「ベンチャー投資はハイリスクと聞いたけど、実際どうなの?」「一般の投資家でも、ベンチャー投資ってできるの?」他の投資に比べて情報が少ないベンチャー投資では、こうした疑問を抱く方が多いと思います。
ベンチャー投資とは成長性のある非上場企業への投資により、高いリターンを得る投資法です。確かにハイリスクですし、ある程度資金に余裕がなければなりません。
ただ、ベンチャー投資には、チャレンジ企業が社会に羽ばたく支援をし、エンジェル税制で節税できるといった魅力もあります。
当記事ではベンチャー投資とは何かを解説しながら、一般の投資家がベンチャー投資する方法を具体的に紹介していきます。「ベンチャー投資に興味があるけど不安もある」という方は、参考になさってください。
ベンチャー投資とは?
ベンチャー投資とは、いわゆる「ベンチャー企業」に出資し、高いリターンを得る投資法です。
ここでは、次の3点についてわかりやすく解説していきましょう。
- ベンチャー投資の仕組み
- 投資家の税優遇措置であるエンジェル税制
- ベンチャーキャピタルとエンジェル投資家の違い
ベンチャー投資の仕組み
ベンチャー投資の仕組みは、上場を視野に入れて急成長を続ける新興企業・有望企業に出資(投資)をして、将来的に大きなリターンを得るものです。つまり、将来大化けするかもしれない企業の先物買いによって、利益を得る投資と言えます。
ただ、ベンチャー投資の利益は、約束されたものではありません。「成長性がある」と思って出資をしたベンチャー企業が将来上場できるかどうか、リターンがどの程度になるかどうかの保証は一切ないのです。
こうした仕組みからベンチャー投資は、ハイリスク・ハイリターン投資と言われています。
エンジェル税制とは
ハイリスクでありながら、多くの投資家がベンチャー投資をする理由のひとつは、「エンジェル税制」があるからです。エンジェル税制とは、ベンチャー企業への投資を促進するため、政府が個人投資家のために用意した税優遇措置です。
個人投資家が「エンジェル税制の対象になっているベンチャー企業」に投資をすると、次のいずれかのタイミングで節税できるのです。
- ベンチャー企業に出資(投資)をしたとき
- ベンチャー企業の株式を売却したとき
エンジェル税制の優遇措置の一例【投資をしたとき】
- 【優遇措置A】
- [対象企業への投資額 – 2000円]をその年の総所得金額から控除
※ 控除対象になる投資上限額は、(総所得金額×40%)か(1,000万円)、いずれか低いほう
- 【優遇措置B】
- 対象企業への投資額全額をその年の他の株式譲渡益から控除
※控除対象の投資の上限額はなし
出典:エンジェル税制の仕組み(中小企業庁)
たとえば、優遇措置Aの適用ベンチャー企業に年間300万円の出資(投資)をした場合、299万8,000円もの投資額をその年の総所得金額から控除することができます。今話題の「iDeCo」や「NISA」では、年間200万円以上もの所得控除は受けられません。
投資においてこれだけ高い税優遇措置を受けられるのは、比較的富裕な個人投資家を対象としたエンジェル税制ならではです。年間の総所得金額が多く納税額も高い投資家にとっては、エンジェル税制を活用したベンチャー投資には、こうした節税の魅力があるのです。
ベンチャーキャピタルとエンジェル投資家の違い
ベンチャー投資をする投資家には「ベンチャーキャピタル」と「エンジェル投資家」があり、前者は法人、後者は個人です。
これから個人でベンチャー投資を始める方は、「エンジェル投資家」ということになります。個人投資家はベンチャーキャピタルを介してベンチャー投資することもできますし、自らがベンチャー企業を探して個別に投資することも可能です。
ベンチャーキャピタル
ベンチャー企業やスタートアップ企業への投資を専門とする投資会社・専門の機関です。ただ企業に投資するだけではなく、経営面での支援も行います。
会社規模で支援をするため、投資額が大きいことが特徴です。
エンジェル投資家
ベンチャー企業への投資を行う富裕な個人投資家のことです。個人であるため、ベンチャーキャピタルに比べて投資額の規模は小さくなる傾向があります。
ただ、著名なエンジェル投資家の場合は資金力があるため、投資額も大きい特徴があります。
一般の投資家が手軽にベンチャー投資する方法
個人投資家がベンチャー投資する方法は、次の2つの方法が一般的です。
- ベンチャーキャピタルを介して投資をする
- 自らがエンジェル投資家となり、有望な企業を探して投資をする
しかし、いずれの方法も、ある程度の資産と人脈、情報が必要です。「余裕資金ができたので手軽にベンチャー投資してみたい」という方や、「周囲にはベンチャー投資している人がおらず、人脈がない」という方にとっては、ハードルが高いですよね。
そこで、ここでは一般の投資家でも手軽にベンチャー投資できる方法として、次の2つの方法をご案内していきます。
- 株式投資型クラウドファンディング
- エンジェル投資家と起業家のマッチングサイト
方法1:株式投資型クラウドファンディングを利用する
株式投資型クラウドファンディングとは、インターネット上で不特定多数から資金を調達するクラウドファンディングの仕組みを活かしたベンチャー投資です。株式投資型クラウドファンディングであれば、次のような特徴があります。
- スマホやパソコンから手軽に投資できる
- 自身で投資対象のベンチャー企業を探す必要がない
- ひとつの投資(プロジェクト)に不特定多数の投資家が参加するため、比較的少額から投資できる
より手軽に企業を探し、比較的少額でベンチャー投資できることが大きな魅力です。
