NISA口座開設するならどこがいい?6つの開設先を徹底比較

税制面で優遇されるNISAは、証券会社のほか、銀行や郵便局(ゆうちょ銀行)でも口座を開設することができます。

ただNISAならどこも同じだと思って、よく考えずにいつも使っている銀行でNISA口座を開設してしまうと、あとで後悔することになるかもしれません。

ではNISA口座をどこで開設すればいいのか、6つの開設先を比較しながらみていくことにしましょう。

1、まずは、NISAの特徴を知りましょう

まずはNISAとはどのようなものなのか、その特徴を理解しておきましょう。

(1)NISA口座で購入した商品にかかる税金は非課税

NISA口座のメリットは、税制優遇が受けられるということです。

具体的にはNISA口座で購入した商品の売却益・配当金・分配金にかかる所得税・住民税が5年間非課税となります。

非課税枠は2016年以降年間120万円までとなっており(2015年までは年間100万円)、5年経過後に翌年の非課税枠へ繰り越すことによって最長10年間の非課税措置を受けることができます。

その年に使い切らなかった非課税枠は、翌年に繰り越すことはできません。

また一度利用した非課税枠は再利用できないため、購入した商品を5年以内に売却した場合でも、その非課税枠では非課税措置を受けることはできません。

商品を購入後5年間保有し続ければ、5年分の売却益・配当金・分配金がすべて非課税となりますが、1年で売却してしまえば、残り4年間の非課税措置はありません。

そのためNISAは基本的に長期保有向きの仕組みだと言えます。

ただし保有商品の価格が大きく値上がりした場合や投資商品の先行きに不安がある場合など、早めに利益(損失)を確定した方が有利な場合もあるため、長期保有を基本にケースバイケースで売却の判断は必要です。

(2)NISA口座で購入できる商品

NISA口座では、投資信託や株式を購入することができます。購入できる商品はNISA口座を開設する金融機関によって異なり、これもどこで口座を開設するかを決める重要な要素となります。

商品銀行証券会社
投資信託国内公募株式型投信、外国公募株式型投信 など
国内株式国内上場株式、国内上場ETF、国内上場REIT など×
外国株式外国上場株式、外国上場ETF など×

(3)1人1口座まで

NISA口座は、同じ年には1人1口座しか開設することができません。

口座を開設できるのは日本国内に住む20歳以上の人です(19歳以下はジュニアNISAの対象)。

金融機関が違ってもダメ、つみたてNISAとの併用もダメです。

口座を開設する金融機関を変更することは可能ですが、すでにその年の非課税枠を使ってしまっていれば、翌年以降にしか変更はできません。

そのため、どの金融機関で口座を開設するかは慎重に考えて選ぶ必要があります。

2、NISA口座開設できる金融機関を比較してみよう

では、実際にどの金融機関で開設すればいいのでしょうか。

ここではNISA口座開設できる主な金融機関を、大きく6つに分けてそれぞれ比較してみましょう。

金融機関購入できる商品コスト対面での説明
投資信託株式購入時手数料
(税込)
対面式証券会社
(大和証券)
353本【投資信託】
〜3.24%
【株式】
最低1,080円
ネット証券会社
(SBI証券)
2,490本以上【投資信託】
〜4.32%
【株式】
無料
×
都市銀行
(みずほ銀行)
256本〜3.78%
地方銀行
(横浜銀行)
146本〜3.24%
ネット銀行
(イオン銀行)
279本〜3.24%
*実質無料
(WAONで返金)
×
郵便局
(ゆうちょ銀行)
108本〜3.24%

