公務員の方も、働かずに資産を増やせる投資に興味を持っている方は多いでしょう。中でも、安定した収入が期待できる不動産投資は人気があります。
しかし、事業と見なされるレベルの大規模な投資は、副業禁止の規定に引っかかります。そのため、どれくらいの規模なら問題ないのか、理解してから始める必要があります。
この記事では、公務員が不動産投資をする前に知っておきたい基礎知識を解説していきます。どれくらの規模の投資ならやって良いのか、不動産投資で気を付ける点は何かなど、初心者向けに解説していきます。
公務員は不動産投資しても良い?バレない?
結論からお伝えすれば、公務員でも不動産投資はできます。
不動産投資はマンションやアパートの経営になるので、規模が大きくなると副業になってしまい、公務員の方はできません。ですが、規模が一定に収まっていれば問題ありません。
また、規模が大きくても承認申請をすれば認められることも多々あります。公務員でもできる、不動産投資の詳しい条件については後述します。
一定の規模に収まる不動産投資なら法律に反していないので、やましいことはありません。したがって、職場にバレたとしても問題ありません。
しかし、同僚から妬まれるといった被害に遭うかもしれないので、不動産投資のことはできれば隠しておきたいですよね。
公務員の不動産投資が職場に発覚するケースは確定申告です。不動産投資による所得が年間20万円以上ある人は確定申告をして、所得税や住民税を多く支払います。
住民税額は職場に通知されるので、経理の人が見たときに「この人、他の社員よりもたくさん住民税を支払っているな」と気づかれて、バレるケースがあります。
とはいえ、このようなケースはあまり多くはありません。住民税が他の人より2桁も3桁も多ければ気になるものですが、そこまででなければ気にする人は少ないでしょう。
なお、不動産投資がバレた原因で一番多いのは、「自分から投資をしていることを話してしまう」ことです。儲かってウキウキしていると口を滑らせてしまいやすいので、隠しておきたい人は気を付けてください。
まとめると、公務員にも不動産投資はできます。税務書類からバレることもあまり考えられません。
ただし、投資をしていることがバレると職場の人から妬まれることがあるかもしれません。公言しない方が安全と考えられるので、あまり自慢はしない方が良いでしょう。
公務員の副業にならない不動産投資の条件
公務員は副業をしてはいけないのですが、逆に言えば副業にならない範囲なら不動産投資はできます。この項目では、絶対にクリアするべき3つの条件について解説していきます。
- 一定規模以下の不動産賃貸業であること
- 本人が経営を行わないこと
- 家賃収入が500万円未満
この3つをクリアできる範囲で、不動産投資をしていきましょう。
ただし、勤め先の部署によってはさらに細かい規定があるかもしれません。部署によっては投資が厳しく制限されていることがあるので、以下に解説する代表的な条件だけでなく、各職場で必ず規定を確認してください。
条件1:一定規模以下の不動産賃貸業であること
賃貸で経営する物件が、一戸建てなら5棟以下、マンションやアパートなら10室以下であれば、公務員の副業には該当しません。副業になってしまうのは、一戸建て6棟以上と、マンションやアパート11室以上の場合です。
いわゆる「5棟10室」と略されるもので、これが副業と見なされない規模の条件となります。
一戸建てやアパートの投資なら、この条件の範囲内で投資できるケースが多いです。一方で、マンション1棟の投資で10室以下に収めるのは難しいと思いますので、棟単位ではなく部屋単位での投資が必要でしょう。
また、上記の条件を満たしていたとしても、旅館やホテルのために使用すると副業と見なされてしまいます。用途は賃貸住宅が基本となります。
詳しくは、人事院規則14-8にある「(営利企業の役員等との兼業)の運用について」で定められています。公務員の方は、不動産投資を始める前にこの規則に目を通し、該当しないように物件を選びましょう。
条件2:本人が経営を行わないこと
不動産投資の実務は、本人が経営する場合と、不動産管理会社に管理を任せる場合の2つのパターンに分けられます。前者の本人が経営するパターンだと副業になってしまうので、管理会社に任せるようにしましょう。
公務員は、一般の会社員に比べて厳しく副業が禁止されています。その理由は、国や地域に奉仕してお金をもらう職業なので、本業に専念すべきとの考えが根底にあるからです。
公務員の副業禁止については法律に定められているとおりですが、このような原則があることは押さえておいてください。
公務員は、不動産投資そのものをすることは可能ですが、管理まで自分で行ってしまうと、本業がおろそかになるのではないかという目で見られます。そのため、本業に関係ない不動産に関する仕事は管理会社に任せてしまいましょう。
管理会社に任せて本業に集中できるのは、自分自身にとってもメリットになります。仕事で成果を出しやすくなりますし、勤勉な姿勢は他者からも評価されるでしょう。
本業で出世しつつ、不動産投資で副収入を得られるのは最高の環境だと言えます。
条件3:家賃収入が500万円未満
副業と見なされないためには、家賃収入が年間で500万円未満である必要もあります。500万円以上の収入がある場合、副業と見なされるので注意しましょう。
不動産を複数持っている場合、すべての家賃収入を合計して年間500万円未満が基準となります。物件ごとではなく合計の基準なので、理解した上で投資を始めましょう。
この規則についても、人事院規則14-8「(営利企業の役員等との兼業)の運用について」に詳しく書かれています。物件を選ぶ前に規則をご一読いただければと思います。
家賃収入が大きい場合は?
