ヘッジファンドは一般的には馴染みがないためか、怪しい印象を持っている方もいらっしゃるでしょう。損失が出やすいという噂もありますが、本当なのでしょうか?
この記事では、ヘッジファンドの仕組みや他の商品との比較を通じて、ヘッジファンドで損失が出るリスクがどれくらいなのかを考察していきます。結論からお伝えすると標準的なリスクだと考えられるため、怖いイメージをお持ちの方は認識を変えるきっかけにしてみてください。
ヘッジファンドとは
ヘッジファンドとは、投資会社が投資家のお金を預かって資産を運用する投資商品です。株式や債券のように一般の個人投資家でも運用できる商品だけでなく、先物取引やオプション取引なども駆使して、投資会社に在籍するプロが運用を行っています。
「リスクが高く損失が出やすい」は誤解
ヘッジファンドは一般にはあまり馴染みがないためか、怪しいイメージを持っている方が多いです。よくわからないため、「ヘッジファンドで大損した」のような大袈裟な口コミを見ると、「やっぱり損失が出る怖い商品なんだ」と思ってしまっても仕方はないでしょう。
しかし、ヘッジファンドは他の投資方法と比べて必ずしもリスクが高いわけではありません。
確かに元本割れのリスクはありますが、それは他の投資方法も同様です。それに、ヘッジファンドの「ヘッジ」はリスクヘッジの「ヘッジ」です。
元々は守りの資産として生まれたもので、リスクを抑えて大きな利益を狙うこともできるのです。つまり、「ヘッジファンドはリスクが大きく損失が出やすい」という認識は、実態とは異なります。
損失が出ることもありますが、基本的にはリスクを下げて大きなリターンを取りに行く商品です。
ヘッジファンドで損失が出る場合
基本的には損失が出るリスクを抑える運用を行っているヘッジファンドですが、損失が出ないと決まっているわけではありません。元本保証ではないため、どんな場合に損失が出るのかについてお伝えしていきましょう。
どんなときに損失が出るのかがわかれば、ヘッジファンドだけが際立ってハイリスクとは言えないことがおわかりいただけるでしょう。
会社が運用に失敗したとき
ヘッジファンドを運用する会社が運用に失敗したら、投資家も損失を被ります。とはいえこれは他の投資方法でも同様で、投資を行う人の読みが外れたら、損失が出てしまうのは当然と言えます。
ヘッジファンドの場合、実際に運用する社員がいい加減な投資をしないようにする仕組みがあります。「他人のお金だから適当な運用で良い」と思われたら損失に向かって一直線ですが、そうならないような仕組みがあるのです。
その仕組みが「成功報酬」です。ヘッジファンドでは利益が出たり目標の収益を上回ったりしたら、運用を担当する社員は成功報酬をもらうことができます。運用に失敗したら得られないボーナスなので、社員も自分事として一生懸命運用してくれます。
ヘッジファンドが運用に失敗したら投資家は損失を被りますが、それは他の投資方法でも同じです。少なくとも適当な運用はされない仕組みが設けられているため、会社も損失が出ないように努力してくれます。
為替変動でレートが不利になったとき
海外にも投資を行うヘッジファンドの場合、為替変動リスクがあります。現地の通貨建てでは利益が出て運用が成功していても、為替変動の影響で日本円では損失が出ることがあるのです。
例えば、1ドル=100円のときに投資を始めたとしましょう。100万円を投資すると、1万ドルを運用することになります。
1年運用して利益が5パーセント出て、運用資産が1万0,500ドルになったとします。ドル建てでは利益が出ていますよね。
しかし、ここで為替が1ドル=90円と円高になっていた場合、1万0,500ドルを円換算すると94万5,000円になります。100万円を投資してドル建てでは利益が出たのに、円建てでは5万5,000円の損失が出ています。
このように、海外への投資を含むヘッジファンドの場合、為替変動によっても損失が出る可能性があります。先進国よりも新興国の通貨の方が為替変動リスクは大きくなる傾向があるため、ヘッジファンドに申し込みをする前にどの国の通貨に投資をしているかなど確認しておきましょう。
ヘッジファンドに投資するメリット
ヘッジファンドは確かに損失が出る可能性はありますが、それは他の投資方法でも同様です。むしろ、他の方法と比べて良い点もあります。
ここでは、ヘッジファンドならではのメリットを2つ紹介していきましょう。
プロに運用を任せられる
ヘッジファンドは投資会社に資金を預けて運用してもらうため、プロに運用を任せられるメリットがあります。投資の経験や知識が少ない初心者でも、ヘッジファンドに任せればプロ並みの成果を受け取ることができます。
プロだからといって確実に損失を避けられるわけではありませんが、初心者やアマチュアに比べれば損失を被るリスクは低いと考えられます。経験を積んだプロのトレーダーや、金融工学に詳しいアナリストなど、実力のある人に任せた方が運用成果が良くなるのは、当然とも言えます。
ちなみに、プロに運用を任せられる商品には他にも「投資信託」があります。ヘッジファンドと投資信託の大きな違いは収益目標で、ヘッジファンドのメリットと重なります。
絶対収益を目標にしている
ヘッジファンドの大きな魅力が、絶対収益を目標にしていることです。市場平均がプラスのときもマイナスなときも、ヘッジファンドはプラスの利益を出すことを目標にしており、「絶対収益」を掲げています。
