つみたてNISAの利益と節税額は?シミュレーションでiDeCoと比較

  • 2020年7月23日
  • 2021年10月15日
  • NISA

金融庁が導入した背景もあり、NISAを始める方は増え続けています。現在では、全体で約1,366万もの口座がNISA(一般・つみたて)で利用されています。

そこで、少額積立の始めやすさから「つみたてNISA」を検討中ではあるものの、
「実際どのくらい利益が出るの?」、「NISAのほうがいいんじゃないの?」と思われる方も多いのではないでしょうか?

その答えですが、「つみたてNISA」を使えば、少額の積立でも数百万、数千万円の資産を構築し、老後の資金といったまとまった資産を作ることが可能です

そこで、この記事では「つみたてNISA」でどのくらいの利益が得られるのか、利用しない場合と比べてどのくらいお得になるのか、シミュレーションを交えて解説します。

最後には、つみたてNISAと同様、節税できる制度として人気の「iDeCo」とも比較して解説していますので、少額の予算で高額の資産を形成したい方はぜひご覧ください。

つみたてNISAで得られる利益はどのくらい? シミュレーションで比較

つみたてNISAは、最長20年間、年間40万円までの範囲で利用できる非課税制度です。
課税されないNISA口座を利用し、投資をすることで利益が増えます。

最大限利用する場合は、毎月の積立額は33,333円(40万÷12ヶ月)となります。

そこで、毎月の積立額を5,000円、10,000円、20,000円、33,333円のとき、20年間つみたてNISAで運用した場合の利益と節税額をシミュレーションしてみました。やりくりできる金額から最大額で設定しているので、ぜひご自身のケースで当てはめてみて下さい。

なお、つみたてNISAで運用できる商品は利回りが年3~7%になることが多いため、利回り3%、5%、7%と仮定して計算しています。

<利回り3%の場合>
毎月の積立額 5,000円 10,000円 2万円 33,333円
積立総額 120万円 240万円 4,800,000円 7,999,920円
受取総額 1,641,510円 3,283,020円 6,566,040円 10,943,291円
利益 441,510円 883,020円 1,766,040円 2,943,371円
節税額 89,692円 179,385円 358,771円 597,945円
<利回り5%の場合>
毎月の積立額 5,000円 10,000円 20,000円 33,333円
積立総額 120万円 240万円 480万円 7,999,920円
受取総額 2,055,168円 4,110,337円 8,220,673円 13,700,985円
利益 855,168円 1,710,337円 3,420,673円 5,701,065円
節税額 173,727円 347,454円 694,909円 1,158,171円
<利回り7%の場合>
毎月の積立額 5,000円 10,000円 20,000円 33,333円
積立総額 120万円 240万円 480万円 7,999,920円
受取総額 2,604,633円 5,209,267円 10,418,533円 17,364,048円
利益 1,404,633円 2,809,267円 5,618,533円 9,364,128円
節税額 285,351円 570,702円 1,141,404円 1,902,322円

※いずれも税金は20.315%、小数点以下切り捨てで計算しています

参考:金融庁「資産運用シミュレーション」(外部リンク)

利回りが7%で20年間積み立てると、積み立てた金額の倍以上を受け取れることが分かります。

利益が大きくなる分、節税額も大きくなりますので、高額の資産を効率よく形成したい方には、合法的に節税できるつみたてNISAは間違いなくおすすめの制度ということができます。

こんなメリットのあるつみたてNISAですが、知っておくべき注意点がありますので、次章で解説していきます。

つみたてNISAで運用できる商品一覧

実はつみたてNISAで運用できるのは、投資期間が20年以上もしくは無期限の投資信託のみです。積立であれば、どんな投資でも非課税になるわけではないのです。

2020年4月1日時点で、つみたてNISAを利用できるのは、国内投資信託ファンドが44本、国内外投資信託ファンドが85本、海外投資信託ファンド45本、ETF7本の計181本です。
数があって「結局どれを選べばいいの?」と思われる方もいるかと思いますので、それぞれ特徴について解説していきます。

国内 国内外 海外
株式型投資信託 39本 10本 43本
資産複合型投資信託 5本 75本 2本
ETF 3本 4本

出典:金融庁「つみたてNISA対象商品の内訳(2020年4月 1日時点)」(外部リンク)