上記で解説した条件を超える規模や収入になる不動産投資をすることも可能です。承認申請を出して通れば、大きな規模での不動産投資を行うことができます。
申請方法は、人事院の「自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)」という書式に必要事項を記入し、所属している部署の上司に提出します。省庁や役所から許可が下りれば、投資することができます。
注意したいのが、上司には不動産投資について説明しなければならないため、投資のことを職場の人に知られてしまうことです。職場の人に知られたくない人は、規模を小さく抑えて不動産投資をしましょう。
相続で不動産を所有している場合は認められやすい
公務員が規模の大きい不動産投資をする場合は承認申請が必要ですが、必ず承認されるとは限りません。副業の禁止規定もあるので、厳しく見られると思っておいてください。
それでも認められやすいケースがあり、それが「相続によって不動産投資をする場合」です。自分の親が賃貸で経営していた土地や不動産を、自分の代でもそのまま経営する場合は、一定の規模を超えていても承認されやすいのです。
相続したからといって公務員をやめさせることはできず、また土地や不動産を売却させることもできないので、承認されやすくなります。
公務員と不動産投資の相性が良い理由
公務員でも、一定の規模以下の不動産なら副業にならず、投資できることをご理解いただけたのではないでしょうか。さらに、実は公務員は不動産投資とも相性が良い職種です。
その理由を3つ解説していきますので、不動産投資へのモチベーションを高めていただければと思います。
- ローンの審査に通りやすい
- 職種は審査に関係がない
- 忙しくてもできる
理由1:ローンの審査に通りやすい
公務員は最も安定した職種のため、信用力は最強です。30代か40代までで、これから20年から30年ほど働ける世代なら、不動産投資ローンの審査に非常に通りやすいのです。
不動産投資は、物件を買うのに数百万円から数億円単位のお金がかかります。すぐに現金で用意できる人はほとんどおらず、多くの投資家は不動産投資ローンを組んで始めています。
投資が上手くいかなかった場合は本業の給料からローンの返済を行うので、本業が安定している公務員は金融機関にとってローンの回収がしやすいお客さんなのです。
自由業やフリーランス、フリーターのような不安定とされる職業の人は審査に通りにくいのですが、属性が高い公務員の方にはその信用力を活かした投資ができるチャンスがあるのです。
不動産投資について前向きに考えてみてはいかがでしょうか?
理由2:職種は審査に関係がない
公務員といっても、さまざまな職種があります。一般的にイメージされる事務職だけでなく、警察官や自衛官など特殊な仕事を担う方もいます。
ですが、不動産投資ローンの審査では大差なく、公務員であればどのような職種でも審査に通りやすいです。
もし審査に落ちてしまった場合は、職業ではなく投資計画に無理がある可能性が高いです。投資する物件を見直すなどして、身の丈に合った投資をしましょう。
理由3:忙しくてもできる
副業に該当しない条件の項目でも解説しましたが、公務員の方は不動産の管理を不動産管理会社に任せることになります。つまり、入居者の募集や家賃の回収といった業務を管理会社に一任することができるので、仕事が忙しくても投資できるメリットと言えます。
株式投資をする場合を考えてみましょう。株式投資は、自分で銘柄を分析して選び、買ったり売ったりしなければならず、知識が必要で手間もかかります。
不動産投資のメリット
ここまでで、不動産投資は小規模なら公務員もできることを解説してきました。次に、具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
以下の3つの代表的なメリットを紹介していきます。
- 安定した不労所得が得られる
- 金融危機に強い資産形成ができる
- 死亡保険の代わりになる
メリット1:安定した不労所得が得られる
不動産投資の最大の魅力は、他の投資方法に比べて収益が安定しやすいことです。賃貸の物件に一度入居した人は、数年間は住み続けてくれると考えられるので、家賃収入も途切れにくいのです。
また、不動産投資なら毎月家賃収入が入りますが、毎月利益が出る投資方法は多くはありません。
株式投資だと、半年ごとに配当金をもらうのが一般的です。国債も半年ごとに利息をもらうパターンが多いです。
すなわち、不動産投資は安定した収入を毎月期待できる点が大きなメリットとなります。
メリット2:金融危機に強い資産形成ができる