一般的に、市場平均がプラスのときはどんな商品に投資しても儲かりやすいです。反対に、市場平均がマイナスで全体的に下落しているときは、どんな商品に投資をしても損失が出やすいです。
ヘッジファンドのように専門的な商品でリスクヘッジをしない限り、市場平均から外れた成果を出すことは難しいのです。
市場平均と比べて悪くならないことを目指すのが「相対収益」です。一般的な投資方法だと相対収益が妥当で、インデックス型の投資信託では相対収益を目指しています。
よって、ヘッジファンドと投資信託はどちらもプロに任せられる点が共通していますが、収益目標が違います。より高い利益を追求できるのはヘッジファンドなので、利回りの高さではこちらに軍配が上がるでしょう。
コロナショックによるヘッジファンドの明暗
ヘッジファンドが利益を出すか損失を出すかは、ファンドマネージャーの手腕にかかっています。大きな金融危機のときこそ結果が顕著に表れるため、コロナショックを例として紹介しましょう。
絶対収益を掲げてリスクヘッジを行っているため、損失が出にくい設計のヘッジファンドですが、コロナショックのような大きな金融危機があると、損失が出やすくなります。一方で、うまく立ち回ったファンドは市場が暴落したところで株式を買い集めることもでき、コロナショックからの立ち直りで大きく資産を伸ばしています。
うまく立ち回れたファンドはどうして大きな損失を回避できたのか、考察します。
コロナショックの下落が買い場になった
2020年2月20日から世界的に株価が暴落しました。この株式市場の下落をコロナショックと呼びます。
新型コロナウイルスの拡大が経済に悪影響を及ぼすと考えた投資家らが、保有している株式を売って利益を確定させようとしたことが原因の一つとして考えられます。
株価が下がると、さらに下落することに怯え、株式を手放したくなる人は多いです。一方で、暴落したら安く株式を買えるため、買い場だと考える人もいます。
コロナショックでは、後者の買い場だと考えた人が大きく利益を伸ばす形となりました。結果的に、約半年でコロナショックの前の水準まで株価が戻ったからです。
ヘッジファンドも同様で、資金に余力があった会社は、コロナショックを絶好の買い場として買い付けを行いました。一方で、暴落に巻き込まれて安い価格で株式を売却したファンドは、大きな損失を計上しています。
このようなファンドには投資家からの解約請求が殺到すると見込まれ、運用資産が減ってさらに挽回のチャンスが減ると考えられます。
このように、下落をものにできたかどうかによって、ヘッジファンドの明暗は決まりました。大きな損失を食らわなかったヘッジファンドは、暴落への備えができていたのです。
コロナショック前の備えが重要
コロナショックは、予想できる暴落だったのです。実際に、多くのヘッジファンドは早々に市場から資金を引き上げ、現金や金に換えるなど、大損しないように対策していました。
彼らがなぜコロナショックを予想できたのかと言うと、世界で初めての感染者が出てから市場に影響が出るまでに1ヶ月以上の時間があったからです。世界で初めての患者は2019年12月末に確認されたため、優れたヘッジファンドのマネージャーたちは、この時点で最悪のシナリオを考えていました。
金融業界でリスクを考えるときは、地震や台風などの自然災害リスクと同時に、パンデミックリスクも検討するものです。ファンドマネージャーたちにとっても、パンデミックは想像の範囲内だったと言えます。
コロナショックでもプラスになったファンドは、2019年12月に感染者が確認された時点でパンデミックシナリオを想定し、2020年1月からは一部のリスク性資産を売却して現金化していました。そのため、2020年2月のコロナショックの影響を最小限に留めることができたのです。
勝ち組・負け組が分かれる結果になった
1人目の感染者が確認された時点で対策できたかどうかが、コロナショックにおけるヘッジファンドの明暗を分けたと言えます。コロナショックの暴落を直接受け、50パーセントに近い損失を出してしまったファンドもあります。
うまく乗り切ったファンドはコロナショック前の水準に戻ったり、それを上回って評価額が史上最高を更新していたりします。
例えば、アクティブ型投資信託の「ひふみプラス」は、2020年9月の頭に設定来の最高値を更新しました。これは投資信託ですが、アクティブ型で運用方法はヘッジファンドに近いので、例としてふさわしいと思います。
このように、ヘッジファンドは運用するファンドマネージャーの手腕によって明暗が分かれる商品です。ヘッジファンドで損失を出さないようにするには、ファンドマネージャーが「守りの運用もできるかどうか」が重要です。
ヘッジファンドと他の投資方法の比較
投資をするなら、利益が得られる期待だけでなく、損失を被るリスクも覚悟しておかなければなりません。とは言っても、商品によって損失の出やすさは異なります。
一般的にリスクとリターンは比例するため、損失を避けたければローリスク・ローリターンの投資方法を選べば良いのです。
ここでは、ヘッジファンドの他の投資方法も解説していくので、損失の出やすさを比較していきましょう。低リスクな運用を行いたい方は、損失の出にくさを基準に考えてみてはいかがでしょうか?