2018年3月20日時点

まず銀行では株式を取り扱うことができません。

そのため、NISA口座で株式を購入したいと思っている場合には、証券会社で口座を開設する必要があります。

投資信託については、ネット証券会社のラインナップ充実度が突出しています(*証券会社にもよります)。

コスト面では、まず株式の購入時手数料無料の会社が複数あるネット証券会社に優位性があります。

投資信託の購入時手数料については商品により幅がありますが、手数料無料のノーロードファンドも充実しているネット証券が有利だと言えるでしょう。

商品内容や手続きなどの説明を対面で受けたい場合には、店舗のある対面型証券会社や銀行、郵便局が選択肢となります。

しかしネット証券やネット銀行であっても、必要な情報はサイト上に公開されており、コールセンターなどを利用することもできます。

逆に、対面では金融機関側が売りたい商品を勧誘されることもあるため、それを煩わしく感じる方もおり、対面で説明を受けることには一長一短があると言えます。

3、初心者にオススメの証券口座

上記の比較を踏まえれば、どうしても対面で説明を受けたい、あるいはネットがどうしても苦手という場合を除けば、ネット証券でNISA口座をを開設するのがオススメだと言えるでしょう。

ネット証券の中でも、商品ラインナップの充実度やコストの安さなどで「SBI証券」と「楽天証券」が特におすすめです。

SBI証券楽天証券
国内株式売買手数料0円0円
投資信託取扱本数2,490本以上2,464本
ノーロード取扱本数1,200本以上1,193本
外国株式取扱国数9カ国6カ国
売買手数料(税込)
*米国株式
約定代金の0.486%
(最低5米ドル・上限20米ドル)
海外ETF取扱本数298本351本
海外ETF買付手数料0円全額キャッシュバック
海外ETF売却手数料約定代金の0.486%
(最低5米ドル・上限20米ドル)

2018年3月20日時点

4、NISA口座開設の流れ

NISA口座は、日本に住所があり20歳以上であれば誰でも開設することができます。

(1)既に口座を開設している金融機関でNISA口座を開設する

すでに口座のある金融機関(銀行・証券会社)に口座を開設する場合には、基本的に「NISA口座開設申請書」の提出だけで開設することができます。

  1. 口座のある金融機関に「NISA口座申込書」「本人確認書類」を提出

(マイナンバーが未提出の場合には、マイナンバーの提出も必要となります。)

  1. すでに別の金融機関でNISA口座開設されていないか税務署がチェック
  2. NISA口座開設完了

(2)口座のない銀行でNISA口座を開設する

口座のない銀行でNISA口座を開設するには、まずその銀行に口座を開設し、あとは(1)と同じ流れとなります。

  1. 「預金口座」と「投資信託口座」を開設
  2. 口座開設後、「NISA口座申込書」「本人確認書類」を提出

(マイナンバーが未提出の場合には、マイナンバーの提出も必要となります。)

  1. すでに別の金融機関でNISA口座開設されていないか税務署がチェック
  2. NISA口座開設完了

(3)口座のない証券会社でNISA口座を開設する

口座のない証券会社でNISA口座を開設するには、まずその証券会社に口座を開設し、あとは(1)と同じ流れとなります。

  1. 「証券口座」を開設
  2. 口座開設後、「NISA口座申込書」「本人確認書類」を提出

(マイナンバーが未提出の場合には、マイナンバーの提出も必要となります。)

  1. すでに別の金融機関でNISA口座開設されていないか税務署がチェック
  2. NISA口座開設完了

(4)マイナンバー提出義務あり、住民票の写しは不要に

2018年以降にNISA口座開設するには、マイナンバーの提出が義務付けられました。

これに伴い、それまで添付書類となっていた住民票の写しは不要となっています。

(5)NISA口座開設の申込みから開設完了までは2〜4週間程度

NISA口座を開設をする際には、すでに別の金融機関でNISA口座が開設されていないかを税務署に確認するのに1週間〜2週間程度かかります。

これに証券会社の事務処理や郵送にかかる日数などが加わり、NISA口座開設の申込みから開設完了までには通常2〜4週間程度かかります。

5、NISA口座の活用術

口座が開設できれば、NISAで資産を増やしていく準備は完了です。

では実際にNISA口座をうまく活用するために、基本となるポイントを押さえておきましょう。

(1)まずは投資スタンスを明確にする

短期投資で短期的な値上がり益を重視するのか、長期投資で着実な価格上昇や配当を重視するのか、商品を購入する前に投資スタンスを明確にしておくことがNISA口座をうまく活用する第一歩となります。