株式型投資信託の特徴

投資信託とはさまざまな金融資産(株式や債券、REITなど)に投資をおこなう手法です。
複数の株式や債券を組み合わせてファンドを作るため、1つの株式が暴落してもファンド全体の価格は影響を受けにくく、1つの銘柄だけに投資しても分散投資できるというメリットがあります。

そんな、投資信託には「株式型投資信託」と「資産複合型投資信託」の2つの種類がありますが、債券などの他の金融資産に投資しないで、複数銘柄の株式100%で構成された金融商品を株式型投資信託と言います。

資産複合型投資信託の特徴

株式100%で構成される株式型投資信託以外の投資信託は、すべて資産複合型投資信託です。つまり、99の株式と1つの債券で構成されているファンドなら、株式以外の金融資産が入っているため、株式型投資信託ではなく資産複合型投資信託と分類されます。

資産複合型投資信託は、株式型投資信託よりも幅広い資産で構成されているため、比較的ローリスクローリターンな値動きを示します。

つみたてNISAの中でも国内外型の資産複合型投資信託を選べば、金融資産のタイプも投資する地域も分散させやすくなるでしょう。

ETFの特徴

ETFとは、株式市場に上場している投資信託です。

TOPIXや日経平均株価、S&P500などの特定の指標(インデックス)に連動して価格が推移するため、急激に価格変動することが少なく、比較的ローリスクローリターンの投資をおこなうことができます。

また、市場の情報から値動きをある程度予想できるため、投資初心者でも比較的取り組みやすい点もETFの特徴です。

長期保有向けの信託報酬が低いファンドのみが利用可能

信託報酬とはファンドを運用する際の手数料で、投資信託を保有している限り、毎日発生しています。そのため、長期保有の際に特に気にすべきコストが、信託報酬です。

つみたてNISAの対象商品は信託報酬率に上限があり、維持コストがかかりにくいという特徴があります。

実際の対象ファンドでは、信託報酬率の平均が上限よりもさらに低くなっており、信託報酬を気にせずに長期保有できるように配慮されています。

インデックスファンド アクティブファンド
国内 国内外・海外 国内 国内外・海外
信託報酬率の上限 年0.5% 年0.75% 年1.0% 年1.5%
信託報酬率の平均 年0.26~0.27% 年0.20~0.49% 年0.95~1.00% 年0.31~1.20%

参考:金融庁「つみたてNISA対象商品の内訳(2020年4月1日時点)」

つみたてNISAの非課税期間が終わった後はどうする?

つみたてNISAの非課税期間20年間が終わると、つみたてNISAを利用したETFや株式投資信託は、特定口座や一般口座などの課税口座に非課税期間終了時の時価で払い出されます

運用期間中に高額な利益が発生していても、つみたてNISAは非課税口座のため、一切、税金は発生しません。

しかし、つみたてNISAの非課税期間終了後に発生した利益に関しては、20.315%(所得税15.315%、住民税5%)がかかります。

参考:金融庁「つみたてNISA Q&A Q22」(外部リンク)

充分な利益があるときは分散して普通預金もおすすめ

つみたてNISAの非課税期間が終了したときに、すでに十分な利益が得られたのならば、定期預金口座や普通預金口座に資金を移動させることもおすすめです。

投資を続けてさらに利益を増やすこともできますが、かならずしも利益が出るとは限らないため、無理に投資をして減らすよりは預金として金融機関に預けましょう。

 

ただし、資産が1,000万円を超える場合は、複数の金融機関に分散させるようにして下さい

万が一、金融機関が破綻したときでも、預金保険制度(ペイオフ)により1金融機関当たり1人につき1,000万円以下の預金とその利息だけは保証されますが、1,000万円を超える預金とその利息に関しては、保証は確約されていません。

参考:預金保険機構「預金保険の保護の内容について」(外部リンク)

つみたてNISAとiDeCoでお得なのはどっち?

節税効果がある制度は、つみたてNISAだけではありません。

つみたてNISAと同様、積立式に資産運用できるiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)も人気です。

つみたてNISAとiDeCoの違いは以下のとおりです。

つみたてNISAとiDeCoの違いを比較
つみたてNISA iDeCo
投資可能な人 20歳以上 20歳以上60歳未満
投資対象 投資信託 投資信託、保険、定期預金
年間投資限度額 40万円 14.4~81.6万円※
投資期間 最長20年 特になし
現金の払い出し 利用者が60歳になるまでは原則不可
利益に対する課税 非課税 非課税
投資資金に対する優遇措置 なし 全額所得控除の対象