インデックス型の投資信託
投資信託には「インデックス型」と「アクティブ型」の2種類があり、アクティブ型はヘッジファンドに近い自由な運用が行われています。ここでは、ヘッジファンドとインデックス型の投資信託を比較しましょう。
結論からお伝えすると、インデックス型の投資信託の方がリスクが低く、大きな損失は出にくいです。
インデックス型では相対収益を目指すため、損失が出ても市場平均と同程度になります。利益も平均と同程度なので、「大きく得をする商品ではないが、大きく損をする可能性も低い」というとてもマイルドな商品です。
一方で、ヘッジファンドはさまざまな商品を組み合わせて市場平均を超えようとする絶対収益のアプローチを採用しています。コロナショックの項目でも解説したように、ファンドマネージャーの手腕によっては運用がうまく行かず、大きな損失が出る可能性もあります。
そのため、より損失を抑えたいならインデックス型の投資信託の方がおすすめです。
投資信託のインデックスファンドを選ぶとき、多くの投資家が重視するポイントは申込手数料や信託報酬などのコストです。ただ、最近では信託報酬を徹底的に抑えたファンドが増えており、選択肢が豊富になった分、ファンド選びで悩む人も多いと思います。 そ[…]
株式
株式は、企業に出資を行い、利益の一部を配当としてもらえる投資商品です。買ったときよりも株価が値上がりすれば、売却して差額を儲けとすることもできます。
ヘッジファンドと株式は同程度のリスクだと考えられますが、ヘッジファンドの方がややリスクが低い傾向にあると思います。
というのも、株式はヘッジファンドの運用の中核だからです。かつ、株価の下落に対するリスクヘッジを行っていることから、ヘッジファンドの方が損失が小さくなりやすいと考えられます。
FX
FXは、為替変動を利用して稼ぐ方法です。FXとヘッジファンドなら、ヘッジファンドの方が低リスクであると言えます。
FXの場合、レバレッジを効かせて自分のお金以上に金額を運用することができます。利益も大きくなる分、損失も大きくなってしまいます。
損失が膨らみすぎ、かつロスカットが正常に作動しなかった場合、借金を負ってしまうリスクがあります。
ヘッジファンドの場合、投資をしたお金を上回る損失を被ることはありません。借金するほどの損失は出ない構造になっているので、ヘッジファンドの方がずっと低リスクです。
リスクが高いヘッジファンドの特徴
「ヘッジファンドで損をした」と話す方の中には、そもそもヘッジファンド会社ではなく、詐欺会社の被害に遭ってしまった方もいます。ヘッジファンドを名乗って悪質な商売を行う人々もいるため、次のような特徴がある会社は怪しいと思ってください。
「絶対に儲かる」と誘ってくる
投資に「絶対」はあり得ないのに、「絶対に儲かるよ」と誘ってくるのは、間違いなく詐欺です。中には銀行預金の通帳やその写真を見せて、「こんなにお金が入金されて儲かる!」とアピールして来る人もいます。
しかし、そんなものは簡単に偽造できます。何の証拠にもならないので、信用しないでください。
元本保証を掲げている
元本保証を掲げている会社も間違いなく詐欺です。まともなヘッジファンド会社は、「損失が出るリスクもある」ときちんと説明してくれます。
それでも引っかかってしまう人が後を絶たないのは、「儲けたいけど元本割れは怖い」と考えている人が多いからでしょう。
投資をするなら、元本割れのリスクは必ずついて回ります。銀行預金ではない投資の場合、元本保証をアピールするのは詐欺です。
高い利回りを保証している
高すぎる利回りを宣伝することも、詐欺会社の特徴です。
手口は意外と巧妙で、「月利2.5パーセント」など一見そこまで利回りが高くはないように見せかけています。しかし、月利とは1ヶ月間の利回りのことで、ここに引っ掛けがあります。
毎月2.5パーセントの利益を出すには、1年で約30パーセントの利益を出さなければなりません。一般的な投資商品だと年利2パーセントから7パーセントほどの利回りといったところで、超優秀なヘッジファンドでも平均して20パーセント出れば良い方です。これを踏まえると、月利2.5パーセント、つまり平均年利30パーセントを保証することには明らかに無理があります。
このように、高い利回りを約束しているファンドも詐欺の可能性が高いです。そんなに儲かるうまい話などありませんので、注意してください。
まとめ
ヘッジファンドは損失が出やすいのかを中心に解説してきました。ポイントをまとめておきましょう。
- 投資なので損失が出るリスクはある
- 他の商品と比較してヘッジファンドが不利なわけではない
- コロナショックをうまく切り抜けたファンドもある
- 詐欺に引っかかって損する人もいるので要注意
ファンドマネージャーが優秀だと、大きな利益も狙えるのがヘッジファンドの強みです。確かに損失が出るリスクはありますが、他の商品と比べてリスクが大きいわけではないため、投資先の候補として考えてみてください。
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