投資スタンスを明確にすることよって、どのような商品を購入するのかがある程度定まってきます。

NISA口座の最大のメリットは5年間の非課税措置であり、仕組みからすれば5年間以上継続して保有する長期投資が有利だと言えるでしょう。

ただ5年以内に売ってはいけないというわけではなく、商品によっては短期で利益を確定した方が有利な場合もあります。

①短期投資で値上がり益を重視する人におすすめの商品

  • テーマ性や成長性の高い小型株
  • 一時的な要因で株価が大きく下がった優良株

市場で注目されているテーマに関連した企業や成長性が高い企業や、一時的な要因で株価が大きく下がった銘柄は、短期間で大きな値上がりが期待できます。

特に小型株は、株価が動きやすく短期間で10倍以上に値上がりする銘柄(テンバガー)などもあります。

例えば10万円で買った株が100万円まで値上がりすれば、90万円の利益となります。

通常はこれに20.315%の税金(約18万円)がかかるため、手元には70万円ちょっとしか残りません。

しかしNISA口座で購入していれば、90万円そのまま受け取ることができます。これは実質的にリターンが20%プラスになったのと同じ効果です。

②長期投資で着実な価格上昇や配当を重視を重視する人におすすめの商品

  • 投資信託(特にインデックスファンド、ノーロードファンド)
  • 財務状態が安定した高配当株

投資信託は基本的に長期保有が前提となる商品です。

特に株価指標に連動するインデックスファンドの価格は、経済が発展していくことで理論上右肩上がりとなることとなるため、長期で保有するほど有利と言えます。

ただ日経平均株価はここ数年上昇基調になりましたが、他の国に比べ動きが鈍い傾向があります。そのためより右肩上がりの傾向が強いNYダウやS&P500など米国株式指数に連動する投資信託や海外ETFなどもおすすめです。

またインデックスファンドは、保有中にかかる信託報酬などの運用コストが投資信託の中では安く、長期保有向きの商品だと言えます。

(2)非課税枠をちびちび使う!

NISA口座の非課税枠は年間120万円です。

この120万円の枠をどう使うのかは自由で、1つの銘柄で120万円使い切るのも、10万円ずつ12銘柄買うのもありです。

120万円で買った銘柄に絶対の自信があって、それ以外の銘柄は考えられないというのであれば一点買いでも全く問題ありません。

結果的に大きな利益がつながることもあります。

でもその銘柄が予期せぬ事態によって価格が急落すれば、せっかくの非課税メリットもすべて無駄になってしまいます。

このようなリスクを下げ、より安定した利益を狙うためには、業種を分散したり、同じ銘柄でも投資するタイミングをずらしたりするなど、非課税枠をちびちび使って商品を購入していくというのもNISA口座の有効な活用法です。

6、NISA口座の注意点

メリットの多いNISAですが、注意点もあります。NISAを活用する際には、これらの点をよく理解した上で利用するようにしましょう。

(1)利益も損失もなかったことになる(損益通算・損失繰越できない)

NISA口座では値上がり益や配当など利益が出れば、その利益に対する税金が非課税となるメリットがあります。

では商品の価格が下がってしまい、途中で売却して損失が確定した場合にどうなるかというと、特になにも起こりません。

なにもないだけであればいいですが、NISA口座で生じた損失は、NISA口座以外の特定口座などで生じた利益と相殺すること(損益通算)ができないのです。

NISA口座内の別の商品で生じた利益とも相殺されません(NISA口座内の利益はもともと非課税なので、利益を相殺するメリットがそもそもありません)。

そのため、同じ商品を購入して同じ利益・損失が出た場合でも、どの口座で商品を購入したのかによって、税額に差が生じることになります。

A商品で100万円の利益、B商品で50万円の損失が出た場合
損益購入口座課税対象損益税額
(20%)
A商品(利益)100万円特定口座損益通算
100-50万円
(利益)
50万円
10万円
B商品(損失)?50万円特定口座
A商品(利益)100万円特定口座(利益)
100万円
(利益)
100万円
20万円
B商品(損失)?50万円NISA口座無視
A商品(利益)100万円NISA口座無視(損失)
?50万円
0円
B商品(損失)?50万円特定口座(損失)
?50万円
A商品(利益)100万円NISA口座無視0万円0円
B商品(損失)?50万円NISA口座