※公務員と会社員は最大14.4万円、専業主婦は最大27.6万円、自営業者は最大81.6万円

節税効果が高いのはiDeCo

利益が非課税になるという点は、つみたてNISAもiDeCoもどちらも同じです。

しかし、つみたてNISAは利益に関してのみ節税できるのに対し、iDeCoは投資元金が全額所得控除の対象になるので、さらに節税効果が高まります。

満60歳になるまでiDeCoを続けた場合の、所得控除による節税総額(所得税軽減額+住民税軽減額)は以下のとおりです。

<毎月5,000円を投資(年収400万円で試算)>
iDeCo開始年齢 20歳 30歳 40歳 50歳
積立総額 240万円 180万円 120万円 60万円
所得税軽減額 12万円 9万円 6万円 3万円
住民税軽減額 24万円 18万円 12万円 6万円
節税総額 36万円 27万円 18万円 9万円
<毎月10,000円を投資(年収400万円で試算)>
iDeCo開始年齢 20歳 30歳 40歳 50歳
積立総額 480万円 360万円 240万円 120万円
所得税軽減額 24万円 18万円 12万円 6万円
住民税軽減額 48万円 36万円 24万円 12万円
節税総額 72万円 54万円 36万円 18万円
<毎月20,000円を投資(年収400万円で試算)>
iDeCo開始年齢 20歳 30歳 40歳 50歳
積立総額 960万円 720万円 480万円 240万円
所得税軽減額 48万円 36万円 24万円 12万円
住民税軽減額 96万円 72万円 48万円 24万円
節税総額 144万円 108万円 72万円 36万円
<毎月20,000円を投資(年収800万円で試算)>
iDeCo開始年齢 20歳 30歳 40歳 50歳
積立総額 960万円 720万円 480万円 240万円
所得税軽減額 192万円 144万円 96万円 48万円
住民税軽減額 96万円 72万円 48万円 24万円
節税総額 288万円 216万円 144万円 72万円

出典:金融庁「かんたん税制優遇シミュレーション」(外部リンク)

20歳から60歳になるまでの40年間iDeCoを続けると、投資元金を所得控除として申請できる期間が長くなる分、税金の軽減額も増えます。

毎月2万円を投資した場合、たとえば年収が400万円の方なら40年間で144万円もの節税ができますし、年収が800万円の方なら所得税の税率が上がる分、税金の軽減額も増えて、288万円もの節税が実現できます。

もちろん、iDeCoによる利益は非課税なので、利益が出た場合の実際の節税額は上記以上になります

途中解約できるのがつみたてNISAの強み

節税効果はiDeCoに劣るものの、つみたてNISAならではのメリットも多数あります。

まず、20歳以上なら誰でも利用できるという点

たとえば50歳のときに非課税投資を思い立った場合、iDeCoなら最大でも10年しか投資をおこなえません。しかし、つみたてNISAなら年齢上限は決まっていないため、20年間投資を続けられます。

 

また、iDeCoは会社員と公務員は年間上限14.4万円しか積み立てられませんが、つみたてNISAなら勤務形態にかかわらず年間40万円まで積み立てられます。

その他にも、お金が必要なときにすぐに払い出しできるのもつみたてNISAの強みです。iDeCoは原則として満60歳にならないと払い出しすることができません。

つみたてNISAの枠は20年間有効なので、払い出しした翌年以降に別のファンドを運用することもできます。ただし、つみたてNISA口座自体が20年までしか利用できないため、新たに運用するファンドは運用期間が短くなるという点には注意が必要です

まとめ:つみたてNISAとiDeCoを併用してお得に資産形成しよう


年間、元本40万円以下の投資に関して、利益が全額非課税になるつみたてNISA。
お得な制度ですので、ぜひとも活用して資産形成に役立てましょう。

iDeCoなら、投資益が非課税になるだけでなく、投資元金が所得控除の対象になるため、大幅に所得税や住民税を節約することも可能です。

「どちらの制度を利用して良いか分からない」と悩む必要はありません。つみたてNISAとiDeCoは併用可能な制度です。両方を活用して、賢く資産運用していきましょう。

<まとめ>

  • つみたてNISAは年間40万円までの投資に対して、利益が全額非課税になる制度
  • iDeCoは利益が非課税になるだけでなく、投資元金が所得控除の対象になるため、さらに節税効果が高い
  • 両方を活用すれば、さらに節税効果を高められる。いずれの制度も運用額に上限があるので、賢く活用して資産形成に役立てよう
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