毎年秋から冬にかけて流行する「インフルエンザ」。
この時期にはインフルエンザ関連銘柄が物色され動意づくこともあります。
インフルエンザシーズンの到来に備え、関連銘柄をチェックしておきましょう。
1、インフルエンザとは
インフルエンザは、インフルエンザウイルスがのどや気管支、肺に感染、増殖することによって発症する病気です。発症者は0~9歳の子どもが約半数を占めています。
免疫力の弱い子どもや高齢者などが発症し重症化すると、インフルエンザ脳症や肺炎などの合併症を引き起こし、最悪の場合に死に至ることもあります。
(1)インフルエンザの種類
インフルエンザには原因となるウイルスの種類によって、大きくA型、B型、C型の3つの型に分類されます。
A型インフルエンザ | ウイルスが次々と変異していくため、ワクチンや免疫が機能しにくく、大流行につながりやすい。スペインかぜ(H1N1型・ソ連型)や香港かぜ(H3N2型・香港型)など多数の死者を出す世界的大流行(パンデミック)を何度も起こしている。鳥インフルエンザや豚インフルエンザなどのA型の一種。 |
症状はもっとも激しい。 【主な症状】 | |
B型インフルエンザ | かつては数年単位で定期的に流行していたが、近年は毎年流行する。人と人の間でしか感染しない。 |
A型に比べ症状は穏やか。 【主な症状】 一般的な風邪のような症状に加え、下痢、腹痛など | |
C型インフルエンザ | ほとんどの大人は免疫を持っており、発症するのは4歳以下の幼児が多い。症状は軽く発症してもインフルエンザと気付かない程度。 |
一般的な風邪程度の症状 【主な症状】 鼻水程度で、他の症状は現れない場合も多い |
(2)流行時期
インフルエンザは例年11月末〜12月頃にかけて患者数が増加し始め、1月末〜2月上旬に流行はピークとなります。
過去10年間の定点医療機関あたりのインフルエンザ患者数のグラフでは、概ねその傾向が確認できますが、2009年には新型インフルエンザが大流行したことで、例年とは異なり11月に患者数がピークとなりました。
2018年については第41週時点では例年通りの推移となっています。
過去10年間のインフルエンザ 定点当たり報告数の推移
(出所:国立感染症研究所「インフルエンザ過去10年との比較」より作成)
(3)インフルエンザの予防(ワクチン)
インフルエンザは感染症であり、予防法を実践することで感染確率を下げることができます。
① 手洗い・うがい、マスクの着用
手洗い・うがいによって、身体に付着したインフルエンザを物理的に除去することが、感染予防のもっとも基本です。
流行シーズンには人混みなどをなるべく避け、やむを得ず外出する際にはマスクを着用するなど、ウイルスとの接触や身体への侵入を防ぐ対策が有効です。
②インフルエンザワクチンの接種
インフルエンザワクチンは不活性化した(感染力のない)インフルエンザウイルスを注射し、あらかじめインフルエンザウイルスに対する免疫をつくっておき、感染しても発症しないようにするためのものです。
インフルエンザの発症を抑え、発症した場合には重症化を防ぐ効果があります。
現在日本で広く提供されているインフルエンザワクチンは、4つの型に効果がある「4価ワクチン」といわれるものになります。
この4つの型は、WHOが推奨する型の中からその年にどの株が流行するかを予測し、有効性や供給可能量を考慮した上で決定されます。
ちなみに2018/2019冬シーズンは、以下の4つの型となっています。
A/Singapore(シンガポール)/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09
A/Singapore(シンガポール)/INFIMH-16-0019/2016(IVR-186)(H3N2)
B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)
B/Maryland(メリーランド)/15/2016(NYMC BX-69A)(ビクトリア系統)
(出所:国立感染症研究所「2018/19シーズン インフルエンザワクチン株」)
インフルエンザウイルスにはA型だけでも100種類以上の亜型があり、変異によって毎年のように新型ウイルスも登場します。そのためワクチン接種していても、インフルエンザを100%予防できないという点には注意が必要です。
(4)インフルエンザの治療法
インフルエンザの治療は「一般療法」と「薬物療法」により行われます。
一般療法 | 高熱によって脱水症状が起こらないように水分補給を行いながら、安静にして睡眠を十分にとることで、体内の免疫機能により回復を図る。 | |
薬物療法 | 原因療法 | 主に抗インフルエンザウイルス薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)を使い、ウイルスの増殖を抑えて感染の拡大を防ぐ。インフルエンザウイルスは増殖のスピードが速く、発症からできるだけ早く(48時間以内)薬を服用することが重要になる。 |
対症療法 | 解熱鎮痛薬や抗菌薬により症状の緩和や二次感染予防を行う。 |
2、インフルエンザ関連銘柄
ここからは、注目しておきたいインフルエンザ関連銘柄をみていきましょう。
(1)抗インフルエンザウイルス薬関連
①塩野義製薬(4507)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
塩野義製薬 (4507) | 7,302円 | 抗インフルエンザウイルス新薬「バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®︎)」を開発。錠剤を1回飲むだけで治療できる手軽さもあり、今年4月からの半年間における国内抗インフル薬売上の65%を占めトップシェアを獲得(産経デジタル)。タミフルに代わるインフルエンザ治療薬として注目されている。 |
②中外製薬(4519)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