1年間でA商品とB商品のみを購入したと仮定

また、その年の株式や投資信託で生じた損失が利益を上回った場合に、確定申告することで翌年以降3年間に損失を繰り越せるという仕組みが、NISA口座では使えません。

特定口座など課税口座では、2016年に100万円の損失、2017年に50万円の利益が出た場合を仮定すると、確定申告による損失繰越によって2017年の課税所得は▲100万円+50万円=▲50万円となり、2017年に出た50万円の利益に対して税金がかからなくなります。

もし2016年の100万円の損失がNISA口座で生じていたとすると、2017年の50万円の利益には通常通りに課税(50万円×20.315%=101,575円)されることになります(NISA口座で生じた利益であれば非課税)。

(2)損失が出ているのに課税される場合がある

NISA口座で購入した商品は、購入してから5年経つと課税口座(特定口座)に移す(移管)か、翌年の非課税枠へ繰り越す(ロールオーバー)かを選択しなければなりません。

その際、取得価格は移管(・ロールオーバー)する時点の時価に更新されることになっています。

例えば50万円で取得した商品の価格が移管(・ロールオーバー)する時点で30万円になっていた場合、取得価格は30万円へ変更されます。

その後その商品の価格が40万円になったときに売却すると、取得価格(30万円)との差額10万円が利益として課税されてしまうのです。

実際には50万円で購入して40万円で売却しているため、10万円の損失が出ています。

それにもかかわらず税金まで取られるという、まるで傷口に塩を塗られるような状態です。

このように、NISA口座ならどんな商品を購入しても有利な運用ができる訳ではないということには注意しましょう。

少なくとも値下がりしなければ配当に対する非課税の恩恵を受けることができるため、普通に投資するのと同じように、しっかり商品を選ぶことが大切です。

(3)NISA口座で購入した商品は代用有価証券として使えない

信用取引を行う際に証券会社に預けなければならない証拠金(担保)としては、現金だけでなく、保有している株式などを使うことができるようになっており、これを代用有価証券と言います。

課税口座で保有している株式はだいたいその評価額の8割相当の証拠金として利用巣できるのに対し、NISA口座ではそれができません。

(4)金融機関の変更は1年に1回

NISA口座を開設した金融機関を変更できるのは年1回であり、すでにNISA口座で取引がある場合にはその年から変更することはできません。

金融機関変更の手続きができる期間は、変更したい年の前年10月1日から翌年(変更したい年)の9月30日までです。

ただこれでも2015年に制度が改正され、条件はかなり緩和されています。

またA証券からB証券に変更する場合、A証券で変更前に購入した商品についても、A証券で保有し続けていれば、5年間は非課税措置を受けることができます。

ただしB証券のNISA口座に移管するということはできません。

このように金融機関は変更できないというわけではないものの、タイムロスが生じることになります。

なんとなく銀行で口座を開設してしまい、よさそうな株が見つかってNISA口座で買いたいと思ってもすぐには金融機関を変更できず、投資のタイミングを逃してしまうということもあり得ます。

どの金融機関で口座を開設するかは、よく考えて決めることが大切です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

NISA口座はうまく活用すればかなりおいしい制度です。

NISA口座をうまく活用するためには、口座を開設する金融機関が重要な要素であり、しっかりと考えて選ばなければなりません。

その際には自分がどのような投資をするのかによって金融機関決めることが大切ですが、途中で考え方が変わることもあるでしょう。

そのため、なるべく選択肢の広い金融機関のほうが後々都合が良いと言えます。

そういった点では、コスト面なども含めてネット証券がおすすめです。

この記事でご紹介した金融機関などを参考にしていただければ幸いです。