不動産投資は金融危機にも強いです。金融危機とは「リーマンショック」や「コロナショック」のように、経済全体が落ち込むことです。
金融危機の状態になると、株式のような金融資産は軒並み株価が下がり、投資家の資産額も下がります。企業が事業を続けられない場合などは配当金が減らされるので、投資家は想定した利益を得られなくなってしまいます。
しかし、金融危機に陥っても賃貸物件に住みたい人が減るわけではありません。需要が落ち込まないので、金融危機の前と同じレベルの家賃収入が期待できます。
このように、不動産投資は金融危機に強い資産形成ができるのです。
メリット3:死亡保険の代わりになる
不動産投資は、不動産投資ローンを組んで始めるのが一般的です。ローンを組むとき、団体信用生命保険に加入するので、いざというときに死亡保険の代わりの役割を果たすこともメリットになります。
ローンの返済が残っている状態で投資家に死亡などの万が一の事態があった場合、ローンの残債は生命保険で返済されます。
ローンの返済義務が遺族に移るようなことはないので、安心して始められるのです。遺族が相続すれば賃貸経営を続けられるので、不労所得を生む資産を遺族に残すこともできます。
このように、団体信用生命保険に加入することで投資家の死亡をリスクヘッジすることができます。これは不動産投資ならではのメリットだと言えるでしょう。
不動産投資のデメリット
不動産投資には、メリットだけでなくデメリットもあります。以下の3つのデメリットについて解説していくので、あらかじめ理解した上で投資を始めていただければと思います。
- 運用に失敗するリスクがある
- 定期的にメンテナンスが必要
- 流動性が低い
デメリット1:運用に失敗するリスクがある
投資全般に言えることですが、「必ず上手くいく投資」は存在しません。不動産投資に限らず、どのような投資でも元本割れのリスクがあることは理解しておきましょう。
不動産投資の場合、運用する資産額が大きいため、成功も失敗も金額が大きくなりやすいです。もし、ローンで購入した物件が全部空室で家賃が入って来なかったら、ローンの返済は本業の給料から支払わなければなりません。
このように失敗するリスクがあるのが投資です。「失敗して失っても大丈夫」と思える金額の範囲で投資をするのも大切です。
デメリット2:定期的にメンテナンスが必要
不動産は現物なので、時間とともに劣化していきます。配管設備が傷んだり、外装の塗装が剥がれたりしたら、直さなければなりません。
このような定期的なメンテナンスで出費が出ることが、不動産投資のデメリットとして挙げられます。
不動産を購入するときに修繕計画も立て、資金を積み立てていくのが一般的です。家賃収入の一部を積み立てるため、すべてが自由に使えるお金にならないことも、理解してから始めるようにしてください。
デメリット3:流動性が低い
貯金がないときに突然、まとまったお金が必要になったら不動産を売却したくなるでしょう。しかし、不動産を売却して換金するまでには時間がかかるので、すぐに現金にはできません。
「売りたいときに売れること」を流動性と呼びます。不動産投資は、流動性が低い投資です。
不動産を売るには、買い手が見つからなければ始まらないので、流動性が低くなってしまうのです。換金しやすさを重視するなら、株式や投資信託といった金融商品の方が向いているでしょう。
公務員が不動産投資で失敗しないためのポイント
不動産投資のメリット・デメリットをご理解いただいたところで、実際に投資を始める前に知っておきたい注意点について解説していきましょう。投資には必ず成功する方法はありませんが、致命的な失敗を避ける方法はあります。
これから説明する5つのポイントは押さえてから投資を始めていきましょう。
- 副業かどうかで迷うなら事前に申請・相談する
- ローンに頼りすぎない
- 需要があるエリアか客観的に判断する
- 見学してから購入する
- 実質利回りを計算する
ポイント1:副業かどうかで迷うなら事前に申請・相談する
公務員の不動産投資が副業に該当しない条件は、概ね上述したとおりです。
しかし、所属部署によってさらに細かい規定がある可能性があります。必ず自分の所属部署でやって良いこと・副業になってしまうことを確認してから不動産投資を始めましょう。
不明点があれば、担当部署に相談したり、必要があれば事前に申請を行ったりします。
例えば、経済産業省の公務員は株式投資が禁止されています。本人は一般公開されていない企業の特許情報を見られる環境にあり、一般人よりも投資判断に使える情報が豊富で有利になってしまうため、禁止されているのです。
