれません。
また、藤野氏がいつまでレオス・キャピタルワークスを率いるかも気になるところです。1966年生まれの藤野氏は、2026年に60歳を迎えます。一般的には定年退職の年齢になり、もし引退するとなれば、次にひふみプラスを率いる人が運用方針を変更する可能性があります。
ただし、藤野氏が60歳を超えてからもひふみプラスのファンドマネジャーを務めることも考えられます。いつまで藤野氏がファンドマネジャーを務めるのかは、現時点ではわかりません。
手数料がインデックス型より高い
ひふみプラスの信託報酬は約1%で、一般的なアクティブ型投資信託と比べて標準的か良心的な水準です。しかし、インデックス型投資信託の信託報酬は1%未満である場合が多く、インデックス型と比べると手数料は高額です。
これまでのところ、ひふみプラスは大きな利益を出しているため、手数料がやや高くても気にならない人がほとんどでしょう。ただ、運用環境が悪くなり、ひふみプラスが利益を出せなくなったら、手数料が高額に感じられるかもしれません。
純資産が減少傾向にある
ひふみプラスの純資産総額は4,000億円を超え、国内でもトップクラスの規模を誇ります。信頼感のあるファンドですが、純資産総額の推移を見てみると、2018年中ごろまでは上昇し、その後は緩やかな減少傾向にあります。
もし減少が続いてファンドが維持できない規模まで運用資産が縮小すれば、途中償還に追い込まれてしまうかもしれません。
ひふみプラスに投資している筆者としては、純資産総額があまりに急激に増えたため、反動で緩やかに減少しているだけで、異常な減少は起きていないと考えています。特に、カンブリア宮殿の放送直後、2017年の純資産総額が異常に急増しただけで、流行に乗じて申し込んだ人が解約しているだけで心配はないと解釈しています。
まとめ
ひふみプラスはこれまで高い成果を出してきたファンドで、テレビ番組で紹介されたこともあり、大注目のファンドになりました。
「今から投資するのでは遅いかな?」と感じる方もいるかもしれませんが、始めるタイミングが重要な投資ではないので、今からでも遅いということはないでしょう。
ただし、注意点にも記載したようなリスクもあります。
だからこそ、投資を始めるときは、メリットと優位点をよく理解した上で、自分で判断するようにしましょう。
ひふみ投信は、資産総額が大幅に伸びた2017年ごろまでは国内の中小型株式をメインに保有する戦略でした。
しかし、今では資産総額が大きいため、中小型だけでは運用しきれず、国内外を問わない大型株式を多く保有する方針に変わっています。
以前のひふみ投信のような中小型株式を利用した投資方法や、投資先について詳しく知りたい方は、下記の記事もぜひご覧ください。