国内の株式投資型クラウドファンディング市場はまだまだ発展途上ですが、次の2サイトは登録投資家数が増えており、勢いがあります。
- FUNDINNO(ファンディーノ)
- Go Angel(ゴーエンジェル)
FUNDINNO(ファンディーノ)
国内で最初に株式投資型クラウドファンディングを始めたサイトが「FUNDINNO(ファンディーノ)」です。2020年5月時点で累計成約額は30億を超えており、急成長を遂げています。
エンジェル税制が適用される企業・プロジェクトも多数紹介されていますし、見やすく使いやすいプラットフォームも魅力です。また、プロジェクトによっては最低1万円から投資できる手軽さもベンチャー投資初心者にはうれしいポイントでしょう。
Go Angel(ゴーエンジェル)
ベンチャーキャピタルが作った株式投資型クラウドファンディングサイト、「Go Angel(ゴーエンジェル)」です。Go Angel(ゴーエンジェル)は2019年11月、国内最大のクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」に買収され、グループ会社となりました。
クラウドファンディング業界でも著名なCAMPFIREのグループ会社になり、サイトの使い勝手向上や経営基盤の安定化という面で、今後の動向に期待が高まります。
方法2:エンジェル投資家と起業家のマッチングサイトを利用する
「エンジェル投資家になりたいけど、どうやって対象のベンチャー企業を探せば良いのかわからない」という方におすすめなのがマッチングサイトの利用です。エンジェル投資家と起業家のマッチングサイト、「グッドエンジェル」や「エンジェルポート」を利用すれば、将来有望なベンチャー企業を見つけやすくなりますよ。
グッドエンジェル
「グッドエンジェル」は、2011年開業のエンジェル投資家向けマッチングサイトです。都道府県別・業種別の起業家、投資家の投稿を一覧で見ることができ、より自身が興味のある案件、ぴったりの案件を探しやすいことが特徴です。
掲載企業も投資家もさまざまで、案件によっては数百万円で投資できるものもあります。
エンジェルポート
「エンジェルポート」はフリマアプリで知られる「Fril(現ラクマ)」の創業者が手掛けた新しいマッチングサイトです。創業者自身がエンジェル投資家として複数のベンチャー企業に投資をしているため、その経験がふんだんに生かされたサイト作りが魅力です。
エンジェルポートには著名なエンジェル投資家が名を連ね、注目度の高いスタートアップ企業がたくさん紹介されています。特に、注目スタートアップ企業の一覧は、今後ベンチャー投資を複数していきたい投資家にとって、有力な情報となるでしょう。
ベンチャー投資はハイリスク・ハイリターン
これまでお伝えしてきたとおり、ベンチャー投資はお金のなる企業の先物買いであり、ある意味一攫千金、まさにハイリスク・ハイリターン投資です。ベンチャー投資にはエンジェル税制や成長企業を発掘できるというメリットはあるものの、自身が見込んだ企業が必ず成功する保証はありません。
そのため、ベンチャー投資を始めるときはこうしたリスクの高さをふまえたうえで、なおかつ
- 企業経営への理解
- 資金的な余裕
が必要であることを忘れないでください。
企業経営に対する理解と目利きが重要
ベンチャー投資で成功を収めるには、企業経営に対する深い理解や経験、新興企業の可能性を見極める力が必要不可欠です。先述したベンチャー企業と投資家のマッチングサイトやプラットフォーム上には、さまざまなベンチャー企業が登録されています。
どの企業もできる限り資金を出資して欲しいので、魅力たっぷりに自社の事業を紹介しているでしょう。
しかし、ベンチャー投資で大きなリターンを得るためには、事業の魅力度だけで投資してはなりません。経営の健全性、財務状況、今後の見通しなど中長期の視点で経営状態を厳しく見守り、支援していくことが大切なのです。
著名なエンジェル投資家のほとんどは元経営者や、自らがエンジェル投資で出資を受けて成功した起業家です。経営のプロがひしめくベンチャー投資界に個人投資家が参戦し利益を得るためには、自らも経営者としての視点をもつことが大切なのです。
資金的な余裕が必須
一般的にベンチャー投資で必要な投資額は、最低でも500万円から1,000万円と言われています。もちろん、支援する企業や支援の形によっても投資額は変わってくるため、一概には言えません。
先ほどご紹介した株式投資型クラウドファンディングサイトなら1万円から投資できる案件もあり、ベンチャー投資にかける費用も変わってきています。
ただ、ベンチャー投資はそもそもハイリスク・ハイリターン投資であり、リターンが出るまで何年かかるのかもわかりませんし、保証もない投資です。したがって、ベンチャー投資に回す資金は「しばらく使わなくても問題のない余裕資金」でなければなりません。
また、投資の過程で増資することもふまえて、ある程度資金的な余裕が必要です。ハイリスク・ハイリターン投資で正常な判断を行うためには、資金的な余裕をもつことが何より大切なのです。
まとめ
成長企業に投資できるベンチャー投資は、ハイリスク・ハイリターンな投資です。ある程度資金的な余裕がなければ始められませんし、経営への深い理解も必要になるため、何も考えずに投資してリターンが得られるわけではありません。
しかし、これから社会に羽ばたく企業を支援することは社会全体への貢献にもなり、成長を間近で見られるという楽しみがあります。また、エンジェル税制による節税メリットは、納税額が高い投資家にとって大きな魅力です。
収入や資産に余裕がある方は、資産運用のひとつにベンチャー投資を加えてみると、資産運用の幅がより広がるのではないでしょうか。