不動産投資でも、同じように部署によって細かい規定があることも考えられるので、必ず確認しましょう。副業になるか迷うなら、担当部署に相談してからにしてください。
公務員の副業がバレると、懲戒処分になる可能性があります。仕事を失っては元も子もないので、石橋を叩いて渡る気持ちで、職場のルールを確認してから始めましょう。
ポイント2:ローンに頼りすぎない
公務員だと不動産投資ローンの審査に通りやすいメリットがあるのですが、ローンに頼りすぎると投資に失敗する確率が上がってしまいます。
不動産投資では、ローンを組んで物件を買い、入居者からもらえる家賃収入の一部をローンの返済に充てていきます。投資に失敗して家賃収入が得られなかったら、本業の給料から支払わなければなりません。
そのため、返済額が大きいと給料からの支払いも大きくなり、生活が圧迫されるかもしれないのです。最近はローンだけで物件を購入する「フルローン」で投資を始める方もいますが、失敗したときのリスクが大きくなります。
日常生活の水準を守るためにも、自己資金で1割から3割を支払い、残りをローンでまかなうようにするのがおすすめです。
ポイント3:需要があるエリアか客観的に判断する
ネットで「公務員 不動産投資」と検索しようとすると、「カモ」という単語が一緒に出てきます。実際に公務員の方が不動産投資のカモにされやすく、このような単語の組み合わせで検索されているのです。
公務員はビジネス経験がない方が多く、不動産会社の言いなりに投資してしまうことがあるため、カモにされやすいのです。
カモにされないためにも、物件の需要について客観的に考えてみてください。需要があるエリアなのか、自分だったらその家賃で入居したい物件なのかよく考えましょう。
一人で判断するのが難しい場合は、周りにいる不動産投資の経験者に相談してみましょう。別の会社の無料セミナーを受けるなどして知識を身につけるのも良いでしょう。
そこで知り合った講師や先輩投資家に相談するのでも、客観的な考えを学ぶことができます。
不動産投資会社の担当者の意見に流されて物件を買ってから、カモにされていたと気づくのでは遅すぎます。物件の需要を客観的に考えてから、投資するか否か判断しましょう。
ポイント4:見学してから購入する
不動産を購入する前に、自分の目で状態を確認してから購入しましょう。競売で安く物件が売り出されることがあるのですが、買った後に見に行ったら事前の説明よりもボロボロの物件で、むしろ高い買い物をしてしまったという失敗例が多いからです。
中古の物件だと、入居者を募集する前にリフォームをして設備を新しくする必要があります。その費用は投資家が負担するので、思った以上にボロボロだった物件をつかまされた場合、想定よりも多くの修繕費を支出しなければならなくなり、投資家にとって損となります。
中古の物件は特に、状態を確認してから購入しましょう。物件選びの段階でも公務員がカモにされるケースはあるので、慎重に進めてください。
ポイント5:実質利回りを計算する
不動産投資をするとき、利回りを気にしない人はいないと思います。その利回りには、「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があることをご存知でしょうか?
広告では「表面利回り」が強調されることが多いのですが、「実質利回り」の方が投資の判断に役立ちます。
表面利回りとは、満室の場合の家賃収入を物件の購入価格で割ったものです。表面利回りは、空室ができたときの収入の減少や、物件購入にかかるコストなどを考慮していないため、非現実的な利回りなのです。
- 表面利回り=年間家賃収入÷物件購入価格
目安にするのは良いのですが、表面利回りだけを見て投資先を決めることはやめましょう。
実質利回りは、コストを考慮して算出する利回りなので、より実態に近い利回りです。アレンジして、空室を考慮した利回りを計算しても良いでしょう。
- 実質利回り=(年間家賃収入-必要経費)÷物件購入価格
表面利回りよりも実態に近い実質利回りを計算して、投資判断に役立てましょう。
まとめ
公務員が不動産投資を始めるときの注意点を中心に、不動産投資について解説しました。
公務員の場合、副業が厳しく禁止されているので、副業に当てはまらない範囲での運用を徹底しましょう。承認なしに大規模な不動産投資をしてしまうと、懲戒処分になる可能性があります。
この記事をご覧くださった方の多くは、これから不動産投資を始めようか悩んでいる公務員の方だと思います。まずは小さく始めてみて、自分に合った投資なのか考えてみると良いでしょう。