中外製薬 (4519) | 6,770円 | 抗インフルエンザウイルス薬「タミフル®︎」を製造・販売。予防効果もあり、最も有名なインフルエンザ薬のひとつ。 |
③第一三共(4568)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
第一三共 (4568) | 4,283円 | 吸引式抗インフルエンザウイルス薬「イナビル®︎」を製造・販売。 |
(2)インフルエンザワクチン関連
①新日本科学(2395)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
新日本科学 (2395) | 518円 | 前臨床試験受託最大手。インフルエンザ経鼻ワクチンが現在優位性証明段階にある。 |
②デンカ(4061)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
デンカ (4061) | 3,480円 | 子会社デンカ生研でインフルエンザワクチンを製造。 |
③カイオム(4583)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
カイオム (4583) | 269円 | 独自の抗体作成技術を持つ創薬ベンチャー。複数のインフルエンザウイルス抗原に対する抗体作製に成功。ウイルスに対して薬効を持つ抗体を短期間で取得する可能性を開く。 |
(3)インフルエンザ検査試薬関連
①栄研化学(4549)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
栄研化学 (4549) | 2,493円 | 臨床検査薬大手。インフルエンザウイルスの検出用キットを製造、販売。 |
②カイノス(4556)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
カイノス (4556) | 1,010円 | 中堅臨床検査薬メーカー。共同開発したインフルエンザウイルス検出キット「スタットマーク™️FULスティックーN」を製造・販売。 |
③ミズホメディー(4595)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
ミズホメディー (4595) | 2,550円 | 感染症抗体・ホルモンなどの対外検査用医薬品専業メーカー。インフルエンザウイルス検査キット「クイックチェイサーFlu A,B」を製造・販売。 |
(4)感染予防対策(マスク・消毒/うがい・空気清浄機/加湿器)関連
①ダイワボウHD(3107)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
ダイワボウHD (3107) | 6,490円 | 紡績大手。感染・予防対策に役立つマスクを開発、販売。抗ウイルス機能、PM2.5などの汚染物質吸着機能を備える多機能マスク「プルシアンガードマスク」。 |
②シキボウ(3109)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
シキボウ (3109) | 1,130円 | 老舗紡績メーカー。感染・予防対策に役立つマスクを開発、販売。 |
③川本産業(3604)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
川本産業 (3604) | 444円 | ガーゼなど医療用衛生材料最大手。感染・予防対策に役立つマスクを製造・販売。 |
④小津産業(7487)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
小津産業 (7487) | 1,928円 | 旭化成と不織布を共同開発し、国内トップシェア。マスク素材の不織布もメーカーに供給する。 |
⑤明治HD(2269)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
明治HD (2269) | 7,710円 | 医薬品子会社でうがい薬を製造。カバのマークの「明治うがい薬」はうがい薬の定番商品。 |
⑥大幸薬品(4574)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
大幸薬品 (4574) | 1,921円 | 「正露丸」で有名な製薬会社。ウイルスを除菌剤「クレベリン」を製造し、感染症管理にも強みを持っている。 |
⑦フマキラー(4998)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
フマキラー (4998) | 1,545円 | 殺虫剤国内シェア3位。顔に吹きかけるだけで鼻や口へのウイルス侵入を防ぐ効果のある「アレルシャット ウイルス イオンでブロック」を販売している。 |
⑧ダイキン工業(6367)
銘柄 (コード) | 株価 (2018/11/7終値) | 銘柄情報 |
ダイキン工業 (6367) | 12,465円 | 世界的なエアコンメーカー。独自のストリーマ技術を持ち、インフルエンザウイルスの分解、除去機能を搭載した空気清浄機を世界で初めて発売。 |
(チャート:SBI証券)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
インフルエンザ関連銘柄はシーズンストックとしてはよく知られたものですが、必ずしも毎年同じようなパターンで株価が変動するわけではありません。
2009年新型インフルエンザ流行による株価急騰 (チャート:SBI証券)
新型インフルエンザが世界的に流行し、一時社会全体がパニックになった2009年のように、インフルエンザ関連銘柄が大きな注目を集めて株価が急騰した年もあれば、例年通りの流行でそれほど株価に影響しない年もあり、流行の“サプライズ度”に左右される部分もあります。
シーズンストックとしてのインフルエンザ関連銘柄は、このような点に注意しながら見ていくようにしましょう。